始まらないLoveStory・102
牧野に言われてもう1回部屋に入り、今度は2人で色々と見て回った。
確かに6年でここまで荒れるとは・・・ってぐらいの傷みようだ。この造りからしてもかなりの築年数あるんだろうし、中尾夫婦が出ていった後は婆さんが1人暮らししていたのならそんなに手入れが出来なかったのかもしれない。
まずは台所と風呂場・・・牧野も見たと言っていたが、黒ずんだ調理器具やカビだらけの洗面器なんかが転がってた。
「・・・・・・なんかの動物も入って来てたのかもな」
「えっ?!どうして判るの?」
「あちこちに爪痕みたいなのがある」
「マジで?!怖いんだけど!」
「天井から人が降ってくる方が怖いわ」
「・・・・・・いや、そう言われても・・・」
そしてここがムカデの出現現場だと聞いて眉が寄った。
あきらだったら絶対に入らねぇな、と思いながら再び部屋に戻り、何か残されたものがないかを確認した。
牧野が調べてない押し入れの中には処分に困ったのか布団が何組かあったが触りたくもない。箪笥はあったが相当な年代物。引き出しの鍵穴の装飾金具がかなり凝ってるから、その当時は値打ちものだったのかもしれない。
だが今では骨董品になりそうもないってぐらい前板が割れている。
素手で触りたくないから牧野のスカートハンカチを使って引き出しを開けると、そこには変色した男物の服・・・旦那の着替えだろうか?と思ったが、病人だからこんなものは着なかっただろう。
つまり、旦那のものか、その前の爺さんのもの・・・どちらにしても牧野の親父さんのものじゃねぇ。
「きゃあああああぁーーーーっ!!」
「どうした、牧野!!」
廊下の方であいつが叫んだから飛び出てみると、牧野も部屋に突進して来たから俺にぶつかって思いっきり抱きつかれて・・・
「手の平ぐらいの蜘蛛がいたぁ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「うわあぁっ!!ごめん///!!」
「・・・いや、別に」
ヤベぇ・・・こんなカビと埃まみれの廃屋の中で変な気起こすとこだった・・・・・・
てか、何度俺に頭突きすればいいんだ?💢・・・肋骨、折れそうだけど!
とにかく中尾の実家の様子は判った。
この家の中を一応スマホで撮影しようと、そいつを出してから・・・
「そう言えばお前、スマホどうした?」
「あぁ、電池切れ」
「・・・・・・・・・」
「昨日充電し忘れて、電車の中で音楽聴いてたらいつの間にかEMPTYになってた」
どうせそんな事だろうよ💢💢!!
************************
日が暮れてきたからもうこの場所を離れようって話になり、全然風景に溶け込んでない西門さんの真っ赤な車に向かった。
そこでもう1回振り向いて廃屋を眺め・・・両親はここから何処に行ったんだろうって首を傾げた。
西門さん曰く、目隆史さんから聞いた中尾さんの印象だと危ない事をする人じゃないだろうと・・・。
それに長いこと病人を看護してきた人なら、他人を殺めることのもしないだろう・・・そう言ってくれたから少しはホッとした。でも畑仕事の人が言ってた「中年の男女がいた期間」というのも曖昧で、それが中尾さんの帰郷と重なってるのかも判らない。
「とにかく今日はもう無理だ。どっかに宿を探さねぇとな」
「あぁ、私は素泊まりのビジネスホテル、予約してるから」
「・・・素泊まり?」
「そう、食事無し・泊まるだけで4500円なの。安いでしょ?
悪いけどそこまで送ってくれると助かる。西門さん、帰りは気を付けてね?」
そう言ったらキョトン・・・と言うか、怒ってる?
でも明日は仕事だろうし、西門さんは東京に帰るよね?と首を傾げたら、次にはジリジリと寄って来て私の目の前で腕組み&仁王立ち。
な、なんだろう・・・マジで怖いんだけど。
背景が山だから余計に悪魔感が漂ってんだけど・・・そんなに悪いこと言ったっけ?
「お前、そんなところに泊まって明日はどうすんだ?」
「明日?またここら辺で聞き込みを・・・」
「何を聞くつもりだ?」
「お父さんとお母さんの目撃情報?」
「地元民でも無いお前の両親の、しかも6~7年前の事を誰が覚えてると思う?」
「・・・・・・いや、でも記憶力のいい人が・・・」
「お前は馬鹿か!!」
西門さんの大声で山の中の鳥がバサバサっと飛び立った。
それも怖かったけど、そんなに怒鳴らなくてもよくない?!こっちは親を探してこんなところまで勇気振り絞って来たのに・・・
その健気な私に向かって馬鹿とはなによ、馬鹿とは!!
私が睨んだら西門さんは「その足りない頭でよく考えろ!」と・・・
いや、酷くない?両親を探してここまでやって来た私の行動を、少しぐらい褒めてくれてもよくない?!と、拳を握ってこの人に向けたら、それを指1本であっさり落とされた。
そのあと「ド阿呆」って言葉で始まった説明・・・今度はド阿呆?!
ここにお父さんが居たことは確か。
ついでにお母さんも一緒だったと思うけど、何故2人がここから逃げ出さなかったのか・・・その理由は2つあると言われた。
1つは脅されてここに監禁されていた、2つめは自らの意思でここに留まっていた。
「脅されて?」
「そうだ。でも牧野の親父さんが犯人じゃねぇなら脅されて監禁はあんまり考えられないな・・・目撃者ならさっさと始末すればいいんだから。それに監禁されていたなら姿も他人に見せないだろうし」
「じゃあ・・・自らの意思ってのはどういうこと?」
「お前の両親だと思われる男女を見たってヤツが居るんなら、少なくとも親父さん達は動けたってことだ。でも逃げなかったのなら、言い方を変えれば動けるけど逃げられなかったって考えられる。
つまり、自分達は隠れなきゃいけなかったんだ・・・東京に戻るとヤバい事が待ってるとかな」
「・・・・・・・・・東京には帰られない?」
「そいつは本人に聞かなきゃ判んねぇし、ここに匿ったのは中尾敦子に間違いはない。ってことは、探すのは親父さん達じゃなく、中尾敦子の方だ。
今も生きてるなら彼女と一緒に居る可能性が高い」
だからもう網代での捜索は無意味。
おそらく中尾敦子さんは自分の実家である修善寺方面に移り住んでるんじゃないか・・・それが西門さんの推理だった。
中尾さんがお父さん達を解放しないのは何故なのか・・・でもそこに悪意が無いのかもしれないと言われた。
情けない・・・・・・ちょっと考えれば判る事なのに。
あれほど自分1人で何とかしようと思ったのに、結局西門さんに助けてもらってる。
そしてやっぱり目の前に西門さんが居ることで落ち着く。いつの間にかこの暗闇が怖くなくなってる。
「よし、行こうか」
「へ?あぁ、私の予約したホテル?えっとね。網代の駅前の・・・」
「クソ馬鹿野郎、熱海の温泉宿に決まってるだろ」
「(今度はクソが付いた!!)・・・熱海?いや、私は予約してるからそこで・・・」
「お前、そのホテルに命を預ける覚悟が出来てるのか?」
「命まで預けないけど・・・」
「そこで眠るってのはそう言う事だ。ついでに言えば所持金や貴重品も室内に置けば命同様預けたことになる。小型金庫はあるのか?ピッキングやサムターン回しって手口に引っ掛からないという保証はあるのか?
ドアチェーンが無かったらどうする?どの程度防犯カメラがある?外部から侵入されない構造か?」
そんなに沢山言われても答えられないし、そもそも予約しただけだし?
そう言ったら問答無用で助手席に放りこまれ、網代じゃなくて熱海に向かってしまった・・・・・・
ちょい待て!!
・・・まさか、この人とお泊まりすんの?!
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まずは台所と風呂場・・・牧野も見たと言っていたが、黒ずんだ調理器具やカビだらけの洗面器なんかが転がってた。
「・・・・・・なんかの動物も入って来てたのかもな」
「えっ?!どうして判るの?」
「あちこちに爪痕みたいなのがある」
「マジで?!怖いんだけど!」
「天井から人が降ってくる方が怖いわ」
「・・・・・・いや、そう言われても・・・」
そしてここがムカデの出現現場だと聞いて眉が寄った。
あきらだったら絶対に入らねぇな、と思いながら再び部屋に戻り、何か残されたものがないかを確認した。
牧野が調べてない押し入れの中には処分に困ったのか布団が何組かあったが触りたくもない。箪笥はあったが相当な年代物。引き出しの鍵穴の装飾金具がかなり凝ってるから、その当時は値打ちものだったのかもしれない。
だが今では骨董品になりそうもないってぐらい前板が割れている。
素手で触りたくないから牧野のスカートハンカチを使って引き出しを開けると、そこには変色した男物の服・・・旦那の着替えだろうか?と思ったが、病人だからこんなものは着なかっただろう。
つまり、旦那のものか、その前の爺さんのもの・・・どちらにしても牧野の親父さんのものじゃねぇ。
「きゃあああああぁーーーーっ!!」
「どうした、牧野!!」
廊下の方であいつが叫んだから飛び出てみると、牧野も部屋に突進して来たから俺にぶつかって思いっきり抱きつかれて・・・
「手の平ぐらいの蜘蛛がいたぁ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「うわあぁっ!!ごめん///!!」
「・・・いや、別に」
ヤベぇ・・・こんなカビと埃まみれの廃屋の中で変な気起こすとこだった・・・・・・
てか、何度俺に頭突きすればいいんだ?💢・・・肋骨、折れそうだけど!
とにかく中尾の実家の様子は判った。
この家の中を一応スマホで撮影しようと、そいつを出してから・・・
「そう言えばお前、スマホどうした?」
「あぁ、電池切れ」
「・・・・・・・・・」
「昨日充電し忘れて、電車の中で音楽聴いてたらいつの間にかEMPTYになってた」
どうせそんな事だろうよ💢💢!!
************************
日が暮れてきたからもうこの場所を離れようって話になり、全然風景に溶け込んでない西門さんの真っ赤な車に向かった。
そこでもう1回振り向いて廃屋を眺め・・・両親はここから何処に行ったんだろうって首を傾げた。
西門さん曰く、目隆史さんから聞いた中尾さんの印象だと危ない事をする人じゃないだろうと・・・。
それに長いこと病人を看護してきた人なら、他人を殺めることのもしないだろう・・・そう言ってくれたから少しはホッとした。でも畑仕事の人が言ってた「中年の男女がいた期間」というのも曖昧で、それが中尾さんの帰郷と重なってるのかも判らない。
「とにかく今日はもう無理だ。どっかに宿を探さねぇとな」
「あぁ、私は素泊まりのビジネスホテル、予約してるから」
「・・・素泊まり?」
「そう、食事無し・泊まるだけで4500円なの。安いでしょ?
悪いけどそこまで送ってくれると助かる。西門さん、帰りは気を付けてね?」
そう言ったらキョトン・・・と言うか、怒ってる?
でも明日は仕事だろうし、西門さんは東京に帰るよね?と首を傾げたら、次にはジリジリと寄って来て私の目の前で腕組み&仁王立ち。
な、なんだろう・・・マジで怖いんだけど。
背景が山だから余計に悪魔感が漂ってんだけど・・・そんなに悪いこと言ったっけ?
「お前、そんなところに泊まって明日はどうすんだ?」
「明日?またここら辺で聞き込みを・・・」
「何を聞くつもりだ?」
「お父さんとお母さんの目撃情報?」
「地元民でも無いお前の両親の、しかも6~7年前の事を誰が覚えてると思う?」
「・・・・・・いや、でも記憶力のいい人が・・・」
「お前は馬鹿か!!」
西門さんの大声で山の中の鳥がバサバサっと飛び立った。
それも怖かったけど、そんなに怒鳴らなくてもよくない?!こっちは親を探してこんなところまで勇気振り絞って来たのに・・・
その健気な私に向かって馬鹿とはなによ、馬鹿とは!!
私が睨んだら西門さんは「その足りない頭でよく考えろ!」と・・・
いや、酷くない?両親を探してここまでやって来た私の行動を、少しぐらい褒めてくれてもよくない?!と、拳を握ってこの人に向けたら、それを指1本であっさり落とされた。
そのあと「ド阿呆」って言葉で始まった説明・・・今度はド阿呆?!
ここにお父さんが居たことは確か。
ついでにお母さんも一緒だったと思うけど、何故2人がここから逃げ出さなかったのか・・・その理由は2つあると言われた。
1つは脅されてここに監禁されていた、2つめは自らの意思でここに留まっていた。
「脅されて?」
「そうだ。でも牧野の親父さんが犯人じゃねぇなら脅されて監禁はあんまり考えられないな・・・目撃者ならさっさと始末すればいいんだから。それに監禁されていたなら姿も他人に見せないだろうし」
「じゃあ・・・自らの意思ってのはどういうこと?」
「お前の両親だと思われる男女を見たってヤツが居るんなら、少なくとも親父さん達は動けたってことだ。でも逃げなかったのなら、言い方を変えれば動けるけど逃げられなかったって考えられる。
つまり、自分達は隠れなきゃいけなかったんだ・・・東京に戻るとヤバい事が待ってるとかな」
「・・・・・・・・・東京には帰られない?」
「そいつは本人に聞かなきゃ判んねぇし、ここに匿ったのは中尾敦子に間違いはない。ってことは、探すのは親父さん達じゃなく、中尾敦子の方だ。
今も生きてるなら彼女と一緒に居る可能性が高い」
だからもう網代での捜索は無意味。
おそらく中尾敦子さんは自分の実家である修善寺方面に移り住んでるんじゃないか・・・それが西門さんの推理だった。
中尾さんがお父さん達を解放しないのは何故なのか・・・でもそこに悪意が無いのかもしれないと言われた。
情けない・・・・・・ちょっと考えれば判る事なのに。
あれほど自分1人で何とかしようと思ったのに、結局西門さんに助けてもらってる。
そしてやっぱり目の前に西門さんが居ることで落ち着く。いつの間にかこの暗闇が怖くなくなってる。
「よし、行こうか」
「へ?あぁ、私の予約したホテル?えっとね。網代の駅前の・・・」
「クソ馬鹿野郎、熱海の温泉宿に決まってるだろ」
「(今度はクソが付いた!!)・・・熱海?いや、私は予約してるからそこで・・・」
「お前、そのホテルに命を預ける覚悟が出来てるのか?」
「命まで預けないけど・・・」
「そこで眠るってのはそう言う事だ。ついでに言えば所持金や貴重品も室内に置けば命同様預けたことになる。小型金庫はあるのか?ピッキングやサムターン回しって手口に引っ掛からないという保証はあるのか?
ドアチェーンが無かったらどうする?どの程度防犯カメラがある?外部から侵入されない構造か?」
そんなに沢山言われても答えられないし、そもそも予約しただけだし?
そう言ったら問答無用で助手席に放りこまれ、網代じゃなくて熱海に向かってしまった・・・・・・
ちょい待て!!
・・・まさか、この人とお泊まりすんの?!
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「サムターン回し」とは、ドアの隙間やドアポストなどから針金様のものを外から差し込んで、ドア内側にある「サムターン(鍵をかけるつまみ)」を動かして、ドアの外にいながらにして内側からドアを開ける手口です。