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最後の一日は2人でレンボンガン島に行った。ここは珊瑚礁とマングローブの楽園。
とにかく透き通るような海と珊瑚礁をボートの上から楽しんだ。
シュノーケリングをする人も多くて牧野もやりたそうだったけど、これ以上の日焼けもしたくなかったらしい。
そんなことを言ってるわりには今日はロイヤルブルーのサマードレス・・・その細い紐だけで肩は丸出しだよ?
胸には昨日買ったばかりのシルバーアクセサリーのガムランボールが揺れていた。

「ねぇ、類・・・ほら見て?この下にいるの熱帯魚でしょう?・・・すごく綺麗な色だね!」

「うん。今度は潜りにこようか?海の中はもっと感動的だよ」

「・・・いつかね。楽しみにしてる!」


一日中ゆっくりとこの島を歩いて空が赤くなる頃にホテルに戻った。
そして荷物は全部日本に送るように手配を済ませて、最後のディナーは自分たちの部屋で2人でとった。
極上のワインと料理をプールサイドのテーブルに並べて、星空の下で最後のデザートまで楽しんだ。
プールの水が月明かりでキラキラと輝くのを牧野と眺めながら、このバカンスの終わりを感じていた。

「終わっちゃったね・・・」

「うん・・・でも始まったこともあるでしょ?俺たちのこれから・・・」


この3週間で少し大人っぽくなったかな?牧野の方から手を伸ばして俺を呼んだ。
その手に引き寄せられるようにして抱き合って・・・最後の夜を熱く、甘く過ごした。




朝になって乱れた髪もそのままに、俺の横でぐっすりと寝ている牧野の耳にちょっとだけキスをする。
そうしたらくすぐったそうに首を竦めて目を少しだけ開けた。

「・・・おはよ。今日は早くここを出ないといけないからもう起きなきゃ・・・ほら、目を開けて?」

「ん・・・起こして?・・・自分で起きられない・・・」

どうやったら起きるか?やっぱりこれしかないでしょ・・・今日、2回目のキスは本気のキス。
息が止まりそうになった牧野は苦しそうに起き上がった!朝一番の赤い顔・・・いつ見ても可愛いね!
そう言ったら最後の朝なのに俺の顔には枕が飛んできた!

帰る時も俺たちの手には荷物なんてなくて牧野の小さなカバンだけ。
空港に着いたら3週間世話になった運転手に挨拶をして別れた。


「素敵な島だったわ・・・あっという間だったね。3週間・・・」

飛行機が離陸するまでの間、窓から見えるこの島の風景を名残惜しそうに眺めていた。
ここに来た時と違うのは牧野の指に母さんから預かっていた花沢家に伝わる指輪があること。

それは昨日の夜に牧野に渡したものだった。

『類、これは旅行の最後の日につくしちゃんに渡してね。古いものだけどあなたのおばあさまからもらったものなの。
花沢家の家紋が裏に入ってるわ。ちゃんと意味があるんだから言葉を添えて渡すのよ!・・・いいわね?』

母さんは俺を信用してないから今頃フランスで心配してるんだろうね。
でもちゃんと伝えたからね・・・その言葉は俺たちだけの秘密だけど。

そのあと真っ青に澄んだ空に俺たちを乗せた機体は飛び立っていき、息の詰まるような東京へと向かった。



********


日本に戻ったのはその日の夕方・・・空港には花沢の車がすでに待機していた。

「類様、フランスの奥様より連絡がありましたのでお迎えにまいりました。牧野様とご一緒にお屋敷の方にお戻りください。
これから先のお二人のことでお話しがございます」

「母さんが?・・・向こうでは何も言わなかったけど?・・・牧野も一緒に?」

「はい。そのように」

牧野は少し緊張して俺の手を強く握っていた。
でも母さんは牧野を受け入れていた・・・これには前向きな意味があるんだと二人で理解して花沢の屋敷に戻った。
牧野は始めて入るわけでもなかったから驚きはしなかったけど、久しぶりの屋敷にビクビクしてた。
そして目の前に現われたのは使用人頭の加代・・・とても厳しい俺の教育係だ。


「お帰りなさいませ、類様。奥様からご命令がございましたのでお伝えいたします。
本日より牧野様には、こちらで今後のためのお勉強をしていただきます。大学はもちろんですが一般教養と語学、
この花沢の会社概要と世界情勢に至るまでこの私がついてご指導いたします。よろしいですね?」

「随分と急だね。バリ島では何も言わなかったくせに・・・」

俺は大きく溜息をついたけど牧野は真面目に加代の話を聞いていた。その目は冷静で力強かった。
決心をした・・・そういう事なのかな。


「お覚悟は出来ていると奥様からは伺っております。ちなみに私は厳しいですよ?大丈夫ですか・・・牧野様」

ほんの少しだけ時間をおいて牧野ははっきりと答えた。

「わかりました。こちらでお世話になります。このチャンスを与えていただいたことを感謝しますと、おば様にお伝えください。
加代さん、これからどうぞよろしくお願いいたします」

「承知いたしました。類様もこの件に関しましては手出し無用です。よろしいですね?このお屋敷内では
キチンと節度ある態度でお過ごしくださいませ。おわかりでしょうけど・・・」

俺にまで釘を刺さなくても・・・まぁ、母さんがそう言ったんだろうけど!
節度ある態度で・・・それさえ守れば一緒にいてもいいって事で受け止めさせてもらうよ。


それから牧野は花沢の家で毎日・・・とにかく夜遅くまで勉強をさせられていた。それでも一度も弱音を吐かなかった。
大学とうちの往復でバイトも遊びも総て出来なくなったけど、それでも必死に頑張っていた。
それを横で見ながら、俺もフランスに移る準備を始めた。

夜になると家庭教師は俺になる。
フランス語の練習って事になってるけど、一つのベッドに寝転んでこれからの話を毎日のようにしていた。
たまに喧嘩をしながら・・・毎日抱き合いながら。

そしてその冬・・・一足早く俺はフランスに行くことになった。大学の卒業も待たずに・・・。
その時俺たちには不安はなかった。涙はあったけど、牧野は笑って俺を送り出してくれた。

「クリスマスには会いに行くよ。お誕生日にも・・・必ず会いに行くから!私はここで頑張るからね!」

「うん、待ってるよ。他の男には気をつけてよ?牧野は狙われやすいからちょっと心配だな」

空港で時間ぎりぎりまで手を繋いでいた。そして俺はこんなに大勢の人の中でもかまわずにキスをする。
時間が来てその指が離れたとき、牧野はたった1つ涙をこぼしてた。


********


それから1年半経った時・・・俺は飛行機に一人で乗っていた。

行き先はあの島・・・今日はあのバカンスに行った日からちょうど2年めになる。

あの日と同じように空港について迎えの車に乗った。もちろん運転手は同じだ。
そしてコンドミニアムに着いたら大急ぎでその向こうに広がる海に向かって走った。


ほら・・・あの白い砂浜の向こうから同じように走ってくるのは、2年前となにも変わらない牧野!
真っ白なサマードレスの裾を持って、あの時と同じように帽子を風に飛ばしながら真っ直ぐに俺の方へ走ってくる!
両手を広げてすごい勢いで・・・俺の胸に飛び込んできた!

思わず二人で砂浜に倒れ込んでしまう・・・牧野の上から眩しい太陽が俺を見つめていた。
その状態のまま牧野を抱き締めた。

「牧野・・・!会いたかった!」
「類・・・お待たせ!やっと加代さんから合格点がもらえたの!」

もう花沢に入っても大丈夫だって、あの厳しい加代から合格点をもらった牧野はご褒美にこの島でのバカンスをもらえたんだ。
それはたったの3日間・・・それに合わせて俺はここに迎えに来た。

「ほんの少しだけどまたここで二人で過ごそうよ。今日は星の下で・・・明日は太陽の下で一緒に過ごそう・・・」

「うん!そしてその後は二人で帰ろうね。類のいる場所へ・・・」


真っ青な空と白い砂浜と・・・その間に広がる海をバックにして牧野の笑顔が輝いていた。
両手を空にかざしたらその笑顔と同じくらい眩しい太陽が俺たちに降り注いでる!

「類!早く海に入ろうよっ!時間がもったいないわ!」
「ダメだって!俺はまだ着替えてないんだからっ・・・」

「関係ないって!そのままでいいよ!」

白いサマードレスを脱ぎ捨てた牧野はあの日と同じ黒いビキニで俺を海まで誘った。
飛び跳ねる人魚・・・!いつまでも変わらない、これからも多分変わらない!

俺は届きそうで届かない、夏の女神を一生追いかけていくんだろうな・・・!



とても幸せな気分で!


fin.

bari14.jpg
一度行ってみたいバリ島・・・プルメリアが咲き乱れております!
夏はやっぱり恋の季節ですから!

と!いいながら明日からは夏の恋物語、第二弾!「迷い猫と暮らした夏」
こちらはしっとりとした恋物語です。
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Comments 6

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2017/08/14 (Mon) 00:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます。

なんだかルンルンしたかっただけのお話でしたわ・・・。
何処にも行けないからバリ島の本買って眺めては書いて・・・眺めては書いて・・・
昔から親が共働きで旅行と縁遠いもんですから憧れるんですよね。
でも実は暑いところは苦手なので、オーロラツアーとかに行ってみたい!
熱中症のプロとしては南の島とか地獄の島にしかならないかも・・・。

さとぴょん様はどこかに行きますか?
私は全く予定がないけど、帰省中の娘が毎日お弁当作ってくれます!それが楽しみ~!

2017/08/14 (Mon) 08:19 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/15 (Tue) 23:02 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/15 (Tue) 23:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ずき様、今晩は!お久しぶりでございます。

バリ島行ったことあるんですか?いいなぁっ!行けないからガイドブックで行った気分になろうかと
思いましたがダメでしたぁ・・・せめて2人には楽しんでもらおうと思って書いちゃいました。
ルンルンした夏のお話しになってたかしら?

シンガポールには行ったことあるんですよ・・・遠い昔。
でもサンセットクルーズは大勢だったのと夕日が綺麗じゃない日で残念でした!
やっぱり花沢家ぐらいじゃないと気持ちよくクルーズ出来ないのかも・・・。

ずき様もまたお暇なときに覗いて下さいね~!お待ちしてます~!
今日はありがとうございました。

2017/08/15 (Tue) 23:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ずき様、2つもいただいて嬉しさ2倍!ふふふ・・・お返事はもう一つの方にしてますので。
ありがとうございました♥

2017/08/15 (Tue) 23:39 | EDIT | REPLY |   

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