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俺の問いに親父がゲロった・・・その瞬間、お袋の目が鋭くなった。
そして今まで伏せて泣いていたのに、立ち上がって親父の着物の衿に手を掛け・・・


「・・・どういう事ですか?あなた・・・あんなところにお宝を?」
「い、いや・・・態とじゃなくて・・・」

「態とだったら許しませんよ!私が何年悩んだと思ってるんですかっ!!」
「す、すまんっ!!」


「・・・もういいから全部話せ」
「家元、大丈夫ですか?」


つくしの心配はお袋から親父へ・・・そしてお袋が親父を捨てるように突き放すと、親父はガタン!と椅子に座った。そして今度はお袋がエラそうに腕組みして座った。
・・・僅か数秒で形勢逆転・・・親父が超小っさく見えたのには笑えた。


「あれは・・・確か温泉旅行の3日前だったと思う・・・」
「お袋が割る2日前か?」

「・・・実はその日・・・・・・」


ここからは「油滴天目茶碗放置事件」の説明が始まった。


その日、急に宗家に電話が入り、とある国の首相夫人が来日しているついでに西門に来たいとの話を聞いた。
用件は「茶碗が見たい」・・・どうやらその夫人は茶道に興味があるようだった。ただし、首相と警備が五月蠅いから極秘でと言われ、翌日ボディガード2名だけを連れて来る事になった。
そう言われてお袋は「そんな事もありましたわねぇ」と、思い出したように言った。俺と考は学生で、おそらく何にも聞かされていない・・・てか、聞いても逃げただろうけど。

でもお袋には前々からの予定があり同席出来ないから、対応は親父と後援会長になった。

そして時間通りに首相夫人が来たが、極秘なので裏口から通したらしい。
裏口と言ってもうちの裏玄関は普通の家庭の玄関よりもデカいし、表玄関と同じように綺麗にしてあるから問題はねぇ。向かった部屋は親父の茶室で、見せたのは「楽茶碗」数点。


「えっ?見せたのは楽茶碗?」

「あぁ・・・茶碗が見たいと言うなら、茶席で使うものだろうと思ったからな。でも、いずれも数千万の価値がある茶碗を並べたのだよ。そうしたら後援会長が余計な事を言ったんだ・・・蔵に行けばもっといい茶碗があるって・・・」

「それで油滴天目茶碗を持ち出しましたの?」
「・・・(初めから一番イイヤツを出せば良かったのに)」←つくし

「持ち出そうかと思ったのだが、そこで夫人が蔵に入ってみたいと言い出して・・・」

「蔵に?あそこは宗家の人間以外立ち入り禁止だろう?」
「まさか・・・お入りになったの?」

「・・・断わったのに、夫人が拗ねだして・・・母国語で何やら文句を言い出して鬱陶しくなったから、つい・・・・・・」


親父は外国人の威圧に負け、中を見せるだけと言う事で案内したらしい。それには後援会長も同行してて、ボディガードも含めて5人で一番重要な品が納められている蔵の前に立った。
そこで扉を開けると首相夫人はワクワクしながら中を見て、親父は「少し待ってて欲しい」と言って金庫に向かい、油滴天目茶碗の箱を取り出してから1度金庫を閉めた。
親父がその箱を持って出ようとしたら、その時突然夫人が咳き込んで踞ってしまった。

訳が判らず、でも極秘で来ている他国の首相夫人が西門で倒れたと噂されては大問題。ボディガードは急いで夫人を抱えて部屋に戻り、キョトンとして箱を持っていた親父を後援会長が急かして蔵から出たそうだ。
その時に慌てすぎて箱をどうしたのか記憶が飛び、思い出したのは家元夫人が旅行に言ってる最中・・・急いで蔵に戻ったら、油滴天目茶碗の箱はちゃんと金庫にあったので、咄嗟に自分が入れたのだと思っていたらしい。


「その人、なんで倒れたんだ?」
「後から聞いたのだが、どうやらハウスダストアレルギーらしくてな、蔵の中の空気を吸った途端、アレルギー物質があったのではないかと・・・」

「で、その日はもう茶碗どころじゃなくなったのか?」
「・・・薄茶手前をする予定だったのに、それも出来ずに帰ってな・・・あまりに大騒ぎだったから茫然としてしまったよ」

「・・・・・・で、記憶がないと・・・」
「・・・後援会長がギャアギャア叫ぶもんだから・・・」


親父が思い出して蔵に行ったその時にはもう箱は金庫の中・・・ただし、入れたのはお袋で、中身は割れた上にお袋が持ち去ったから空だったが。
中身を確かめなかったのは、ちゃんと紐が掛けられてあったから。親父が解く前に夫人が倒れたから、結局中身は出さなかったんだ。

勿論紐を外したのも掛けたのもお袋・・・「四方左掛け」という結び方なんだが、俺達は当然それを知っている。勿論お袋も結べる。


「・・・あの日以来、油滴天目茶碗を出す機会がなかったから」
「確認せずに展示する約束をしてたらアウトだな」

「・・・まさか、そんな事があったなんて・・・」
「それ、私のセリフですわ💢!!」




*************************




よく判らないけど、とにかく家元夫人の「油滴天目茶碗破壊事件」も、家元の「油滴天目茶碗放置事件」も解決・・・って事で、もう修復はしなくてもいいって話になった。
ただしその修復師・まぁちゃんは悪質と言うことで、西門の顧問弁護士に後始末を頼むって事で終わった。

上手く行けば家元夫人が渡した4000万円の他に、慰謝料も取れるかも?って話だったけど、それよりは「売った着物が戻って来て欲しいわ~」と嘆いていた。
それについては家元が「新しい着物を用意させていただきます・・・」と頭を下げてた。


「私は足にも怪我しましたのよ?ホント、その日はショックで寝られませんでしたわ!」
「・・・・・・儂も急に倒れるから驚いて・・・」
「うちでそんな人に何かあったら外交問題だ!正規ルート以外の訪問は受けるなっての!」

「どうせ美人で色っぽい人だったのでしょ?で、その方はご無事でしたの?」
「母さんが旅行中にお詫びの電話があったが、もう落ち着いておられた。もし良かったら茶室でお見せすると言ったのだが、帰国が迫ってるからと言われてな・・・」
「その時見に来てくれたら直ぐに判って、お袋が着物売らずに済んだのに!」

「まぁ、いいですわ♪これでスッキリいたしました~~!歴史に残るのは私じゃなくて家元ですわね~!」
「・・・・・・・・・形あるものはいつか壊れるのだよ・・・」
「じゃあもう忘れるか!」


それにしても「億」の茶碗を割って、この終り方・・・

4000万円も払ってスッキリ出来るの?!
そんなに簡単に忘れられるの?!


真っ二つに割れたのなら、片方5000万とかで売れないのかしら・・・と思う私は一般庶民なんだろうな・・・。



「・・・それはそうと、実はこの件とは全然関係ない話があるんだが」

急に総二郎が真面目な顔でそう言って、私に元の席に戻るように言った。だから彼の隣に座り、ピシッと姿勢を正してお2人に顔を向けた。多分、家元にも私の両親の事を簡単に話すんだろうな・・・そう思って息を飲んだ。

でもそうじゃなかった・・・いきなり自分の両親に向かって言ったのは「先日の話の続きだ」。
私は西門家の話題なんて知らないから、瞬間「あれ?」っと思ったけど総二郎は私を見てニコリと意味ありげに笑い・・・やっぱり私の事なのかな?と緊張した。

よく判らないけど、取り敢えず黙って愛想笑いしておこうと思ったら・・・


「俺はこいつとの結婚を考えている。
それを認めて欲しいのと、後ろ盾が必要なら道明寺は無理だろうが、花沢でも美作でも付けてやる。日高家には正式に断りを入れ、牧野をこの家に迎えるために西門の作法を教えていきたい・・・それを許可してもらえないか?」

「えっ?じゃあやっぱり・・・」
「まぁ、そうだろうとは思ったけど・・・」
「はぁっ?!」


家元も家元夫人もそこまで驚かないのに、私1人が大きな声出したことに総二郎がムッとした顔したけど・・・そんな大事な話を、今ここでするなんてひと言も聞いてないけど?!
そりゃ確かにそれっぽい話題はしたし、総二郎の気持ちも聞いてたけど、あまりにも急じゃない?!今日は家元夫人への疑問点を聞くだけだと思って来たのに・・・それにちゃんとしたプロポーズってあったの?!


私が吃驚顔で見上げてたら、総二郎が「お前がそんな顔するのか?💢」って怒ってたけど・・・


「総二郎、儂等に言う前に牧野さんと話し合った方がいいんじゃないのか?」
「そうよ、相手に驚かれてどうすんのよ・・・それに西門流の家元夫人なんて重責、二足のわらじなんて無理だし、相当な覚悟が必要ですよ?」

「話し合ったつもりだが」
「・・・・・・っ!!」


総二郎が私の方を真顔で見詰め、「新しい仕事を始めないか」って・・・
「俺が全部教えるから」って・・・・・・それ、こんな場面で言われたら返事なんてこれしかないじゃないの///!!


「家元、家元夫人・・・何にも持ってない上にこの世界を何も知らない私ですが、一から・・・いえ、ゼロからのスタートになりますが努力を惜しまず頑張りたいと思います。
お認めいただけるまで総二郎さんを師匠に西門流の勉強から始めますので、どうかよろしくお願いいたします」

「・・・ゼロって言うよりマイナスからだろうけどな」

「「・・・・・・・・・・・・」」



爆弾発言したあんたが言うかーーー💢💢?!





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2022/08/07 (Sun) 15:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

茶碗を放置したのはこんな事件があったからです(笑)
いやいや、ここはもう無理矢理だけどね💦


もう億の茶碗を割っても明るい明るい!(爆)
そりゃ犯人が家元夫妻だったら、誰も怒れないもんね!

そうなったら、今度から西門の家宝は何になるんだろう・・・総ちゃんの「書」でもお宝に(笑)


ラストは2人の結婚と、一華ちゃん達のことですね。
もう少しだけお付き合い下さいませ♥

2022/08/08 (Mon) 00:02 | EDIT | REPLY |   

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