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「総ちゃん。お待たせ・・・遅くなってごめんね」

部屋の前で声をかけたら、ガチャって音がしてドアが開いて、服を着替えた総ちゃんが出てきた。
手に持っているのは車のキーだけ、ジーンズにジャケットを羽織ってるだけの総ちゃんを見たら何故か安心した。
この格好だと私を送ってくれた後、夜の街には出掛けて行かない・・・私の知らない女の人の所には行かないだろうって思うから。


「なんだよ・・・変な顔して。俺のどこか変か?」

「ううん!全然、いつもどおりだよ!・・・ごめんね、今日はほら、桜子と1日一緒だったから調子が狂っちゃって!」

「はぁん・・・そうか!また俺の悪口で1日潰したってことか!」

「そんなことはないよ!まぁ、女同士の会話よ。桜子の話題にはついていけないけど」

そう言うとくくっと笑って駐車場の方に向かう。私は総ちゃんの長い脚について行くのが精一杯で小走りになってしまった。

この辺りでも広大な敷地を持つ西門本邸・・・子供の時からいる私でもこのお屋敷の全部を見てないんじゃないかっていうぐらい
複雑な造りの日本家屋だ。総ちゃんのお部屋は西門流としての本邸から奥に構えてるプライベートエリア、母屋の東側だ。
母屋の西側にお部屋をもらっている私はここまで来るのにすでに汗をかいてしまう。

そしてここからまた北側にある駐車場まで・・・この家は広すぎてそこに行くまでも長いってもんじゃない!
息が上がるのを堪えて下を向いて歩いていたら、前を歩く総ちゃんが急に止まったみたい。
それに気がつかずに進んでた私は彼の背中に体当たりしてしまった!

「うわっ!急に止まらないでよ!・・・鼻をぶつけたじゃないの!」
「お!・・・悪かったな」

何があったのかと思って総ちゃんの向こう側を見たら、廊下の向こうからやってくる男の人がいた。
総ちゃんそっくりの顔なんだけど派手な服装で、この家には全くもって似合わない茶色に染めた髪。


「あっ!つくしじゃん!どうしたの?今日は稽古の日だっけ?・・・今から家まで送ってもらうの?」

「あら、考ちゃんじゃない!最近見ないと思ったらまた夜遊びしてたの?まだ学生なんだからちゃんと勉強しないと!」

総ちゃんの前に立っているのは、この西門の3男坊、考三郎くん・・・考ちゃんだった。
考ちゃんは小さいときから仲良しで、唯一私がお姉ちゃん面出来た弟分、今でも考ちゃんとだけは普通に話すことが出来た。
ドキドキすることもなく、肩肘張らずに何でも言える弟。本当の弟の進よりも今ではお互いをよく知っていた。
そして、昔の総ちゃんと同じく私生活はかなり乱れていて、ここのところ家で見かけることもなかった。

「あのさ、つくし!今時の大学生が家でゴロゴロなんてしないでしょ?まだ22なんだからさ、こんな堅苦しい家に縛られたくないって
いうの!・・・あ、悪いな、総兄の前でこんな台詞出しちゃって!気楽な末っ子なもんで許してくれよ!」

「うるせぇよ!別にお前に謝ってもらっても嬉しくも何ともねぇよ。行くぞ・・・つくし」

「あ、うん!じゃあね、考ちゃん。晩ご飯はちゃんと食べないとダメだよ!」

そう言って考ちゃんの横を通り過ぎて駐車場に向かった。
すれ違う時も2人は目も合わせない。総ちゃんの顔は見えなかったけど機嫌が悪くなったのはすぐにわかった。

相変わらず仲が悪いんだから!この兄弟は昔っからこうなんだ・・・どっちもどっち。なんてことない問題で喧嘩ばっかりだった。
間に入っていた私と祥兄ちゃんはいつも困っていたっけ・・・そんなことを考えながら総ちゃんの後ろ姿を見ていた。


*******

<side孝三郎>

前から来るのは総兄とつくしだっていうのは遠目でもわかった。
今日はつくしの稽古の日だ。総兄は今からつくしを送っていくんだろう、それが自分の役目ぐらいに思っているからな。
つくしも総兄の後ろ姿を照れたような顔して見ちゃって・・・わかりやすい女なんだよな、昔っから。

少しだけ俺と話して、また総兄の後をついて行く。腹が立つからその姿を目で追うようなことはしない。
聞こえなくなる足音で2人が駐車場に行ったのを確認するだけだ。


つくしは知らないんだ・・・実は俺がつくしの事をずっと好きだなんて。
子供の時からつくしだけ見てたんだ。祥兄や総兄と同じように、俺もずっとつくしだけを見てきた。
兄弟3人ともが1人の女をだなんて洒落にもなんないから黙ってたけど、運良く祥兄が出て行った。
そして総兄が次期家元になった。親のいないつくしは総兄の相手には候補にも上がんないだろう・・・俺にはチャンスだった。

久しぶりにつくしの笑顔を見たとき、前から考えていたことを実行してやろうと考えた。
俺が向かったのはお袋の部屋だ。対外的には厳格で近寄りがたい印象の「家元夫人」、でも俺には激甘な「お袋」だった。


「母さん、ちょっといい?こんな時間に悪いんだけど話があるんだ」

「あら!孝三郎さん、どうしたの?何かあったの?」

話しかける時は真面目で可愛らしい息子の声を出してやる。
そうするとこの人はどんな頼み事でも聞いてくれる・・・これを利用しない手はないだろう。


「実はつくしの事なんだけどさ・・・母さんにしか頼めないんだよね。ほら、母さんとつくし、仲がいいだろ?」

「つくしちゃんの事?それなら任せて!あの子は私の言うことならなんでも聞いてくれるもの。それで・・・?」

「流石母さん!頼りになるよな!あのさ・・・」

ニコッと笑うとウンウンと嬉しそうに目を輝かせてる。俺のためなら何でもしてくれるこの人は俺の最大の味方だ。
さぁ・・・俺の言うとおりに動いてくれよ?お袋・・・。


*********


車に乗ると総ちゃんは窓を開けたまま走る。
その理由は考ちゃんから聞いたことはある・・・乗せた女の人の匂いを車に付けたくないんだって。
だから私は極力フレグランスはつけないようにしていた。そもそもお茶の席には香りを付けてはいけないから余計に避けていた。

私のアパートは車で行けばすぐだから、車内で何かを話すような時間はなかった。
あっという間にアパートについて、お礼を言って降りようとしたら「ちょっと待て」って呼び止められた。

「どうかしたの?忘れ物でもしたっけ?」

「違ぇよ・・・コーヒー入れてくれないか?家で頼むのも面倒くさい・・・いいよな?」

「・・・まぁ、上等なコーヒーはないわよ?それでもいいならそこの駐車場に入れてきてね」

時々こんな事はあったから特に気にはしなかったけど、少しドキドキする・・・総ちゃんが私の部屋に来るなんて。
車を駐車場に入れている間に急いで部屋に入ってささっと片付けて、この狭い部屋をぐるっと見回した。
何となく大丈夫そう?・・・総ちゃんに見られても問題ない?・・・何だか悪いことを隠すような気分になるのは何故なのかしら。


階段を上がってくる足音が聞こえたから、急いでお湯を沸かした。

ガチャって玄関のドアが開いたと思ったら、勝手知ったるって感じで総ちゃんが部屋に入ってきてテーブルの前に座った。
キッチンからひょいっと顔を覗かすと、総ちゃんが窓の方を見ている・・・窓に何かあったっけ?そう思っていたら・・・。

「つくし!お前、まだ洗濯物外に干してんじゃねぇのか?早く部屋ん中に入れろっ!1人暮らしのくせに隙だらけじゃねぇか!」
「きゃあぁーっ!見た?見たの?・・・総ちゃん、見たのっ?!」

「誰がお前の下着を見て喜ぶんだよっ!いいから早く取り込め・・・それとも俺が取り込んでやろうか?」
「いやぁあっ!ちょっと、お湯を頼むわっ!洗濯物は自分でっ・・・」

呆れた顔の総ちゃんの横を走って窓まで行って、ベランダに干していた洗濯物を慌てて外して部屋の中に入れた・・・。
1人暮らしだからお洗濯は毎日ってわけじゃなくて、この日も何枚もの下着をヒラヒラと・・・。
こんなものを総ちゃんに見られたかと思うと、もうガックリして落ち込んでいたら怒った顔の総ちゃんがコーヒーを入れてきた。


「お前に入れてもらおうと思ったのに、なんで俺が自分で入れてんだよ!まったく・・・」

「ごめん・・・今日洗濯したの、すっかり忘れてて。桜子に会うのが久しぶりだったから朝からドタバタしちゃって」

「桜子・・・元気してんのか?あいつ、会社作ったんだろ?」

「うん。チェリーズカンパニーっていう名前でね。頑張ってるみたい」

総ちゃんは胡座をかいてテーブルに肘をついてコーヒーを飲んでいた。そんな行儀の悪いこと西門では見たことないんだけど。
特に何をするわけでもなく、私が洗濯物をたたんでいる間、ぼーっとしていた。
このまま寝るんじゃないでしょうね・・・そんなことを思わせるぐらい気が抜けてる。

「大丈夫?総ちゃん、疲れてるんでしょう?最近茶事が多かったっけ?」

「いいや、そうでもないけど息が詰まるだろ?だから、どこかでこうやって解放しないと死にそうなんだよ」

「私の所で息抜きすんの?呆れた・・・自分の部屋で十分でしょうが!」

「あの部屋は西門の一部だからさ・・・俺の部屋でも自由じゃねぇよ」


動かしていた手が止まる。

昔、祥兄ちゃんがそれで身体を壊してしまったのを思い出した。
誰にも言ってないけど、祥兄ちゃんが精神科を受診していたのを私は知っている。
偶然、その病院から出てくるのを見たことがあるから・・・「心療内科」・・・私は家に帰って何の病院かを調べたもの。
祥兄ちゃんの持ち物の中にはいつもその病院の薬袋があった。


「そっか・・・じゃあ、気が済むまでそこで呆けてたらいいよ。見てないことにするからさ」

「あぁ、頼むわ・・・」


目を閉じて床に座ったまま、ソファーに頭を乗せてる総ちゃんをそっとして、キッチンに戻った。
そして小さなおにぎりを作る・・・それも2つだけ。


「総ちゃん、これ食べなよ。そしたら元気になるからさ」

目を開けた総ちゃんは小さなお皿に乗せたおにぎりを見てクスって笑っていた。


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Comments 4

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2017/09/20 (Wed) 13:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりんさま、こんにちは🎵

ホントにどいつもこいつも、あっちもこっちも!
でしょ?だから、可愛いお話が書きたくてdanceにしたら……あれ?ってなりましたよ(笑)

雪だるま❗(笑)
懐かしいっ!庭の雪だるまですね?

マフラーまいたやつ!はぁ…何だか自分が最近汚れたような気がしますよ。あんな可愛いの書いてましたねぇ。

雪のころ、なに書いてるんだろう…。
シスコン続いてたら嫌だわ…(笑)

懐かしい話、ありがとうございます。
とても嬉しかったです!

2017/09/20 (Wed) 16:14 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/21 (Thu) 13:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!こんばんは。

よく考えたら3人揃って・・・どんな飢えた兄弟なんでしょうね!
世の中につくししかおらんのかいっ!って言いたくなるような・・・逆ハーレム状態!
考ちゃんはこの話の困ったちゃんですから、今から何をしでかすやら・・・

シスコンやらマザコンやら・・・何を書いてるんでしょうね!

2017/09/21 (Thu) 21:00 | EDIT | REPLY |   

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