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花火が終わって西門さんと部屋に戻ろうとしたけど忘れ物に気がついて裏庭に一度戻った。
そして西門さんの後を追うように部屋に向かっていたら、彼が廊下で家元に呼び止められているところを見てしまった。
なんだか家元の様子が真剣で・・・私は思わず廊下の陰に隠れてしまった。

「総二郎・・・京都の件が正式に決まったぞ。秋には向こうに行ってもらう・・・すまないが京都を頼むな。
あの息子がしっかりしてくれないといつまでかかるかわからないが・・・準備は追々始めておくように・・・」

「あぁ・・・わかった。秋か・・・詳しい日にちが決まったら教えてくれ」

「母さんもガッカリしてたから今日は特にはしゃいでいたな・・・行くまでは母さんともよく話してやってくれよ」

「・・・面倒だな。別に今までどおりでいいだろ?子供じゃねぇんだから」


京都行き・・・?そんな話、今まで一度だって西門さんから聞いたことないんだけど。
私は廊下の隅でこの話を立ち聞きしてしまった・・・西門さんが東京から京都に移るだなんて。
彼の肩を軽く叩いて家元が向きを変えた。彼のほうは何も言わずに廊下から見える本邸の庭をぼんやりと眺めている。

家元は私に気がつかずにご自分の部屋に戻ったけど、私が廊下にいたことを西門さんは気がついてた。


「牧野、そこにいるんだろ?話・・・聞こえたのか?」

「うん・・・偶然だけど。京都に行くの?・・・何をしに?それって・・・もうここには帰ってこないってことなの?

「・・・説明してやるから部屋に来い。ここで立ち話するような内容じゃないから・・・」


私は西門さんについて行って彼の自室に入れられた。
ついさっきまですごく楽しい気分で花火をしていたのに、西門さんの顔がもう真面目な顔になっていて少し怖かった。
これから聞く内容がとても嫌なもののように思える・・・。

部屋に入ると中央にあるソファーに向かい合わせで座った。
彼の部屋の奥にあるミニキッチンから氷とグラスが出されて、私にはジュースを・・・西門さんはお酒を用意した。
カランっと音をたてて氷がグラスの中で溶ける・・・そして話が始まった。

「西門が元々は京都に本家を置いてたのは知ってるよな。そこに今、家元の弟がいて京都の分家をまとめているんだ。
その叔父さんが具合悪くて仕事が出来ねぇんだよ。そこには息子がいるんだけど・・・俺の従兄弟ってわけだがそいつが
まだ頼りなくて上手く支部の連中ともやっていけてないんだ」

「具合って・・・命に関わるほどなの?」

「いや・・・そうでもねぇけど元々心臓が悪い人だから無理が出来ないらしい。だから今の本家・・・うちから応援って
事で一応次期家元の俺が向こうに移ってまとめて来いってさ・・・うちの親父はまだ元気がいいからな。
今のところこっちでの仕事は家元と家元夫人でなんとかなるだろうって・・・」

「そうなんだ・・・大変だね」


そんなこと聞いたら行かないでなんて言えないよね。
これはお仕事だって言われたら・・・口だけの1年契約中の私に何も言う権利なんかないもの。
西門さんは私をジッと見ていたけど、それ以上何も言えなくてただそこに座っていた。

「そんなに暗い顔すんな。期間はわかんないけど帰って来る予定だから。でも向こうの連中は気難しいっていうか
腹の中が読めないっていうか・・・面倒なんだよな。くせも強くて歴史だけが古くてさ・・・気が重てぇよ!」

「西門さんでも苦手なものがあるんだ・・・なんでも上手く出来そうなのに。そんなものさっさとまとめて帰ってきたらいいのに・・・
ってそんなに簡単な話じゃないんだよね。・・・ごめん、適当な事言って・・・」

「まぁ、もう少し先の話だ・・・おそらく10月中だと思うけどそれまではここにいるんだからお前も俺の事務処理ちゃんとやれよ?
俺がいなくなっても仕事は山のようにあるからな!心配すんな・・・無職にはならないから!」

「そんなことで解雇されたらたまんないわよ!」


そんな心配は初めからしてないよ・・・。
ここから西門さんがいなくなる日が来るなんて全然考えたことがないから・・・驚きすぎて声が出ないだけ・・・。


********


あれから西門さんは普通に仕事をしていたけど私の方がミスを続けて西村さんに笑われてしまった。
本当に小さな事なんだけど、いつか大きなミスをしそうで怖いくらい・・・そのくらい仕事に気が入らなかった。

「珍しいですね、牧野さん・・・あなたはミスの少ない人なのに」

「すみません・・・何度もご迷惑をおかけして・・・」

「総二郎さんの事ですか?心配しなくても向こうに引っ越すわけではありませんよ?いずれはここに戻ってくるんですから・・・
牧野さんはお仕事をしながら待っていたらいいんですよ」

そのうちってどのくらいなんだろう。1ヶ月?半年・・・まさか1年?そんなに会わなくなるんだろうか。
心ここにあらず・・・そんな心境で事務所の机にただ向かっていた。


その日の午後、1人事務所で書類整理をしていたら急にドアが開いて西門さんが顔を出した。
今日の失敗を怒られるのかと思って、椅子から立ち上がって逃げようとしてしまった!

「何やってんだよ・・・なぁ、今日いまから時間取れないか?ちょっと出掛けたいんだけど一緒について来れないか?」

「え?・・・それは西村さんに聞かないと私じゃ判断できないよ」

ちょうど西村さんは家元の秘書の方とお茶室で打ち合わせをしていたのでここにはいなかった。
急いでいたのか私を連れてお茶室まで行って西村さんに私の外出を申し出た。もちろんすぐに許可は出た。

だいたい西門さんが申し出て、誰がそれを許可しないとか言えるんだろう・・・。
何処に何をしに行くのかを聞いたらいつもの小綺麗な笑顔で答えられた。

「今から俺の冬物・・・初釜用に着物作るからお前のも一緒に作ろうと思ってさ。予約してるから東屋まで付き合ってくれ。
それと少し京都に持っていく道具を揃えたいから何店か回りたいんだ」

「初釜?・・・お正月のこと?なんで私のまで作るの?」

「特に理由はねぇけど?お前がここで着物着る機会もこれからは増えてくるだろ?持っててもいいだろうと思っただけだ。
正月はさすがに本邸にいるだろうから初釜は東京でやると思う。それとお前は俺がいない間は家元夫人が稽古つけるから。
同じように金曜日に稽古してあの部屋に泊まっていけよ。そうしないとお袋が寂しがるからな!」

まだ夏が終わってないのにもう随分先の話をするんだね・・・しかも笑顔で。
その笑顔を見ることが出来なくなる・・・明日にでも西門さんが京都に行くような気がしてたまらなく淋しかった。



東屋さんに行くとまた息子さんが対応してくれた。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。・・・今日は牧野さんもご一緒でしたか。本日はどちらのお着物を?」

「今日は俺と牧野の初釜用にいくつか作ろうと思って・・・俺は自分で選ぶから牧野のものを選んでもらえる?
いくつか出してもらったら最後は俺が見て決めるから」

「かしこまりました。では総二郎様のものはこちらに・・・牧野さんのは今から準備しましょう」

そういうと東さんは奥に入って行った。

「牧野、お前も自分で反物から選んでみろよ。こういうのも勉強になるぞ。同じ絹でも触ると違いがあるから。
そういう事を少しずつ覚えていかないか?このまま西門に残るなら・・・」

「西門に残るって?・・・事務所でって事だよね?」

「・・・今はそうだけど。例え事務所でも西門にいたらこんな知識は役にたつんだよ。海外からも取材があるからな。
着物っていうのもその時期に相応しいものがあるって言っただろ?柄や色・・・素材にも季節があるんだ。
茶会ではここを間違うと恥をかく・・・そんな普通は習わないことも知ってて欲しい・・・そう思っただけだ」


この日西門さんと一緒に着物を選んだけど私の意見は全否定されて結局西門さんが選んだ反物に決まった。
私には着物を見る目がないって散々言われて、半分お説教になってしまった。
だってわかんないもの!触った感じもどれが自分の年に合ってるのかも・・・今の流行なんてのも!

「マジでびっくりしたよ、牧野のセンスの無さ!・・・こりゃ今からでもお袋に頼んで別の稽古でも始めるか?」

「何よ・・・その違う稽古って!」


「はっきり言っていいのか?・・・契約更新するなら本当に花嫁修業だ」


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Comments 4

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2017/08/13 (Sun) 14:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花さま、こんにちは🎵

昨日はお疲れ様でした(笑)
楽しかったですか?飲んでましたね?

私は仕事してましたよ。
花嫁修業?私は1日でリタイアします。
ぐーたらしたまま1日過ごしたい‼️(笑)


2017/08/13 (Sun) 18:44 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/14 (Mon) 00:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます!

今からですよっ!さとぴょん様リクエストのシーンが始まるんです!
そこで・・・何かが起きるんですっ!

そうなんです・・・総ちゃんったら思わず言っちゃったんですよ!
流石よくわかっていらっしゃる・・・。

上手く書けるかが心配ですけど・・・。

今日もありがとうございました!

2017/08/14 (Mon) 08:23 | EDIT | REPLY |   

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