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3月になってやっと叔父が病気療養から復帰できそうな目途が立ち、この頃には元哉もすっかり逞しくなっていた。
もうあのオドオドした態度も見せずに堂々と茶室には入れるようになった。
側にはゆかりがいてこいつらには金井支部長が間に入って正式な話が進んでいるようだった。

そして、関西支部と宗家が話し合って俺が京都から離れることが決まった。


「総二郎さん、色々とご指導いただきありがとうございました。私もこれからは父を助けてこの関西でしっかり茶の道を究めようと
思うようになりました。これもみな宗家の皆様のおかげです。感謝しています」

「ふん・・・!随分と変わったな!元哉、これからはここを頼んだぞ。俺はもうここでやることもなさそうだから帰らせてもらうが
何かあったら遠慮なく言ってこい。従兄弟なんだし、これからも上手くやっていこうぜ。特に女の事なら任せとけ!
西門の男が女の尻に敷かれっぱなしはどうかと思うが、お前達のスタイルってもんがあるだろうから目を瞑ってやる。
それ以外で困ったことが起きたら力になってやるよ」

元哉の肩を叩いて、精一杯の笑顔を送ってやった。なんと言っても今までで一番出来が悪くて、手の掛かった弟子みたいなもんだ!
まぁ激励とまではいかないが、これから2人の相談相手になってやろうと思っていたのに、こいつはとんでもない事を言いやがった!


「も・・・もしかしたら家族が増えるかもしれなくて・・・今日病院に行ってるんですよ。はは・・・」

「・・・・・・誰が俺を追い越せって言ったんだよ!この大馬鹿野郎っ!!」

「すいませんっ!総二郎さんより早く・・・とは思わなかったんですっ!」


そんなことだけ人一倍早いとはどういう事だ!いや・・・これが西門の血を継いでる証拠かもしれない。
守れるもの、頼れるものが出来たら強くなれるもんだって、元哉と最後の酒を飲んだ後に俺は東京に帰る支度に入った。


時期は梅から桜へと変わる頃、京都で早咲きの桜が風に舞っていた。
ゆかりからの連絡があった・・・元哉には来年早々、上手くいけば跡取りが産まれるらしい。


********


明日西門さんが帰ってくるって西村さんが教えてくれた。
急いでおかあ様に確認したらおかあ様にも京都支部からお礼の電話があったから間違いないと言ってくれた。
それは嬉しそうに、改装がすんだ離れの確認に行ったり、料理長に西門さんの好きなものを頼んだりと忙しそうだった。

急いで私のスマホを見たら着信が入ってる・・・大慌てで折り返しの電話をかけた。

「もしもしっ!総二郎、ごめん電話に出られなくて!・・・あのっ」

『悪かったな、稽古中だったか?・・・もう聞いたんだろ?明日そっちに帰るからな』

「うん!西村さんからさっき聞いたところなの。何時に帰って来る?駅まで行っちゃダメ?」

『ダメ!・・・なぁ、待ち合わせしないか?』

「は?待ち合わせ?何処で・・・何時に?」


嬉しくなって出迎えに行こうと電話したのに西門さんからの返事は意外なものだった。そんなにあっさりダメって言わなくてもいいのに。
しかも駅には行っちゃダメなのに待ち合わせ?

『言わなくてもお前ならわかる場所だ。そこで5時に待っとけ。もし違う場所にいたら大事なもの受け取れねぇぞ?いいな!』
「えっ?ちょっと!この東京でそんな場所、ヒントも無しじゃ見つけられないわよ!」

『絶対にわかるって!じゃあな、まだ俺は最後の仕事中だから!』



無音になった画面を見つめて西門さんのいう場所を考えた。言わなくても私ならわかる場所?
でも・・・一つしか思い当たらなかった。本当にあそこでいいんだろうか。
間違えていたら大事なものをもらえないって・・・それも私が考えているものだろうか。

とにかく明日、彼は私の所に帰って来るんだと思うと堪らなく嬉しかった。
なんだか本邸全体が騒がしい・・・きっと皆が西門さんを迎えるための準備に入ってるんだ!


「つくしちゃーん!明日の準備するから手伝ってちょうだい!」
「はーい、おかあ様、ちょっと待ってくださいねー!」


静かな日本庭園にどこからだろうかお母様の大声が響いた。私はその声のする方に向かって走って行った。


********


次の日の夕方。

西門さんが指定した時間よりも15分早くに、私は1人で道路の脇のガードレールにもたれ掛かっていた。
季節もあの時とほとんど同じ。時間は少し早いけど歩道には沢山の人が歩いていた。
あの時と違うのは腕時計の入った袋を持ってないことぐらいだ。
誰かを待っていることも、15分早く来たことも。あ・・・もう一つ違うのは私も気持ちかも知れない!

そんなことを考えながら、時間が来るまでまだ明るい空を眺めていた。この姿勢もあの時と同じだから。



「お姉さん、1人なの?よかったら俺とこのあとメシでも行かね?」

なんて偶然かしら。この光景もあの日と同じじゃない?そう思って声をかけてきた人を見た。
そしてこれも偶然なのかしら・・・この人に隠れて姿は見えないんだけど、しっかりとその影が歩道に映ってる・・・。

「ううん、悪いけどお断り。・・・それにすぐ後ろにいるわよ?もうこれ以上はやめておいた方がいいと思うけど?」
「なんだと?誰が後ろにいるって・・・」


そのチンピラみたいな男が振り向いたらすぐ後ろに恐ろしい顔をした西門さんが腕組みをしたまま立っていた。
今日もやっぱり気障に決めてるわ・・・すごく怖い顔をしてるけど、チラッと私を見たときの眼は笑ってる。
そしてゆっくりと男に近づいて胸ぐらを掴んで抱え上げた!

「どこの誰だかわかんねぇが俺の女に気安く声かけてんじゃねぇよ!その顔の形、変えられる前にとっとと消えな!」
「なっ・・・なんだ、てめぇ!」

「殴られてぇんなら相手してやる。お前にその覚悟があるんなら向かってこいよ・・・ほら!」

西門さんは睨み付けながら笑っていた。もうそんな顔したら普通の人は逃げるに決まってるのに!
もちろんその男は逃げるように走り去っていった。その男の後ろ姿を見ながら2人で笑った。


「まったく・・・お前は何回同じ事をしたら気がすむんだ?いつだって都合良く俺が現われるとは・・・」
「現われるよ!だって、総二郎だもん!・・・待ち合わせ場所、間違えなかったよ!」

私が西門さんの言葉を遮ってそう言うと、彼は苦笑いしながらポケットから一枚の紙を出した。


「ほら!契約更新の証明書だ。今から出しに行くぞ!ここで書けよ」
「はぁ?ここで書くの?・・・だってこれ・・・」

「ちゃんと他は記入済みだから。あとはお前のサインだけ・・・綺麗に書けよ。二度と書かないんだから」


こんなものをこんな場所で書くのは私だけじゃないかしら。
しかもスマホを下敷きにして・・・でも、涙でぼやけてよく見えない。
差し出されたハンカチで涙を拭ったら、ほんのりと白檀の香りがした・・・。

記入が終わったら西門さんがそれを取ってまたポケットにしまう。
そして差し出された手に自分の手を重ねたらぐいっと引き寄せられた。

大通りのど真ん中で抱き締められてる私・・・通行人達の視線を思いっきり浴びながら彼の腕の中にいた。


「ただいま、つくし」
「お帰りなさい。総二郎」


1年前に再会した場所で今度は終身契約を結んだ。

素直になれなかったり、勘違いしたり、言葉を濁したり・・・曲がってばかりで真っ直ぐに進めなかったけど
最後にはちゃんと彼の所に辿り着いた私の恋。それが新しい道を進むためにまた一歩踏み出したんだ!


「大好き!総二郎!」
「好きだって言葉じゃ足りないって言っただろ?・・・愛してるよ、つくし」



恋の進め方はみんな、それぞれ。・・・あなたの恋が最高の場所に辿り着けますように・・・

西門 総二郎 & つくし
                                  

fin,


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意外と長くなってしまった「正しい恋の進め方」、終了でございます。

明日は後書きと、新しいお話し・・・「10月の向日葵」始まりです!
今度は・・・思いっきりブルーなお話しなんですっ!最近明るいお話しが多かったから切り替えが難しいんですけど。
なんだか秋だからクールなお話しにしようかなって思いましてね。

それではこのお話しに最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
読者様に支えられて忙しかった8月も乗り越えました。
感謝しております!明日の後書きで反省会します!
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Comments 8

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2017/09/10 (Sun) 12:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは。

疲れました・・・。
元哉くんに笑って下さってありがとうございました!そんなつもりはなかったんですけど
書いてたら手が勝手に・・・元哉をパパにしてしまった!総二郎の教え方が良かったんですよ。

終わりかたって一番初めに考えるんですけどね。
どうも私は記念の場所で終わりたい人みたいです。

次はねぇ・・・ブルーなんですけど、これまた設定がね・・・出だしからドン引きされそうです。
またこんな設定にしたんかい?って怒られそう・・・。
あははっ!まぁ、良かったら読んでみてね?

いつもコメントありがとうございます!

2017/09/10 (Sun) 12:59 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/10 (Sun) 15:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

るいか様、こんにちは~!

もしかして・・・総つくのるいか様かしら?
初めましてです~!!いや、お恥ずかしいです・・・うちの総二郎には色気がございませんで!
るいか様の総二郎君はタイプが全然違うのでドキドキしながら読ませていただいてます。
コメントには残さず失礼しました!

るいか様もお忙しそうですが、私もそちらの総二郎君を楽しみにしておりますので頑張って下さいね!
そのうち・・・R書くんですよね?お勉強させていただきます!

今日はコメントいただき嬉しかったです!ありがとうございました。

2017/09/10 (Sun) 16:10 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/11 (Mon) 13:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは~❗

こちらこそ、毎回読んでいただいてありがとうございます♥️

じれったいばっかりでイライラしませんでしたか?
一つ前のお話が意地悪満載だったので、楽しい感じにしたかったんですよ。
こんな総二郎が一番好きなんです‼️(笑)
ホントはもっとクールで知的なんでしょうけどね。

また、あったかいお話が浮かべば、頑張って書きますね🎵

応援コメント、ホントに嬉しいです。
ありがとうございました❗

2017/09/11 (Mon) 16:49 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/12 (Tue) 14:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は~♥

こちらこそ毎回のコメント本当にありがとうございました。
予定外だったバイクシーンも、実は入り番好きなシーンになりましたし、いろんなアドバイスも嬉しかったです。
こんなに長くなるとは思わなかったんですが、この場面もあの場面もぜーんぶ好きな作品です。

ロイヤルブルーよりも打ち込める作品には出会えないかなって思ってたんですが、これもなかなか・・・
書けて良かったって思っています。

クサいセリフは笑えるでしょう?書いてる方はもっと恥ずかしくて笑ってるんですよ!ふふふ・・・


これからも出来る限り頑張りますので、またお時間が出来たら立ち寄って下さいね!

応援コメント本当に嬉しいです。ありがとうございました!

2017/09/12 (Tue) 20:03 | EDIT | REPLY |   

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