FC2ブログ

plumeria

plumeria

次の日の朝、一乗寺の別邸ではない小さな宿屋で朝を迎えていた。
隣で寝ている西門さん・・・久しぶりに見る寝顔に見とれて、その綺麗な横顔を眺めていた。
朝日が彼の顔に当たるようにさしてきて、眩しそうに眉間に皺なんか寄せてる。そしてゆっくり目をあけた。

「おはよ・・・総二郎」

「ん・・・あれ?もう朝?」
「うん・・・でもまだ早いよ。寝ててもいいよ」

「お前、いつから起きてたんだ?・・・一緒に起こしてくれたらいいのに・・・」

だって寝顔を見ておきたかったんだもの・・・なんて言葉は出せなかったけど、顔を覗き込んでいたら急に手が伸びてきた!
浴衣を簡単に身体に巻いていただけだからすぐにそんなものは外されて、彼の手が直接背中に回ってきた。

「イヤだ・・・ちょっと!もう朝だってば・・・総二郎っ・・・」
「関係ないって・・・まだ足りないんだよ・・・」

西門さんはそう言って私の上に身体を乗せると、また両腕を押さえ込んでキスしてくる。
逃げられない私はされるがまま・・・その後は夜の延長戦のような攻撃をうけてしまった・・・!

気がついたのはもう随分と時間が経ってから。痛むお腹を抱えながら横を見たら彼がいなかった。

「あれ?・・・総二郎、何処行ったの?」

慌てて身体を起こしたけど何も着ていなかったから、シーツを手繰り寄せて身体に巻いた。
よく見たら胸の回りに紅い痣が・・・他にもあちこちが凄いことになってる!これが噂に聞くキスマークっていうものなの?
恥ずかしくて自分の身体を見回していたら少し離れた所から笑い声が聞こえた。


「うそ・・・何で今度は1人で起きて優雅にコーヒー飲んでるの?ひどーいっ!」

「お前にも入れてやろうか?でもすぐにメシが来ると思うけど。あんまり気持ちよく寝てるから起こさなかったんだぜ?」

「誰のせいで・・・・・・!いや、もういいわ。朝ご飯来るならコーヒーもいい・・・あれ?浴衣は・・・」

浴衣を探したけど何処にもなくてシーツを巻いたまま布団から立ち上がった。
西門さんがクスクス笑うから睨んだら、どうも着られる状態ではなかったらしい。さっさとバスルームに片づけたと・・・。

「やだ、もう!着替えたいから向こう向くか目を閉じるかしなさいよ!」

「やだね!ここで見てるのも彼氏の特権だろ?気にしないで着替えろよ。早くしないとホントにメシが運ばれてくるぞ?」

「いつからそんなに意地悪になったの?怒るよ・・・ホントに!」

「怒ってもいいけど・・・ほら、足音が聞こえねぇか?」


西門さんがそう言うから耳を澄ませたら確かに人の声と足音が聞こえてきた。
この和室には隠れるスペースもないから、着替えるとしたら彼に丸見えになるのに!それでも楽しそうにこっちを見てる。
やっと「仕方ねぇな」って呟いて向きを変えてくれたから大慌てで服を着替えた。

まさかそれを窓ガラス越しに見ていたなんて知らなかったけど!


結局、朝ご飯はそれから15分も過ぎてから届けられた。
西門さんに聞いたら「寝坊して私の支度が遅れているから、朝食も遅らせるように頼んだ」ってあっさり言われた。
なんて恥ずかしい理由なんだろう!そして、持ってきてくれたのはここの女将さん・・・すごく綺麗な女性で上品な京美人。


「総二郎さん、今日は随分とごゆっくりでしたねぇ・・・こちらさんは総二郎さんのええお人ですの?初めて見るお方ですわねぇ。
今まではお泊まりになった事なんてないから驚きましたわ。ほんまに可愛らしい人ですこと・・・ほほ」

「女将さん、昔のことは言わないでって頼んだだろ?こいつがすぐに怒るんだから・・・」

「まぁ、総二郎さんと恋仲になるぐらいのお人でしたら、このくらいのこと何とも思わへんでしょう。でも、気をつけんといけませんよ?
この辺りにも馴染みの女性が随分といらっしゃいますでしょう?」

朝食の箸が止まる西門さん・・・その顔をチラッと見たらニヤって笑って私の方を見ている。
「そんなの昔の俺がやったこと」・・・またそういう気なのね?


「いいのよ、別に。そんなことわかってることだから。でも、この先は許さないんだからね!」

「お!流石だな。まぁ、心配すんな!この辺の女と遊んでいたのはもう5年ぐらい前だから!」


********


今日は珍しくお休みをもらったという西門さんは、京都の嵐山にある小さなお寺に連れて行ってくれた。
そこは観光名所なんて感じじゃなくて、少し山奥のひっそりとした場所・・・あの海と同じで彼の隠れ家のような場所らしい。
ここにも裏庭に一本だけ紅葉があって、それが綺麗に色付いていた。

「俺、ここがすっげぇ好きなんだ。京都でも何かで息が詰まるとよくここに来てこの景色見るんだよ。
お前には悪いけど今日一日ここでゆっくりしてもいいか?観光したいかもしれないけど、また今度連れてってやるよ」

「うん、いいよ。私ものんびりしたいから・・・」


紅葉がよく見える縁側で私が座ると、西門さんは隣で横になって私の膝に頭を乗せた。
そしてそのまま目を閉じて寝てしまった・・・なんだかとても気持ちよさそうに。
だからそんな彼の髪を撫でながら、この庭の紅葉とその奥の庭園を眺めていた。
ちょっと涼しい風が吹いて、さわさわと紅葉の葉が擦れる音がする・・・山鳥の声が甲高く響く。

どのくらいこうしていたんだろう、気がついたら西門さんも目を開けてて庭を眺めていた。


「早く帰られたらいいのにね・・・」

「あぁ、そうだな。長いことお前を見ないと退屈で死にそうだ」

また目を閉じて少し笑った・・・いつにまにか繋がれている手にそっとキスしながら。
夕方遅くまでお寺で過ごしてから別邸に帰った。


********


別邸に戻ると突然奥の方から足音を響かせて走ってくるヤツがいた。
どこのどいつだと思って叱ってやろうと振り向いたら、こっちに向かってくるのはお袋・・・家元夫人だった。
東京の本邸でもこの人が走る姿なんて見たことがないのに、しかも顔は何故か笑ってるんだが?

「なんなんだ!ここでそんな態度出すなよっ!正体がバレるぞ!」

俺の一言で我に返ったお袋は急に走るのをやめて辺りを見回した。それでも何か慌てた様子で小走りで近寄ってきた。

「そ・・・そうだったわね。でも、ちょっと急いでこっちに来て欲しいの!つくしちゃんも早くっ!・・・ねっ、こっちなの!」

お袋に急かされて奥の間に行くと、その先に見える庭に元哉とゆかりがいる。
相変わらずのゆかりの表情だったが、元哉の方はなんだか照れたように頭をかきながら・・・まさかここで説教させてんのか?

「何してんだ?あいつら・・・」
「仲よさそうじゃない?嬉しそう・・・元哉さん」

俺と牧野の声にお袋がニヤッと笑って続いた。

「どうもね・・・あの二人、恋してるんじゃないかって思うのよ」

「は?・・・牧野もそんな事言ってたよな・・・そうかぁ?どこが良いんだ、あんな女!」

「そんなことはどうでもいいのよ!さっきからゆかりさんがもっとしっかりしないとこっちの西門が危ないとか、総二郎さんが
来たから元哉さんが追い出されるんじゃないかとか言ってるのよ!・・・チャンスじゃないかしら」

チャンス?なんだか家元夫人の言葉とは思えねぇけど、牧野の方はそんなことよりも二人が上手くいくことの方が嬉しいらしくてエールを送ってた。

「何だよ・・・お前、俺たちが上手くいくより他のヤツらが上手く行く方が嬉しいのかよ!」
「私たちは上手くいってるじゃない!・・・でも、私たちの始めの頃よりは上手く進んでそうじゃない?あの2人・・・」


「・・・間違いないな!どっちかが素直だと早いからな」


こりゃ、元哉を鍛えるよりもゆかりに動いてもらった方が早そうだ。
俺の熱血指導よりも恋の力か・・・このあとも二人がじゃれ合ってるのを、部屋の中から3人で眺めていた。
もしかしたら元哉がやる気になって、俺の出番がなくなるんじゃないかって笑いながら、半分は本気でそう願ってた。


「私たちも東京ではこんな目で見られていたのかな。総二郎は気がついてた?」
「つくしほど鈍感じゃねぇよ!気がついてたけど・・・自分を変えるのに時間がかかっただけだ」

「総二郎さんより私の方が早く気がついてたわよ?連れてきたその日にこうなるって思ってたもの。凄いでしょ?」

俺と牧野が同時にお袋を見ると、得意げにふふん!と笑っていた。
いい加減、元哉とゆかりを見るのに飽きてきた俺たちは部屋へと戻った。そして夜遅くまで3人で飲んでいた。
今度会うのはクリスマス・・・それまではまた稽古に励むと、鬼師匠のお袋の前で笑いながら話していた。


次の日、お袋と牧野は東京へ帰っていく。
西門の決まりだから見送りは門の前まで・・・今日の車の中は牧野の方だ。

「じゃあ、また12月にね・・・お仕事、頑張ってね」
「任せとけ!ゆかりを利用させてもらうよ。つくしは利用なんかされるなよ?俺が帰るまで油断すんなよ!」

「は?なによ、それ!」

毎度のことだが意味がわかってない。
隣のお袋が心配すんなって顔を見せているから大丈夫だろうけどな。


ゆっくりと車が走り出す。後部座席でいつまでも手を振る牧野を溜息で見送った。


momiji.jpg
関連記事

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/08/30 (Wed) 14:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは✨

なーぜーかーなー!
なんでこんなに書いたのかなぁ。
くどいけどプチバージョン、あと一回ですから。(笑)
恥ずかしがり屋なのに…

まだ夏なのに秋の設計になってるからおかしいですよね(笑)もう少ししたらクリスマスシーンになります。

あはは!季節感ZERO!

今日もありがとうございました❗

2017/08/30 (Wed) 17:55 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply