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今までは会社に行っていた平日、やることもなくて少し遠くまで買い物に行ってみた。
いつまでもグズグズと家に閉じこもっているわけにもいかない。でも・・・どうしてもやる気が出ない自分に困っていた。

しばらくブラブラ歩いていたら、目の前のお店の人が窓ガラスに求人広告を貼っている。
ちょっとお洒落な和食レストラン。可愛らしいドアにカーテン・・・「木漏れ日」って名前に何だかホッとした。
立ち止まってその広告を見たら『急募』の文字。時給なんて今はどうでもいい・・・新しいことを始める方が先決だと思えた。

「あの・・・アルバイト募集してるんですか?」

「え?えぇ、そうなんです。急に1人辞めてしまってね。・・・もしかして君は仕事探してるの?」

「はい。アルバイトでもいいんです。・・・偶然通りがかって見つけたのも何かの縁かも知れませんし」

このあと、店内で急に面接っぽいことをしてもらって、幸いにも働かせてもらえるようになった。
このお店のカラーなんだろうか、ダークグリーンの名前入りのエプロンをもらった。
明日から宜しく・・・優しそうな店長さんが笑顔でそう言ってくれたから、久しぶりに私も笑顔で答えることが出来た。

「今日このお店に出会えたこと、本当に嬉しく思います!明日から頑張りますので宜しくお願いします!」


類・・・私も新しい一歩を踏み出したよ!だから、類も負けずに頑張れ・・・!
私の声なんて届かないだろうけど、夏空に向かってそう呟いていた。


********


「いらっしゃいませ!こんにちは~!今日は何にしますか?」

「今日も元気がいいねぇ!つくしちゃんだっけ?今日はAランチ、3つね!」

「はーい!いつもありがとうございます!」

小さな和食レストランでアルバイトを始めて一週間が過ぎた。
まぁ、元気だけはいつも褒められるし、裏方だって自信はあったし・・・昔からバイト経験だけは豊富だから接客も慣れたもの。
すぐにフロアーに出るようになっていた。働き始めて間がなかったけどすぐにお客さんとも仲良くなった。


「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」

1人のお爺さんが入ってきたのでそう声を掛けたら、店長が飛んできて慌てて私を止めた。

「あぁ、牧野さんは初めてなんだったね。この方は大森さんって言ってうちのオーナー・・・社長なんだよ。お客様ではないんだ。
この機会にお顔を覚えておきなさい。オーナー、失礼しました。最近入ってもらった牧野さんです」

「あ!すみません・・・働きだしたばかりで・・・失礼しました!」

慌てて頭を下げて謝ったけど、よく考えたらオーナーなら表から入らなければいいのに。
そのお爺さんはとてもオーナーとは思えないような質素な服装で、威厳があるというよりは穏やかそうな人だった。
笑顔が可愛らしいおじいちゃんって言葉がぴったりくる。その人はカウンター席の端に1人で座った。


「いや、すまなかったね、気を遣わせて。随分と元気のいいお嬢さんだね。これからも頼みますよ」

「はい!ありがとうございます!」

このオーナーはしばらくの間その席でコーヒーを飲んでいた。もしかしたらこれも仕事の一部なのかしら。
店舗巡回ってことなのかな・・・それなら失敗しないように頑張らないと。
失敗続きでクビになったばかりの私は、気がつかないうちにいつもより緊張していたみたい。

「お待たせしました・・・今日の日替わりランチです」

「え?俺は確か生姜焼き定食にしたはずだけど?間違えたんじゃないの、つくしちゃん」

「えぇっ?うそ・・・ごめんなさいっ!すぐに作り直します!お時間は大丈夫かしら・・・すみません!」

失敗しないようにと思っていた矢先にとんでもない失敗をしてしまった・・・しかもオーナーは絶対に聞いてるはず!
この失敗でまた仕事を失ったらと一瞬自分の事を考えた。・・・でも一番困るのはこのお客さんだから、急いで生姜焼き定食を
作ってももらわないと・・・そう思った時、お客さんが笑いながら言ってくれた。

「いいよ、いいよ!どっちにしようか迷ってたんだから!きっとつくしちゃんが今日の日替わりの方がいいよって思ったんだろ?
それならこれをいただくよ。作り直さなくてもまた来ればいいんだからさ。気にしなくていいよ、つくしちゃん!」

「そんな・・・ごめんなさい。気をつけます・・・でも確かに今日の日替わりはなかなかいいんですよ!」

許してはもらったけど、怒られるんだろうなぁ・・・溜息をつきながら調理場に戻って隙間からオーナーが座っていた席を見た。
でも、もうそこは空席で誰もいない。確かにさっきまで座っていたのに・・・。
いつの間に帰ったんだろう・・・って思っていたら店長に呼ばれて事務所に行った。


事務所には店長とオーナーの大森さんが座っていた。
直接怒られるのかと思ったけど、そんな話じゃなさそう・・・店長もオーナーもにこやかだった。

「君は随分と接客がお上手で笑顔が素敵だが、どうしてアルバイトなんだね?ちゃんと社員で働こうとは思わなかったのかな?」

「いえ・・・ついこの間までは建築関係の会社で勤務しておりましたが色々とありまして・・・契約社員だったので解除されたんです。
すぐに働かないと1人暮らしですし生活が出来なくなるので、こちらのアルバイト募集を見て飛びつきました。
でも、落ち着いたら社員で働けるところを探そうと思っています。今はこちらで楽しく働かせていただいてますし、勉強になります」

それを聞いたオーナーの大森さんはニコニコして帰っていった・・・なんでそんなことを聞かれたんだかさっぱりだけど。

「オーナーは牧野さんの事が気に入ったみたいだよ?良かったね」
「はぁ・・・でも、私はさっき注文ミスしたばかりですけど?」

店長はクスクス笑うばかり。失敗して気に入られるとは?1人で首を傾げたけど辞めなくても良さそうだ。

********

そしてこの店でしばらく働いたある日、再びオーナーは現われた。
やっぱり事務所に呼ばれた私は一冊の冊子を渡された・・・それは大森商事という会社の入社概要書類。


「これは・・・なんですか?大森商事って、あの有名な?」

大森商事は日本でも有名な大企業・・・それこそ花沢物産ほどいかなくても国内では知らない人がいないほどの企業だ。
私は花沢物産は大きすぎてピンとこなかったけど、この会社名は知っていた。

「良かったらここに入らないかね?ちょうど私の秘書室に欠員が出るのだよ。本来はきちんと募集するのだがね・・・。
君の経歴も調べさせてもらったが、なかなかいい成績で大学も出ているし英語も得意らしいじゃないか。
君のような明るい人がいいと思っているし、悪い話ではないと思うんだが?」

「いっ・・・いいえ!私なんかには無理じゃないですか?秘書だなんて!」

「いやいや、1人でやるわけではないんだよ?ベテランがいるんだが若い人材も必要なんだよ。どうだろうか・・・。
今度本社の方に顔を出してみないかね?」

私がどうしようかと迷っていると店長さんが背中を押してくれた。


「牧野さん、こんなチャンスは滅多にないと思うよ?せっかくの話なんだから挑戦してみたらいい。
まだ君も若いんだし、今から臆病になることもないさ。オーナーが気に入ってくださるなんてなかなかないんだよ?」

「はぁ・・・わかりました。では、一度その本社にお伺いします。そこでもう一度お話しを聞かせていただけますか?」

こんな出来過ぎた話に恐怖が半分、嬉しさが半分・・・何だかよくわからないうちに私はこの会社に行くことになった。



オーナーと約束をした日、住所を確認しながらそこに向かうと、その会社は見上げると首が痛くなるほどの高層ビルだった。
受付の人に聞くとオーナーはこのビルの一番上の階にいるらしく、そこまで案内してもらった。
そしてその秘書室という部署に入ると私よりも年上の女性が2人、和やかに迎えてくれた。

「会長から話は聞いていました。あなたが牧野さんね?私がちょうど来月退職するので助かります。
聞けば外国語がお得意なんですって?ここは最近外国への出張が多いから助かるわ。
こちらの豊田さんがメインで動きますから、牧野さんにはその補佐をお願いしたいわ・・・どうぞ宜しくね」

「でも、まだ詳しいお話しを聞いてませんけど。オーナーって会長なんですか?この大森商事の?」

「あぁ、そうね。喫茶店やレストランは会長のご趣味で作られたのよ。面白い方でしょう?落ち着いて食べられる庶民の
お店を持ちたかったらしいわ。でも、本当はこの会社の会長なの。今は第一線を退かれてるけど、あらゆる企業とも
お付き合いのある方で、企業経営者で大森会長を知らない人なんていないわ」


突然訪れた私なのに2人はとても親切で優しかった。
なんだか知らないうちに話は進んで・・・どうやら私はこの会社に明日から出勤するらしい。
後で聞いたけど、この日会長は不在だったとか。私のことは話を聞くのではなく、入社手続きに入るよう指示があったらしい。


花沢物産も同じような大企業なのに・・・類は今でもあの悲しそうな顔で仕事をしているのかしら。
類がいるビルなんて何処にあるか知らないんだけど、きっとこの近くにいるんだろうな。


もしかしたら偶然会えるかもしれない。そんな夢を見ていた。


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Comments 4

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2017/08/26 (Sat) 06:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

えみりん様、おはようございます❗

あはは!大丈夫ですよ🎵
みなさん、なるほどね~❗って思ってますよ。
今日、さっそく使わせてもらいましたよ。ふふふ!

類くんとの再会間近!どーなる?藤本❗(笑)

ブログの不具合が画像にまで広がり、指定した画像が公開にならなかったんです。
何だか不安が広がる…。
つくしちゃんもだけど、私のブログもガンバれ❗(笑)

2017/08/26 (Sat) 07:36 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/26 (Sat) 17:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは🎵

幸運の爺さん(笑)!
いや、そうなんだけど。例えが面白いわ🎵

短いお話にはあんまり悪どいヤツはいらないんですよ!(どこかには誘拐犯がでてるけど)

待ってろよ!藤本…ですか?
だれが戦うの?つくしちゃんが立ち向かうのかしら?

どーしよー‼️藤本(笑)強かったりしてね🎵

今日もありがとうございます‼️

2017/08/26 (Sat) 18:10 | EDIT | REPLY |   

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