Just a Friend・66
西門さんが私の部屋に居る・・・この人に超似合わない極狭のアパートに。
彼のところだけが輝いてるようにも見えるし、狭すぎるもんだから一瞬でこの人の香りが充満して逆に息苦しいというか・・・とにかく私がここの住人なのに遠慮しちゃって隅っこに立ってしまう。
その時に見えた室内干しの洗濯物!
慌ててそれを両手で隠して見えないところに放り込み、横目で彼を見たけど知らん顔してる。
・・・でも見たよね?って背中を汗が流れる。
「阿呆か、ガキじゃあるまいし」
「・・・///!!」
「何突っ立ってるんだ?面白い顔して」
「悪かったわね!これがいつもの顔なのよっ!」
「くくっ、言っただろ?初めて見る訳じゃねぇよ」
「・・・・・・・・・」
入ったのはあの日以来だろうけど、泥酔していた私には記憶が無い。
だからすごくドキドキして、珈琲淹れてる指先が震える・・・ってか、この部屋が暑すぎて珈琲なんて飲めないんじゃないの?って台所から部屋を覗き見れば、西門さんはスマホを弄くって平気な顔してる。
こうなったら滅多に使わないエアコンのスイッチ入れるか・・・と、珈琲を持っていくと、まずはスイッチオン!
ヴィ~~~ンと動き始めたからホッとした。
しかも2人ともバイク用の服・・・彼はジャケットを脱いでるけどパンツは風を通さない素材だから暑苦しい。私も同じだけど、実は着替える場所が・・・トイレぐらいしかない?
だから急いで着替えを持ってトイレに駆け込み、そこで漸くTシャツ&ハーフパンツといういつもの楽な格好になった。
「・・・で、さっきはどうしたんだ?」
「あっ・・・だって急に面接とか言うから・・・」
「あぁ、言ったな・・・それで?」
「茶道会館の話だよね?でも私・・・何も出来ないし、それに・・・」
「それに?」
「・・・・・・・・・また私じゃダメだって言われるの、怖いんだけど・・・」
勇気を振り絞ってそう言うと、西門さんは黙って珈琲を口に運んだ。
そしてまたスマホを弄くって、暫くしたら何かが終わったのか、それをポイッと床に置いて私の顔を見た。
凄く真面目な顔・・・怒ってるとかじゃなくて、ホントに真剣な目。
こうやって普段間近で見つめ合わないから恥ずかしくなって、目をそむけたら「ちゃんと見ろ」って言われてビクッとした。
「確かに俺の家は茶道宗家で、俺は次期家元って事になってる。頭の固い親父が家元で、お袋は名家の出で気位は高いだろう。使用人は数十名、全国に門下生が居て地方支部は幾つもある。
ややこしいしきたりに縛り付けられ、意味不明な行事も多い。作法には厳しいし、覚えることも山のようにある。普通の人間じゃ1日で逃げ出すかもしれないぐらい窮屈な場所だと思う。口煩い後援会の爺さんや婦人会の婆さんも居るし、茶道教室にはプライドの塊みたいなお嬢も居る」
「・・・そんなに言わなくても判ってるよ!だから・・・怖いって言ってるのに!」
「でも俺はそこから動かない。毎日お前の横に居てやるけど?」
「・・・・・・えっ?」
「司の時に味わった想いはさせない。
何処かに置いて行くこともねぇし、出掛けても絶対に帰って来る。辛い事があったとしても、俺はそれを全部聞いてやるし助けてやる。それじゃダメなのか?それでも怖いのか?
NYに乗り込んだ時みたいな勇気、西門に対しては持てねぇのかよ」
********************
俺の言葉に牧野が黙った。
真っ直ぐ俺の目を見てド真剣な表情になった。
そいつは高校の頃、道明寺の家と闘ってた時の目・・・緩く着てるTシャツがまるで英徳の制服に見えるぐらい、あの時の顔をしてやがった。
「どうなんだ?牧野」
「・・・ホントに側に居てくれる?」
「あぁ、嫌がっても側に居てやる」
「私、なんにも知らないから凄い事件が起こると思うよ?それでもいいの?」
「今までだってすげぇ事件は起こってたし、それを俺が助けたじゃねぇか」
「今度の事件は西門の中で起こるんだよ?私、もしかしたらヒステリー起こして暴れるかもだよ?」
「西門が間違ってたら俺が諭してお前の味方になるし、お前が間違ってたらイチから教えてやる。それでも暴れたら俺が抱き締めてやる」
「自信ないって言ったら?」
「初めから自信持ってるヤツを俺は信用しない」
「どうしても覚えられなかったら?」
「何度でも稽古したらいずれは自分のものになる」
「・・・・・・浮気しない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その最後の質問はなんだ?って可笑しくなって、プッと吹き出したら「ここが1番の問題だよ!」って大声で怒鳴られた。
流石にそこは信用ねぇよなぁ~ってのも判るから、笑いながら手招きしたら、ブスくれた顔で俺の前にやって来た。そしてあと少しってところで俺の手を取り、俺は牧野を抱き抱えて膝の上に・・・そうしたら額がくっつくほどの距離だ。
真っ赤になって照れてるけど、少し怒ったような顔。
その頬に手を当てた後、耳の方にずらして髪を掻き上げると擽ったそうに肩を竦める仕草・・・そいつがすげぇ可愛かった。
「急に全部出来なくていい・・・まずは気持ちを強く持て。
頭の固い親父と気位の高いお袋って言ったけど、案外そうでもねぇと思う。世間的にはそう見せてるけど母屋じゃ普通の人達だ。五月蠅い弟も居るからいい喧嘩相手になると思うぞ?」
「そお?あ、あの・・・光流さんはよく来る?」
「ははっ!今からの方がよく来るかもな。それに牧野とよく似た性格だから2人が話したら五月蠅くなりそうだ」
「ほんと?友達になれる?」
「秒でなれるんじゃね?もしかしたら俺を放ったらかしにして遊んでたりしてな!」
「そうだといいな♪・・・・・・っ!」
髪を梳いていた指を顎に戻して持ち上げたら、そのままそっと唇を塞いだ。
いつ頃からこんな場面を夢見てただろうって自分でも不思議に思いながら・・・でも、もうNYで出会った時に俺の恋は始まってたのかもしれない。
どうしても放っておけなくて
どうしても助けてやりたくて
どうしても司に会わせたくなくて・・・それは全部自分の為だったのかも、なんて思ったりもする。
重ねた唇はどんどん深くなり、僅か数㎝離れた身体がもどかしいぐらい。
そいつも重ねたくて牧野の背中を支えてその場に倒したら、ゴン!とすげぇ音がしてビビった!
「・・・ったぁ!!」
「なんでそんな所にカラーボックスがあるんだよ!狭すぎじゃねぇか?!」
「その前に何やってんのよ!馬鹿っ///!!」
「何処が馬鹿だ?色々確かめ合うのは大事じゃね?」
「声がおっきい!!」
「大きいのは声だけじゃねぇけど?だから確かめようって・・・」
「ばばば、馬鹿っ///!!それに帰らなきゃ・・・」
「さっきメールで外泊するって連絡しといた」
「そんな事だけ早いんだから!こ、珈琲飲むだけじゃなかったの?!」
「泣きそうだったのはお前じゃね?」
「泣いてない!!」
不味い・・・またいつものようになってしまった!
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その時に見えた室内干しの洗濯物!
慌ててそれを両手で隠して見えないところに放り込み、横目で彼を見たけど知らん顔してる。
・・・でも見たよね?って背中を汗が流れる。
「阿呆か、ガキじゃあるまいし」
「・・・///!!」
「何突っ立ってるんだ?面白い顔して」
「悪かったわね!これがいつもの顔なのよっ!」
「くくっ、言っただろ?初めて見る訳じゃねぇよ」
「・・・・・・・・・」
入ったのはあの日以来だろうけど、泥酔していた私には記憶が無い。
だからすごくドキドキして、珈琲淹れてる指先が震える・・・ってか、この部屋が暑すぎて珈琲なんて飲めないんじゃないの?って台所から部屋を覗き見れば、西門さんはスマホを弄くって平気な顔してる。
こうなったら滅多に使わないエアコンのスイッチ入れるか・・・と、珈琲を持っていくと、まずはスイッチオン!
ヴィ~~~ンと動き始めたからホッとした。
しかも2人ともバイク用の服・・・彼はジャケットを脱いでるけどパンツは風を通さない素材だから暑苦しい。私も同じだけど、実は着替える場所が・・・トイレぐらいしかない?
だから急いで着替えを持ってトイレに駆け込み、そこで漸くTシャツ&ハーフパンツといういつもの楽な格好になった。
「・・・で、さっきはどうしたんだ?」
「あっ・・・だって急に面接とか言うから・・・」
「あぁ、言ったな・・・それで?」
「茶道会館の話だよね?でも私・・・何も出来ないし、それに・・・」
「それに?」
「・・・・・・・・・また私じゃダメだって言われるの、怖いんだけど・・・」
勇気を振り絞ってそう言うと、西門さんは黙って珈琲を口に運んだ。
そしてまたスマホを弄くって、暫くしたら何かが終わったのか、それをポイッと床に置いて私の顔を見た。
凄く真面目な顔・・・怒ってるとかじゃなくて、ホントに真剣な目。
こうやって普段間近で見つめ合わないから恥ずかしくなって、目をそむけたら「ちゃんと見ろ」って言われてビクッとした。
「確かに俺の家は茶道宗家で、俺は次期家元って事になってる。頭の固い親父が家元で、お袋は名家の出で気位は高いだろう。使用人は数十名、全国に門下生が居て地方支部は幾つもある。
ややこしいしきたりに縛り付けられ、意味不明な行事も多い。作法には厳しいし、覚えることも山のようにある。普通の人間じゃ1日で逃げ出すかもしれないぐらい窮屈な場所だと思う。口煩い後援会の爺さんや婦人会の婆さんも居るし、茶道教室にはプライドの塊みたいなお嬢も居る」
「・・・そんなに言わなくても判ってるよ!だから・・・怖いって言ってるのに!」
「でも俺はそこから動かない。毎日お前の横に居てやるけど?」
「・・・・・・えっ?」
「司の時に味わった想いはさせない。
何処かに置いて行くこともねぇし、出掛けても絶対に帰って来る。辛い事があったとしても、俺はそれを全部聞いてやるし助けてやる。それじゃダメなのか?それでも怖いのか?
NYに乗り込んだ時みたいな勇気、西門に対しては持てねぇのかよ」
********************
俺の言葉に牧野が黙った。
真っ直ぐ俺の目を見てド真剣な表情になった。
そいつは高校の頃、道明寺の家と闘ってた時の目・・・緩く着てるTシャツがまるで英徳の制服に見えるぐらい、あの時の顔をしてやがった。
「どうなんだ?牧野」
「・・・ホントに側に居てくれる?」
「あぁ、嫌がっても側に居てやる」
「私、なんにも知らないから凄い事件が起こると思うよ?それでもいいの?」
「今までだってすげぇ事件は起こってたし、それを俺が助けたじゃねぇか」
「今度の事件は西門の中で起こるんだよ?私、もしかしたらヒステリー起こして暴れるかもだよ?」
「西門が間違ってたら俺が諭してお前の味方になるし、お前が間違ってたらイチから教えてやる。それでも暴れたら俺が抱き締めてやる」
「自信ないって言ったら?」
「初めから自信持ってるヤツを俺は信用しない」
「どうしても覚えられなかったら?」
「何度でも稽古したらいずれは自分のものになる」
「・・・・・・浮気しない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その最後の質問はなんだ?って可笑しくなって、プッと吹き出したら「ここが1番の問題だよ!」って大声で怒鳴られた。
流石にそこは信用ねぇよなぁ~ってのも判るから、笑いながら手招きしたら、ブスくれた顔で俺の前にやって来た。そしてあと少しってところで俺の手を取り、俺は牧野を抱き抱えて膝の上に・・・そうしたら額がくっつくほどの距離だ。
真っ赤になって照れてるけど、少し怒ったような顔。
その頬に手を当てた後、耳の方にずらして髪を掻き上げると擽ったそうに肩を竦める仕草・・・そいつがすげぇ可愛かった。
「急に全部出来なくていい・・・まずは気持ちを強く持て。
頭の固い親父と気位の高いお袋って言ったけど、案外そうでもねぇと思う。世間的にはそう見せてるけど母屋じゃ普通の人達だ。五月蠅い弟も居るからいい喧嘩相手になると思うぞ?」
「そお?あ、あの・・・光流さんはよく来る?」
「ははっ!今からの方がよく来るかもな。それに牧野とよく似た性格だから2人が話したら五月蠅くなりそうだ」
「ほんと?友達になれる?」
「秒でなれるんじゃね?もしかしたら俺を放ったらかしにして遊んでたりしてな!」
「そうだといいな♪・・・・・・っ!」
髪を梳いていた指を顎に戻して持ち上げたら、そのままそっと唇を塞いだ。
いつ頃からこんな場面を夢見てただろうって自分でも不思議に思いながら・・・でも、もうNYで出会った時に俺の恋は始まってたのかもしれない。
どうしても放っておけなくて
どうしても助けてやりたくて
どうしても司に会わせたくなくて・・・それは全部自分の為だったのかも、なんて思ったりもする。
重ねた唇はどんどん深くなり、僅か数㎝離れた身体がもどかしいぐらい。
そいつも重ねたくて牧野の背中を支えてその場に倒したら、ゴン!とすげぇ音がしてビビった!
「・・・ったぁ!!」
「なんでそんな所にカラーボックスがあるんだよ!狭すぎじゃねぇか?!」
「その前に何やってんのよ!馬鹿っ///!!」
「何処が馬鹿だ?色々確かめ合うのは大事じゃね?」
「声がおっきい!!」
「大きいのは声だけじゃねぇけど?だから確かめようって・・・」
「ばばば、馬鹿っ///!!それに帰らなきゃ・・・」
「さっきメールで外泊するって連絡しといた」
「そんな事だけ早いんだから!こ、珈琲飲むだけじゃなかったの?!」
「泣きそうだったのはお前じゃね?」
「泣いてない!!」
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