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あの日から何もする気が起きなくなった。
2人分のご飯は疲れていても作れたのに、自分だけのご飯は全く作る気がしなかった。
引き出しを開けたらそこには類の服がそのまま残されていた。そして隅にはスマホが隠すように置かれていた。

「忘れ物だって言って届けようかしら・・・でも、それもきっとダメなのよね・・・」

またそれを引き出しの中に落とす・・・もうこの服を着る人がいないのに何故か捨てることも出来なかった。
まだ期待しているんだろうか・・・彼が帰ってくるって。
でも、もうそんな日は来ないんだと自分に言い聞かせた。もう類のすることであんなに笑うこともないんだって・・・。

旅行で買ったマグカップも一度は類の方をゴミ箱に捨てたんだけど、やっぱり捨てることが出来なくて慌てて拾った。
そして綺麗に洗って、二つを並べて食器棚の奥に置いた。もう自分の方も使うことはないだろうけど。
それでもピッタリとくっつけて並べてると少しだけ安心した・・・。


今までしたこともなかったけどコンビニのお弁当を買ってきて食べた。
なんだかすごく寂しいもんだね・・・暖めたはずのお弁当がどうしてこんなに冷たく感じるんだろう。

もったいないとは思うんだけど、全部食べることが出来なかった。
キッチンもどのくらい使ってないんだろう・・・生ゴミも随分出してないような気がする。
増えていくのはプラスチックゴミだけ。これじゃ、ホントにダメな人間になっちゃう・・・溜息も増えたものの一つだった。


1人で寝る夜が不安になっていた。類が来たのはたった3週間前、それまではこれが普通だったのに・・・。
2人で寝てたときは何故か安心していたんだと思う。男の人がいるって不思議とそんな気分になるんだね。
布団に入れば余計にいろんな事を考えてしまう。それは自分の事じゃなくて彼のことばかりだった。

今類はどうしているんだろう・・・たった1人で見えない何かと戦っているんだろうか。
そしてあの日のようにまた逃げたくなっていないだろうか・・・と。


********


ある日、テレビをつけていたら海外のニュースが読み上げられた。
聞いてもわからない経済関係のニュース・・・画面を見ずに雑誌を捲っていたら聞き覚えのある名前をアナウンサーが話した。

『この度フランスで行われたバイオテクノロジーの研究施設建設に参入した花沢物産社長の・・・』


・・・花沢物産?・・・今、花沢物産って言った?

その社名を聞いた途端、雑誌を放り投げてテレビ画面を抱えるようにして覗き込んだ!
そこに移っていたのは半分ぐらいが白髪の背の高い男の人と・・・その後ろには懐かしい顔があった。

「類!・・・類だ!・・・うそ、こんなに大きな会社だったの?」

テレビに映るその社長の後ろに確かにスーツ姿の類が立っていて、アナウンサーは類を後継者だと説明した。
出会ったときのような無表情な類の顔・・・そしてその後ろにはあの時の藤本という人もいた。
そのまた後ろには沢山の男性が控えていて、類がどれほどの地位にいるかを物語っていた。

類の声が聞きたい・・・!そう思ったけど、ニュースでは社長のインタビューが流れるだけで類が言葉を出すことはなかった。

「また、あんな顔して・・・誰にも助けを求められないんだね・・・」


慌ててその社名をスマホで調べてみた。今まではただ大きな会社だろうと思うぐらいで気にもしなかった。
ただ、海外にも支店があるぐらいにしか感じてなかった・・・それがまさかヨーロッパを拠点としている大企業だなんて。

「興味がないとは恐ろしいわ・・・本当に馬鹿だね、私は・・・」


呆然としすぎてスマホは私の手から落ちた・・・そのうち光っていた画面は暗くなった。
真っ暗になったその画面を見つめながらポトッ・・・と1つだけ涙が落ちた。

「なーんだ・・・どおりで電子レンジも洗濯機も使えないはずだわ・・・バスにも乗ったことがないのも当たり前だよね!
悪いことしたなぁ・・・こんな狭い所に寝かせて、変なもの食べさせて、小さな旅館にまで連れて行って!
だって・・・何にも知らなかったんだもの・・・!ここまですごい人だなんて思わなかったんだもの!」

何でだろう・・・・後から後から涙が出てくる。それはもう自分でも止められなくて・・・抑えることが出来なくて!
とうとう最後には大声を出して泣いてしまった。


私は類に恋をしていたんだ・・・こんなになって初めてこの気持ちに気がつくなんて!
もう会えなくなってから彼のことを知ってしまった・・・それでも彼に会いたくて会いたくて堪らなかった・・・。


********


花沢に戻ってから一ヶ月ほどたった頃、母親から自宅に戻るようにとの連絡があった。
ほとんど自宅に戻らず会社に詰めていたから、少しは気になったのかもしれない・・・そう思ったが違っていた。
自宅の奥からは意外な人物が現われた。フランスにいるはずの静・・・彼女が帰国していた。

静は帰国してもすぐに藤堂家に戻らず、花沢に来て俺の母親とお喋りをしていたらしい。
いつものように極上の笑顔を俺に向けて、女優のように優雅に歩いて目の前に来た。


「類!久しぶりね・・・フランスから急にいなくなるから寂しかったのよ?私を置いていくなんていけない人ね」

「久しぶりだね。どうしたのさ、そっちこそ急に。・・・いつまで日本にいるの?」

「ふふっ。しばらくは日本にいるの。だって類に会うために帰ってきたんですもの!」

「俺に会いに来た?・・・それこそどうしてさ。俺たちはそんな関係じゃないよね?」

そう言うと少し怒ったような顔を見せたけど、むしろあれだけ追いかけたくせになんの感情も湧かない自分に驚いていた。


俺の首に回してきたその腕をほどいて、キスしようとした静を交わした。
それは彼女のプライドを傷つけたのか、強引にキスしてきたけど。

「ごめん・・・俺にはもうそんな気はないよ。手を離して・・・静」

「どうして?フランスにまできたくせに!ちょっと冷たくしたからって私のことを嫌いになるような類じゃないわ。
それとも照れているの?・・・可愛いわね!」

「そんなんじゃない。2回も言わせないで。もう静の事を追いかけたりはしないよ」

静を母親の所に置いたまま自分の部屋に戻った。
静のルージュがついた唇を手の甲で拭う・・・そこについた赤いものを見ても、もう胸が熱くなるようなことはなかった。

あの日、海で交わした牧野の甘いキスが思い出される・・・。
もう一度あんなキスを牧野とならしてみたい。


久しぶりに戻った自分の部屋・・・懐かしいベッドに沈み込むように倒れ込んだ。

asa2.jpg
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Comments 4

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2017/08/25 (Fri) 01:14 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/25 (Fri) 05:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

今の私は切ないものなら書けそうですよ(笑)
同棲ってのをしてみたかったから、こんな気分に憧れるんですよね~!
彼がいなくなったときの寂しい気分ってこんなのかなぁ・・・なんて想像したりして。

この2人が再会するのと私のブログが回復するのどっちが早いんだろう・・・。

でも、頑張りますからね!!いつもありがとうございます!

2017/08/25 (Fri) 07:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

えみりん様~!おはようございます!

とんでもないです、こんな時には嬉しいですよ~!
パソコンがおかしいのかブログの不具合なのかわかってないんですけどね・・・。

書いた記事を自分で確認することが出来ないんですよ。プレビューで見れなくなったので
どんな感じで公開されるのかがわかんないんです。
公開されたのは見ることが出来るんですけど・・・。

下書きだけではなかなか見つけられない誤字がプレビューだとわかりやすかったから
それが出来ないために時間がかかるんです。いや、始めから間違えなきゃいいんですけどね。

私の天敵、静さんが出ちゃった・・・。
まぁ、楽しい事はさせませんけど、嫌々ながらキスだけさせちゃった!

もう一度出会えるまで、私も頑張ろうっと!不具合になんか負けないぞっ!
では、行ってきまーす!

2017/08/25 (Fri) 08:37 | EDIT | REPLY |   

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