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「返事は次に会うときでいいよ。今までだって20年近く待ってるんだから急がないからね」

「で・・・でもさ、私はそんな・・・」

花沢類は人差指で私の唇を塞いだ・・・彼の指が私の口に当たってるかと思うと流石に顔が熱くなる!
慌てて後ろに下がって指を離したら少し寂しそうに笑った。


「今日はこの後予定があるんだ。悪いけど、うちの車で送るからそれで我慢してくれる?本当は俺が送りたかったんだけど」

「ありがとう。類も大変なんだね、身体だけは壊さないようにね?ちゃんとご飯も食べるんだよ?」

「そのセリフ・・・毎日聞けたら頑張れるのにね!じゃあ、出ようか」


お店の人が見送ってくれて、何故か会計もせずに看板もない扉を出ていく。
どうやらここは花沢が月単位で定額料金払ってて、個別では請求が来ないんだとか・・・その定額料っていくらなのかしら・・・?
そのシステムがよくわかんなくて、首を傾げながら花沢類の後についてお店を出た。

変なことを考えながら歩いてたから、お店の前で花沢類が立ち止まっていたのにも気がつかなくて、思いっきりその背中にぶつかった!

「痛っ!ご、ごめん、花沢類・・・でも、どうしたの?立ち止まったりしたら危ないでしょ?」

上質な花沢類のスーツに口紅がつかなかったかしら・・・そう思って意外と広い背中をに手を当てて確かめた。
それでも何も言わないし、動きもしない。気になって横から花沢類を見上げたら、少し怖い顔してどこかを睨んでいるようだった。
こんな顔はあんまり見たことがなかったからびっくりして、その視線の先を見たら反対側のビルに背中をつけて立っている人がいた。


それは、ジャケットにジーンズ、見たことのあるシルバーの車・・・・・・総ちゃんだった。


「・・・あれ?総ちゃん・・・どうしてここがわかったの?ここで食べるなんて私、教えてないよね?」

「総二郎は俺の行動なんて何でもお見通しなんじゃない?そうやって調べるぐらいなら堂々と来ればいいのにさ」

花沢類の言葉にも顔色1つ変えないで、お店の少し離れた場所で壁にもたれ掛かったまま視線を合わせようとはしなかった。
それでも少し嬉しかった・・・迎えに来てくれたんだと思ったらちょっとだけ笑顔になったんだと思う。
それを見た花沢類が呆れたようにふんっ・・・て笑って、私の身体を総ちゃんの方に向けた。


「牧野、今日はここまで・・・。本当は花沢が送って行きたいところだけど、こんな店先で言い争うのも好きじゃないからね。
気をつけてお帰り。総二郎だからって油断しないでね?」

「油断って・・・総ちゃんは大丈夫だよ!花沢類・・・今日はありがとう。また、一緒にご飯食べようね!」

「うん。その時は日本じゃない店にするよ。じゃあね!牧野」


さっきプロポーズされたことなんてすっかり頭から消えていた私は、次の食事の約束までして花沢類に手を振っていた。
日本じゃないお店?外国までご飯食べに行くの?・・・でも、この人達ならやりかねない、そんなことを思いながら総ちゃんの方に
むかった。私が近くまで行くと何も言わずに総ちゃんは歩き出した。


「お迎え、ありがとう。でも、来てくれるんなら一緒に食べたかったな・・・あのお店のお料理、美味しかったんだよ?」

「俺はいい。類と差し向かいで食っても味なんてわかんねぇよ・・・早く帰るぞ。お袋が煩いからな」

「まだお昼だよ?」

「お前がいないだけで騒ぐんだよ!いいから早くしろ!・・・お前の事で俺がネチネチ言われるのは迷惑だ!」


随分後になってから聞いたんだ。
この時は家元夫人は何も言ってなくて、総ちゃんだけが落ち着かなかったって。

私は早足に歩く総ちゃんの後を、昔みたいに追いかけて、届かない背中を見つめていた。
昔にはなかったもの・・・総ちゃんのつけてるフレグランスが微かに香っていた。


*****


つくしが類と食事に行くって聞いたとき、正直言えば行かせたくなかった。

類は小学生の時からつくしの事を気に入ってて、それが恋だと思い始めたのは中学生の頃だったと思う。
それまでは妹が欲しかったってぐらいの感覚だったのが、一気に女として意識し始めたんだ。

俺はちょうど女に興味を持ち始めた頃で、あきらと連んでは夜の店に顔を出していたっけ。
大人びた俺たちは、バックについてる家のせいでもあるけど、どの店に行っても未成年だからって追い払われることはない。
むしろいい金蔓とでも思われたのか、気前よく店内の一番いい席に座らされて、そこら辺の女との言葉遊びを楽しんでいた。

でも、類は絶対にそんな中に入っては来ない。
俺たちを軽蔑するわけでもないが、干渉もしない。文句なんて一言もなかったが止めることもなかった。
そして、その頃・・・類は常につくしといたんだ。

「牧野はさ、どうしても西門から出ないの?弁護士に相談したら後見人の変更も出来そうだったのに・・・西門は窮屈でしょ?
うちにおいでよ。のんびり出来ると思うんだけど・・・だめ?」

「ダメって言うわけじゃないけど、花沢類の所に移る理由なんてないもん。西門は子供の時からだからいいとしてもだよ?」

「だって、俺が牧野といたいから・・・それじゃ、理由にならないのかな。牧野の事、ホントに好きなんだよね・・・」

「・・・はい?」


俺がこの会話を聞いたのが中学3年の時。この頃から司も牧野狙いだったけど、あいつは俺たちの中では一番子供だったからな。
気の利く言葉も出せず、直接コクる事も出来ず、悶々としてたのには笑ったな。
まぁ、それでもその後牧野と付き合ったって事実があるのは司だけ・・・類は結局そこまではいかなかった。


つくしを車に乗せて走っていたとき、俺はそんな昔のことを思い出していた。


「総ちゃん、どうしてあのお店知ってたの?あそこ有名なの?」

「あぁ?有名なわけじゃねぇよ。看板すら出してない隠れ家だろ?類が気に入って使ってるから・・・それでそう思っただけだ」

それは本当だ。あの店は類が帰ってきたときによく1人で行く店だって事だけは知っていた。
俺たちの中で誰も招待なんてされたことはないだろうけど、つくしなら連れて行くんだろうって思ったんだ。
自分の特別な場所には特別な女を連れて行きたがるもんだからな・・・男ってのは!

「類と何の話をしてたんだ?また、花沢に来いって事か・・・つくしが本当に行きたいならお袋に相談しろよ。賛成はしないかもしれないが、
西門にいつまでもしがみつくことはしなくていいんだし、もうお前も1人暮らししてるんだから、西門を出たらお袋と会うことはない。
自分の気持ちで決めていいんだからな」

「自分の気持ちで残ってるんだよ。総ちゃんの言い方、まるで花沢に行けって言われてるみたい・・・」

「誰も言ってねえよ。それ以外には何も言わなかったのか?」


つくしはさっと俺から視線を外した。
やっぱり、類のヤツ・・・つくしに自分の気持ちを伝えやがったな?
学生の時の言葉よりも、社会人になってからの告白は重みが違う・・・つくしもそんな言葉に揺れてしまっても仕方のない年齢だった。

「花沢類は、弟の進の就職先を花沢にしないかって言ってくれたの。そ・・・それだけかな」

「進を花沢に?なんで?あいつは神奈川で仕事見つけたんだろう?それが上手くいってないのか?まさか、もう辞めたとか・・・
それなら、西門にだって働き口はあるだろう。つくしもいるんだし、なにも花沢に入らなくてもいいんじゃねぇか?」

「辞めてないし!それにもう大学も出た、いい年の男だよ?自分の仕事ぐらい自分で探すでしょ?人に頼ることを覚えたらダメな人間に
なっちゃいそうで嫌なのよね。進には逞しい男に育って欲しいもん!」

「面倒も見てないくせに姉ちゃん風ふかしてんじゃねぇよ!それに、もう育ってるだろ?これ以上は育たねぇよ!」


本当はそんな会話じゃなかったはずだ。
つくしは嘘をつきたくないから、話を変えたんだろう。昔からそうだった・・・嘘がきらいな女、そして嘘ばかりの俺・・・。

車が西門に着くと駐車場の入り口でつくしを先に降ろして、自分専用の車庫に車を入れた。
いつもなら俺を待つつくしが、今日は足早に母屋の方に入って行く。これ以上の質問をされないようにってことなんだろう。


実にわかりやすい女だ。


********


花沢類から突然のプロポーズをされてから数日後、今度は家元夫人に仕事が終わってからプライベートルームに来るようにと
伝言があって、何の話しかと首を傾げながらその部屋に向かった。

家元夫人は何故かすごくご機嫌で、私にソファーに座るようにと声をかけて、家元夫人は私と向かい合わせに座った。
心なしか落ち着かない・・・ハンカチを取りだして口元を拭いたり手をこすったり。
こんな家元夫人は初めてだった。どうしたんだろうと不思議に思っていたら、覚悟を決めたように話し始めた。

「あのね・・・つくしちゃん、ちょっと確認したいのよ。あなた、お付き合いしてる男性はいるのかしら・・・ごめんなさい、急にこんな事
聞くなんて失礼だとは思ってるわ。でも、どうなの?どなたか好きな人がいるの?」

花沢類の事があったばかりで、この質問!てっきり花沢類がなにか西門に話を持ってきたのかと心臓が止まりそうになった!
でも、そんなはずはない。花沢類はあの時に返事は今じゃなくていいって言ったもの!

「ど・・・どうしたんですか?もちろんそんな人はいませんけど・・・お付き合いだなんて」

「そうなの?まぁ・・・良かったわ!」

私に彼がいないと知った家元夫人は、嬉しそうに両手を合わせた・・・そして、次に出た言葉は予想外のものだった。


「実はね、孝三郎がつくしちゃんの事が好きみたいなの。それでね、良かったらあの子とのこと・・・考えてみてくれないかしら」

「はい?考ちゃんですか?!」

総ちゃんじゃなくて?って思わず言いそうになったのを、慌てて飲み込んで、冷静になろうと思ったけど無理だった!
私よりも3歳年下の考ちゃん・・・小さいときから面倒見てきた考ちゃんを男性として見るだなんてすでに出来なくなっていた。
考ちゃんは嫌いじゃないけど、どれだけ考えてもそんな対象にはならない。

恋人にだなんて・・・恋人ってなれば当然そういう関係になるだろう。でも、それを想像したらパニックになるほど彼は私にとって弟でしかない!
そんな私のことを無視して家元夫人は一方的に話を進めていく。

「考三郎がね、毎回つくしちゃんには彼がいるのかって煩いのよ。自分では聞けないなんて情けないでしょう?
こんな事を親に言わせるなんて男らしくないわよね、それはわかってるの。言葉も乱暴だし、まだ遊びも派手みたいだけどね。
でも、ああ見えてあの子は優しい子なのよ?私もね、つくしちゃんは小さいときから見てきたからこのままうちにいて欲しいのよね。
それがこのお話が纏まれば叶うと思って!今からワクワクしているのよ」

「いえ、でもそれは無理です。私はこちらでお世話になった料理人の娘ですから・・・西門の息子さんのお相手にはなれません!」

その一言は考ちゃんだけじゃなく、総ちゃんもダメだということを自分で宣言するようなもの。
だから、口にはしたくなかったけど黙っていたらこのまま話が進む恐れがあった。


「あら・・・私のお願い、聞いてはくれないの?」


「そうじゃなくて・・・あの、お時間をいただけませんか?・・・すぐにはお返事できません」


家元夫人の最後の言葉は私の一番痛い所を突き刺した。


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Comments 2

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2017/09/26 (Tue) 22:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは🎵

20年…確かに待ちませんね(笑)
私もすぐに飛び付きますわ‼️総二郎でも、類でも絶対待たせないわ!そして、逃がさない(笑)

で、総二郎がどこまでも素直じゃない。
ここまできたらケツだろうが、前だろうが、蹴ってやってくださいね!(笑)さとぴょん様ならやりそうだわ!

2017/09/27 (Wed) 12:34 | EDIT | REPLY |   

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