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plumeria

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「あきら・・・こっちよ・・・私についてきて・・・」

少女がそう言うと今まで金縛りにあっていたかのように動かなかった足がゆっくりと動き出した。
怪しく微笑みながら少女の手は俺の右手を掴んでいて、少しだけ力を入れて引っ張っていく。

そして湖の畔に来たときに少女の身体はその湖面を沈まずに歩いていった。
まるで体重を感じさせない・・・宙に浮いているというよりもやはり湖面を歩いているように見える。
だけど俺はそうではなかった・・・誘われるように前に進むと俺の足は湖の中に沈んでいく。
水の音をさせながらゆっくりと俺だけは湖の中に入って行った。

「そう・・・そのままゆっくりでいいの。私についてきて・・・怖くないから」

怖いとは思わなかった。
でも自分の意識の中でこのままだと確実に俺の命はこの少女に奪われるんだということも理解していた。
それでも・・・俺の足は少しも止まろうとはせず、言われるがまま前に進んでいた。

そして俺の首まで湖面が来たときに少女の身体もゆっくりと湖の中に沈み始める・・・


その後すぐに俺たちは完全に水没した。


********


「あきら・・・眼を開けても大丈夫よ・・・ほら、ちゃんと話せるでしょう?」

「あれ?・・・ここは水の中なのか?何故話せるんだ?」

確かにこれは湖の中で少女の髪は前と同じくゆらゆらと漂っていた。
俺も同じ・・・これはあの時に見た夢の中のように水の中だというのに息苦しくもなく・・・ごく普通に話が出来た。


「そろそろ教えてくれてもいいだろう?君は誰だ?17年前に俺と一緒に溺れたのは君か?」

「思い出したの?そうね、あきらが溺れた私を救ってくれたのよ。見せてあげるわね・・・」

すっと伸びてきた少女の指が俺の額に当てられて、その先は眩しい光に覆われた。


それは俺の脳に直接送られてくる映像だろうか・・・確かに3歳の俺がこの森で遊んでいた。
たった1人で、遠くに見える親父からわざと逃げて喜んでいる。どんどん奥に入り込んで行く幼い俺・・・
やがて振り向くともう親父の姿も見えないし湖畔にあったボート小屋も見えない。

少し心細くなったけど好奇心の方が勝った俺はまだ奥の方へ進んでいく・・・そしてとうとう森に迷い込んでしまった。
もう方向がわからないんだろう、眼の前にある自分の背丈ほどの草むらを掻き分けて行くと少し広い場所に出た。
そこには何か鳥の鳴声がする・・・それは何かと戦っているかのような鳴声で同時に猫のような呻き声も聞こえた。

「なに?なにかいるの?・・・ケンカしてるの?」

恐る恐る近づいたらその少し先で見えたものは白い鳥が大きな山猫に襲われているところ・・・!
もうその羽は血まみれで襲いかかる山猫に必死で抵抗しているけどすでに決着はついているようだった。
でも諦めずに最後の力を振り絞ってその白い鳥は逆に山猫に襲いかかる!鬼気迫る光景だった!

小さな俺がそこに走り寄った!白い鳥を助けようとでもしたのか・・・

「やめろっ!弱いものを苛めたらダメなんだぞっ!ママがいつもそう言うんだからっ!」

この山猫は恐らく体格は大きな方だと思う。3歳の俺では逆に襲われたら怪我しかねない大きさに見えた。
それでも勇敢に小さな俺はこの1羽と1匹の戦いに間に入ってその白い鳥を抱き締めている。

「まだこの子を苛めるんならこの美作あきらがあいてになってやるっ!来るなら来いっ!」

山猫はすごく高く飛び上がって俺と鳥に襲いかかってきた!でも、そこは小さいながらも男は戦えと教えられた俺!
そこにあった木の枝を掴んでその山猫の頭に向かって投げつけた。
偶然なのかもしれないけどそれが命中して山猫は森の奥へと飛び跳ねて消えていった・・・。

「行っちゃった・・・。あっ!大丈夫かな・・・この鳥」

急いでその鳥を見たけどもうすでにその鳥は息をしていなかった・・・。
まだ暖かいその身体を抱いてやって・・・そのあと静かにそこに寝かせてやった。



そこまでを俺と同時に少女はその脳裏で思い出していたのだろうか・・・涙を流していた。
ここは水の中なのに、ちゃんとわかるほど少女の眼からは涙が流れているのがわかった。

「君なのか?・・・今の白い鳥・・・あれは白鷺だな。君はその化身なのか?」

「あれは私じゃないわ・・・あれは私の夫よ・・・」

「・・・え?」



そしてまた続きと思われる光景が脳裏に浮かんできた。

その後に後ろの湖からバシャバシャと何かが水面で暴れる音がした。
小さな俺はビクッとして白い鳥をそこに残して湖を見に行く・・・そしてそこで今にも沈みそうな1羽の鳥を見つけた。
同じように真っ白な鳥・・・この鳥の仲間だろうか、この争いで怪我でもしたのかそれとも足を水草にでも絡ませたか・・・
よく見たらその足に水草が引っ掛かっている!

それを外せばこの鳥だけでも助けられる・・・そう思った俺は無謀にもこの湖に飛び込んだ。
もちろん初めは深くなんかないし、その鳥はそこまで深いところにいるわけでもなさそうだ。
だから必死にその鳥の側まで行って絡まった水草を取ろうと藻掻いていた。

でもその鳥も急に来た人間に驚いて当然だが暴れている。
それを押さえ込みながら、たった3歳の俺が1人でこの鳥を助けようと必死だ・・・。

やっと水草が取れたときに水底で足を滑らしたのか俺が体勢を崩してその鳥を抱えたまま水の中に沈んだ!

「うわぁっ!!パパッ!ママァッ!助けてっ・・・!」

そう叫んでるけど近くには誰もいないから助けてなんかくれない。

「いやだぁっ!死んじゃうよぉっ!誰かっ・・・誰かっ・・・!

白い鳥も羽をばたつかせて俺と一緒に水しぶきを上げていた!
バシャバシャと藻掻いていると今度は俺が力つきて・・・その身体がゆっくりと湖に沈んだ。

落ちていく水の中で・・・誰かが俺に声を掛けてくれている・・・。


『助けてくれてありがとう・・・私の夫は私の為に戦ってくれていたの。でも、ダメだったようね・・・。
それでもあなたは最後に救ってくれたのね・・・山猫に身体を取られなくて良かった・・・本当にありがとう』


その声が消えると共に俺の身体は今度は上昇していく・・・そして湖面に顔を出した。
もちろん意識なんてなくて、ただ顔を沈めることなく浮かんでいた。

その後だ・・・騒がしくなってきて俺を見つけた救助隊員と家族の悲鳴が聞こえる。
小さな俺がそうして助けられていく時にこの湖からその残されたメスの白い鳥は飛び去っていった。

結局俺はこの白い鳥を助けたのかもしれないが同時に助けられたわけだ。



少女の指が俺の額から離れて・・・ゆっくりとお互いを見つめ合った。

「思い出してくれた?・・・言ったでしょう・・・あきらは私を助けてくれたの」

「でも、君には相手がいたじゃないか・・・死んでしまったら今度は俺を愛したというのか?」

「・・・ひどいと思うの?・・・でもそう言われても仕方がないわ。寂しかったんですもの・・・独りぼっちで。
だからね・・・今からあなたを私のいる世界に連れて行くの・・・」

「え?・・・うわぁっ!!・・・ゴホッ・・・!」


その言葉が終わった途端、俺は急に息が出来なくなって本当に水中に沈んだ状態になった!

ゴホッ・・・!と口から息が漏れて泡のように水中に広がった。
苦しくなって上に上がろうと藻掻いたら下にある水草に自分の足が絡まっていた!
このままだと溺れてしまう・・・!必死に水草を取ろうと手を伸ばすけど届かなくて・・・!


「ごめんね・・・あきら。でも・・・私はあなたが欲しいの・・・」


mori11.jpg
オカルトでもミステリーでもなく
あきらくんに似合うファンタジー・・・もしくはメルヘンの世界と考えてください。
ダメか?
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2017/08/10 (Thu) 18:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!・・・爆笑しました!

このお話でそのコメントはあまりにも・・・おかしすぎてしばらくお腹が痛かった!
いや、もちろん最後につくしちゃんは来ますけどね・・・それよりも・・・お腹が痛い!

あきらのヤバいがそこツ?!

今日はこの続きが書けないかもしれません!
いや、助けないと死んじゃう!今から助けてきます!

はー、痛かった!

2017/08/10 (Thu) 20:56 | EDIT | REPLY |   

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