正しい恋の進め方 Lesson28

西門に着いたらすぐに牧野を抱えて正面玄関から入った。
連絡を受けた主治医がもう待機していたからすぐに牧野は応急処置された・・・診断はこの季節ならではの熱中症・・・
だけど熱痙攣が起きていたから重症だと医者に叱られた。そう言えば夕方もほとんど何も口にしていない。
それに浴衣を汚したくないからってこの蒸し暑いのに何も飲まなかったから・・・
おまけにあの事件・・・かきたくもない汗をかいただろうし精神的にもかなりダメージ受けただろうからな。

牧野は自分用の部屋に寝かされてすぐに点滴をされていた。
浴衣は家元夫人のお弟子さん達が脱がせてくれて着物部屋に干された。


「総二郎さん!何があったの?!こんなに浴衣を汚すようなこと・・・あなた、無茶したんじゃないでしょうね!」

「自分の息子が信じられないのかよ!・・・これは迷子になった牧野がちょっと男に襲われそうになって出来た汚れだよ。
あいつが気にするからその話はすんなよ・・・何もなかったんだから・・・!」

「・・・本当なの?あなたがついててどうしてそんな事になるの!・・・もう、ホントに役立たずなんだから!」

いきなりの役立たず呼ばわりだけどそれよりも牧野の様子が気になって何度も牧野の部屋を見ていた。
お袋がもう落ち着いているから行ってもいいというので、部屋に入ると牧野は青い顔で横になっていた。


「牧野・・・大丈夫か?」

「うん・・・本当にごめんなさい。全部私のせいだから・・・西門さんの言うことも聞かないで、おまけに水分補給もしなかったし。
おば様にはちゃんと話したからね・・・悪いのは私だから。今日の花火・・・綺麗だったね。楽しかった・・・」

「あぁ・・・来年も行くんだろ?・・・付き合ってやるよ。今度は逃げるなよ?」

牧野の少し冷たくなった額にキスをして、その髪を撫ででやると少しだけ顔を赤くして眼を細めた。
抵抗出来ない牧野は俺にされるがまま・・・俺はこの後も牧野の横で朝まで寝ていた。

朝、眼が覚めたらベッドに牧野の姿はなくて俺の背中にタオルケットが掛けられていた。


「牧野?・・・あれ、いつの間に・・・」

部屋を出て牧野を探したらあの着物を干してある部屋の中でお袋と話していた。
何故か俺はそこに入らず廊下で2人の話を聞いてしまった。


「つくしちゃん・・・総二郎さんから聞いたのよ?・・・あなた男の人に襲われかけたって・・・大丈夫だったの?
どうしてそんな事になったの?総二郎さんから離れたの?・・・もう私は心配で・・・話を聞いてはダメかしら?」

「いいえ・・・西門さんは悪くないんです。私がちょっとしたことで怒って西門さんから逃げたんです・・・。
西門さんが探してくれなかったらどうなってたかわかりません。倒された時、自分1人では逃げられなかったんです。
怖かった・・・本当にあと少し遅かったらって思うと今でも震えます」

「総二郎さんが怒らせたの?・・・あの子が女性にどんなことを言うのか・・・恥ずかしいけどわからないの。
噂ばかりで本当のあの子を見たことがないのよ・・・母親失格でしょ?でも、そんなに人をキズつけるような子じゃないと
思ってるの・・・。どうなのかしら・・・つくしちゃんをキズつけたりしてない?」

この後の牧野の返事を聞いてもいいのか?
確かに俺はキズつけるつもりなんてなかったけど・・・結果的には牧野を追い詰めるような言葉を出したんだ。


「西門さんは一度も私をキズつけたことはありませんよ?私の方が素直じゃないからいけないんです。
どうしてでしょうね・・・西門さんの前だと言葉はポンポン出るんですけど自分の気持ちには素直じゃないです・・・」

「ふふっ・・・そうなの?つくしちゃんも女の子ねぇ・・・少しは私もその気持ちはわかるわよ?
でも焦らなくてもいいんじゃないかしら?その気持ちがなんなのかはゆっくりお探しなさい・・・いつかは見つかるわ。
浴衣は職人さんが綺麗にしてくれるから心配ないわよ。お着物だって運が悪ければ汚れるんですもの!
ちゃんと綺麗になって帰ってくるわよ」


なんだ・・・お袋にはそんな事言えるんだな。

牧野が素直なのは寝てるときと食ってるときだけだから・・・それ以外は手強いってことか。
ふふんって笑ってたら今度は牧野がお袋に買ってきたものを渡していた・・・どんな反応するんだろう。

「おば様・・・これ昨日のお小遣いで買ってきたんです!・・・やりませんか?みんなで!」

お袋はその袋の中身を確認したのか大笑いしていた。

牧野が買ってきたのは大量の花火・・・多分あの店に残っていた花火を全部買ったんだろう。
この西門で花火なんてしたことあんのかな・・・?覚えてねぇけど。

「つくしちゃんったら!・・・懐かしいわ。総二郎さん達が小さい頃何回かやったことあるけど全然喜ばないの。
男の子なんてつまらないわって思ったものよ!・・・今日の夜にやりましょうか?楽しみだわ!
お家元にも声をかけなくちゃ!みんなでやりましょうね、ありがとう・・・つくしちゃん」

そりゃ悪かったな・・・親不孝で!男3人で花火なんて楽しくもないだろ?・・・お袋の気持ちまでは考えなかったよ。
ここはもう女同士の会話に任せて俺は自分の部屋に戻った。


俺の前だと素直になれないんだ・・・そんなのお前だけじゃないけどな。


********


その日の夜・・・本邸の裏庭では家に残っていた弟子達も入れて花火が始まった。

やる気になったお袋は自らバケツに水を入れたり椅子を並べたり・・・牧野と2人で嬉しそうに準備をしていた。
オロオロする弟子達の事を無視してまるで本物の親子のように・・・それを俺は端の方で眺めていた。

牧野が俺に火をつけろと言うから花火の先にライターで火をつけると花火の先端に火花が舞った。
それを沢山の弟子が寄って集って火を移していく・・・牧野は自分が花火なんて楽しまずにみんなに花火と種火を渡して回る。
いくつになっても世話係みたいなヤツだ。そして、それが楽しいのか満面の笑顔で走り回ってる。
そして種火がなくなると急いで俺の所に来るんだ。

そしてまた火のついた花火を持ってみんなの中に入って行った。

「次の花火、ちゃんと持ってますかぁ!ない人は手を上げてー!配っていきますねぇっ!」

「牧野さーん、こっちの花火がなくなったのーっ!」
「はーい!持っていきますねっ!あ、お家元はお持ちですか?・・・おば様は?」

お袋も親父もその中の1人・・・それにしても家元相手によくやるよ!絶対に普通の人間だと出来ねぇぞ?

みんなで大騒ぎした花火も最後の一本が終わり、弟子達が後片付けを済ませて家の中に戻っていった。
家元夫人も大満足で、家元と2人で自室に帰った・・・あとに残ったのは俺と牧野の2人だけ。


「良かったな・・・みんなが楽しんでくれて。お前、自分が花火を楽しめたのか?世話ばっかりやいて・・・」

「ん?・・・今からするの。西門さんと・・・」


「俺と?・・・もうないだろ?」

「ここにあるんだ・・・線香花火・・・これね、好きなんだよ」

牧野は俺のとなりに座って線香花火を取りだした。
はい!って俺にも一本持たせて・・・そして火を強請るからまたライターで火をつけた。


その花火は何とも悲しげな・・・でも優しいオレンジの光を飛ばす・・・静かな時間が流れた。
2人で何も話さずその光をただ見つめていた。

何回かそれを繰り返して・・・最後の一本は牧野が持った。

その最後の光がチカチカと、まるで命の終わりに力を振り絞るかのようにして最後にポトンと地面に落ちた。

「なんでこんな淋しい花火が好きなんだ?」

「燃え尽きる最後まで諦めない感じが好きなの。でも・・・見てたら涙が出るの。変だよね?」

そんな花火を最後に俺としなくても良くないか?
何となく俺たちがこれで終わりそうな感じになってるけど・・・。


牧野に言わせたらこれに付き合ってくれって頼めるのは俺だけだったらしい。
そんな変な所だけ素直だ・・・。


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花より男子

4 Comments

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2017/08/12 (Sat) 13:38 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは~!

線香花火、私は好きなんですよ。あれだけでいい感じ。
火薬の匂いも好きなんです。ただね・・・蚊が嫌いなんであんまりしないんですよ。
無茶苦茶跡が残っちゃうんです。体質なのかなぁ・・・年なのかなぁ・・・

お墓参りも行かなきゃ!うちのお墓は山の中で、旦那の家のは海の横。
どっちもすごい場所にあって行くだけで大変です。特に海の横はお線香がつきません。
暴風がいつも吹いてる気がする。

でもお盆休みがないので・・・いつ行こうかな?夜は怖いかな・・・流石に。

今日もありがとうございました!

2017/08/12 (Sat) 15:45 | EDIT | REPLY |   

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2017/08/13 (Sun) 23:51 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます。

花火だったんですよ~!
線香花火をさせたかったんです。私が好きなもんで・・・。
総二郎と座り込んであの花火をコソコソとするんですよ。
本当はぽとっと落とした瞬間にチュッてしたかったんだけどふざける方向にいってしまった・・・。

懐かしいなぁ!ドラゴン!並べて連続ドラゴンとかしましたよ。
パラシュート!えぇ!走って取りに行きましたとも!
ヘビ花火・・・伸びるヤツでしょう?・・・気持ち悪くないですか?( ̄∇ ̄)

うちのオカメインコは近くで打ち上げ花火があるとドーン!のあとにカァッ!と鳴きます。
カラスの鳴き真似なのかしら?・・・驚いたらカァッ!っていいます・・・。

2017/08/14 (Mon) 08:12 | EDIT | REPLY |   

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