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昼過ぎてからお袋と牧野は京都一乗寺にある別邸に着いた。
ものすごい勢いで走ってくるかと思ったが、しばらくみないうちにすっかり立ち居振る舞いが美しくなっていて
家元夫人としての顔を作ったお袋の少し後ろを控えめに歩いてくる。
ここ京都の使用人達は滅多に会わない「家元夫人」に整列して頭を下げていた。

玄関先で出迎えた俺を見つけて少し顔を赤くしたようだけど、初めての弟子もいる中で必死に本性を隠しているようだ。
その見慣れない牧野の姿に吹き出しそうになった!


「まぁ。総二郎さん!元気にしていたかしら?・・・あら?少し痩せたんじゃないの?」

「・・・そんなことねぇよ。親父も元気か?・・・で、つくし、どうしたんだよ」

お袋の後ろで隠れるように立っている牧野は俺がそう聞くと顔だけ出して返事をした。

「別に・・・お元気そうで安心しました」

なんだ?その中学生みたいな挨拶は・・・もう少し色気のある言葉は出なかったのか?
1ヶ月も会えなかった恋人に対して安心したはないだろう!おまけに顔まで隠すほど恥ずかしいわけじゃないだろうに!
昨日はあんな大胆な電話の切り方をしたくせに・・・そう思うと笑いが止まらなかった。

「ふふっ・・・つくしちゃんったら昨日から落ち着かなくてねぇ、多分寝てないのよ。可愛いわよねぇ!
では、私はお邪魔だからこのまま消えるわ。先に金井支部長のところに挨拶に行ってきます。その方が総二郎さんもいいでしょ?
つくしちゃん、また夕食の時に会いましょうね」

「はい。家元夫人、気をつけて行ってらっしゃいませ」

牧野は西門に入ってからプライベートの強い時はおば様、仕事モードの時は家元夫人で使い分けている。
今使用人も大勢いるから家元夫人・・・ってことだ。
そしてお袋はこの別邸の管理人にだけ挨拶をして、そのまま車で支部長の所に向かった。


使用人達はみんな持ち場に戻り牧野と2人になった。
牧野を俺の部屋に通して荷物を置かせると、すぐに俺の両腕は牧野の身体を後ろから抱き締めた。

「なんだよ・・・調子狂うじゃん。飛びついてくるかと思って楽しみにしてたのに」

「少しは色んな意味で成長したとこみせたいじゃないの。飛びついたりしてこっちの人に変な噂されたら西門さんの
仕事の邪魔になると思ってさ・・・」

「あれ?もう総二郎じゃなくなったんだ?・・・今は二人っきりだけど?」

抱き締めてる手が強くなる・・・牧野が少し振り向いたからそのままキスをした。
すぐに身体ごと俺の方を向いて牧野の手も俺の背中に回る。ものすごく嬉しそうな顔をして・・・。

「なんだか懐かしい香りがする・・・時々お部屋の掃除をするの。そうしたらこの香りがするんだ・・・」
「俺の部屋?使ってないのに掃除すんのか?」

寂しくなったら掃除と言って俺の部屋に入るんだって牧野はそう言った。
誰もいない部屋にいる方が寂しくなりそうなのに、俺の香りがするから落ち着くんだと・・・。
そんなことを言われたら今すぐあの部屋に帰りたくなるのに。

「まだ1ヶ月しか経ってないのにそんな弱気でどうすんだ?少しは家のこと覚えたのかよ」

「うん、おば様は意外と厳しいのよ~!これでも、お茶にお花は毎日でしょう?最近は道具のお勉強が始まったわ。
全然わかんないけど・・・もう掛け軸なんて言われたら全然わかんなくて困ってるの・・・どうしよう」

「そりゃまたお袋も張り切ってるな!お前にはまだ早いかも知れないけど、客を迎える準備から自分でやるようになったら
少しは覚えるさ。それをやるのはまだ先・・・少しずつでいいさ」

京都もそろそろ紅葉が見頃になってきて、この一乗寺の別邸の紅葉も紅く染まり始めていた。
もう少し先が本格的な紅葉シーズンだけど牧野が庭を散歩したいと言うから裏山を2人で歩いていた。
その間も牧野の話は止まらない。もしかしたら何度も聞いてるかも知れない話だけど・・・。


「・・・東さん、相変わらず良く来るのよ。気になる?」

「別にならねぇけど・・・なんで来るんだよ。また、あの部屋に入ってんのか?どっちにしてもお前はもう事務所には
いないんだから話すことなんてないだろう?」

「そうなんだけどね。いま、西門さんの着物を作ってるの、私が選んでね・・・おば様に助けてもらって大変だったんだから!
男物ってどれを見ても同じように見えるから違いがわかんなくて・・・でも楽しみにしててね!」

俺の着物を選んだって?・・・そりゃ、牧野はまだ知らないんだろうけど。
その仕事は家元夫人にしか許されてない仕事なんだぜ?それをしたって事は・・・もうお袋は暴走してるとしか思えないな。
そしていつの間にかまた西門さんに戻ってるけど。

「ここでもお仕事どうなの?上手くいってるの?・・・えっと、元哉さんだっけ?」

「あぁ・・・思った以上だったよ。明日会うから自分で見てみな?笑えるかも知れない」

「え?・・・どういう事?どんな人なの?」

「俺よりもお前の方が元哉を鍛えるのに向いてると思うぜ?絶対毎日特訓したくなると思う。そうだな、まずはランニングから
始めたくなるだろうよ!俺、想像して笑ってたからな、お前が元哉を鍛えるとこ!」

眉間に皺寄せてるけど元哉が俺たちを邪魔してんのは確かだ。
まずは明日・・・元哉がどのくらいやってくれるのかが問題だ。

「元哉さんって西門さんに似てるの?」

「顔は結構似てる。性格は・・・正反対だと思え」

「はぁ・・・真面目なんだね」
「どういう意味だ?」


********


そして夕方、お袋も入れて3人で食事をした。この顔での食事は久しぶりで酒も美味かった。
例のごとくお袋は喜びすぎて飲み過ぎたため、いつもより早くにダウンした。
テーブルに伏せて寝てしまったのか、声をかけても返事もしなくなった。

「まったく・・・自分の年を考えて飲めってんだ!ちょっと部屋まで運んでくるから、お前はもう部屋に戻ってていいぞ」

「うん。おば様、明日は大丈夫かしら・・・本当は私よりもおば様の方が寝てないと思うんだけど」

「大丈夫だろ。この人、こう見えて酒には強いから明日はちゃんと動けると思うぜ。それより動けないのはお前の方だと思うけど?
ここの片付けはしなくていいからな」

俺の言葉の意味がわかったのか、牧野は真っ赤な顔をして小走りで部屋を出て行った。
そして俺は気がついていたんだ!この人の下手な芝居に!

「お袋・・・もういいから自分で立てよ!なんでそんな気を遣ってんだよ。バレバレなんだけど!」
「あら、そうだったの?やだわ、この子・・・そんな所だけ見抜かないでよ」

「息子の夜をイチイチ心配すんな!言われなくても節度だけは守ってやるから!マジでびっくりしたぜ、あのくらいの酒で
酔うわけがねぇだろうが!」

「だって・・・ここの方がお部屋の距離が近いんですもの。私が爆睡してると思わせないとつくしちゃんが恥ずかしいでしょう?
違うの?総二郎さん・・・あの時は困ったんだけど?」

「・・・・・・」

あぁ、俺があの家を出る前の事ね。
そう言えば牧野を叫ばせてしまったような気がする。


「今日はそこまで心配すんな。自重するから・・・」
「それがいいわ。明日がありますからね!じゃあ、お休みなさい・・・ほほほ」

自分の親にこんな事言われるのは俺だけじゃねぇかな。


部屋に戻ったら、牧野はどうしていいかわかんないって顔で待っていた。
その目を見たらもう我慢が出来なくて、すぐにこいつを自分の胸の中に抱きかかえてしまった。

「つくし・・・待たせたな。昨日の言葉、約束だからな」
「総二郎があんな事言うから、ちょっと言ってみただけだよ・・・明日があるからおとなしくしようよ」


「そんなわけねぇだろ?俺を誰だと思ってんだよ・・・来いよ、つくし」

お袋との会話なんてもうすっかり忘れていた。
この日も牧野を朝まで離せなくて、何度も声をあげさせた。
1ヶ月ぶりの牧野の身体はあの時を思い出させる・・・1つだけ変わったのは怖がらなかったこと。


「今日はベッドが広くなかったな・・・やっぱり、たまにはこうしてないと恋って冷めるからな」
「うん・・・総二郎、大好き・・・」


明日の朝・・・またお袋に文句言われるんだろうな。


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Comments 2

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2017/08/27 (Sun) 23:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!爆笑!

プチバージョン!そうなんですよ。だって1Rでいいんですもん!
もういいでしょう!と、言いながらこのお話、最後になるほどこのシーンが多いのはなぜ?
ここだけの話(にはならないけど)プチバージョン、あと2回あります!大盤振る舞い!私にしては!

もうすぐ終わるでしょう?次のお話しがシリアスだからです。
今のうちに爆発するんです!(大したことないくせに)

この家元夫人、最後まで面白い人になってしまった・・・。

2017/08/28 (Mon) 01:17 | EDIT | REPLY |   

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