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仕事中だったけど西村さんが着物のことを知るのも勉強だといって東さんと一緒に奥にある着物専用のお部屋に向かった。
そこは家元、家元夫人の着物を管理してある部屋で当然西門さんのものもあった。
そして隅にはまだ使われていない桐箪笥がある・・・まだ綺麗な状態の可愛らしい仕様の桐箪笥だった。

「ここって・・・まだ使われてないんだ」

私がそこを見ていたら着物を並べていた東さんが教えてくれた。

「そこは将来の家元夫人、総二郎様の奥様になられる方がご使用になる桐箪笥と伺っておりますよ。
いつかそこにもうちの着物を収めさせていただけると嬉しいですね」

そうなんだ・・・さすがこんな家になると家元も次期家元も違うわね。お相手の方の場所が今から準備されているなんて。
なんだかその桐箪笥を見るのが嫌になった。・・・・・・どうしてかな。

東さんは持ってきてくれた着物をこの部屋で広げて見せてくれた。
西門さんのは紺色を中心に柄の違うものをいくつか作ったみたい。これは彼が好きな色だった。
中にはおそらく秋物なのか暖かみのある色合いのものあって見慣れない私は珍しくて仕方なかった。
これを着た西門さんを想像してしまう・・・なんだか顔が赤くなってないかしら。
そう思ってたら東さんとすごい至近距離で眼が合ってしまった!

「あ!ごめんなさい・・・つい、覗き込んでしまって・・・」
「い・・・いえ、こちらこそ!申し訳ありません。気がつかなくて・・・」

東さんまで赤くなってない?・・・っていうか、なんでこの人が赤くなるんだろう。
そしてその後に西門さんが選んでくれた私の着物を出してくれた。

「わあっ!凄く綺麗・・・こんな風になるんですね?反物しか見なかったから想像できなかったんですけど。
こんなの私に似合うのかしら・・・新鮮ですね!着物って・・・」

「牧野さんのお顔立ちには合いそうですよ?・・・合わせてみますか?」

そう言って東さんはその着物をふわっと私の服の上から掛けてくれた。
薄いブルーで涼華刺繍の施されたもの・・・もう一枚はクリーム色に唐花霞模様の着物・・・
私は知らなかったんだけどあの時に夏物と秋物を両方頼んでいたらしく、秋物はまだ早いからって広げなかった。
これだけ選んでもらって浴衣だけしか記憶になかったなんて言ったら怒られそうだわ!

あんまりにも綺麗だったからつい鏡に映る自分に・・・というか着物に見とれていた。

「凄く綺麗ですよ。さすが総二郎様ですね、あなたによく似合うものを選んでいらっしゃる。それに結構良いお品
ですからあなたは特別な方なんでしょうね。・・・私としては残念ですが」

「は?・・・特別ですか?」

そうね・・・特別と言うよりは特殊といった方が正解かもしれないわ・・・1年契約中だから。
東さんの残念の意味は・・・あまり深く考えないようにした。

いくつかの着物を合わせてもらって浮かれていたけど、その最後に出されたものは薄紫の浴衣。


「うわぁっ!これ凄く好きだったんですよ?可愛いですよね!そういえば西門さんがこれと同じ色の髪飾りを
買ってくれたんです!あの日のお土産にって・・・」

「そうですか・・・それではご一緒にお祭りでも行かれたらよろしいんじゃないですか?」


その時、後ろのほうからカタンと小さな音がした。
振り向いてみたら西門さんが廊下で腕組みをしたまま私たちを睨んでいる。
どうしたのかしら・・・今までになく凄く怖い顔してるんだけど。それに声もかけてこないなんて。

西門さんはちょうど逆光になる感じで立ってるから余計にその顔が怒って見えた。
私もあまりの西門さんの怖い表情に何も言えずに浴衣を手に持ったまま立ち竦んでいた。


「牧野・・・お前何やってんだよ!事務所のほうはどうしたんだ?俺の明日の訪問先への連絡終わってんだろうな!」

「え?あぁ・・・終わってるわよ。それにこれは西村さんが行ってこいって・・・」

「お前のすることじゃねぇだろう!すぐに事務所に戻れ!」

「はい・・・ごめんなさい。すぐに戻ります」


滅多にそんな声で怒鳴ったりしないから少し慌ててしまった。
急いで浴衣を下に置いて畳んでしまおうとしたんだけど・・・よく見たら西門さんは東さんを睨んでいた。


「東さん・・・今日はまた随分とうちの個人エリアにお入りですね。この部屋に入るのはいいが着物を置いたら
いつもはすぐに帰るんじゃなかったんですか?それに着物をこいつに合わせるなんてのはこっちでも出来る事だ。
そこまでしていただかなくても大丈夫なんだが?」

「・・・それは出しゃばったことをしましたね。申し訳ありません。牧野さんのお着物はどこに置きますか?」

「そこに置いたままでいいですよ。・・・後は私がやりますから」

東さんは無言でその場に着物を置いて、西門さんに頭を下げて部屋を出て行った。
西門さんの真横を通り過ぎるときにジロッと東さんを睨み付けて・・・組んだ腕を一度も外すことはなかった。
なんでかしら・・・私まで気まずくなって下を向いたまま顔が見れないんだけど・・・。

でも、浴衣を畳み終えてから西門さんの顔を見ないまま聞いてみた。


「どうしたの?そんなに怖い声出して。東さんは何もしてないよ?」

「お前に浴衣を着せてたじゃねぇか!あれはあいつの仕事じゃねぇよ。ここに来たら着物だけ置いて帰りゃいいんだ。
今日届けられるって聞いて帰ってみたらお前が・・・」

その後の言葉を飲み込んだ西門さんがは怒ったまま自分の着物をしまい始めた。
私はこの自分に作ってもらった着物をどこにしまおうかと悩んでいたらさっきの使われていない桐箪笥を
西門さんが開けた。

「ここにお前のものはしまっておけ。その浴衣も・・・帯はここだ。自分で管理しろよ」

「え?あの・・・ここに入れてもいいの?だってここって・・・」

「いいんだよ!ここで・・・いいからしまっとけ!どうせ今からまた秋物も追加するし、季節ごとに増えてくんだから
お前自分のアパートじゃ管理できないんだろうが!文句あるのか?」


「ないです・・・」

文句なんかないわよ!文句じゃなくて・・・ここは特別な場所なんでしょ?
なんだか入れるのに戸惑ってたら西門さんが私から奪い取って着物をそこに放り投げた!

「きゃあっ!なんてことすんのよっ!大事な着物なのにっ!」


あれ?私の言葉に今度は西門さんのほうが少し赤くなってない?
なんだかよくわかんないうちに2人で赤くなってしまった。

でも・・・あと一枚、私の手の中には浴衣が残っていたんだけど。


「合わせててみるか?やっぱりなかなかいいよな・・・この浴衣」

急にさっきと違って優しい顔になった西門さんが私の手から浴衣をとってふわっとかけてくれた。
薄紫でナデシコの模様が入っている・・・ちょっと大人可愛い感じの一目惚れの浴衣。

「凄いね・・・この私でもお嬢様みたいじゃない?この夏にこれを着る機会ってあると思う?」

「・・・花火大会、あるじゃん。・・・行こうか?」

「2人で?」

「誰と行くんだよっ!この状態で話してるのに!」

凄く真面目な顔で誘われたからちょっと恥ずかしくて、反対方向を見ながら頷いた。
・・・でもよく考えたら目立つんじゃないの?この人と行ったらどっちかって言うと私は引立役なんじゃないかしら・・・。


この後、笑いながら2人で着物をしまうところを家元と家元夫人が見てたなんて知らなかった。


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Comments 4

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2017/08/01 (Tue) 12:52 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/01 (Tue) 14:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは~!

ヤキモチ焼いたり、何でもないフリしたり・・・何かと忙しい総ちゃんですよ。
花火大会!実はあんまり経験がないです。
何故かうちの子供は花火が苦手なんですよ。小さい頃に見に行ったら大泣きで!
どうしてかなぁ・・・私は好きなので近所で上がる花火を1人で毎年見ます。
都会の大きな花火大会ってすごいんだろうなぁ。

でも、何故か花火見てると泣けてくるんですよね。
アレはどういう心境なんだろう・・・自分の事だけどよくわかんないです。

この2人にはそのうち・・・ふふふっ!何かが起きる予感!

2017/08/01 (Tue) 19:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は♥

桐箪笥は家元達が用意した・・・と思われます。(ホントは考えてなかったけど)
総二郎は今までそれすら鬱陶しかったけど、どうせ入れるならつくしちゃんのを
いれようとしたものと思われます。(これはホントに考えた)

ここがお前の嫁の箪笥だ・・・何て言われたら本来ドン引きですよね!

しかも新しい箪笥って書いたけど、こんな家は伝統の箪笥があるはず・・・。
でもそこはつくしちゃんのために新しくて可愛い桐箪笥(どんなの?)にしました!
こういう変な場面を書けるのも、この世界のいい所。

仲良く着物片付けてたり広げたり脱がしたりして・・・ふふふ。
着物を脱がす・・・なんだかエロい感じ!あ、ごめんなさいっ!

では、また~!!

2017/08/01 (Tue) 20:00 | EDIT | REPLY |   

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