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正月行事がすべて終わってから俺は再び京都に戻った。

ここでもやはり正月行事は続いていたが、なんとか元哉が1人で頑張ったらしい。
俺が戻ったときには結構疲れ切っていたが、その横には幾分表情が柔らかくなったゆかりの姿があった。
牧野が俺の後ろを歩くようになったのにも驚いたけど、ゆかりが元哉に頭を下げて送り出す場面にはもっと驚いた。
俺と違うのはそれに対して元哉も頭を下げるところだけど・・・あいつに威厳ってモノが出るのはまだ先になりそうだな。

それでも支部に顔を出すと金井の爺さんは機嫌を良くしていた。
正月行事は終わっていたけど、俺が戻ってきて今年初めての顔合わせだったため少しだけ酒に付き合わさせた。

「総二郎さん、せっかく来てもろうだけど元哉さんもなんやら本気が出たみたいやし、東京に戻れる日も近いと思いますわ。
あと少ししたらお父上も復帰できそうやし・・・なんとか今年は纏まっていけそうですな」

「そうですか、ありがとうございます。では金井支部長にもあの2人の応援をお願いできますか?私なんかが教えるよりも元哉には
良い先生のようですから。清武様にお話しいただけると嬉しいですね」

「総二郎さんはあの牧野さんとのことをお家元が公表されたと聞きましたが・・・京都にはお連れにはなりませんでしたか?」

「はい。彼女は家元夫人の厳しい稽古がありますのでね。ここが落ち着いたらまた連れてきましょう」

この爺さんとこんな話が出来る日が来るとも思わなかった。
よく考えたらこの2人をくっつけたのは俺と牧野じゃねぇか?礼の一つも言ってもらいたいくらいだ!

*****

京都の一月は東京よりも随分と寒さが厳しくて、特にこの一乗寺辺りは積雪も多い方らしい。
降り続いた時は雪のために支部へ出向くことも出来ず、別邸でゴロゴロすることもあった。
そんな時はこの土地に慣れたヤツらがこの別邸を訪れることもあり、ちょうどこの日も京都支部の若い連中がやってきた。

「総二郎さん、こちらの雪はすごいでしょう?東京ではここまで降らないでしょうからね。今日はもうお仕事はお休みでしょうから
良かったら一杯いかがですか?まぁ、私達はお邪魔した方ですけどね」

「よろしいですよ。この雪の中、良く来て下さいましたね。さぁ、どうぞ・・・」

男ばっかりで面白くもなんともないけど、断るわけにもいかなくてこの連中を別邸の客間に通して持参してきた酒を出した。
まだ昼間だから、そこまで大袈裟なもてなしではなくて、ほんの少しのつまみでテーブルを囲む。
大御所がいるわけでもなく、歳も近かったからすぐに打ち解けて話が弾んだ。

今までなら面倒くさくてこんな付き合いなんてしなかっただろうけど、これが全部俺の将来にかかってくると思い始めたら不思議と
重くは感じない。我ながら勝手だとは思うけど、守るものが出来た俺には、この面倒なものを我慢できるようになったってことだ。

そして話は10月終わりの野点の時に見た牧野の話になった。話を始めたのは桜井という陶芸家だ。


「あの時の女性は総二郎さんのお相手とお聞きしましたが、本当なんですか?家元夫人が随分と稽古をつけられているとか。
それにこの正月には後援会の皆様にご紹介されたそうですね」

「はい。まだ後援会への公表しかしておりませんけど、家元の許可もいただいておりますし、私が東京に帰ったときには正式発表も
されると思います。こちらの取引先の方にまでそんな話しが伝わってるんですか?」

「そうですか・・・はぁ、やっぱり本当なんだ・・・」

なんだ?こいつ。
いきなりやってきて酒まで飲んでおきながら、牧野の話で溜息つきやがって!

「牧野がどうかしましたか?桜井さんはもしかして牧野の茶席でしたか?あの時は野点の経験もなかったのでなにか不作法でも
ありましたか・・・まぁ、許してやって下さい。ほんの1ヶ月しか稽古が出来なかったものですからね」

そう言うと別の男が笑いながら俺に酒を注いできた。

「違いますよ、総二郎さん。桜井はあの時以来彼女のことが忘れられなくて、ろくに窯入れも出来ないんですよ!
それでどうしても確かめたいってここに来たわけです。私たちがどう見ても総二郎さんとの仲は間違いないだろうって言ってるのに
聞き入れませんでね!あなたからはっきり言ってやってください、桜井のためですから!」


注がれた酒も飲む気がしない・・・ここにもとんでもない男がいたなんて。
大野に東に、今度は桜井だと?どれだけ無意識に男を惹きつけてんだ、あの鈍感牧野はっ!

「そうですか・・・では、申し上げておきましょうか。今は仕事中じゃないので失礼して・・・」

はっきり言ってやれと言われたんだ、それを実行してやろうじゃねぇか!
グラスを置いて桜井の目の前まで行くと、正面50㎝くらいまで近づいてやった。
そして襟元を掴み上げて、俺の方にグッと引き寄せた。何が起きたかわかってない桜井は目を大きく開けたままだ。


「今から言うことをよく聞いておくんだな。あいつはもう西門の次期家元夫人って立場の女だ!
たとえ京都で会う機会があったとしても気安く声をかけるんじゃねぇぞ・・・万が一、この俺のいない場所でつくしに手を出して見ろ。
お前の窯元ぐらい速攻潰してやるからな!しっかり覚えとけ!」

「えっ・・・いや、そんなつもりは・・・ただ、本当かどうか知りたかっただけで・・・」
「知ってどうすんだよ!あいつが俺の女じゃなかったら手を出そうとしたんだろうが!そのために確認に来たってわけだろ?
でも、そんな勇気があんたにあるようには見えねぇけどな!」

それだけ言って元の席に戻る。この場にいた全員がすっかり固まってしまったけど関係ねぇな!今はプライベートだ!
この後も静かに酒を飲んでいたが、皆引き攣った笑いしか出ない。そりゃそうだろう、この俺が一言も喋らねぇんだから。
誰も帰るって言葉も出せないほど空気が凍っていたから、仕方なく窓の方に眼をやった。


「雪が止んだようですね・・・お帰りになるなら今がよろしいのでは?」

「そっ・・・そうですね、それではこの辺で失礼しましょうか・・・総二郎さん、お休みの日に申し訳ありませんでしたね!」

「いいえ・・・京都にいるのもあと僅かなようですから、またおいで下さい。待っていますよ、楽しいお話しならね」


この一言でみんなすっ飛んで帰っていった。
雪の降る中、ご苦労なことだ!わざわざこの俺に喧嘩ふっかけに来るとは!
そいつらを見送ったあと、また空からは白いものが降ってきた。


「寒っ!・・・1人ってのはマジで寒いな・・・あいつは今頃、みんなと温々してんだろうな」

窓の外、ゆっくりと落ちる雪を眺めながら今度は1人で酒を飲んでいた。
頭に浮かぶのはお袋達と鍋を囲んで楽しそうにはしゃぐ牧野の姿・・・想像したら笑いが出る。


暇だからあいつに贈るドレスのデザインを考えながら、パソコンの前に座り込んで時間を潰していた。


********


「つくしちゃん、少しいいかしら。あなたの意見を聞きたいんだけど・・・」

ちょうど華道のお稽古が終わって、少し時間が出来たときだった。
おば様に呼ばれたので後片付けを済ませてから、おば様のお部屋まで行くと机の上に色んなカタログが置いてある。

「どうかされたんですか?壁紙のカタログ?リフォームでもするんですか?」

「そうなの。つくしちゃんは入ったことないかもしれないけど、この母屋の隣に離れというか別棟があるでしょう?
そこの内装を全部変えてね、あなた達の住まいにするのよ。それで意見を聞きたいと思ってね」

「はい?・・・あの、もうそこまで話が進んでるんですか?」

「あら!何を言ってるの?総二郎さんが帰ってきたらあなた達、あのお部屋に住むつもりだったの?それは・・・ダメじゃない?
ほら、ここはいつ誰が廊下にいるかわかんない母屋なのよ?若いお弟子さんもいるしね。いろいろと気になるでしょ?」


それはあの時のことを言ってるのかしら・・・西門さんが京都に行く前の事件。
確かに廊下にいたのはおば様だし、母屋には朝早くからお弟子さんがウロウロしてるんだけど。

「家具類は総二郎さんが煩いから帰ってから注文してもいいんだけど、それまでに内装を済ませないといけないでしょう?
お部屋は全部で15部屋あるんだけど・・・」

「はぁ?・・・15部屋?!」

「えぇ、別棟だからそのぐらいしかないんだけど、和室は畳替えでいいと思うのよ。問題はやっぱり若いあなた達だから洋室が
必要じゃないかと思ってね。この一番南側のお部屋を改築しようと思うの。どうかしら・・・」

「えっと・・・おば様、それは私が決められないんじゃないですか?総二郎さんに聞かないとまた怒られそうですけど・・・」

離れで15部屋ってどんだけ広いの?
確かにこの西門邸は全部を知ろうと思っても広すぎて覚えられないのよね。西門流としての本邸部分だけでも迷子になるのに
プライベートエリアになると、まだほんの一部しか入ったことはなかった。
この母屋の奥にいくつかの別棟があるのは確かに知ってたけど、渡り廊下で離れてるから用事もなければ行かないし。

そこが今度、私たちの住まいになるとおば様が嬉しそうに話してくれた。


「じゃあ、行ってみましょうか。いつかこんな作業が来るとは思っていたけど、楽しいわねぇ!」

「はぁ・・・でも私は一部屋しかないアパートしか知らないんですよ?改装の相談相手にはならないと思うんですけど・・・」

私の話なんか全然聞かずにおば様は張り切って別棟まで小走りで進んで行く。
その後ろをくっついていきながら、京都の西門さんに助けを求めていた!聞かれたって答えることなんか出来ないんだって!
なぜなら私が選んだもの総てを西門さんが駄目出しするのはわかってるから・・・

「おば様・・・やっぱり総二郎さんが帰ったときにしましょうよ」
「つくしちゃん!ここの壁を取り払ってパーティールームにしましょうか!壁紙はこのゴールドラインの入ったものにして!」


私の声、全然聞こえてないわね?
この後もお茶のお稽古を中止してまで、おば様の「別棟改装計画」に付き合わされた。


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Comments 4

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2017/09/07 (Thu) 13:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは。

爆笑!!バレたか!ここで二宮とか出したら完全に遊んでいると思われるのであえて1人変えたんですよ!
でもすれば良かったぁ!!相葉は完全にバレるでしょ?松本はいいとしても二宮もねぇ・・・。
ちなみに私は大野くんファンです。だから大野くんは採用しました。

防音設備・・・そうか。それがあったか。
今度から書く前にえみりん様に相談しようかな・・・。防音設備は今度使わせていただきます。
離れで防音設備?喧嘩とは言えどんだけ声出すんだって感じじゃないですか?・・・え、喧嘩の他に?

なにかあるかしら。(*^▽^*)

今日も笑わせて下さってありがとうございました!

2017/09/07 (Thu) 18:02 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/12 (Tue) 13:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

雪と酒と総二郎・・・って所に女性無しは寂しかったですね~!!
芸者でも呼ぼうかと思いましたよ。
話がガラリと変わってしまうがな!と、思って止めました。

心臓・・・怖いじゃないですか!
ちゃんと病院行ってるんですよね?無理しちゃダメですよ~!
私は元々夏が弱いんで、9月はダウンするんですけど
今年の9月は涼しいので結構調子がいいですよ。

本当にコメントなんていつでもいいから(もらう気満々)休んでくださいね!

今日も沢山ありがとうございました。

2017/09/12 (Tue) 19:45 | EDIT | REPLY |   

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