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パーティーが始まって間もなく、司会者の方からアナウンスが入り、高城コーポレーション社長の挨拶が始まった。
高城も会場内から前方の方に設けられた主催者側の席に移動し、父親と思われる男性の側に立った。
その横には大人しそうな女性がいる。これがおそらく高城の母親、社長夫人なのだろう。
ただ、随分と控えめな着物姿でとても大企業の社長夫人には見えない。
道明寺社長はもちろんだが、うちの母さんにも備わっている威厳というものが感じられず、ごく普通の女性に見えた。

それだけが妙に場違いな感じに映ってしまう。
招待客のほとんどがそう思ったのかもしれない。あきらも不思議そうにこの家族を見ていた。

そして高城勇作氏の挨拶が始まった。

「本日はお忙しい中、我が高城コーポレーションの日本支社設立記念パーティーにご出席いただき誠にありがとうございます。
我が社もアメリカに渡ってからの18年間、色々な困難がございましたがようやく認めていただいたCPUクーラーファン部品の
おかげで何とかここまで持ち直し、その後は優秀な人材に助けられて成長してまいりました・・・」

社長の熱弁が続く間、高城は笑顔で頷きながら、その隣で夫人と共に立っていた。
俺は社長の話なんか聞かずにずっとあいつを睨んでいた。自分でも気がつかないうちに眉間に皺まで寄せていたらしい。
それを見たあきらが小突いてきた。

「類・・・無茶苦茶怖い顔で見るのやめろよ。お前の方が悪目立ちするぞ?」
「え?・・・ホント?」

苦笑いして隣を見たら、そこにも社長の話を聞いてない人が1人・・・横目で俺の方を睨んでいる母さんと目が合った。
軽く咳払いをして正面を向き直したら、今度は高城誠と目が合った。
あいつはスポットライトを浴びている方なのに、お構いなしに俺を見ている・・・さっきまでの愛想笑いとは全く違う挑戦的な眼だ。
その視線の向いている先が俺だとわかるのか会場が少しざわついた。
何人かの招待客が俺と高城を交互に見ているが、俺もあいつも視線を外すことはなかった。

しばらくすると高城の方が俺から視線を外して、全く違う方向に笑顔を向け直した。
流石にこのざわつきがメインステージにも伝わったのかもしれない。


「すげぇ神経だな・・・間違いなく喧嘩売ってるぞ?どうするんだよ、類」

「なにが?どうもしないよ・・・あのぐらいの挑発に乗るわけないじゃん。負けてなかったでしょ?」

そうか?なんて笑ってるあきらにつくしもクスクス笑いだした。
あきらにはわかってないけど、つくしは俺が嫉妬心丸出しな事がおかしいんだろう。
すぐ側に両親がいるからその手も掴めないんだけど、少しだけ視線を送ると赤い顔で応えてくる。

「そんな顔はここではしないで?我慢できなくなるから・・・」
「・・・っ!なんて事言ってるのよ!もう!」

小さな声で囁くように耳元でそう言うと、口元を押さえながら周囲を気にしてる・・・その慌てぶりが可愛かった。


「・・・と、言うことですのでこれからもアメリカだけではなく、ここ日本でも事業を拡大していかなくてはなりません。
ここにいる一人息子の誠がこれからは日本支社の代表となる予定でございます。まだ学生の身ですのでしばらく先になるとは
思いますが、どうぞ宜しくお願いいたします。それでは今日はこの後ごゆっくりご歓談下さい」

社長挨拶が終わり、盛大な拍手と共に高城が招待客全員の前で深く頭を下げた。
俺もあきらも手は動かなかったけど、つくしは一人両手を大きく鳴らして高城一家に拍手を送っていた。

「つくし、そんなに嬉しそうにしないでくれる?わかってると思うけど、あいつ、つくしの事狙ってる男だからね?」

「狙ってるって・・・そうかもしれないけど、お父さんには関係ないでしょ?」

「関係あるに決ってるじゃん!つくしはあんなおじさんをお義父さんって呼びたいの?絶対にダメだから・・・!」
「類!興奮すんな!・・・来たぞ」


高城はステージから真っ直ぐに、俺たちの方に向かって歩いてきた。


**********

<西門邸・総二郎>

関西支部に頼んでいた20年以上前の後援会名簿がやっと届いた。
年数は経っているものの綺麗に保存されていたらしく、書類が荒れている様子もなくて見るのに支障はなかった。

「一番古くて27年前?・・・すげぇ古いのまでとってたんだな・・・ある意味で規定違反だけどまぁ、いいか!」

一番古い名簿には高城という名前はなかった。
あきらの話だと大阪らしいから、それ以外地域を外してページを捲っていく。
26年前にもない・・・次の25年前の書類を捲っていたときに、チラッと見えたのが「高城工業」・・・代表者高城勇作!

「うそ・・・ホントに入ってた!・・・マジか!」

高城勇作のプロフィールページを見るとこの時には妻のみが記載されていて子供の欄には無しとされていた。
誠は現在21のはず、確かにこの時期にはいなかったはずだ。

そして妻は「美智子」東京の出身らしく、旧姓は安藤と書いてあった。

この時の企業の経営状態は特に可もなく不可もなく・・・いたって普通の状態だったようだ。
もちろんこの時が新規参入だから企業の審査報告書も添付されていた。決算報告書や取引先にも不審なものはなさそうだ。
それら全部に書かれている内容も在り来たりなもので特別を感じさせるものはなかった。

そのページを開いたまま、次の年、またその次の年と高城工業のページを開いていった。


「あれ・・・?この年に脱会してる・・・20年前か」

高城工業の名前に斜線が引かれているのが今から20年前・・・この後に倒産、廃業となったわけか。
脱会理由は業績不振による上納金未納・・・つまり余力がないと言うことだろう。そういう企業はもちろんこっちにもあるからな。

この時には高城勇作に子供が1人いるように記載があった。これがあの高城誠・・・ってことか。

別にこれ以上調べなくても良さそうだけど、何かが引っ掛かってる。
もう一度関西支部へ電話を入れて、この時期のことに詳しい人物がいないかを探してもらった。

『そうですなぁ・・・総務を担当していた人なら今でも堺の方で茶道教室の師範をされてるんで、そこに連絡してみますか?』

「あぁ、すみませんね。自分から掛けるんで電話番号を・・・」

そして、もと総務担当だったという男性に連絡を取ることが出来た。
ちょうど橋本というその男は稽古の空き時間だったらしくすぐに話を聞くことが出来た。


『あぁ・・・よく覚えていますよ。高城さんの事は・・・いいお人でしたけど、なんや部品に不具合がでて、製品回収が掛かってしもうて
その損害を被りましてねぇ・・・せっかく軌道に乗っていたのに工場を閉鎖せんといけんようになってね。気の毒でしたわ・・・』

「その後はどうしたかご存じですか?」

『いや、何でも日本を離れたとしか・・・それなら西門の清四郎さんがご存じじゃないですかねぇ・・・あそこの奥さんとお知り合い
だったと思いますよ?一度、お二人が会館の会議室でお話しされてましたが、その時に奥さんが泣かれてて清四郎さんが
やけに親身に相談にのっておられたから・・・』

「大叔父さんが・・・?」

『申し訳ないって何回もねぇ・・・清四郎さんが「美智子のせいだけじゃない」って、名前を呼びましたから覚えとるんですよ。
もしかしたら何かの遠縁ですやろか?呼び捨てにされるようならねぇ』

橋本さんの言葉に驚いた。
西門清四郎・・・家元の叔父にあたる人物で今では隠居生活だけどその昔は関西の西門の中心的な役割を担っていた人だ。
家元の叔父と言ってもそこまで年が離れてはいない、まだ70ぐらいのはずだ。
少し体調を崩したために今は自宅療養をしているはず・・・その大叔父が高城と知り合いだと?

あの掴み所のない笑顔が俺の頭の中を過ぎる。
何故、俺はあの男の事がこんなにも気になるんだろう。


電話を切った後もしばらくこの名簿を読み続けていた。


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Comments 2

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2017/09/18 (Mon) 05:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、おはようございます!

西門大叔父・・・とんでもない人まで登場させてしまいました!
マコッちゃんは果たして何者か?・・・うーん、説明したいけど説明できなーい!
でも、おそらく想像している関係の男ではないと思うんですけど・・・(笑)
・・・やっぱり説明できなーい!

このお話し、何処まで行くんだろう。今んとこ記録更新してるんだけど。
長いお話しは難しいですね。絶対短編向きだわ、私。

台風はほとんど影響ありませんでした。
雨が強く降ったけど長い時間でもなくて。そちらは大変だったんですか?
被害がなければいいですが、毎年台風やら大雨で被害が出てるので心配です。

自然災害は防げないから・・・なんとも心が痛みます。

2017/09/18 (Mon) 10:05 | EDIT | REPLY |   

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