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フランスから花沢類が帰ってくると連絡があったのは2日前。

総ちゃんにではなく私にいつも連絡があるから、それが気に入らないらしい総ちゃんは類の話を聞こうとはしなかった。
出来たら一緒に食事にでもって誘うのに「俺は連絡ねぇ」の一言で逃げられてしまう。
わざと忙しいふりして私を避けるような態度をとるのも大人げないと思うんだけど、人の目のある所では声もかけにくい。
相談しようと近寄る度に、踵を翻して私に背中を向けてしまう行為に溜息が出た。


ちょうどお昼にダイニングで会って、いつものように向かい合ってお昼ご飯を食べていた。
家元夫人が外出していて誰もいない・・・チャンスとばかりに花沢類との食事についてきてくれるように頼んでみた。

「総ちゃん!いい加減に話を聞いてよ!いいじゃないの・・・花沢類が帰ってくるんだよ?半年ぶりなのよ?・・・聞いてるの?」

「聞いてるけど、なんで俺がお前達の食事に付き合わなきゃいけねぇんだよ!そんなもん、2人で行けばいいだろう?
子供じゃねぇんだから・・・それとも何か?つくしは俺がいないと類とメシが食えねぇのか?」

「そんなんじゃないけど、楽しいじゃない。2人より3人の方が・・・美作さんもイタリアだし道明寺もアメリカだし、日本にいるのは私達
しかいないんだよ?一緒に行こうよ」

「・・・類がいいならいいけど、あいつはお前1人の方が絶対にいいと思ってるぜ?聞いてみろよ」


どうしても行きたくないって感じの総ちゃんだったけど、本当は私の方がついてきて欲しかった。
花沢類が嫌いなんじゃない・・・でも、私の中にいるのは彼じゃなかったから。
花沢類と2人だと、彼が私のことを想ってくれているのが伝わりすぎて怖かった。あんな表情で迫られたら流されそうで・・・。

最後まで行かないと言い続けた総ちゃんは、あまりに私がしつこいので怒ってダイニングから出て行ってしまった。
幼稚舎からの友達なのに・・・総ちゃんは昔から花沢類には少し冷たかった。


*******


帰国した花沢類と食事の約束をした日が来た。
茶道教室の休みの日で仕事がなかったけど、連絡事項があるから朝から事務所で少しだけ仕事をしてから行くことにしていた。
総ちゃんにはもう頼めないから類と2人での食事だ。少し緊張してるのがわかる・・・何となく化粧もいつもより丁寧かもしれない・・・

「だってあの花沢類と2人だよ?・・・頑張っても向こうの方が綺麗だよね・・・」

自分の部屋で身支度を整えて、「よしっ!」と気合いを入れた。
総ちゃんはやっぱり来てくれない・・・自分の部屋にいたからドアの外から「行ってくるね」て声をかけたのに返事もしなかった。


迷子になったらいけないって西門まで迎えの車を手配してくれていたから、少しだけお洒落した私はその車に乗り込んだ。

「牧野つくし様でいらっしゃいますね?類様は諸用でお出かけでございますから私がお迎えに参りました。おそらく今頃はお約束の
場所にいらっしゃると思いますのでご案内いたします」

「あ、ど・・・どうも。よろしくお願いいたします!」

「・・・はい、それでは何かございましたらお声掛けください」

花沢の運転手さんは礼儀正しく・・・と、いうか感情もなく話しかけてきて、その態度が自分と花沢類の距離を感じさせる。
花沢家の跡取り・・・こんな特別扱いが日常な人なんだと今更ながらに思う・・・それは総ちゃんも同じだけど。

総ちゃんも茶会やインタビューみたいに公式な場に出るときは西門のリムジンに乗り、ドアも自分で開けることなんてない。
そんな総ちゃんを見たときは胸の奥が締めつけられるように痛かった。

あれは総ちゃんじゃなくて、次期家元・・・第16代西門流家元になる西門総二郎・・・そんな名前の人になる。

花沢の車に乗って類の所に向かっているのに、頭の中には総ちゃんがいた。
今日は総ちゃんも仕事が休みの日だったっけ・・・今頃何してるんだろう。今日はどこかへ出掛けるんだろうか・・・。



そして車は赤坂の賑やかな通りから少し奥まった所に入って、まるで普通の家のような建物の前で停まった。
今日のお店は花沢類がお気に入りの「隠れ家」だって聞いていて、いかにもそんな感じがするお洒落で小さな入り口だ。

運転手さんが言っていたとおり、そのお店の前には今日も素敵にスーツを着こなしている花沢類が待ってくれていた。

「牧野様、着きましたので少々お待ちを・・・」

運転手さんが降りてドアを開けてくれようとしたけど、それを花沢類が手でとめて、彼自身がドアを開けて私に手を差しだした。
その手にチョコンと私が手を乗せたら、グイッと引かれてあっという間に類の腕の中にすっぽりと入ってしまった!

「うわっ!類、なんてコトするのよ!手を離してよ!」

「いいじゃん!先に言ってくれないの?こういう時は一番初めに言うもんだよ?」

またか・・・何度言っても治らない類の癖だ。
仕方がないから「お帰り」って小さい声でいうと、頬にキスして「ただいま」って言う・・・これが類の毎回のお強請りだった。

*****

お店に入ると予約してあったらしく、すでに料理が運ばれていて食事が始められるようになっていた。
この後も類は仕事があるらしい。飄々としている類だけど、実は花沢物産の専務・・・それなりに忙しそうだった。
向かい合って座るとおしぼりで手を拭きながら、今日も極上の笑顔を向けてくる。少し男っぽくなったみたいだった。

「牧野、久しぶりだね!また、綺麗になったんじゃない?そろそろ西門も辞めてさ、花沢においでよ」

「またすぐにそれを言うんだから!西門を辞めるにも勇気がいるんだってば!5歳からお世話になってるんだよ?簡単には出ていけないの。
家元夫人が西門からお嫁に出すとは言ってくれるけど、それもねぇ・・・私はあの家の子じゃないし、弟だって就職したばかりだしね」

「牧野の弟って親戚の家に引き取られたっていう弟?元気してるの?ちゃんと会えてる?」

弟の進は神奈川の方の親戚に引き取られて行ったけど、高校までは最低でも年に一度は会っていた。
まぁ、今でこそ携帯電話で話せるけど、当時はそんなものも持っていないからしばらく会わないとお互いに喋れなくなる。
特に進の思春期辺りはろくに会話も出来なかった。
悪い友達とも付き合ったりはなかったし、成績も悪くはなかったようだから親戚に迷惑をかけるような事はなかった。
姉としては社会人になってくれて一安心・・・それが花沢のような大企業でなくても全然平気だった。


「ううん。最近はあんまり会えてないの。でも、とてもよくしてもらったからちゃんと大学にも行って小さい会社だけど仕事もしてるわ。
お世話になった家に恩返しするんだって頑張ってるの」

「弟・・・花沢に来ればいいのに。俺が世話しようか?いきなり本社とかは気後れするだろうけど、子会社ならいくらでもあるしさ。
今のところよりいい給料だと弟も生活が楽にならない?それと牧野の事は別問題だしさ。いつでも相談にのるよ」

「うん・・・ありがとう。でも進が自分で決めた事を大事にしたいから・・・お気持ちだけね」


とても綺麗に飾られている料理を前にして花沢類はフランスの話や、昔の思い出話など楽しい会話をしてくれる。
この人といたらすごく気分が落ち着いて楽になる。たまにドキっとするけど冷静でいられた。
どうしてだろう、こんなにも素敵な人なのに・・・チラッと見たらその薄茶の瞳を少しだけ細くして笑顔を向けられた。


「どうしたの?お腹、すいてないの?手が止まってるよ?」

「えっ?!そ・・・そんなことないよ。花沢類を見るのが久しぶりだから緊張してるのよ!」

クスって笑って小首を傾げる癖・・・流石にこれだけはドキッとした。
殺人的な魅力って言うのかしら・・・こんな笑顔を向けられたらどうしていいかわかんなくなる・・・。


「総二郎とは?今でも喧嘩ばっかりしてるの?それとも・・・進展でもあるの?」

「進展なんてなにもないよ。総ちゃんとは昔のまま・・・向こうの方が何とも思ってないしね!ほら、小さいときから見てるから妹から
抜け出さないんだよ!最近は総ちゃんも大変だから・・・家元達ともなかなか蟠りが解けないみたいでさ。もう少し仲良く出来ない
もんかなぁって心配になるよ。夜遊びは学生の時ほどじゃないけどね・・・それでもさ」

「総二郎のことはよく話すんだね、牧野」

「・・・は?え、えっと、そうだっけ?・・・んじゃ、話題変えよう!」

「無理して変えなくてもいいよ。俺は総二郎のことはそこまで気にしてないんだけど、あいつの方が俺を避けてるんでしょ?
わかってないんだから・・・自分で言うほど総二郎も器用じゃないのにね!」

「・・・どういう事?」

花沢類の言うことは時々意味不明だ・・・今、瞬間ドキッとしたのにすぐに私の頭には??が並んでしまう。
それ以上花沢類は総ちゃんの事には触れなかった。
まぁ、いいかって思いながら自分の前に並んだお料理を頬張って、最後のデザートは花沢類のものまでもらってしまった。

「お腹いっぱい・・・食べ過ぎちゃったよ!美味しかったね、ここは花沢類のお気に入りのお店なの?」

「うん、知られてない店だから落ち着くし、邪魔が入んないから」

「邪魔・・・?」

花沢類は最後のコーヒーを口にしながら急に真面目な顔をした。
もちろん、優しい顔なんだけど、真剣なその眼が私のことを見つめてて離さない・・・思わずケーキのフォークを戻した。


「牧野、今から話すこと真面目に聞いて欲しいんだけど」

返事も出来なくて首を縦に動かしただけ・・・何を言われるのかと思うと心臓が早鐘を打った。
少し崩していた姿勢を元に戻したらやっぱりクスって笑う。その後すぐに出た言葉は衝撃的だった。


「俺・・・あんたの事を本気で愛してる。だから西門から出てこない?花沢に迎えたいって思ってる」

「・・・え?本気でって・・・やだ、もう!からかってばかりで・・・迎えるって?」

「からかってなんかないよ!牧野は確かに西門の子供じゃないし家柄って考えれば俺の両親にも反対されるかもしれない。
でも、家元夫人に頼んでもいいんだ・・・後ろ盾になってもらえるように。真剣に考えて欲しい・・・俺、今プロポーズしてるんだけど」


「プロポーズ・・・?」

プロポーズ・・・って結婚するって事だよね?
私がこの人と?そんなことを一度も考えたことがなくて頭の中が真っ白になった。
言葉なんてもちろん出ない。動揺した私は紅茶を飲もうとして手を伸ばしたけど、カップを持つことも出来なかった。

「いいよ。返事なんて今日もらわなくても構わない。でも、答えは1つしか聞かないつもり・・・宜しくね?牧野」


昔から見てきた類の笑顔・・・今までで一番綺麗な顔で私を見つめてる。
好きだって言葉よりも重たい「愛してる」・・・この人は本気で私に言ったのかしら。



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Comments 2

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2017/09/21 (Thu) 18:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんばんニャ!

えみりん様~!こんばんにゃ!

びっくりしましたよ・・・夜は初めて(なんかイヤらしい表現だけど)じゃないですか?
しかも・・・ぷっ!笑ってしまった!

私ね、このお話とは違うんですけど、シスコンでダンスシーンがあるのに短編を入れたでしょう?
日にちが被るって思わなくって、この人達踊りっぱなしだよ!って思いました。

で、この総ちゃんは素直じゃないから困りますわ。
小さいときからの癖で欲しいものが素直に欲しいって言えない男に設定しております。
と、言いながら私の話はすぐにギュインっと方向転換いたします!

お楽しみに~!

2017/09/21 (Thu) 20:12 | EDIT | REPLY |   

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