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花火が終わってしばらくしたら牧野も少し落ち着いて、それが終わってしまった夜空を見上げていた。
この辺りに沢山いた恋人達もどこかに行ったのか随分と数が減ってきた。

「凄かったね!綺麗だったーっ!・・・ねぇ、来年もまた来ようよ!」

「来年?別にいいけどそれって契約更新だけどそれでいいのか?」

「えっ?・・・あぁ、そっか・・・じゃあダメか!」

なんで速攻でダメ出しすんだよ!まだ1年も先の事なんて誰にもわかんねぇのに。俺がここにいるのかもだけど。
黙り込んだ牧野にそっと手を出すとまたチョコンと指を乗せてくる。
今度はすぐにその手を掴んでここから出ようとした、その時に後ろから声をかけられた。


「あれ?・・・つくし?・・・つくしじゃない?」

牧野が名前を呼ばれて振り向いたらそこには厚化粧の姉ちゃんがド派手な浴衣でこっちを見ていた。
今繋いだばかりの手はあっさりと振りほどかれて牧野はその女の方に向かって返事をしている。

「香織?・・・久しぶりだね!香織もこの辺りにいたんだ・・・元気だった?」

「うん、元気だよ!なーんだ!やっぱり彼になってんじゃん、西門さん・・・格好いいね!」

「う・・・うん!まあねっ!あはははっ・・・」

何を嘘っぽい笑い声あげてんだか・・・。
会話の流れからこの姉ちゃんは牧野の元同僚ってヤツか?・・・山川がいたあの会社だな。
飲み会の時、牧野の側にいたのはこんな女だったっけ?全然記憶に残ってないんだけど。
俺は振りほどかれた手をまた掴んで、今度は指を絡めてやった!
俺を睨むように見上げているけどそんなの無視!向こうだって男連れだ・・・しかもどう見てもチャラ男じゃねぇか!

ここは本物の男の色気でも見せてやるよ・・・って気分でその香織って女の側に行った。
得意技っていうわけじゃないが少し眼を細めて角度を付ける・・・ほら!この女はもうその顔を赤くしてる。
隣の牧野は「またか」って顔して呆れてるけど、自分の連れがこれだけいい男だと見せつけたいだろ?


「牧野が勤めていたときの同僚の方ですか?牧野がお世話になりましたね・・・急に辞めさせたのでお困りでは
ありませんでしたか?今ではうちの事務所で私の仕事の管理をしてもらってるんですよ。
そちらも彼氏とご一緒ですか?・・・お似合いですね」

わざわざつけた「そちらも」の一言・・・牧野はもう真っ赤になって驚いている。

「えぇ!そうですかぁ?・・・西門さんほど格好良くもないですけどね!・・・でも、つくしよかったね!
あんた昔付き合ってた男が忘れられないって言ってたことあったじゃん!これで忘れられるねっ!じゃあね~!」

「ちょっとっ!香織・・・なんて事言うのよっ!!」


俺は一瞬その女の言葉に固まってしまった・・・昔の牧野の男って司の事か?
忘れられないほどの男・・・そんな男は他には浮かばない。類とはそんな関係にはならなかったしな・・・。
気まずくなったのか牧野は下を向いたまま何も話さなくなった。
それの方が肯定されてるようで気に入らないんだけど・・・急に俺たちの間に隙間が出来たみたいだ。

「なんだよ・・・どうした?俺がそんなことを気にしたとでも思ってんのか?」

「・・・いや、そうじゃないけど。香織が言うみたいに忘れられなかったなんて大袈裟なもんじゃないのよ。
ただどうしてもあいつが強烈なキャラだったから誰とつきあっても比べてしまうっていうか・・・」


「じゃあ、俺は?・・・俺は司と比べられたのか?」

そう言うと牧野は足を止めた。
急に止まったせいで緩んでいた俺たちの指は簡単に外れてしまったけど・・・。

俺の言い方が悪かったのかもしれない。牧野は眉間に皺を寄せて悲しそうな顔を見せた。


「悪かった・・・別に深い意味なんてねぇよ。あの司と僅かな期間でも付き合ったんだ・・・
そりゃ、しばらくは強烈過ぎて他の男と比べても無理ないよな!そんぐらいわかってるって・・・」

「そんなんじゃないよっ!西門さんと誰かを比べた事なんてないもん!今はあいつのことだって思い出したりしてない・・・
全然わかってないじゃない!・・・西門さんなんて大っ嫌いっ!」

そう言うと牧野はいきなり反対方向へ走り出した!

「おいっ!牧野・・・何処に行く気だよっ!・・・待てって!」


牧野は慣れない下駄で小走りに人混みの中に逃げていく。
花火が終わったばかりで人の動きが速い・・・おまけに小さな子供も大勢いて邪魔くさい!
誰もが気の向くままに動いている通路を小さな牧野は縫うように入り込んでいった。
俺もすぐにその人混みに入って行ったけど色んなヤツにぶつかってしまって牧野を見失った。

派手な浴衣が多すぎて牧野の薄紫色の浴衣なんて全然目立たない・・・焦って周りを探したけど見つけられなかった。

「くそっ・・・なんなんだ!あいつは・・・何が大っ嫌いだ!」

とにかく牧野が走って行った方向に行くしかない・・・声を出せば逃げるかもしれないから黙ったまま探した。
人混みの中からは俺に声をかけるヤツもいた。

「あれ?西門くんじゃない?どうしたの?今日は浴衣なんだねっ!」
「総二郎じゃん!・・・今から飲みに行かない?」

「悪い!誰かしらねぇけどまた今度な!」

言葉だけは口から出るけどそんな女にかまっていられねぇ!ただ牧野の姿を探していた。


********


西門さんの前で香織があんな事を言うから、せっかく良い気分で帰れそうだったのに喧嘩になった。
いいわけみたいに言葉を出したら、その後の彼の言葉が許せなくて大っ嫌いだなんて叫んでしまった。

西門さんに会うまでの人は確かに比べたかもしれないけど、それも無意識だった。
道明寺の印象が強すぎて・・・他の人ではあそこまで熱い気持ちにはなれなかったもの。

でも本当に西門さんは違うのに・・・信じてもらえてないみたいでイヤだった。
あんな風に、俺は比べられたのか・・・何て言われたら急に西門さんが憎らしくなってしまった・・・。


「痛い・・・もう!下駄なんて慣れないから・・・せっかく合わせて作ってもらったのに・・・」

もうあんまり人がいなくなった海沿いの道で空いているベンチを見つけた。
後ろを見たら会場とは結構離れている・・・こんなところまで走ったんだ・・・そりゃあ足も痛いはず・・・。
私はそのベンチに座って下駄を脱いで足を休めていた。

もうすっかり元に戻った暗い空を見上げた・・・さっきまではこの空も花火で綺麗だったのに・・・って思いながら。


「お姉さん・・・一人なの?」

私の後ろから男の人の声がした。もちろんそれは知らない人・・・またナンパするために声を掛けられたのかな。
返事をするのも面倒だから無視して知らん顔したけど、急にその男は私の前に来てそこに座り込んだ。

「ちょっと・・・なんなの?」
「いいじゃん!一人なんだろ?この俺と遊ぼうぜ?楽しませてやるよ!」

下駄を脱いでいた私は慌てて履こうとしたけど、その下駄を私の手から奪い取って遠くに投げ飛ばした!
うそっ・・・あれは西門さんが作ってくれたのに・・・そう思って急いで裸足で飛び出したけどその手を男に掴まれた!
そしてその男が私の浴衣にも手を掛けたから慌ててその顔を引っぱたいた!

「いってぇ・・・何しやがんだ!この女っ!」
「だって・・・そっちが先に手を出したんでしょう!その手を離しなさいよ!」

思いっきりその男を突き飛ばして急いで下駄を取りに行くと、男が後ろから襲いかかってきてその場に倒された!
イヤだ!この浴衣には触らないでっ!・・・言葉には出なかったけど私は両手でこの男の身体を押し戻そうとした!
でも所詮は男女の体格差・・・芝生の上に倒されて両手を塞がれた!

「きゃあぁぁっ・・・!何すんのよっ!」
「黙れ!おとなしくしろって言ってんだよっ!・・・女のくせに力が強ぇなっ!」

私の上に覆い被さってきたから必死で振りほどいて身体を丸めて頭を抱え込んだ!
次の瞬間・・・もの凄い音がしてその男が誰かに蹴り飛ばされて吹っ飛んでいった・・・!
何が起こったのかわかんなかったけど・・・ゆっくり顔を上げたらそこにいたのは怒った顔をした西門さん?!

横を見たら脇腹を押さえてうめき声を上げている男・・・西門さんはその男のところに行って胸ぐらを持ち上げた。
その男に何か怒鳴りつけていたけど怖さのあまり耳を塞いで眼を閉じてしまった!
何度か殴り合うような音がした後で・・・少しだけ眼を開けるとあの冷静な西門さんが本気で怒る顔が見えた。
そして浴衣なのに思いっきりその男のみぞおち当たりに膝蹴りをして・・・男は完全にその場に倒れた。


振り向いた西門さんは今度は冷たい眼に戻った・・・ゆっくり私の側まで来て倒れている私の前で座った。
もしかしたら叩かれるかもしれない!・・・肩を竦めて身構えたら、ふわっ・・・とその手が私を包んでくれた。


「間に合って良かった・・・」

震えるような声で西門さんがそう呟いた・・・。

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Comments 8

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2017/08/10 (Thu) 13:13 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/10 (Thu) 13:20 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/10 (Thu) 14:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花さま、こんにちは🎵

見たことないけど、そうなんじゃないかしら。
無駄がない…とは思います。
程よく、厚みと、綺麗な、アレと(笑)、…

鍛え上げる時間は真夜中かと。
持ち上げればかなり力がいるし。
汗もかきますし。

何を言わせたいのかしら?花さま?

2017/08/10 (Thu) 16:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこさま、こんにちは🎵

あら、嬉しいです!
おふざけ総二郎しか書かないから、たまには戦っていただこうかと思いまして。実は喧嘩大好き❗

私は書くようになってからはあまり読みにはいけないのですが、なんとなくわかります。
類くんですよね~❗うん、まぁ、私は書けないなぁ…
って思います。
シリアスとも違いますものね。

私は自己満足ではありますが、イチャイチャと楽しくやりたいと思います。
あきらくん、特別ですか?(笑)

今日もありがとうございました❗

2017/08/10 (Thu) 16:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりんさま、こんにちは🎵

さて、どちらかな?
意外な展開かも!そろそろ近づくことは間違いない‼️
ある意味花火大会はターニングポイントですわ。

やっぱり無理ありました?真夏の夜…
おかしいなぁ…メルヘンにしたかったのに。
ファンタジーもだめ?ジブリっぽくないですか?
実はちゃんと意味?があるんですよぉ~。

明日で終わる予定です。あきら、死なないから❗
夏の心霊特番ですよ。うん…

2017/08/10 (Thu) 16:49 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/10 (Thu) 18:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は♥

この人良くナンパされますよね。
ちなみにナンパされたことありますか?(また聞くなって感じ?)
私は恐らくですが1回だけあるような気がします。
一緒にいたお友達がすごく可愛くて、それこそ夏祭り会場でしたけど。
でも、確かついていかなかったんですよ。

でもなぁ、もしもの時に助けてくれる人なんていないしなぁ!
その前に総二郎に何言われても走って逃げないけど。

えぇ、恋人繋ぎのまま家まで離れませんとも!

では、今日も本当にたくさんありがとうございました~!!

2017/08/10 (Thu) 21:10 | EDIT | REPLY |   

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