FC2ブログ

plumeria

plumeria

京都でも東京と同じく茶道教室の講師や雑誌の取材、支部の会合などに出席したがどこに行っても聞くのは元哉の頼りなさ。
これだといつになっても東京に戻れる気がしなかった。お先真っ暗っ・・・て言葉が頭を過ぎった。
仕方がないから禅寺修行にも付き合い、体力作りまで指導するハメになった。

もともと身体が弱いのかも知れないが立、ってるだけで頼りなく見えるってのはどういう事だ?
自分の従兄弟ながらこんなに弱い男だとは思わなかった・・・。

「だから!ここで腹に力入れないとしっかりと茶を点てられないだろう!そうしたら飲む方だって美味くないんだって!
自分で点てたものを飲んだことあるのか?・・・まさか、そこから教えなきゃなんないのか?」

「す・・・すみません!ここに座っただけで緊張するんです!・・・正客がいなかったら何とかなるんですけど」

「そりゃ、茶会じゃねぇだろ。客抜きで成り立つかっ!・・・牧野を呼んだら良かった・・・体力作り担当で」


筋は悪くないんだろうと思う。稽古でやる分には問題はない。
ただ客の前で出来なかったらどうしようもない・・・根性のたたき直しをするには大人すぎる。
どうしたらいいんだか・・・悩むけど解決もせず時間だけが過ぎていく。そしてもうすぐ野点が行われる時期まできた。


「元哉もこの野点は亭主を務めろよ。俺と家元夫人もやるけど人数が多いからお前にも相当数の客を持ってもらうからな。
野点・・・まさか初めてとか言わねぇよな?経験済みでいいよな?」

「一応、父と母を客と見て練習したことはありますがそれ以外はないんです。何故か父がしなくていいと・・・」

「・・・マジで?それって経験なしってことか?釣釜って・・・出来るんだろうな?」

「釣釜は家にはありますけど・・・」
「使えなきゃ意味ねぇだろ!お前、俺が言ってることを理解してるのか?」

これは酷いっ!ヤバくねぇか?野点で一応西門の血筋のものが釣釜出来ねぇと・・・!
そうじゃなきゃ素人でも出来る野点じゃねぇか?一瞬、目眩がした。学校の茶道部じゃねぇだろうに!

「特訓だな・・・!元哉、すぐに茶室に来いっ!」
「はいっ・・・!すみませんっ!」

こんなことで東京に帰るのを伸ばされたくはない!
しかもこの元哉を牧野が見たら絶望するかも知れない。俺は大急ぎでこいつに野点の稽古を付けることになった。
今からやっても完璧には出来ないだろうが、ここで失敗したらマジで京都に引っ越せと言われかねない。

どうしても元哉には形だけでも覚えてもらって、後は俺とお袋でなんとかカバーすることになるだろうけど。


俺が牧野に来いと言った野点・・・元哉のことは気になるが牧野に久しぶりに会えると思うと何となく浮かれてしまう。
浮かれてしまうがその前にこの問題児で頭が痛かった!

「総二郎さん・・・釣釜って釣るんですよね?」
「・・・1回、殴ってやろうか!元哉!」


*******


そして野点の前日、お袋付きでも牧野がこっちに来ると思うと妙に落ち着かなかった。
周りがみてもわかるほどソワソワしてたのかも知れない。金井支部長が俺に声をかけてきた。

「今日はヤケに落ち着きがないですなぁ・・・明日の野点に東京から家元夫人が来られるからですかな?確か総二郎さんの
お相手の方もご一緒されるんでしたねぇ。そのように以前お聞きしましたが・・・なぁ、総二郎さん」

「はい、まぁ・・・そんなところですかね。そのうち京都でも正式に紹介させていただきますよ。金井支部長」

「さぞやよう出来た娘さんなんでしょうなぁ・・・西條の縁の方やそうで。・・・楽しみですなぁ」

「・・・どうぞ、お手柔らかに。まだこの世界に慣れておりませんので・・・」


俺の方を見てニヤリと笑ってやがる。
もう牧野のことも調べ済みじゃねぇか!もしかしたら牧野に手を出して俺から遠ざけて、匂わせていたどこかの娘でも
出してくる気じゃねぇだろうな・・・。こっちに来てすぐの会食で会った、張り付いた笑顔の女・・・清武ゆかりって言ったか?

「野点には総二郎さんの他に家元夫人の茶席もあるそうですなぁ。こっちの後援会の連中が楽しみにしてましたよ。
その、お相手の方は点てられますのかな?出来たらお点前を・・・」

「野点の稽古はしておりますが、まだそこまでは・・・。西門では野点といえどある程度の作法は取り入れておりますので
難しいものです。手慣れたものでないとかえって失礼になりますからね。今回は勉強させていただくだけですよ」

「さようですか。まぁ、いいでしょう」

実のところ、牧野がどのくらい稽古しているかなんて見てないからわかんなかった。
確かに最近の野点は庶民感覚で行われてるものがほとんどだ。まさかとは思うがお袋・・・ちゃんと教えてるよな?


*********


夜に牧野に電話をかけた。

「もしもし?つくし・・・もう明日の準備出来たのか?あの着物持って来いよ?俺が着せてやるから」

『うん、もう準備したよ!今日は朝からおば様も忙しそうだったよ。それでね・・・』

相変わらずマシンガントークで1日の出来事を何日分も話すからはっきり言って覚えられない。
でもその元気な声を聞いただけで嬉しかったから、うんうんと頷いてはいたが中身はさっぱりだ!
覚えてるのは会いたいって言葉と大好きだって言葉・・・何回その言葉が出たかわかんねぇぐらいだったな。

「明日は何時にここに着くんだ?昼過ぎかな・・・俺は打ち合わせが入ってるんだけどお前が来るときには一乗寺の家に
戻っておきたいんだ・・・まだ時間決まってないのか?」

『うん・・・多分11時頃の新幹線だったと思うよ。おば様に任せてるからわかんないの。今日も一日中ソワソワしてたわ。
間違えてお昼ご飯に家元のお茶碗で食べてたもん。みんなで大笑いしたわ』

「そんなもんか?今までだって俺と口きかない日なんてザラにあっただろうと思うけどな」

お袋の話よりも牧野の言葉が欲しくて電話口でわざとその一言を誘う。


「なぁ・・・俺がここで何してるか気にならねぇの?」
『え?・・・気になるよ?だって見えないんだもん。ちゃんと食べてるのか、ちゃんと寝てるのか・・・とか?』

「1人じゃ寝られないんだって・・・お前は?」
『なんで寝られないの?私はよく寝てるよ。最近は夜も寝やすいじゃん!いい季候だし・・・』

「・・・そう意味じゃねぇよ!隣が広過ぎんだよ・・・手を伸ばしても誰もいないし」
『また、キングサイズに寝てるんでしょ?そう言うんならシングルにしたら?1人分だから広すぎないよ?』

プッと吹き出したら牧野も電話の向こうで笑っていた。
やっぱり全然色気がねぇや!それでこそ牧野だって思っておかしくなった。
確かにここでこいつがピロートークめいたことを言うとは思えねぇしな。



『わかってるよ・・・総二郎。明日は一緒に寝てあげるよ・・・じゃあね!』

「え?・・・あっ、おい!つくし?!」

もう無音になった電話・・・久しぶりに聞いた俺の名前を言う牧野の声

絶対に切った後で自分が真っ赤になってんだろうな!その顔を想像したら明日が待ち遠しくて仕方なかった。


明日はあいつを抱き締めて寝られると思うと、今日の金井の言葉なんてどこかへ消えた。


KOI17.jpg
関連記事

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/08/26 (Sat) 17:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは~❗

釣釜は釣るんですよ。動いちゃうから扱いが大変みたいですよ?
多分、彼は情けなさすぎて親の方が疲れたんですよ。
ってことを書けばよかったのね?わかりにくくてごめんなさい!
総二郎に似てるのに、ナヨナヨしてるイメージで思ってくださいね!

さて、お先に言わせていただくと、プチバージョンがあります。あくまでもプチ!

プチだから!←くどい?

2017/08/26 (Sat) 18:25 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply