不束者ではございますが・92
流石に病院では抱くことも出来ず・・・そう言ったらつくしに殴られたけど、俺はゲストルームじゃなく、病室のデカいベッドでつくしと並んで寝てた。
不味かったのは着物が邪魔だからそいつを脱いで、ここにあったガウンを着てたこと・・・それが肌蹴てたから上半身がモロダシだったこと。そうしたら朝1番にやって来た看護師に悲鳴を上げられ、その後看護師長に大叱られ。
まぁ、そんな事は気にもしないが、朝食後の検温やドクターの回診の時はゲストルームに追いやられた。
ドクターからは「問題無し」との事で退院許可が出たが、警察も事情を聞きに来るというのでそのまま待機。
それを待つ間に馴染みの店に電話して、俺とつくしの服と下着、追加でメイク用品を持って来させ、宗家にも午後には戻るから俺の仕事を考三郎に頼むと連絡。
あいつはクリスマス休みを奪われて騒ぐだろうが、そんな事は知ったこっちゃない。
「うわ、可愛いワンピにコート・・・ブーツもフカフカ♪」
「クリスマスプレゼントだな」
「あはは!事件のおかげで得しちゃった」
「嫌な事はこれで忘れちまえって事だ。でも今から真実を聞くんだけどな」
「・・・・・・うん、大丈夫。もうこれで最後だろうし」
「あぁ、心配ねぇよ」
つくしが着替えてる間に自分も着替え、俺はブランドショップが持って来た袋に着物を突っ込み、つくしの目に入らねぇようにした。
丁度その時に看護師から警察の到着を知らされ、病室でこれまでに判った内容を聞く事になった。
刑事ドラマみたいに年寄りと若者のコンビ・・・歳上の方が椅子に座り、つくしに穏やかな笑顔を向けて安心させようとしていた。
「いやいや、申し訳ありませんな、病室にまで押し掛けて。具合はいかがですか?」
「はい、特に問題はありません」
「被害は着物だと聞きましたが、被害届を出されるなら・・・」
若い方からそんな話が出たから、横から俺が「うちの弁護士が動くから」と伝えると無愛想に喋るのをやめ、年配の男の方が昨日の事件発生時の状況についてつくしに少しばかり聞いていた。
それは夢乃の話と一致していたようで、その場で気を失ったつくしにはそれ以上追求は無く、逆に俺が提供した寺内希代達の話に移った。
それも聞いたのはつくしじゃねぇから本邸にも聞き込みに行くと言うが、それは使用人に正直に話さすように言えばいいだけ。ついでに今まで起こった小さな事件も説明することになり、既に寺内希代は先日警察に捕まってるから刑は重くなるだろう。
その辺は総て警察に任せる事にして、俺は白石の供述内容を聞いた。
何故、あの3人と白石が手を組んだのか・・・
「昨夜西門さんから電話いただいたので白石に聞いたんですよ。そうしたらそれまで黙秘していたヤツが観念したらしく、話し始めたんですが」
「どうやら飲み屋で西門さんの名前を出してたのを、その3人の中の1人に聞かれたようです。随分と・・・その、悪く言われていたようですがね。それを聞いた女の方からこの計画を持ち掛けられたようですよ」
「名前は?」
「中原須美と言う女です」
「中原さん・・・って、口切りの茶事の時の?」
「あぁ、そうだな。もう1ヶ月半前にクビになったヤツだ」
もう西門には居ないから夜遊びし放題・・・そう言う場に偶然居合わせたと言うワケだ。
運がいいと言えばいいのか悪いのか・・・中原のニヤけた顔が脳裏に浮かんだ。
「今朝早く中原須美に任意同行を求めたら素直に応じたので警察で事情聴取に入ってます。白石の供述通りだと、本来の依頼とは随分違うようですけどね」
「えっ?本来の依頼と・・・」
「中原達が頼んだ事と白石がやったことは違うって事か・・・」
「どんな内容だったんですか?」
「話してもらえるのか?」
「・・・・・・これもねぇ・・・かなり悪質なんですが・・・」
まだ中原、高田、寺内の供述を照らし合わせてないが、白石の吐いた内容に間違いはないだろうと付け加えて警察が教えてくれた内容は・・・違う意味でゾッとするものだった。
3人は俺に恨みがある白石を仲間に引き入れ、狙ったのはつくし。
その方が俺に与えるダメージが大きいと唆したはず・・・俺自身を傷付けるのは難しいと判断したんだろう。
招待客に紛れて中に入り、俺を確認・・・一緒に居たつくしをターゲットにして、俺が側を離れたら上手いこと言って外に連れ出し、予め用意した部屋に連れ込む気だった。
でも、そこで見たのが夢乃・・・あいつのせいで自分は何もかも失ったと思っていた白石は急に憎悪の念に駆られた。
刃物は万が一の時に用意していただけで、中原達の指示じゃねぇだろう。
暴行だって充分な報復だが、大勢の前で傷害事件を起こせなんて命令するはずが無い。ましてや刃物なんて一歩間違えたら殺人教唆だ。
「夢乃に・・・今泉夢乃にその事は伝えたんだろうか・・・」
「はい、伝えてあります」
「昨夜、お泊まりのホテルでお会いしましたので」
「旦那には?」
「初めは奥様お1人で聞くと言われましたので、そのように」
「詳しい事はご主人には内緒で、と聞いていましたから」
「それで納得したんだろうか・・・」
「最後に奥様と白石の関係を伏せて、中原須美達の供述通りに西門つくしさんを狙った犯行だったと説明しています。随分心配されてましたが、我々が帰る時にはホッとされてましたよ」
「今泉ご夫妻は本日の午前中、ご自宅に戻られるそうです」
説明が終り、つくしは放心状態・・・夢乃と話していなかったら、連れ出されて乱暴されていたかもしれないと聞かされたんだから当然。俺は自分と結婚したがためにこんな目に遭わせたのかと思うと、申し訳なくて・・・その震える手を握ってやることしか出来なかった。
「それでは我々はこれで」
「この事件について何かありましたらご連絡下さいね」
座っていた刑事が立ち上がり、今日の午後には宗家に来て使用人に事情を聞くと言い残して病室を出て行った。
「・・・・・・はぁ・・・」
「大丈夫か?」
「・・・・・・・・・うん。夢乃さん・・・帰ったんだね・・・」
「今度はちゃんと会いに行こうぜ・・・手土産持ってな」
「・・・・・・そうね」
**************************
着物が入った袋を総二郎が持ってくれて、反対側の手は私に繫がれたまま病院を後にした。
それが丁度お昼で、総二郎は疲れたから自宅でゆっくり食べようって言ってくれた。私もその方が良かったから頷いて、志乃さんに電話を入れてからタクシーに乗り込んだ。
宗家に着いたらすっごい勢いで出て来た家元夫人が私に抱きついてギャン泣きするし、家元は総二郎にあれこれ聞いてる・・・そして志乃さんが離れでゆっくり食べられるようにと手配してくれた。
「つくしさん、本当に大丈夫なの?ちゃんと頭の検査した?痛みはないの?」
「は、はい!全然平気です・・・ご心配お掛けしました」
「心配したわよ~~~~っ!!全然寝られなかったわよ~!」
「えっ!!そうなんですか?申し訳ありません、家元夫人・・・(私は爆睡したのに)」
「総二郎さんならどうでもいいけど、あなたは一応女の子なのに~~っ!」
「・・・・・・ははは」
色々引っ掛かる言われ方・・・それは総二郎も同じだったようで、大泣きしてるお母さんから私を捥ぎ取り、「とにかく部屋に戻るから!」と叫んでた。
その時に志乃さんに「午後から警察が来るから」と伝え、私が「スミレちゃんに話があることを伝えて欲しい」と頼んだ。
そしてまるで補導される中学生のような体勢で離れまで戻り、部屋に戻ったら・・・2人で脱力した。
すぐに運ばれて来たお昼ご飯・・・厨房の人がへたり込む私達を見て驚いてたけど、立ち上がる事が出来なかった。
「とにかく・・・食うか」
「そうね・・・お腹は空いたわ」
「くくっ・・・俺もだ」
「ふふっ・・・疲れたよね」
「よし・・・立てるか、つくし」
「総二郎が手を貸してくれたら立てるかも・・・」
「いきなりの甘えん坊か、お前は」
「いいじゃん♪」

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まぁ、そんな事は気にもしないが、朝食後の検温やドクターの回診の時はゲストルームに追いやられた。
ドクターからは「問題無し」との事で退院許可が出たが、警察も事情を聞きに来るというのでそのまま待機。
それを待つ間に馴染みの店に電話して、俺とつくしの服と下着、追加でメイク用品を持って来させ、宗家にも午後には戻るから俺の仕事を考三郎に頼むと連絡。
あいつはクリスマス休みを奪われて騒ぐだろうが、そんな事は知ったこっちゃない。
「うわ、可愛いワンピにコート・・・ブーツもフカフカ♪」
「クリスマスプレゼントだな」
「あはは!事件のおかげで得しちゃった」
「嫌な事はこれで忘れちまえって事だ。でも今から真実を聞くんだけどな」
「・・・・・・うん、大丈夫。もうこれで最後だろうし」
「あぁ、心配ねぇよ」
つくしが着替えてる間に自分も着替え、俺はブランドショップが持って来た袋に着物を突っ込み、つくしの目に入らねぇようにした。
丁度その時に看護師から警察の到着を知らされ、病室でこれまでに判った内容を聞く事になった。
刑事ドラマみたいに年寄りと若者のコンビ・・・歳上の方が椅子に座り、つくしに穏やかな笑顔を向けて安心させようとしていた。
「いやいや、申し訳ありませんな、病室にまで押し掛けて。具合はいかがですか?」
「はい、特に問題はありません」
「被害は着物だと聞きましたが、被害届を出されるなら・・・」
若い方からそんな話が出たから、横から俺が「うちの弁護士が動くから」と伝えると無愛想に喋るのをやめ、年配の男の方が昨日の事件発生時の状況についてつくしに少しばかり聞いていた。
それは夢乃の話と一致していたようで、その場で気を失ったつくしにはそれ以上追求は無く、逆に俺が提供した寺内希代達の話に移った。
それも聞いたのはつくしじゃねぇから本邸にも聞き込みに行くと言うが、それは使用人に正直に話さすように言えばいいだけ。ついでに今まで起こった小さな事件も説明することになり、既に寺内希代は先日警察に捕まってるから刑は重くなるだろう。
その辺は総て警察に任せる事にして、俺は白石の供述内容を聞いた。
何故、あの3人と白石が手を組んだのか・・・
「昨夜西門さんから電話いただいたので白石に聞いたんですよ。そうしたらそれまで黙秘していたヤツが観念したらしく、話し始めたんですが」
「どうやら飲み屋で西門さんの名前を出してたのを、その3人の中の1人に聞かれたようです。随分と・・・その、悪く言われていたようですがね。それを聞いた女の方からこの計画を持ち掛けられたようですよ」
「名前は?」
「中原須美と言う女です」
「中原さん・・・って、口切りの茶事の時の?」
「あぁ、そうだな。もう1ヶ月半前にクビになったヤツだ」
もう西門には居ないから夜遊びし放題・・・そう言う場に偶然居合わせたと言うワケだ。
運がいいと言えばいいのか悪いのか・・・中原のニヤけた顔が脳裏に浮かんだ。
「今朝早く中原須美に任意同行を求めたら素直に応じたので警察で事情聴取に入ってます。白石の供述通りだと、本来の依頼とは随分違うようですけどね」
「えっ?本来の依頼と・・・」
「中原達が頼んだ事と白石がやったことは違うって事か・・・」
「どんな内容だったんですか?」
「話してもらえるのか?」
「・・・・・・これもねぇ・・・かなり悪質なんですが・・・」
まだ中原、高田、寺内の供述を照らし合わせてないが、白石の吐いた内容に間違いはないだろうと付け加えて警察が教えてくれた内容は・・・違う意味でゾッとするものだった。
3人は俺に恨みがある白石を仲間に引き入れ、狙ったのはつくし。
その方が俺に与えるダメージが大きいと唆したはず・・・俺自身を傷付けるのは難しいと判断したんだろう。
招待客に紛れて中に入り、俺を確認・・・一緒に居たつくしをターゲットにして、俺が側を離れたら上手いこと言って外に連れ出し、予め用意した部屋に連れ込む気だった。
でも、そこで見たのが夢乃・・・あいつのせいで自分は何もかも失ったと思っていた白石は急に憎悪の念に駆られた。
刃物は万が一の時に用意していただけで、中原達の指示じゃねぇだろう。
暴行だって充分な報復だが、大勢の前で傷害事件を起こせなんて命令するはずが無い。ましてや刃物なんて一歩間違えたら殺人教唆だ。
「夢乃に・・・今泉夢乃にその事は伝えたんだろうか・・・」
「はい、伝えてあります」
「昨夜、お泊まりのホテルでお会いしましたので」
「旦那には?」
「初めは奥様お1人で聞くと言われましたので、そのように」
「詳しい事はご主人には内緒で、と聞いていましたから」
「それで納得したんだろうか・・・」
「最後に奥様と白石の関係を伏せて、中原須美達の供述通りに西門つくしさんを狙った犯行だったと説明しています。随分心配されてましたが、我々が帰る時にはホッとされてましたよ」
「今泉ご夫妻は本日の午前中、ご自宅に戻られるそうです」
説明が終り、つくしは放心状態・・・夢乃と話していなかったら、連れ出されて乱暴されていたかもしれないと聞かされたんだから当然。俺は自分と結婚したがためにこんな目に遭わせたのかと思うと、申し訳なくて・・・その震える手を握ってやることしか出来なかった。
「それでは我々はこれで」
「この事件について何かありましたらご連絡下さいね」
座っていた刑事が立ち上がり、今日の午後には宗家に来て使用人に事情を聞くと言い残して病室を出て行った。
「・・・・・・はぁ・・・」
「大丈夫か?」
「・・・・・・・・・うん。夢乃さん・・・帰ったんだね・・・」
「今度はちゃんと会いに行こうぜ・・・手土産持ってな」
「・・・・・・そうね」
**************************
着物が入った袋を総二郎が持ってくれて、反対側の手は私に繫がれたまま病院を後にした。
それが丁度お昼で、総二郎は疲れたから自宅でゆっくり食べようって言ってくれた。私もその方が良かったから頷いて、志乃さんに電話を入れてからタクシーに乗り込んだ。
宗家に着いたらすっごい勢いで出て来た家元夫人が私に抱きついてギャン泣きするし、家元は総二郎にあれこれ聞いてる・・・そして志乃さんが離れでゆっくり食べられるようにと手配してくれた。
「つくしさん、本当に大丈夫なの?ちゃんと頭の検査した?痛みはないの?」
「は、はい!全然平気です・・・ご心配お掛けしました」
「心配したわよ~~~~っ!!全然寝られなかったわよ~!」
「えっ!!そうなんですか?申し訳ありません、家元夫人・・・(私は爆睡したのに)」
「総二郎さんならどうでもいいけど、あなたは一応女の子なのに~~っ!」
「・・・・・・ははは」
色々引っ掛かる言われ方・・・それは総二郎も同じだったようで、大泣きしてるお母さんから私を捥ぎ取り、「とにかく部屋に戻るから!」と叫んでた。
その時に志乃さんに「午後から警察が来るから」と伝え、私が「スミレちゃんに話があることを伝えて欲しい」と頼んだ。
そしてまるで補導される中学生のような体勢で離れまで戻り、部屋に戻ったら・・・2人で脱力した。
すぐに運ばれて来たお昼ご飯・・・厨房の人がへたり込む私達を見て驚いてたけど、立ち上がる事が出来なかった。
「とにかく・・・食うか」
「そうね・・・お腹は空いたわ」
「くくっ・・・俺もだ」
「ふふっ・・・疲れたよね」
「よし・・・立てるか、つくし」
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