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京都から帰るとすぐにおば様のお稽古が再開された。
お道具についても細かく指導されるんだけど、もっと困るのが懐石の作法や炭手前などの専門的なこと。
これはやはり小さいときからの慣れが必要らしくて、何度やっても失敗続き・・・時々涙するときもあった。

それでもおば様はこの時だけは「家元夫人」の顔で許してはくれない・・・出来るまで何度も稽古は続けられた。

「あなたのご挨拶が送れると正客の方が困ってしまうわ。お客様全体のの様子を見落とさないようにしなくてはダメよ。
そして少し目線が上がりすぎてるわね。ここでは元気よくしすぎないで。この茶席の場の空気を読まなくてはね」

「はい。もう一度お願いいたします」

「それでは茶道口の主客総礼からやって下さい」

この頃から毎日が着物での生活になっていて、普通の食事からすべてお稽古の場となっていた。
箸の置き方から使い方、お茶碗の扱い方まで、これがすべて懐石の時にも影響するからと・・・食べた気もしなかった。
でも、これが西門さんとの約束だから弱音を吐くわけにもいかない。

おば様を怖いとも厳しいとも思わなかった、すべてが私のためだから。


「つくしちゃん、今日は婦人会の大谷様が入院されているからお見舞いに行くわよ。一緒に行きましょう。大谷様は婦人会の
経理をされてるからすぐにお付き合いが始まるわ。仲良くしていただかないとねぇ・・・そこのお婆さまには若い頃結構怒られたの。
私も苦手だったけど、何年か経つ頃には親子みたいに仲良くなったったものよ。つくしちゃんにもそんな方がきっと現われるわ」

「はい。おば様、それではお見舞いの品を選びましょうか」

「そうね・・・じゃあ、先にお買い物から行きましょう。食事制限はないらしいからお菓子と、もう一つお好きなものをね」

この日はお昼からおば様とデパートに出向いた。大谷様は読書好きと言うから好きな作家の新刊を用意した。
なんだかお見舞いのものを買うというより、私に気晴らしをさせてくれたみたい。窮屈な毎日を心配してくれたんだろう。
着物で行かなくていいと言ってもらったので、久しぶりに楽なワンピースで出かけた。
お見舞いの品物は早くに買い終えたのに、可愛いお店を見つけては立ち寄って珍しそうに眺めていた。

そしてやっと病院へ行こうとした時、ふと足と止めてしまった。


そこは貸し衣装屋で一番手前に真っ白なフワフワのウエディングドレスが飾られていた。
凄く綺麗・・・トルソーに着せてあるんだけど今にも歩き出しそうなくらい。ヘッドドレスもまるで大きなバラの花のよう・・・
そしてドレスの上に重なるようにベールが流れていた。

「うわ・・・可愛い・・・いいなぁ、こんなの。綺麗・・・」


思わずそう呟いたらおば様がすぐ横に来て、ふふっ・・・て笑った。

「綺麗よねぇ。こんなの私も着てみたかったわ。私の時は白無垢と打ち掛けだけで、全然面白くなかったわ!
そうだ・・・時間があるから着てみない?ね!ちょっとこれ、着てみましょうよ!」

「えっ!おば様・・・そんな急にっ!おば様っ!!」

私が声をかけたときにはすでに店の中で、店長みたいな人にドレスの試着を頼んでいた・・・絶対に借りないくせに!
それでも真横で私を誘惑するこのドレス・・・しばらくしたら店員さんがこのドレスを奥へと運んで私たちもそれについていった。


「まぁ・・・なんてお似合いなんでしょう。お嬢様にピッタリですわねぇ・・・これは今年の新作でまだどなたも手を通してないんです。
こちらをお選びでしたら初回レンタルですから、記念に純白のバラのブーケをおつけしますわ」

「ほほほ・・・そうですか。参考に写真撮っていただける?それとあそこにあるものも着せてみたいわ」

「まぁ、さすが奥様はお目が高いですわね。あちらはフランス製でデザイナーブランドのものですわ。特別な方しにかお出ししない
ものですけどお客様になら・・・」

そう言って店長さんは奥からとんでもない豪華なものを持ってきた。
ダイヤモンドが鏤められているというそのドレスは、総レースでスレンダーなデザイン・・・とても大人っぽかった。
おば様はそれも着てみろって言うから着たんだけど、私には豪華すぎて幼顔が目立つみたい。

クスクス笑いながらおば様はこれも写真に収めていた。

結局ここで5着ほどドレスを着て、花嫁気分を満喫したんだけど半分はおば様の遊びにつきあったようなもの。
最後に店長に自分が茶道西門流の家元夫人だと名乗って、その人をビビらせていた。


「おば様・・・少し遊んでいたでしょう?店長さんがお気の毒ですよ?」

「いいじゃない!ちょっと参考にしたかったのよ。男の子しかいないんだからこうでもしないと、こんな気分は味わえないでしょう?
娘の花嫁衣装選ぶなんて、母親は楽しいものよ!本当に選ぶ時はつくしちゃんのお母様にも見ていただきましょうね。
きっと私より嬉しいと思うわよ。あら、悪かったかしら・・・先に1人で楽しんじゃって!ほほほ・・・」

「ふふっ・・・ありがとうございます。おば様」


私たちはすっかりお見舞いを忘れていた。
もう随分暗くなってから病院に行ったら、その日に大谷様は退院されていて2人で大笑いした。


*********


今日一日の仕事が終わって自室に戻ったら、スマホにメールが入ってるのに気がついた。
牧野からだろうと思って見たら、送り主はお袋・・・滅多に電話すらしてこないくせに。しかもメールが送れることに驚いた。

「なんだ、今時添付ファイル?・・・さすが古い人間だな。でも頑張って送ったんだなぁ・・・」

お袋が送ってきた画像を見たら、そこに映っていたのは牧野のウエディングドレス姿・・・
真っ白なドレスを着て、嬉しそうに笑っている牧野に釘付けになった。

「くっそーっ!この俺がいないのに何やってんだ?この2人は・・・こんなもの、お袋が先に見てどうすんだよ!」

頭にきてすぐに牧野に電話をいれた!


『もしもし・・・総二郎!もうお仕事終わったの?今はお部屋なの?』

「あぁ!部屋だけど、お前今日は何やってたんだよ!こんなもの・・・普通、俺と行くもんじゃねぇの?」

『え?・・・何のこと?』

牧野は何も聞いてないみたいだったから、お袋が送ってきたドレスの写真のことを言うと笑い出した。
笑い事じゃねぇよ!こんな姿を一番初めに見るのは俺のはず・・・しかも俺の趣味で選びたかったのに!

「笑ってんじゃねぇよ!説明しろよ・・・俺がいないところで選ぶつもりだったのか?」

『だって・・・それは貸し衣装屋さんのレンタルだよ?おば様が自分が着れなかったからって、私に着てみてくれって言ったのよ。
そこで選んだんじゃないわよ。もう、おば様が喜んで写真とってたと思ったら総二郎に送ってるだなんて・・・!』

レンタル・・・西門がレンタル?
冗談じゃねぇって怒鳴りたかったけど、あまりにも現実的じゃなくて俺までが笑ってしまった。
その店でお袋が調子に乗ってドレスを持ってこさせるのを想像した。多分、牧野はアタフタして着替えさせられたんだろうな!

「バッカだな!お前達は・・・遊んでんじゃねぇよ!俺がここで真面目に仕事してんのに!」

『ごめんね!久しぶりに出かけたから、ついはしゃいじゃって!』



「でも、綺麗だったな。つくしのウエディングドレス姿・・・たとえレンタルでも目の前で見たかったよ」

牧野の声が止まった。
照れてるのか、恥ずかしかったのかわかんないけど。

「西門は神前だから和装だけど、俺はちゃんとつくしには極上なのをオーダーメイドで作るからな。間違ってもレンタルぐらいで
喜ぶなよ?この写真のものよりもっとお前に似合うものを俺が用意するからな」


『総二郎・・・ありがと。楽しみにしてるよ』

「悪いけどデザインも素材も選ぶのは俺だから。つくしの意見も聞いてやるけど基本は俺が決める。お前は俺のもんだからな。
俺の好みに染まって欲しい・・・悪いな、こんな男で」

『いいよ、それで。そんな事言ってるけど、きっと私に一番に合うもの選んでくれるんでしょう?』

「あぁ、自信ある!任せとけ!」


そんな言葉を交わしながら牧野の写真を見ていた。
女ってのは白いドレスを着ると、こんなにも綺麗な笑顔になるのか・・・お袋のヤツ、ここでも俺を急かしてんだな?
電話を切ったあと、急いで連絡を取ったのはイタリアにいる友人、俺が贔屓にしている新進のデザイナーだ。

「アレックス?ごめんな、そっちが今何時か知らねぇけど、急いでたから電話したんだ」
『ハイ!ソウジロウ、久しぶりだね。何かあったのか?』

「どうしてもあんたに頼みたいことがあってさ・・・今度日本まで来てくれよ。内容はさ・・・」

注文するのはもちろん特注のドレスとアクセサリー。俺の好みを盛り込んだ純白のドレスだ。
来年のヴァレンタインに日本に仮縫いに来るように約束をした。もちろん、牧野にもお袋にも内緒で!


『あのソウジロウが選んだ彼女を早く見たいもんだ!きっとすごくナイスバディなんだろうな!』

「さぁな。多分デザインするのに困ると思うぞ?でも材料は少なめで済むはずだ。まぁ、その時にびっくりしてくれ」


アレックスは背が高いグラマーなヨーロッパ美人しか相手にしないから、さぞかし牧野の体型は困るだろう。


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Comments 4

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2017/08/31 (Thu) 13:04 | EDIT | REPLY |   
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2017/08/31 (Thu) 14:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは❗

そうなのですよ🎵
恋の季節から、食欲の秋にかわるんですよ(笑)
次の総二郎は、嫌なヤツになってます。始めだけね✨

すでに茶と華と、の総二郎に会いたい‼️

私にはクールな総二郎は無理かも~❗

来週あたりこのお話も終わります。
さみしいなぁ…。重い話が重なる…。

確かに秋空になりましたね~。でも、秋は大好きです。ちょっと身体の不調はでやすいけど。

今日もありがとうございました‼️

2017/08/31 (Thu) 16:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは❗

読んでて恥ずかしい?
書いてる私はもっと恥ずかしいですけど?(笑)

総二郎のセリフは毎回恥ずかしいです。
1人でニヤニヤしながら書くんですよ😃
こんなセリフいう男がいるか?って思いながら、毎回言われたいセリフを考えて…照れながら公開してます。

さて、まだまだこんなセリフが続きますよ?
お楽しみに‼️

2017/08/31 (Thu) 16:14 | EDIT | REPLY |   

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