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つくしが部屋を出て行ってしばらくして、やっとベッドから起き上がって着替えを済ませた。
もしかしたら今までで一番しんどい夜だったかもしれない・・・我ながらよく我慢したと思うと笑いが出た。

愛情も感情もない女はすぐに抱けるかもしれない.。終わってしまえば何も残らないんだから気にもしなかった。
だけどつくしは違う。あいつは俺がこれから守っていく唯一の女だ・・・この先はつくし以外誰も抱くことはないだろう。
今日これからの予定をチェックしていたら誰かがドアをノックした。

つくしがなにか忘れ物でもしたのかとドアまで行ってドアを開けた。

「つくし、忘れ物か・・・」


「悪かったな、つくしじゃなくて。入ってもいい?それとも男は立ち入り禁止か?」

ドアの外に立っていたのは考だった。
完全につくしだと決め込んでいた俺は忘れ物か・・・なんて、迂闊にも声に出してしまった。
今までの気分が一気に変わる・・・一番見たくない俺そっくりのこの顔がニヤリと笑った。

考はスタスタと部屋の中に入りドカッとファーに腰を下ろした。
長いこと一緒の建物の中に暮らしているとはいえ、こうやってお互いの部屋に行くことはほとんどなかった。
考と祥兄はあったかもしれないけどな。天邪鬼で皮肉れ者の俺はいつも1人で、兄弟2人には近づかなかった。


「相変わらず暗い部屋だな。こんなんじゃ女は喜ばないんじゃないの?もう少し明るくしたら総兄の相手も住みやすいと思うけど?
それとも相手が決まってからその女にでも変えてもらうか?・・・その方がいいかもな!」

「・・・そんな話をしに来たのなら帰れ!お前に俺の女の心配をされるなんで冗談じゃねぇよ。これ以上余計な話を持ってきたら
いくら弟だろうが、この家の中だろうが容赦しねぇぞ!出て行け!」

その言葉の後、考は急に真顔になった。
それまで見せていた白い歯はキッと結ばれた唇で見えなくなる・・・下から見上げてくる挑戦的な目付きは昔の俺を見るようだった。


「出て行く前に言っていいか?総兄、つくしから手を引いてくんない?」

「・・・断わる」

「じゃあ、認めるんだ!昨日ここにつくしが泊まったんだろ?さっきこの部屋から出て行くつくしを見かけたんだ。それがつくしを
どれだけ追い詰めるか知ってんの?つくしは俺との話をお袋から頼まれてるんだぜ?絶対に断わる事なんて出来ない・・・
つまり総兄は弟の婚約者に手を出したって事になるんだぜ?これが世間にバレたらスキャンダルだよな!」

考は事もあろうか俺に脅迫めいた言葉を投げつけた。
確かに祥兄がこの家を出た時には、次期家元が家を捨てたと話題にされた。今度は弟の俺が兄弟と女の取り合いをしただなんて
マスコミにでも伝われば再びこの西門の跡取りに相応しくないと非難が殺到するだろう。
次期家元なんてものはどうでも良かったが、これだけ大勢の門下生を抱える西門流を俺の行動一つで地に落とすわけにもいかない。

それをわかっているから、余計に考は俺に強く言えるんだろう。


「つくしはまだ受けたわけじゃない。お前とお袋が勝手に言ってるだけだ。お前達の方がつくしを追い詰めてるんだってわかんないか?
あいつはお前とお袋の持ち物じゃねぇよ!つくしの気持ちは残念だがお前にはない・・・!手を引くのはお前の方だ。
悪いがつくしは俺が守る。お前にはまだ誰かを守るなんて事がわかってないだろう。流石にこの俺でもまだ自信はないけどな・・・。
それでもお互いに気持ちは確かめ合ってんだ。つくしも俺を選んだ・・・それが総てだろう!」

「それをお袋に言える?」


完全にお袋を味方につけている考はまるで聞く耳なんて持っていない。

「総兄の頼みをお袋が聞くかな・・・昔っからお袋の言うことを聞かないからこんな時には困るだろ?上手にやりゃ良かったのに・・・。
総兄の気持ちはわかったけど俺は引かないよ。むしろ、今日の事で決心がついたかも・・・出直してくるよ」

考はすっくと立ち上がって俺の真横を通り過ぎてドアを開けた。


「総兄・・・あんたはこの家の跡取りだ。それなりの相手が必要なんだって事ぐらい覚悟決めて、次期家元をやってるはずだよな!
半分は諦めてたんだろう?自分の将来がこの家の歴史に縛られるって・・・その覚悟、これからも持ってりゃいいんだよ」

「・・・考っ!お前・・・」

そのセリフを残してドアは閉められた。


いつになったらわかるんだ!お前は買ってもらえなかったおもちゃを、未だに強請ってるただのガキみたいなもんだ!
そして、つくしはお前のおもちゃじゃねぇ・・・!何故、それがわかんないんだ!


*********

<side孝三郎>

総兄の部屋からつくしが出てきたときは流石に驚いた。
つくしが総兄のことを好きなのは知っていたけど、総兄は自分の立場上つくしを選べないから最後まで突っぱねるもんだと思っていた。

それがどうして・・・急に2人の距離を縮めたのはなんだ?

つくしの性格上、お袋には逆らえないから黙って言うことを聞くと思っていたのに・・・まさか、つくしから総兄の部屋に行ったのか?
そして総兄もこれだけ長い間封じ込めた想いを今更つくしにぶつけたって言うのか?

早まったか・・・もしかしたら俺が手を回してつくしとの婚約を持ち出したから、2人共が閉じ込めてた想いを吐き出したってのか?


ほんの少しの誤算・・・

それでもいいか・・・それなら、次の手を早急に打つしかない。
ここは年功序列が当たり前の西門家だ。総兄から話を固めていってもらおう。
俺が向かったのはお袋専用の職務室。婦人会や後援会のヤツらとの打ち合わせはいつもここを使っていた。


「母さん、ごめんね、忙しいときに・・・少しいいかな」

「あら、孝三郎さん。つくしちゃんのことなの?ほほ・・・もう、仕方ない子ね!頼まれたお稽古のことならちゃんとお話しましたよ?
来週からはあなたが見てあげなさい。つくしちゃんもかなり上達しているから油断してはいけませんよ?
逆に教えてもらうだなんて事があったら恥ずかしいわ。そのぐらいは大丈夫でしょうね?」

「酷いなぁ・・・それじゃあ、俺を指導した坂本さんのせいじゃん?そうじゃなくてさ・・・」

いつもの事だ。お袋は俺が頼み事をしたら嬉しそうに近寄ってくる。
この人にとっては何歳になっても俺はこの家の末っ子・・・一番可愛がってくれた子供の時から何も変わっていない。
こっちはとっくにそれを利用するほど狡賢くなってるのに、この人はそれにも気がついていないだなんて滑稽だ。

でも、家元夫人って立場は絶大だ・・・この人を味方につけておけばこの家では大抵のことは思い通りだ。
総兄とつくしの気持ちを除けば、だけどね。


「やっぱりさ、ここは総兄の方を先に考えないといけなかったって思ってるんだ。悪かったね・・・順番飛ばすみたいなことを言って。
俺さ、まだ学生だから急がないんだよね。つくしさえ決心してくれたらいつまでだって待てるしさ。
だから総兄のことを先に考えてあげてよ。誰かいたんでしょ?総兄の相手に相応しい人がさ・・・親父も言ってたし」

「総二郎さん?・・・そうねぇ、そうなのよ。先方は是非にっておっしゃっててね、お家柄も問題はないのよ。総二郎さんにはまだ
伝えてはないんだけど・・・どうかしら、素直に聞いてくれるかしらねぇ。実は困っていたのよ」

「最近は遊んでもいないし真面目だよ?また、総兄が荒れると困るからさ、真面目にしている今がチャンスじゃない?
俺もやっぱり総兄の後じゃないとさ・・・つくしも気にするんじゃないかな」

なんて優しい弟を演じてるんだろう・・・。
自分で言ってて笑っちゃうよ。総兄に片付いてもらわないと俺が進めないだけなんだけど。

つくしは多分すごく落ち込むだろう・・・でも、西門が決めた事なら諦めざるをえない。
大丈夫だよ、落ち込むだけ落ち込んだら俺が救ってあげる。それも、いいんじゃない?・・・絆が深まりそうだしね。



次のシナリオに向けて始動だ。
悪いがお袋のコントロールは総兄よりも俺の方が上だからな!



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Comments 2

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2017/09/30 (Sat) 22:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます!

おぉ!そんなタイトルでしたね!
冬彦さんの木馬とあのお母さんしか覚えていない(笑)
野際陽子さんでしたよね?で、賀来千香子さん?

私ってやっぱりシリアス向きじゃないって事がわかりました。
すでにコメディ総ちゃんが書きたくてたまんないっ!
誰か私に時間をくださーいっ!!

と、叫んでみる。でも、誰も聞いてくれない(当たり前)

2017/10/01 (Sun) 08:03 | EDIT | REPLY |   

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