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plumeria

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次の日の朝、目が覚めたら私のベッドで彼はまだ寝ていた。
昨日とは違って穏やかな顔になってる・・・寝息も静かで顔色も悪くはない。

花沢・・・るいって言ったっけ?
おでこに手をあててみた・・・どうやら熱は下がったみたい。でもまだ目を開けそうにはなかった。

「あら?どうしよう・・・このままだと会社に行けないんじゃない?・・・この人を1人でここに置いていくわけにもいかないし、
連れてもいけないし!大体この人がどこの花沢さんかも知らないし~!」

こうなったら仕方がない・・・学生の時ですら一度もしたことのない仮病を使うしかないわね・・・。
何回か気怠そうな声の練習をしてから、勇気を出して会社に電話をかけた。

「昨日の夜から高熱で下がらないんです・・・申し訳ありません」・・・ある意味正解よね?

会社への届け出は終わった・・・今度は朝ご飯の心配だわ。
とりあえず2人分の朝ご飯を作っておいて、彼を起こすのも気になるから1人で先に食べた。
その後は彼の服の洗濯をしないと・・・急いで洗えばここを出て行くときに着替えられるかもしれないから。



何回か彼の様子を見に行って、やっと9時を過ぎた頃に彼は目を開けた。
でも起き上がれないのかベッドに寝たまま部屋中を見回していた。
キッチンにいた私は彼が起きたのを確認して、すぐにベッドの側に行ってみると驚いたように見上げてきた。


「おはようございます!目が覚めた?具合はどうかしら・・・えっと、花沢さん?」

「え?どうして・・・名前なんで知ってるの?・・・俺、何か話した?」

「話したって言うか・・・。公園であなたを見つけて声をかけたのよ?すごい雨なのにずぶ濡れでベンチに座ってたから。
そしたらすごい熱でしょう?もう必死で抱えてここに連れてきたの。何も話してくれなかったけど、名前だけはここで寝る
直前に教えてくれたわ。その時だけ意識があったみたい」

おでこに手を当てて考え込んでるみたいだけど何も覚えてないらしい。
歳はいくつくらいかしら・・・私とあんまり変わらないように見えるんだけど。

「ねぇ・・・公園で何をしてたの?昨日は急に雨が降り出したでしょう?だから傘を持ってなかったの?
あっ!それと今着てるものは私が用意したの。あなたの趣味じゃないかもしれないけど許してよね。
私には男物の服なんて必要ないから置いてなかったの・・・あなたの服は今干してるから乾いたら着替えてね!」

「ごめんね・・・何だかすごく迷惑かけたんだね・・・」

「迷惑とは思わないけど・・・もうちょっと自分の身体は大事にしなさいよ!下手したら死んでたかもよ?
今日はそれを着ておいてね・・・すぐに家に帰るの?」


家に帰るの?・・・そう聞いたら彼は何も言わずに黙ってしまった。
何か帰れない事情があるのかしら・・・まぁ、今日一日ぐらいならいいかともうそれ上は聞かなかった。

「名前・・・るいって言ったよね?どう書くの?それとも花沢さんがいい?」

「種類の類・・・それで呼んでいいよ。で・・・君は何て言うの?」

「あっ!そうか・・・ごめんね。私は牧野つくし!牧野でいいわ!えっと・・・類、ね?」


*******


類は歩けそうだったからベッドから降りてもらってキッチンに連れて行った。
そして出した朝食はご飯と味噌汁、卵焼きとウインナーそれとサラダ。いたって普通の内容だった。
でも、類はそれを見ても手を出そうとはしなかった。

「あら?類はもしかしてトースト派?ごめんね?私はご飯派なのよ。食べにくい?」

「いや・・・朝食なんて食べたことがないから・・・びっくりしただけ」

「えっ?食べたことがないの?ダメよっ!朝ご飯は一番大事なのよ?一日の始まりのエネルギーでしょ?
しっかり食べてね!あ・・・でも昨日熱が高かったから・・・お粥にしたら良かったかな?」

「ううん。いただきます」


類はすごく綺麗な食べ方をする・・・。
もしかたら、いい家の人なのかしら。いわゆる・・・お坊ちゃま?
でも、食べているときに質問なんてしない方がいいと思うから黙って彼が食べるのをお茶を飲みながらみていた。

「これ・・・美味しいね。何て言うんだっけ?」

「どれ?・・・あ!卵焼き?ちょっと焦げちゃったんだけどね!でも美味しいでしょう?自信あるの!」

「味噌汁なんて初めてかも。こういう味なんだね・・・」

味噌汁を飲んだことがないだなんてどういう暮らしをしていたんだろう。
それでも類はゆっくりながら美味しそうに食べてくれた。熱のあとで食欲なんてないだろうに残さずに食べた。

類が最後にお茶を飲んでたとき、私は残りの洗濯物をするためにバスルームへ行った。
ふと窓の外を見ると・・・朝一番に洗った類の服が干してある。
なんだか変な感じ・・・男の人の服なんて干したことないし・・・大家さんが見たら驚くかしら。


朝食をすませた類はアパートの窓から外を眺めていた。その瞳はとても悲しそうに見えるのは気のせいかな。
何となく声をかけにくかったけどこのまま変な空気でいるのも嫌だったからわざと明るく言ってみた。

「類・・・コーヒー入れようか?コーヒーメーカーでいれたものじゃないけど飲める?」

「うん・・・ありがとう。牧野さん」

「なんだか嫌だな・・・牧野って呼び捨ててよ!牧野さんって言われたら会社みたい!」


今度、類はコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。
でも多分眺めているだけね・・・内容は何にも聞いていないみたい。
コマーシャルになってもニュースになっても、ドラマになっても表情は何も変わらなかった。

「類・・・家はどこなの?帰れない事情があるのかな・・・?いや、言いたくないらいいのよ!
でもさ・・・私、あなたのこと知らないでしょ?」

「・・・ごめん。まだ上手く話せなくて・・・心配しなくても後でここを出て行くよ。1日だけでも迷惑かけてごめんね」

「出て行く?帰るんじゃなくて出て行くんならここにいてもいいわよ!・・・ううん、いなさいよ!」

いてもいいって言ったら類はその目を大きくして驚いていた。


「なんでそんなに親切にしてくれるの?俺の事何にも知らないのに・・・ご飯作ってくれてコーヒー入れてくれて
洗濯までしてくれて・・・一番はじめは雨の中から助けてくれたんだよ?・・・なんで?」

「質問の多い人ね!理由なんてわからないわよ・・・でもあえて言うなら拾ってしまったから責任を感じてるのよ!
ほら!捨て猫拾ったらまた捨てにくいでしょ?・・・・・・そういう事よ!」

「・・・猫?」


そんな例えを出したらプッと吹き出した。そしてクスクス笑い出したんだけど・・・笑うとすごく素敵な人だった。
もしかしたらそこら辺のモデルよりも格好いいかもしれない。
類の横顔に見とれていたら、それに気がついた彼も私の方を見てきた。

正面からジッと見ると男の人とは思えない整った顔立ちに溜息が出そう。
なんて綺麗な瞳・・・色素が薄いのね・・・まるで吸い込まれそう。


「牧野・・・仕事は?もしかして俺のせいで休ませたの?」

「いいのよ!今日はなんの締め日でもないし急ぐ仕事もなかったし。・・・私もゆっくりしたかったのよ」

「ごめんね・・・何もかも」

「いいんだって!たまには有給休暇もとらないといけないからね。それよりもお昼は何が食べたい?そうね、パスタにしようか?
朝食が遅かったけどそれなら食べられる?」


ニコって笑った類に私の心臓はドキンと音を立てた。

今になって怖くなった・・・よく考えたらこの狭いアパートに誰かわかんない・・・いや、素性のわからない天使のような
花沢類って人と二人きりなんだって・・・。間違いがなければこの人は男だと思うし・・・。


類を拾ってから18時間が経ってから私は事の重大さに気がついた。


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Comments 2

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2017/08/15 (Tue) 16:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

類がしょぼくれたわけ?ここはありきたりですよ~!いつもの良くある理由です。
類に庶民生活をさせたかっただけですから。(*^▽^*)
バリ島から一気に東京の狭いアパートに落としてしまった!
でも、今になって考えたんだけどワンルームはいかん。これはヤバい!
書いてても暑苦しかった。それに絶対にこんな類でも油断できない・・・お風呂が近すぎる!
ワンルームってそうですよね?脱衣場なんてないですよね?部屋で脱いでスタスタ行く感じですよね?

危険すぎる設定にしてしまった・・・。でも、いいか!

今日もありがとうございました!

2017/08/15 (Tue) 20:20 | EDIT | REPLY |   

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