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英徳学園では卒業式の後にプロムと呼ばれるフォーマルなダンスパーティーが行われる。
その数週間前、私が校舎内をいつものように走って移動していたときのこと。
数人の同級生がプロムのパートナーの件で盛り上がってるのを聞いてしまった。

「パートナーはどうなさるのかしらねぇ。F4の皆様・・・誘って下さらないかしら・・・」

「道明寺様は卒業式の後にすぐアメリカに言ってしまわれるんでしょう?今度のプロムが最後のチャンスじゃない?」
「あら、でも花沢様は卒業式前にフランスに行かれるらしいわよ?3年生がそう言ってたわ」

「あら、じゃあ、誰にも申し込まないってこと?残念だわ!」

私はそこで立ち止まってしまった。

「え?・・・道明寺がアメリカで、花沢類がフランスに行くの?・・・2人ともいなくなっちゃうの?」


卒業式まであと僅か・・・私は今まで真剣に考えていなかった現実に戸惑っていた。


**********************************


牧野が司を好きなことは知っていた。何度も・・・何度もその眼で司を追いかけていたのを見てきたから。
今日もそう・・・俺といても牧野の瞳は窓の外を歩く司を追いかけてる。
いつも喧嘩みたいにじゃれ合ってるくせに、そういう時の牧野はすごく女の子の顔になってるんだ。

司は卒業したらアメリカに行くことが決まってるんだよ?
もしかしたらついて行く気なの?俺をここに置いて・・・司の後をついて行く気なの?

何度もそう聞こうと思っては、言葉が出なくて飲み込んでしまう。



「花沢類・・・お願いがあるんだけど聞いてもらえるかな・・・」

「何でも言いなよ。牧野のお願い事なら何だって聞いちゃうよ?」

そんなわけないのに・・・もしかして司に気持ちを伝えるのを手伝って・・・何て言われたらそんな願い事は聞けないのに。
それでも、多分俺は「わかった」って言って手伝うんだろうね。牧野の笑顔が見たいから・・・。

時々思うよ。笑顔が見たくてもその笑顔が向けられる先が俺じゃないなら・・・見たくない。やっぱり見たくない。
なのに、迷わずに答えてしまうんだ。

「どうしたのさ。悩んでることでもあるの?解決してあげようか?」

「うん・・・多分、花沢類なら聞いてくれると思ったんだ・・・あのね、ダンスを教えて欲しいの」

「ダンス?・・・ワルツとかのダンス?」

「そう・・・踊れるようになりたいの。もうすぐ卒業でしょう?最後だからプロムで一緒に踊りたいの」

誰と?・・・だなんて聞かない。わかっているからね。
練習相手と本番は違うって事だろう?俺が練習相手・・・本番の相手はもう窓の外には見えなくなったね。
それでもあいつが消えていった方向をいつまでも見ている牧野。なんて残酷なお願いだろう・・・ね。


「いいよ。それじゃあ時間があんまりないね。何処で練習する?うちに来る?」

「いいの?花沢類の家を借りても・・・」

「いいよ。ダンスフロアもあるし、多分ダンスシューズもあるよ。うちの母親が使っていたものが合えばね」

ありがとうって小さい声で礼を言う。そして、俺が練習相手をするって言った途端に笑顔になった。
そんなに司のために上手になりたいの?それとも司に内緒で練習して驚かせたいの?

そんなに・・・司の事が好きなんだね。



その日から牧野のダンスの練習が始まった。

あれだけ休まなかったバイトをやめてまで練習に来る牧野・・・長い髪を1つに結んでドレスじゃなくて制服のままだけど。
俺の手を取ってフロアの中央に来ると音楽がかかるまでの僅かな時間、俺たちはお互いを見つめあった。
これが司のための練習じゃなかったら、今すぐにでも抱き締めてキスしてしまうのに。

「基本的なことはわかってるの?ホールドの位置・・・牧野の左手は俺の右腕だよ?掴まないように挟む感じでいいよ。
右手は俺の左手と重ねる・・・そこまで力を入れないで。顔の向きは左側・・・この姿勢は崩さないよ。絶対に変えないでね」

「う・・・うん。もう身体が痛い・・・」
「まだ踊ってないよ?」

スローワルツの曲がかかって音をとろうとするのに、牧野の身体が出てこないから踊ろうにも踊れない。
あれ?・・・と思って牧野の顔を見たらすでに頭がパニックしてるみたい。

「ねぇ・・・いくら俺がリードだと言ってもあんたの足が動かないんじゃ踊れない・・・わかってる?」
「う・・・うん!緊張しちゃって!」

こんなんじゃ大勢の人が見てるプロムでなんか踊れないじゃん!よく、これで踊りたいだなんて言ったよね?
仕方がないから一度ホールドを解いて、ウオーキングから練習した。
そしてステップを少しだけ練習してからもう一度ホールドを組んだ。

「わかってると思うけど、ワルツは男性のリードに女性が合わせないといけないからね。俺がリードするから次のステップは
ちゃんと牧野が判断してついてくるんだよ?今日は一番簡単なのしかしないからね」

曲が流れ始めた・・・本当なら阿吽の呼吸ってヤツだけどまだそんなことは無理だから手に力を入れてサインを出した。

「いくよ・・・じゃあ、右足からね・・・」
「うん・・・わ、わかった!」

全然上手じゃないのに、俺のリードにもついて来られないのに、顔だけは真剣そのもの。
何度も間違えてはやり直して、音楽なんてあってないようなもの。とてもじゃないけどワルツにはならなかったのが1日目だ。


「全然出来ない・・・はぁ・・・センスないんだよね。こういうの・・・すごいねぇ、花沢類は、男の人なのにちゃんと踊れてさ」

「そう?小さいときに覚えさせられたからね。将来ちゃんと女性をリードしないといけないからって・・・それだけだよ」

「花沢類がリード上手でも、私が下手くそ過ぎてダメなんだね。どうしてだろう・・・」

「牧野が恥ずかしがって身体を離すからだよ。ワルツはお互いがもっとくっつかないと回れないんだよ?」

もう一度手を出して牧野をフロアに誘う。
もう外は月が出るほど暗くなってる。その月明かりの中で牧野の手を取った。

「もう一度・・・牧野、俺にちゃんと身体をつけてみな?腰を引かないで・・・ホールドは崩したらダメだって言ったろ?・・・いくよ?」

「うん・・・こ、こうかな?」
「そう・・・そのまま、少しだけ上半身を反らせて?お腹から下は離さないで」

曲をかけながらそれに合わせて制服の牧野がクルクルと回る。ミニのスカートがひらりと揺れる。
少し足が絡まってしまうけど、俺がその足を上手く誘導させたらさっきよりは綺麗に踊れている。

でも、身体に力が入りすぎてガチガチだ・・・とても優雅とは言えない。
俺の左手を掴んでいる手も必死すぎて固まっている。そんなに力を入れたら最後まで持たないのに・・・。
そんなに不安な顔で踊ったらおかしいよ?それは相手が俺だから不安なの?・・・俺の腕じゃあ安心できないのかな。
こんなにもあんたの身体を支えているのは俺の腕なのに。
この俺の手の平から伝わらないかな・・・どれだけ俺があんたを想っているか、このフロアの中だけでリードしたいんじゃないって。

これからも牧野の側で見守りたいって伝わればいいのに・・・。


「花沢類・・・もうだめ!足が攣っちゃう!手が痛いよ・・・!」

「もうギブアップなの?そんなんじゃプロムに間に合わないよ?一緒に踊れないよ?」


緊張しすぎて体力を使った牧野はフロアの端っこで座り込んだ。
ちょうど月の光が差し込む窓辺・・・牧野が泣いてるのが見えたけど声をかけなかった。

その涙は誰のためなの?
上手くなりたいのは誰のためなの?

どうしてこんな残酷なお願いを俺にしたのさ・・・!


「今日はここまでだね。もうお帰り・・・車を出すよ」

「うん、ありがとう。でも・・・まだ諦めたくないの。明日も頼んでもいい?」


「・・・もちろん、いいよ。牧野が笑顔になれるなら手伝ってあげる」

なんて偽善的な返事だろう。
本当の俺はこんなんじゃない。牧野が司のためにダンスの練習をする場面なんて見たくはないのに・・・。
プロム会場でドレスの牧野が他の男と踊る時、俺はどうしたらいい?練習相手として観客席で見ていればいいの?


本当はこのまま月明かりの中で思いっきり抱き締めて、牧野と1つになりたいのに。


Shall We Dance?・・・それは誰となの?


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Comments 2

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2017/09/14 (Thu) 13:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは🎵

あはは❗ずっこけるかもですよ?

最近、社交ダンスを娘が始めたらしいんですよ。
社交ダンス?と、いえば草刈民代さん?と、なりましてね!
花男でダンスといえば、あきらじゃないかな?

なんか、時間に追われてるくせに書いてしまったんですよ…。

で、私ももちろん‼️竹中直人さんです!

2017/09/14 (Thu) 17:05 | EDIT | REPLY |   

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