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8月も終わり季節がゆっくりと秋に向かっていた頃、学生時代の後輩、桜子から会いたいと連絡があった。
桜子は大学を卒業した後、自分で起業して化粧品とファッション関係の仕事をしていた。
若くて美人の社長としてマスコミからも注目されて、今では雑誌にも頻繁にその綺麗な笑顔を載せてるほどの売れっ子社長。

今日は金曜日で平日では唯一茶道教室が休みの日だった。
待ち合わせたのは桜子が指定した青山のイタリアンレストラン。ドアを開けて入るとウエイトレスが奥の個室に案内してくれた。
個室といっても外の風景がよく見える開放的な部屋・・・そこにいつものように派手な化粧で長い脚を組んで座っている桜子がいた。

「桜子・・・あんた、本当に社長なの?もう少し地味な格好の方がいいんじゃないの?」

「あら!先輩ったらわかってないのね!社長だからスーツでって決まりはありませんわよ?それに今はプライベートですもの。
このぐらい普通ですわ。私だって場所と相手ぐらい考えてます。さ!どうぞ座ってくださいな」

組んでる足から太腿の付け根が見えそうなんだもの。同性の私でさえ目のやり場に困るっていうのはどうかと思うじゃない?
それにジャケットの下に来ているカットソーから除く谷間が・・・くっきりと!

まぁ、いつもの事かって思いながら向かい側に座ると、ウエイトレスがもうお皿を運んできた。
今日は桜子がチョイスしていて私がメニューを見ることはなさそうだ。
何件かの業務連絡を桜子がしている間に、テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていく。


「うわぁ・・!すごく綺麗な盛り付け方!流石だよね・・・美味しそうっ!」

最後の連絡が終わったのか、桜子がスマホをバッグの中に戻してニコッと私に笑顔を向けた。
すごく気持ちが悪い・・・こういう時の桜子は絶対に何かを問い詰めようとしてるんだから!


「さて・・・先輩。今はどうなっていますの?」

「どうなってるって・・・何が?」

「・・・とぼけるんですか?道明寺さんは置いといて、他の3人の方とは?どなたかとお付き合いは始まりました?特に花沢さんは
どこが良いのかわかりませんけど先輩のことがお好きでしょう?・・・まだ、友達のままなんですか?」

やっぱりそう来たわね?桜子は大学の時の事を結構知ってるから隠し事なんて出来る相手じゃなかった。
F4の誰かと私が付き合うんじゃないかって、毎回煩いほど騒いでいた。もしかしたら今日もその話なのかと思ってはいたんだけど
いきなりその話題になったんで正直うんざりだった。

「花沢類とはあのままだよ。時々連絡するぐらい・・・日本に戻ってきたらご飯食べに行くぐらいかなぁ。美作さんとは随分会って
ないけど、時々西門に来てるみたい。総ちゃ・・・西門さんとは会ってるんじゃないかな」

「その総ちゃんとはどうなんです?」

「・・・・・・どうって言われても」

パスタにフォークを刺していつまでもまわしていたら桜子にその手を叩かれてしまった!
お行儀が悪いって・・・!だって桜子が答えたくない内容の話をしてくるからなのに!睨み付けたけど迫力は桜子の方が上だった。


「やっぱり・・・まだ西門さんの事がお好きなんですね?先輩・・・よく考えてますか?あの西門さんなんですよ?
先輩の身体で満足なんてさせられませんわよ。万が一そうなっても1回ヤッて捨てられるのがオチですわ!
それよりも総てを持っている上に、何故かしら先輩のことを愛してくれてる花沢さんの方にしときゃいいんじゃないですか?」

「凄いこと言うわね、あんた・・・」

言いたい放題の桜子を無視して目の前の料理に専念しようとしたけど、綺麗なネイルに彩られた指が机を叩いている。
顔を上げたら睨む桜子に「あははっ!」と笑って誤魔化した。

「そんなに長いことお好きなのに、なんで西門さんには伝わらないのかしら。見ていたら皆にはわかるんですけどねぇ・・・」

「なんでだろうね。でも、総・・・西門さんは小さい頃から知ってるから案外、私のことなんて妹ぐらいにしか思ってないかもよ?
もうあの家にお世話になって20年だもん・・・いつ頃から意識し始めたのか私でもわかんないよ」

「そんなものですか?でも、お年頃ってあるでしょう?男の子のことが異常に気になるとか、男だったら女性を抱いてみたくなるとか
って時期・・・そんな時でも、変な気分にはならないもんかしら・・・」

なんて露骨な表現・・・桜子らしいけど、総ちゃんはそんな時期は多分早かったんだと思うよ。
中等部ぐらいから夜に遊びに行くようになって、高等部の時にはもう知らない間に女の人と・・・そんな匂いをさせて帰ってきたもん。
私だけが他の誰も見ずに総ちゃんだけを見てきたけど、そんなことも気付いてるのかどうなんだか・・・。
道明寺の時にも、振り向いてくれない総ちゃんへの当てつけみたいに思っていたんだって、後から気がついた。

「西門さんのことはいいんだって!今は次期家元として忙しいみたいだから私のことなんて全然よ!」

「でも、今でも西門にいるんでしょう?・・・辛くないですか?」

「辛くはないよ。でもね・・・辛いと言えばお稽古の時かな。私のお稽古は西門さんだからね。おば様の意向だから西門さんも
渋々見てくれてるよ・・・その時がね、ちょっと辛いんだ」

「先輩も恋愛下手ですこと・・・まぁ、何かあったら相談して下さいな!私はいつでも先輩の味方ですわ」

そう言うと、その色っぽい口に牛フィレを運んでいく。
本当に肉が似合うわ・・・女の私でも桜子のこのシーンはゾクッとした!流石・・・総ちゃんとタメ張ってる遊び人だ。
会話にも仕草にも色気があって、何もかもが子供っぽい私にはちょっと羨ましかった。


*******


そしてその日の夜、今日は私のお稽古の日だった。

きちんと着物に着替えて、師匠である総ちゃんよりも早くに茶室で待つのが決まりだった。
時間が来て、静かに障子が開いたら同じように着物姿の総ちゃんが入ってくる。

少し頭を下げて一礼し、総ちゃんが私の前に座る・・・顔を上げたらいつもと同じ、綺麗すぎる総ちゃんがいる。
少し照明を抑えた部屋では総ちゃんの顔にも影がでて、明るいところでみるよりも色っぽい。


「今日は薄茶平点前だったな・・・少しは覚えたか?」

「はい。手順は覚えました・・・よろしくお願いいたします」

この時ばかりは総ちゃんとは呼べない。総ちゃんは今でもつくしと呼ぶけど・・・お茶室ではほとんど名前は呼ばなかった。

ゆっくりだけど張り詰めたような時間が流れる。薄茶自体は堅苦しいものではないけれど総ちゃんと2人だということに緊張する。
凄く綺麗な指先で棗からお茶を出す・・・本来はこの時点で話なんてしないけどお稽古の時はいろんな事を教えてくれる。

「”いのり”という言葉があるんだけどわかるか?」

「いのり?・・・お祈りの意味の?」

「そう・・・茶を点てるときのな・・・茶碗を茶巾で拭き清める時の手の動きが”い”と”り”になるように拭く。そして茶筅で”の”の形に
抜くんだ。それが”いのり”って意味だ。茶を点てるときにはそれを心に留めておけ」

「・・・はい」

「つくしは半東をやったことはあるだろ? 何で半東って言うか知ってるか?」

「いいえ・・・勉強不足ですみません」

今日初めてクスって総ちゃんが笑った。馬鹿にしてるんじゃなくて、私が敬語なのがおかしいらしい。
でも、お稽古中は絶対に総ちゃんの事を幼馴染みのように見てはいけない・・・そう決めていたから笑われても我慢していた。

「中国では亭主が東側に座ることが多くて、西から来る客が喜ばれるって風習があるんだ。だから大抵客は西側に座る。
そのために亭主の助手をする人間を半東って呼ぶんだ。日本では床の間を北にして、陽の位置に当たる東側に客を座らせて、
陰に当たる西側に亭主が座ることの方が多いんだけど、名前だけは中国の茶礼にあわせてそのまま使われてんだよ」

「へぇ~・・・あっ!」

「別にいいよ・・・」

思わず変な声を出した私をまたクスって笑う。
こんな時の総ちゃんが一番好きだ。遠い昔に私を助けてくれた総ちゃんが、大人になってここにいるような気がして・・・。


総ちゃんはお茶が好きなんだ。
こんな会話からもこの人がお茶を真剣に取り組んでいることがわかる。

この総ちゃんの気持ちが早く家元達に届けばいいと、それだけを願っていた。



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Comments 2

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2017/09/21 (Thu) 12:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今日も沢山ありがとうございました!

こんな感じで静にお茶する総二郎も実は好きです。
1回本気でお茶してみようと思ったんですが、体験でやめました!

本気でやったら結構難しかったし、格好いい男性なんていなかった!
この考えがいけなかったんだろうか・・・

お茶はこのお話の中で総二郎と飲むことにしました。

2017/09/21 (Thu) 21:26 | EDIT | REPLY |   

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