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西門さんのところで働き出してからもうすぐ2ヶ月が経とうとしていた。
仕事にも慣れてきて意外と楽しい・・・事務しかしてこなかった私にはお客様に接したりお茶会の準備をしたり
西門さんの仕事に関してだけど身体を動かすことも多くて嬉しかった。
元々はそんな働き方が好きだったから。

それに・・・西門さんを毎日見ることが出来たから。


なんだろう・・・この気持ちは。

この人って学生の時は遊び人でおちゃらけてて、人をバカにして喧嘩ばっかりしてたような記憶があるんだけど。
今の彼は全然違うんだもの・・・。確かに調子のいいところは変わっていないんだけど、
お茶をするときのあの真面目な態度といい、その立ち居振る舞いの美しさといいその全部に見とれてしまう。

その指先が動く度に眼で追う自分がいるもの。

いつもはぐらかしてしまうけど本当は毎日ドキドキしていた。
この心臓の音がどうか彼に聞こえませんように・・・毎日そう思っていた。


ある日の休憩中・・・西門さんと母屋の廊下に座って、家元夫人がくれたアイスクリームを食べていた。
当然だけど私だけ・・・西門さんにもすすめたけど思いっきり拒否られた。

「西門さんって詐欺師だよね?普段と仕事がそんなに違うなんて!」

「当たり前だろう!どっかの誰かとは違って仕事とプライベートの切り替えがバッチリなんだよ!
遊びの顔で茶会に出てみろ。招待された爺さん婆さんがびっくりして腰抜かすぞ?」

「でも・・・綺麗なお姉さんが来たときにはまた違う目付きになってるわよ?」

「・・・妬いてんの?意外と可愛いとこあるじゃん!牧野・・・そんなに心配そうな顔しなくてもいいぞ?
あの姉ちゃん達には本気の笑顔はまだ見せてないからな!」

「見せてやりゃいいじゃないの・・・出し惜しみなんてしないで!」

アイスクリームをスプーンですくって口に入れた。すぐにもう一回すくって食べようとしたら・・・
西門さんが手首を捕まえてそのスプーンのアイスをパクンと食べてしまったっ!なんて事すんのよっ!
急にそんなことをするからびっくりして声が出なかった・・・けど何か言わなきゃと思って咄嗟に叫んだ!

「何すんのよ!私の分が減ったじゃないのっ!」
「そこか、お前の心配はっ!もうちょっと違うところで反応しろよ!」


いつもそう・・・からかっているのか本気なのかがさっぱりわからない。
だから、私も本気で返していいのか冗談で返していいのかわかんなくなるのよ。

この頃からずっとこの人の言葉と行動が気になっていた。あれからはキスだってしてないし・・・。
それに西門さんには言わなかったけど、少しずつお嬢様達に嫌味を言われることが増えてきた。
それが始まってから余計に彼を意識しているのかもしれない。


少し前・・・廊下を西門さんのお道具を持ってお茶室に向かっていた時だった。
急に目の前に現われた女の人にぶつかられてその持っていたお茶碗を落としたことがあった。
もちろんそれは割れてしまって・・・でもその女の人は謝りもせずにお茶碗のかけらを踏みつけて消えていった。

「いい気味だわ。総二郎様に怒られてしまえばいいのよ」

随分向こう側で言われた一言・・・これが西門さんを狙ってるお嬢様?
一部始終を見ていたのは小池さんだったから、彼女は一緒にその割れたお茶碗を片付けてくれた。

「大丈夫?これからは少しこんな事が増えるかもね・・・気をつけましょう?」
「はい・・・ありがとうございます。でも・・・これ、怒られないかしら・・・」

「これは多分総二郎様のお気に入りではなくてお弟子さんに稽古をつける時に使うものじゃないかしら・・・。
黙って処分してもわからないわよ。総二郎様はご自分の大切なものはご自分で手入れされるから。
牧野さんに頼んだものはそうじゃないものだと思う・・・そう思ったほうが気が楽でしょ?」

「ふふっ・・・確かにそうですね。今度から気をつけます。ありがとう・・・」

小池さんは家元夫人の事務処理担当だから、多分これを報告したんだろう。
この後から西門さんがいない時で、女性のお稽古があるときには必ず家元夫人が私を側に置いていた。


それでも何度かそんな嫌がらせは続いていた。ほとんどが言葉による暴力だったけど。
でも残念ながらそういうのには慣れていたのよ・・・だからあまり気にはしなかった。

ただ、別に私は彼女なんかじゃないって・・・そう言えばいいのに言えなかった。


*******


ある日、西門が贔屓にしている呉服屋の東屋さん・・・そこの息子さんの東正幸さんという人が事務所を
訪ねてきた。そして私の顔を見てびっくりしていた。

「あの・・・あなたは先日着物を作りに来られたときに総二郎様と一緒に来た人ですよね?西門でお勤め
だったのですか?あの時はそんなふうには見えませんでしたけど・・・」

「あぁ!あの時の・・・お世話になりました。そうですね、あの時はまだこちらでは働いていませんでした。
あのあと色々ありまして、こちらに就職したんですよ」

凄く品のいい人・・・西門さんとまではいかないけどなかなかのイケメンだった!
優しそうで、穏やかな感じ・・・年は西門さんよりも5歳も上だって!すごく落ち着いてるものね・・・。
彼も呉服屋さんだからかしら、とても着物が似合っていて・・・私はちょっと赤い顔になったかも。


「お名前はなんというのですか?」

「牧野つくしと申します。珍しい名前でしょ?」

「つくしさん・・・可愛らしい名前ですね。先日総二郎様からご依頼いただいた着物が出来上がりましたので
お持ちしたんですよ。確か・・・あなたのもありましたよね?よかったら合わせてみますか?」

「でも、勤務中ですから。私はまた後日家元夫人にでもお願いして着てみますから大丈夫ですよ」

そう言うと少し驚いた顔をした東さん。
あれ?私また何かおかしな事を言ったのかしら?


「牧野さんは家元夫人ともお話しが出来るのですか?私などとは滅多に口をきかれる方ではないので・・・」

「はい!良く一緒にご飯も食べてます。明るくて面白い方ですよ?冗談もポンポンと・・・」

と、言った瞬間に慌てた西村さんが私の手を引っ張って隅っこに連れて行った!
今までにない西村さんの動きのほうが怖いんだけど・・・?

「牧野さんっ!家元夫人は対外的には気安く声をかけにくい方で通してありますからっ!
真実を伝えなくてもいいんですよ?家元にしてもそうです。絶対に面白い人だなんて言ってはいけませんよ?」

「そ・・・そうなんですね?すみません・・・バラしちゃった」

「・・・いや、大丈夫です。家元夫人はキチンと演技なさいますから・・・。今から気をつけて下さいね。
それでは牧野さん、着物のことについても勉強は必要ですから東さんと一緒にこの着物をしまいに行って下さい。
事務処理は急ぎのものがなければいいですからね」


あの家元夫人が対外的には演技してたの?
そう言えば見たことないかも・・・大はしゃぎする家元夫人を母屋以外では・・・。


ふーん・・・親子揃って詐欺師なわけね?


KOI.jpg
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Comments 6

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2017/07/31 (Mon) 13:53 | EDIT | REPLY |   
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2017/07/31 (Mon) 14:07 | EDIT | REPLY |   
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2017/07/31 (Mon) 16:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花様、今晩は!(何故か笑ってしまう!)

こんな時なのに来ていただいてありがとうございます!
頑張ってるかな?(何を?って聞かないでね)

東さん・・・この男は当初イケメンで総二郎と戦わせたかったけど
やっぱりいい男は1人でいいかと思って止めちゃった!
着物の男って色っぽくて好き!
表現が難しいんだけど1回和風なの書いてみたいなぁ!

・・・って思ってるけど、多分挫折するな・・・。


2017/07/31 (Mon) 21:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様!今晩は♥

綺麗な指の男性っていいですよね~!
骨張ってるくせに綺麗なの・・・総二郎君は私の中ではそんな感じかな。
司君は男らしいでかい手!類は柔らかい感じ・・・あきらはビニール手袋はめてる感じ。
何でだろう・・・あの、機械作業の時の薄い手袋ですよ?わかるかな・・・。
いや、自分でもわからなくなってきた。瞬間思ってしまったので。

スパイス・・・なってくれるはず!誰かが来ないとこの調子でくっつかないかもしれませんね!
それはそれで楽しそうだけど・・・。

今日も昨日もありがとうございました!

2017/07/31 (Mon) 21:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

アイスクリーム・・・実はおわかりでしょうか。
「天邪鬼な乙女の恋心」のつくしちゃんの総二郎バージョンなんです!
類君のケーキのフォークをパクッとするんですけど、これをここで総二郎に変えてみました!
でも、なんかわかんないけどギャグにしてしまった!

もちろん私も永久保存にしますよ!その前にそのスプーンを堪能する・・・同じです!

アイスを食べたままキスしてもいいなぁ・・・。いやん、想像してしまった!(バカ)
いや・・・いつか使ってみようかな。このシーン・・・。

呉服屋の若旦那・・・いい仕事してくれたらいいんだけど。
そろそろ関係も進まないと・・・それこそタイトル詐欺になっちゃう!ってことですかね。

今しばらくこのままお楽しみ下さいませ。

2017/07/31 (Mon) 21:36 | EDIT | REPLY |   

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