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滅多に話さない母親に呼び出されて自宅のリビングで睨み合いが始まった。
俺の前には涼しい顔をした静と母親・・・2人は紅茶を飲みながらまるで本物の親子のように座っている。

そして一枚の招待状を俺の前に差しだした。それはとある企業の新事業起ち上げを祝うパーティー。

「どうしてこのパーティーに俺が静をエスコートして行かないといけないのですか?静とはなんの約束もしたわけじゃない。
申し訳ないがお断りします。気が乗りませんから」

「あら、昔からの仲じゃないの。藤堂家からも直接お願いされたのよ?お断りも出来ないでしょう?別にすぐに結婚しろなんて
言ってるわけじゃないわ。今回は一緒に行っておあげなさい。それぐらいいいでしょう?」

「おば様・・・私はいつでもお話しが来たらお受けしますわよ?類がその気になってくれればいつでも・・・」

美しく笑ってるけどもうその笑顔には魅力を感じなくなっていた。
多分彼女はただ連れて歩くのに便利で自慢できる男ぐらいにしか思ってはいない。愛情なんてそこにはない。
それでも高圧的な母親の言葉に逆らうにも限界があって、とうとうそのパーティーに行くことになった。
勝ち誇った静の顔がこの時の俺にはもう鬱陶しくて、挨拶もせず自室に戻った。


********


そしてそのパーティーが行われる日、静を迎えに藤堂へ行く。
気が乗らなかった俺はいつもなら時間よりも遅れるなんて事はしないのに、少しだけ静を待たせてしまった。
そこでもまた俺のことは年下扱い・・・「仕方ない子ね」の一言で呆れた笑顔で出迎えられた。

その身体を惜しみなく見せつけるかのようなドレス・・・大きく空いた胸と背中のラインが誘うように動いた。
俺の腕に絡みついて寄り添うとわざとだろうかその胸が当たるんだけど、あえてそれを無視した。

「昔は良くこうやって出かけたわよね。パーティーにも食事にも・・・あの頃は楽しかったわ。類はいつも私を追いかけてたわよね。
これからもあの時のように上手く出来ないかしら・・・ね?」

「静・・・もうフランスにいたときの俺じゃない。静の事は嫌いじゃないけどもうそんな対象じゃないんだ。静だって本当はそうだろう?
何があったか知らないけど、そうやって弟からいきなり恋人になんてなれないよ。フランスでの言葉を忘れたわけじゃないよね。
そんなに嫌なことが向こうであったからって俺に乗り換えるような真似はやめてくれる?」

静はそんな俺の言葉に少しも顔色を変えない・・・それがこの世界に生きてきた人間だ。
何があっても弱いところを見せない、感情を押し殺すように育てられたから。

「そんなつもりなんてないわ。類のことが好きだからよ」

平然とそう言い切ってまたいつもの張り付いた笑顔を俺に向けた。


それでも会場に入ると余計に俺に寄り添って、仲の良さをアピールするかのような態度を見せた。
昔は好きだった静の香りが今となっては異常に鼻について気分が悪かった。

静と俺の周りには自然と沢山の招待客が集まる。・・・それは静の営業力なのか、彼女が笑う度にギャラリーは増えていく。
俺はそんな気の利いたことは出来ず、愛想笑いもせずにただ静に付き添うだけ・・・片腕を差し出すだけだ。
このパーティーに何の意味があるのかもわからずに退屈な時間が過ぎていった。


ふと、前方に1人の老人に付き添う女性を見つけた。

それはあの時に黙って別れてしまった牧野・・・牧野つくしの姿だった。



「え?なんで・・・なんでここに彼女がいるんだ?」

牧野が一緒にいるのは大森商事の大森会長だ。この業界では知らない人間はいない。
会社の規模は花沢より小さいかもしれないがその人脈は相当なもの・・・経済界のみならず政界にも顔の知られた人物だったから
尚更驚いた。

「牧野?・・・牧野なの?」

そう声を掛けると振り向いた牧野は俺よりも驚いた顔をした。
俺は自分でも気がつかないうちに静の腕を振り払って、大森会長の側まで近寄っていた。
牧野は慌てて会長の後ろに隠れて、そして会長は俺の方にその穏やかな顔を向けた。

「・・・類?どうして類がここにいるの?」
「それはどっちかって言うと俺のセリフじゃない?・・・どうしたのさ!しかもその人は・・・」

俺も気が動転して挨拶の順番を間違うほど・・・急に会長の方に向き直って挨拶をする俺をおかしく思っただろう。


「大森会長、お久しぶりです。お元気そうで何よりです・・・あの、こちらの女性は・・・」

「これは花沢のご子息ですな?うちの牧野をご存じでしたか?」

うちの牧野?・・・うちのってことは牧野はあの後に大森商事に入ったってこと?
しかもこんな所に来るのは会長秘書のはず・・・何故牧野が会長に付き添ってここに来てるんだ?

「この子は私が偶然見つけた子でね・・・明るくて気に入ったのですが、ちょうど仕事も失っていたから大森へ呼んだのですよ。
花沢くんのお知り合いだとは思わなかったな・・・2人で話してくるかね?」

「いいえ!・・・会長、私な花沢さんとはなんでもないので・・・」

せっかくの会長の言葉をあっさりと断った牧野・・・俺の顔も見ようとはせずに下を向いたまま唇を固く結んだ。

「どうして?急に俺が出て行ったから?・・・あの時のことを説明したい・・・時間取れないか?会長もいいっておっしゃってるから・・・
牧野、話がしたいんだ!ねぇ、顔を上げてくれない?」

「お話しなら花沢さんの秘書の方に聞きましたからもういいんです。引き出しの中のお忘れ物はまだ持っていますから必要なら
誰かに取りに来させてください。いらないのなら・・・私が処分します」

牧野はそれだけ言うと反対を向いたまま・・・俺に背中を向けた。
その様子を見た会長は俺が近寄ろうとしたのを遮って、静の元に戻るように促してきた。

「牧野!・・・ちゃんと話そう・・・忘れ物は俺が直接取りに行くから!」

その言葉は牧野に届いただろうか・・・それでも会長の笑顔はそのままだった。
牧野は会長に背中を押されてどこかに消えていった。


*******


秘書室に入ったといっても何も出来ない私に、ある日会長がパーティーに同行するようにと言ってきた。
とんでもないとお断りしたけど、これも仕事の一部だと言われて仕方なく・・・何も支度が出来ない私に、先輩達が気を遣って
色々と準備してくれた。紺色のフォーマルドレス・・・秘書だからこのくらいの色がいいと言われた。

その日はきちんと髪もセットしてアクセサリーも貸してもらって何となく、それらしく仕上げてもらった。


そして向かった先のパーティーで類と出会ってしまった。
よく考えたらわかりそうなものなのに・・・彼こそこんなパーティーに出席する人なわけで、私の方がびっくりされて当然だ。
私に気がついて声を掛けてくれたけど、もう話してはいけないんだと思うと類の顔が見られなかった。
忘れ物さえ他の人に取りに来させて・・・そう言ってしまった。


類と離れたら今度は会長がそれについて話しかけてきた。

「牧野さん・・・彼とはどういう仲なんだね?彼は花沢の後継者だ・・・見る限りではただの友人には見えなかったが・・・
少なくとも彼は君のことを想っているのではないかな?」

「この夏に知り合っただけです・・・でも、とても大事な人になりそうだったんですけど・・・知らなかったんです。
彼があんな大きな会社の人だなんて・・・離れて初めて大切な人だと気がついたんですけど遅かったんですよね。
いいえ・・・わかった時点でもう無理ですよね!・・・ごめんなさい、ご心配お掛けました。忘れてください」

「まぁ、人生なんてわからんよ。・・・君が今ここにこうしていることがそうだろう?」

「・・・そうですね。でも、私も忘れますから」


チラッと類の方を見たらその横には輝くように美しい女性がいた。
なんてお似合いなんだろう・・・もしかしたら類の決められたお相手ってあの人なのかしら。


借りたドレスなのにその裾を両手で握り締めたら・・・一粒だけ頬に流れるものがあった。


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Comments 4

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2017/08/27 (Sun) 06:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、おはようございます❗

そうでしょ?(笑)
悩んだんですよ。一年くらい会わせないようにしようかな、とか。でも短編?ですからね。
急な展開でも許してもらえるかと…。

夏の恋物語なんで夏のうちに…。

書いてたら切なくなったんで、早めに合わせてあげました。もう少しで終わっちゃいます!

夜の虫の声、秋っぽくなりましたね!
まだ8月なのに。寝やすくなったんで助かっちゃう‼️

今日もありがとうございます❗

2017/08/27 (Sun) 07:38 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/27 (Sun) 23:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

大森会長の見たいですか?えっと・・・推定70歳ですけど?
お相手は誰にしましょう?静さんですかね?
いや・・・ちょっと想像してしまったわ!老人と美女。

さとぴょん様が1ストーリー1Rって言ったのが忘れられません。
このお話にはなかったシーンが出てこようとしている・・・最近ちょっと壊れ気味の私。

純情路線からはみ出しそうで怖いです。

いけないいけない・・・染まってはいけない・・・

2017/08/28 (Mon) 01:05 | EDIT | REPLY |   

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