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plumeria

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「誰なの?・・・あの子、見たことないけど・・・知り合い?」

「静には関係ないよ。言ったよね?俺には干渉しないでって」

自分を置いて他の女性に声を掛けたなんて静には我慢できないほどの屈辱なんだろう、俺に厳しい目を向けた。
そんなものは気にもせず大森会長の側にいる牧野をずっと目で追っていた。
牧野も時々こっちを見ては視線をそらす・・・パーティーが終わるまでそれは続いた。

「随分趣味が変わったのね。あなたは昔から上等なものに囲まれて暮らしてきたはずなのに。そんな目で見るのがあんな子だ
なんて認めたくないわね。よそ見は許せないわよ・・・類」

「趣味が変わったって?俺の趣味なんて知りもしないくせに・・・それに彼女は俺には特別なんだよ。よそ見してたのは静を見て
いたときの方だって気がついたんだ。もう、これ以上の話は必要ないよね。帰りまではきちんと送るけど、もうそれで最後だと
思ってくれる?出来るだけいい思い出で終わりたいからね」

「・・・類!」

こんな言葉も静の顔を見ずに言えるだなんて。
静の周りには相変わらず大勢の男が集まってるみたいだから、もうそこから離れるようにして一人でテラスの方に移動した。

牧野が直接俺を見ようとしないのなら、せめて窓ガラスに映る彼女を見ていたかったから。
こうしたら牧野が俺の方をずっと見ているのがわかる・・・少し泣いたんだろうか、目をこすってるのもわかるよ。


ガラス越しでもいい・・・このまま見ていられるなら。

「随分綺麗にしてもらったね・・・直接言いたかったよ」

そうしているうちに大森会長は牧野に声をかけてこの会場から出て行った。
最後まで俺の方を振り向きながら会長の後をついて行く。2人の姿がドアの外に消えた後、振り返って会場を見た。
もちろんそこにはいないんだけど・・・そして静は俺を睨み付けていた。


*********


そして帰りの車の中・・・懲りない静は俺にキスしようとその手を伸ばしてきた。

「何度も言わせないで!・・・もうそんなふうには見られないって言ったよね?それにそんな情けない静は見たくない。
昔の静は男と別れたからってすぐに他の男に乗り換えて遊ぶような女じゃなかったと思うけど?」

「・・・随分ひどい事言うのね!そんなにあのみっともない子の方がいいの?あんな子は類には似合わないわよ!
それに花沢が許さないわ!」

「そんなこと関係ないよ。それに牧野と静じゃ比べものにならない」

そのあと静は黙ったまま、藤堂についたら俺に一言も言わず、運転手が開けるのを待たずに車を降りた。

あの静を怒らせたんだ。藤堂家から花沢へ苦情が来ることは間違いないだろう。
そして母親にもすごい剣幕で怒鳴られそう・・・それを考えたら頭が痛いけど、それよりも行きたいところがあった。

運転手に頼んで車を走らせたのは・・・牧野のアパートだ。


もう行くことがないだろうと思っていたその部屋にはすでに電気がついていて牧野が戻っていることを教えてくれた。
運転手を返して1人でこの階段を上がる。まだタキシードのまま・・・何とも言えない不釣合いな光景だけど。
そして牧野の部屋の前でチャイムを鳴らした。


小さな物音がしてドアチェーンが開いた・・・中にいるのは今日のドレスのままの牧野だった。
俺の顔を見るなり慌てて閉めようとしたのを、ドアに手をかけて止めた!

「牧野・・・ごめん、こんな時間に。話がしたいんだ・・・ここを開けて?」

「ダメだよ・・・中には入れられない。忘れ物を取りに来たのならここに持ってくるから・・・」

「そうじゃない!ちゃんと話したいんだ・・・!牧野、開けてくれるまで帰らないよ!」

そう言うとしばらくしてからそのドアがカチャ・・・と音をさせて開けられた。
ゆっくり開けたら目の前にはドレス姿の牧野が赤い顔をして立っていた。窓ガラス越しじゃなくて正面から見るその顔・・・。
また泣いたんだろうか・・・目が真っ赤で化粧もとれてる・・・でもそれは出会った頃の牧野の顔で安心した。
今日の牧野も綺麗だったけど・・・やっぱり飾らない牧野が一番のような気がして。

「ありがとう。開けてくれて・・・入るね」

「うん。でも片付けてないの。今日はこのパーティーのことがあったから朝早くてね。掃除も出来なかったの」

小さなこの部屋は1ヶ月前に出て行った時と何も変わってはいなかった。増えたものも減ったものもない。
この夏を過ごした、楽しい思い出が詰まったままのおもちゃ箱のような部屋だ。
俺の服が入っているはずのタンスの引き出しも、一番始めに俺が寝たベッドもそのまま・・・。

「何でだろう・・・すごく落ち着くんだ。ここに来ると・・・ここだと息が出来るよ。牧野・・・会いたかった」

俺は牧野を抱き締めた、牧野の手も自然と俺を包んでくれた。
堪えていたものが溢れ出すように牧野の目から涙がこぼれた。でも声は我慢している。きっと声まで出したら止まらなくなるから。

「ごめん・・・急にいなくなって。多分あのバスツアーで花沢の連中に見つかったんだと思う。牧野が仕事に行った後、すぐこの部屋
に花沢の連中が来たんだ。牧野に手を出しそうだったから・・・何も残す時間がなかったんだ」

「そう・・・類は自分で帰るはずだったのに先に見つかったのね・・・ごめんね、私があんなところに連れて行ったから・・・」

「違うよ・・・そんなんじゃない。ちゃんと自分で戻って、自分自身を取り戻したらまたここに・・・牧野の所に帰るつもりだったんだ。
でも、いざ帰ったら監視が厳しくて、前よりも自由がなくなってしまったんだ・・・バカだよね」

牧野は涙を拭くと俺から離れた。
そして嘘っぱちな笑顔を作って、笑いながら静の事を聞いてきた。

「随分綺麗な人と一緒だったのね。すごくお似合いで見てたら羨ましかったわよ?あの人が家の決めた人なの?
良かったじゃない・・・素敵な人で、本当に・・・お似合いで・・・」

その言葉とは裏腹にまたポロポロと涙を流す牧野・・・泣き笑いなんて初めて見るよ。

「違うよ。彼女は親に頼まれてエスコートしただけ。向こうも俺の事は何とも思ってないよ」


そして牧野は引き出しからスマホを持ってきて俺に差しだした。
何故かここに置いておきたかった俺のスマホ・・・ここに置いておけば牧野と繋がっていそうな気がしたから。

「他のものは私が買ったものだから類はいらないでしょう?これだけ持って帰ってね」

「嫌だ・・・!帰らない。やっぱりここを出てからわかったんだ・・・いくら花沢で働いても追いかける夢がないと何も出来ないって!
俺と一緒にいて欲しい・・・!俺の夢になっててよ・・・」

「無理を言わないで・・・テレビでニュースも見たわ。私だってやっとわかったのよ、類とは住む世界が違ったんだって・・・。
でも嬉しい・・・一夏の思い出が出来た感じがしたから。ねぇ、類・・・我儘を聞いてくれる?」

「なに?我儘って・・・」


「今日はここに泊まって?・・・これで最後にするから・・・」

そう言って牧野の方から俺の首に手を回してキスしてきた。
その頬にはまた涙が流れていて、少し震えながら俺の身体を抱き締めていた。


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Comments 2

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2017/08/28 (Mon) 22:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

いや・・・そこまでガンバっては書きませんが(笑)
ほんのちょっと書くだけです。このお話、そこまで詳しいのいらないですよね?

最近このシーンが例え少しでも続いてるような気がして怖いんですけど。
やっとこの猫も飼い主の所に帰れそうで嬉しいです~!

8月中に終わらせようとしたから後半駆け足になっちゃって!

何が書きたかったか全然わかんないまま終わってしまいそう!ごめんなさいっ!

でも、いつも来ていただいてありがとうございます!

2017/08/29 (Tue) 00:21 | EDIT | REPLY |   

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