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plumeria

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つくしの所に戻るとあきらとシャンパンを片手に楽しそうに話をしていた。
あきらはとにかく話が上手で気が利くヤツだから女性の心を掴むのは得意だった。だからってつくしの心までは奪えないけどね。

「つくし、あきらと話なにをしてんの?そんなに面白い話でもある?」

「だって、美作さんったら私よりお化粧品やシャンプーに詳しいの!今ね、何処のものがいいのか教えてもらっていたのよ。
家に帰ったらすぐに注文しなくっちゃ・・・ねぇ、美作さん、さっきのメーカー、メールしてくれる?忘れちゃうから!」

「了解!ホントに使ってみて?全然変わってくるから・・・それとね、バスオイルでいいのがあってさ・・・」

なんの話をしてるかと思ったら・・・俺には全然わかんない話で盛り上がっていた。
つくしがあきらの髪の毛に手を伸ばしてる。これになんの感情がないにしてもすごくムカつくんだけど!

「今度うちに遊びにおいで?商売柄ヨーロッパの香水とか化粧品だとか結構サンプルで届くんだ。世間に出てない一級品だぜ?
気に入ったものがあったら注文も出来るし、つくしちゃんに合わせて新しいフレグランスも作れるよ?」

「そうなの?そう言えば美作さんの家だけまだ行ってないわ!今度、類とお邪魔してもいい?」

「あははっ!類となんだね?いいよ、2人でおいで!」


少し顔が熱い・・・会場の熱気にやられた俺はその火照りを冷ますために、人気の少ないテラスで夜風にでも当たろうと思った。
まぁ、あきらの事だから特に心配もないし、話してる内容が女同士みたいなもんだから大丈夫だろう。
そう思って踵を翻した所で、つくしたちを見てヒソヒソと噂話をする女性達の声が聞こえた。


「あちらは花沢のお嬢様でしょう?・・・去年道明寺のご子息と婚約解消したっていう・・・今度はどちらのご子息と?」
「さっきは高城様のご長男が直接ご挨拶していませんでした?手にキスまでして・・・」

「今お話ししているのはどちらの?随分と素敵な男性とお話しされてますこと」
「あれは美作商事のご子息、あきら様ですわ。ほら・・・結構噂が立ちますでしょう?色んな女性と・・・華やかな方ですものね」

社交界の女性達の噂話はすぐにネットで拡散する時代だ。明日にはもしかしたら花沢と美作が名前を出されてるかもしれない。
毎度のことながら、すぐに話題になってしまう家柄にうんざりしながらテラスに向かった。

♪~

外に出て少し涼んでいたら胸ポケットに入れていたスマホが鳴った・・・メールの着信音だ。
取りだして見てみると送ってきたのは・・・静かだ。すぐに開いて読んでみた。


「類、元気にしているかしら?私たちは今日入籍したの。だから報告しておくわね!
それにお腹の赤ちゃんは女の子らしいわ。必ずフランスに来たら会いに来てね」



「へぇ・・・そっか!良かった。元気に育ってるんだ・・・」

クスッと笑ってしまったのは確かだ。あの小さな旅館で見た大きな男と不釣合いな静の姿を思い出した。

フェンスに寄り掛かってその画面を見ていたら、左側からポケットに手を突っ込んだままの高城誠が近づいてきた。
会場とは違う挑戦的は態度・・・俺は見ていた画面を消してスマホをしまった。


「ごめんね、お邪魔したかな。花沢君が嬉しそうに笑って画面見てるのが珍しかったからさ・・・誰からなのかと思ってね。
もしかして妹と別に噂のあった人だったりして?」

「そうだとしても関係ないし、話す気もないよ。基本、あんたとは話したくないから・・・」

「なんだ・・・やっぱり、ご両親がいないところでは変わんないんだね。さっきは頑張って演技したってこと?頑固だな・・・!」

「なんとでも・・・」


もう十分熱は下がった・・・高城に顔を向けずに室内に戻ると、さっきと同じ所でまだ楽しそうに話し込んでる2人が見えた。
後ろにいる高城がおれの後に付いて入ってくるのがわかったけど無視してつくしの所に戻る。


「今度は何をそんなに楽しそうに話してたの?また、余計なことを言ったんじゃないよね?あきら」

「何が余計なんだよ!高城にするぐらいなら美作においでって言っただけだよ。お前だってそう思うだろ?」

「誰がそんなことを思うのさ!美作みたいに小姑が2人もいるとこなんか問題外だよ。ほら!離れてっ!」

流石にあきらだと本気にしないのかつくしは大笑いして俺の横に並んだ。
あきらも同じだ、冗談だってわかってるからつくしの背中を押して俺の方に送り出した。
隣に並んでもいつもみたいに引き寄せたりはしない。つくしも心得ているから少し間をあけてわざと視線をそらした。


外から戻ってきた高城はやはり俺たちの所に再び近寄ってきた。
それを目にしたつくしもあきらも、それまで楽しそうにしていたのに一気に表情を変えた。



「つくしちゃん、少し外で話さない?お兄さん抜きでさ」

「え?・・・でもそれは・・・」

困ったような顔をしてつくしが俺を見る。俺は両親の方を横目で確認する・・・やはり、俺たちのことは監視中だ。
高城は両親の前だと俺が止める事が出来ないとわかっていて、こんな行動をとっていることはわかりきっている。
あきらを使って止めようと思ったら、肝心のあきらがすぐ側にいた美作の取引先の社長と会話を始めてしまった。

「いいよね?向こうのテラスに行こう?・・・そんなに警戒しなくても何もしないよ。話がしたいだけだから」

「・・・類、あの、えっと・・・」
「つくし、行っておいで。その代わり返事には気をつけて・・・なにか言われてもすぐには答えないで」

ここで引き留めるわけにも行かなかったから、つくしに注意だけして高城に渡した。

つくしの背中に当ててるあいつの手が許せない・・・テラスの方に向かって行く二人の後ろ姿をまともに見ることは出来なかった。
高城がつくしを連れて行くのを、今度はうちの両親が心配そうに眺めていた。
それは何の心配なんだろう。二人が上手くいくかどうかの心配なのか・・・それともその反対か?


*********


パーティー会場からテラスに出ると、そこは涼しい風が吹いていて、少し火照っていた私の顔を冷ましてくれるかのようだった。
こんな場所はあの道明寺の婚約発表の日以来だったから、どうも居心地が悪くて落ち着かなかった。
幸い、美作さんもいてくれたから気持ちは楽だったけど、お父様達があんな眼でずっと私たちを見てくるのが怖かった。

だからって高城さんと二人っきりになるのも嫌だったけど、類が言うとおり、返事にだけ気をつけようと思って彼についていった。
テラスに出たら高城さんは私のすぐ側まで来て手を伸ばしてくる。
肩か腕でも掴まれるのかと思って身体を引いたら、彼も少し眉間に皺を寄せたけどその手を引っ込めてくれた。

「そんなに嫌われてるの?・・・参ったな。ちょっとショックなんだけど」

「あ・・・ごめんなさい。そういうの慣れてなくて・・・本当に男の方とお付き合いしたことがないから・・・」

「道明寺は?やっぱりあの男とは何でもなかったの?彼が君のことを好きだったのは有名だよ?君は違ったの?」

「私は・・・嫌いじゃなかったけど、恋になる前に終わったから。今はいい人だったと思っています。」


久しぶりに聞く道明寺さんの名前に、少しだけ胸が熱くなる。
恋になる前に終わった・・・この言葉は本当だ。私が唯一類以外でときめいてしまった人だから。
類と見たパソコンの中の彼の笑顔、今はどうしているんだろうと・・・側にいる高城さんを通り越して道明寺さんの事を思っていた。

少し油断してしまったのかもしれない。高城さんは考え事をしていた私の手をとって自分の方に引き寄せた!
ほんの少しだけどぶつかってしまったのは高城さんの胸・・・手で押し返そうとしたけど、余計に力を入れてきたから振りほどけない!

「きゃっ・・・やめて下さい!あのっ!」

「僕といるのに他の男の事考えてたでしょう?だから現実に戻してあげたんだよ?」

「はぁ?・・・別にあなたと居ても他の人のことを考えてもいいんじゃないですか?私達はそんな仲じゃないわ!そんな事をするなら
中に入ります・・・手を離してください」

「離さないよ。それに、多分、君と俺はいずれもっと近い関係になると思うから・・・そのつもりでいて欲しいな」

もっと近い関係・・・それが何を意味するのかぐらい、もう私にだってわかる・・・でも、そこまで話は進んでいないと類が言っていたのに!
高城さんは私の手を握ったまま話を続けた。


「実を言うとね・・・君のことはアメリカでもう知っていたんだ。そして、テレビの中の君に一目惚れしたんだよ。
英徳の電子工学科を選んだのも、この大学が優秀だったってだけじゃなくて、花沢つくし・・・君に会いたかったからなんだ。
嘘だと思わないで?・・・君のことを何も知らないのは本当だけど、それよりも俺は君のことを愛してしまってるんだ」

私の事を愛してるですって?私がどんな人間で何が好きで何が嫌いかも知らないような人が・・・愛してるですって?
そんな言葉を出されるとは思っていなかった。
ただ、花沢の娘だからとか、興味があるから付き合ってみたいとかのレベルだと思っていたから気にもしなかったのに・・・。


「あ・・・あの、お礼を言うのも変ですけど、好意を持っていただいたのは嬉しいです・・・でも、おかしいでしょう?」

「おかしい?・・・そう言うだろうと思った。テレビの中の君に恋したなんて、まるでアイドルに夢中になるってのと同じだと思った?
初めはそんな気分だったんだよ。でも、実際に会ってみたら本当に好きなんだって思ったんだ。俺の思っているとおりの人だってね。
理想の女性っていうのかな・・・まさに君はそうだったんだ」

「高城さんが思っているような人間じゃないかもしれないじゃない・・・」

「いいや、俺の理想だよ。花沢家という完璧なバックグランドを持っているのに、それを武器とはしない所が好きだな。
何事も自分の意思が重要で、決して中身は流されないっていう強さもある。そして、誰にでも優しいところ・・・そんな君が好きだ」

高城さんの黒い瞳が私の眼を見つめたまま、その視線を外そうともしない。
これ以上近くにいたらこの瞳に負けて、変な答えを口にしそうだった。


「ごめんなさい。高城さんは私のことを誤解してるわ。そんなに立派な人間じゃないし、弱いとこだらけだもの・・・。
お気持ちは嬉しいけど、今はそんな気分にはならないし、両親も焦る必要はないって言ってくれたの。だから、もう離して?」

俯いたままそう答えた私の手をやっと高城さんは離してくれた。

ゆっくりと彼から距離をとり、そして背中を向けた。


顔を上げたら窓の向こうに類の姿が見えた。
テラスから室内に入ると、私の足は真っ直ぐに類の方に向かう。


心配そうに笑う類の胸に縋りたいけど、その向こうからお母様の鋭い視線があるのに気がついた。



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