FC2ブログ

plumeria

plumeria

<sideAKIRA>

「美作さん・・・放して?」
「・・・ごめん。悪かったよ・・・」

牧野は俺を突き飛ばしたりなんかしない。胸に抱かれたまま小さい声で、謝るように呟いてきた。
抱き締めていた手を放すと静かにゆっくりと、俺の胸の中から出ていく。

「私が花沢類と踊ってるときに何を考えてるかって・・・綺麗に踊りたいって考えてるよ」

「じゃあ、俺と踊る時はどうなんだ?」

「美作さんと踊る時も同じだよ。綺麗に踊りたいってことしか考えてないよ。どうやったら上手になるかなって・・・」

「じゃあ、どうして俺と踊る時は踊れて、類の時には踊れなくなるんだ?ホールドが多少変わってもレベル的に大差はないはずだ。
俺が見た限りでは牧野は類と踊る時には異常なほど身体に緊張があるよな・・・」

「・・・・・・」


しばらくして牧野はクスッと笑った。
「いやんなっちゃうなぁ・・・」そう小さく呟いたら制服を片手にダンスフロアを出て行った。

数分間待っていたけど牧野が戻ってこなくて、気になった俺はリビングの方に探しに行った。でも何処にもいない。
もう一度フロアに戻っても、牧野が入ったことのある応接室に行ってみてもどこにもいなかった。


「あら・・・?どうしてここにいるの?」

そう声を掛けてきたのはお袋だ。手には牧野が着ていたドレスがある・・・。

「なぁ、牧野来たんだろ?今どこにいるんだ?制服持ってフロアを出て行ってから、その後いなくなったんだ」

「えぇ、つくしちゃんなら確かに来たわよ?もう帰りますって挨拶に来てね、ドレスはあげたつもりだったのに置いて帰ったみたい。
もう暗いからてっきりあきらくんが送って行ったと思ったのに・・・まさか1人で歩いて帰ったのかしら」

「1人で帰った?俺には帰るなんて一言も言わなかったのに・・・」


*******


慌てて外に出たらもう真っ暗で星が光っていた。
うちの家からだと歩いて牧野の家までは帰られないから交通機関を使うはずだ。
でも、ここから車以外で帰ったことがない牧野は無理だとわかっていても歩くかもしれない・・・そう思って急いで車を出した。

小回りがきくようにフィアットで、牧野が通りそうな道を探して回った。
あいつの事だから大きな騒がしい道よりも、小さくて人の少ない道を選びそうな気がした。

そして何回もハンドルを切りながら狭い道を探していた時、素通りしようとした公園に人がいるのを見つけた。


本当に小さな公園・・・そこにあるブランコに人がいる。俺は路肩に車を停めて、そこに近づいた。
ブランコは揺れてるわけでもなく、その子は遊んでいるわけでもない。
ただ、ブランコに座って夜空を見上げていたんだ・・・黒い髪を夜風に靡かせながら。もちろんそれは牧野だ。



「牧野・・・何してんだ?びっくりするだろう?黙って帰ったりしたら」

ビクッと肩を揺らしたけど振り向かないで牧野は答えた。


「美作さん・・・よくわかったね。1人で帰ろうと思ったんだけど道に迷ってさ・・・」

「そうだろうな。うちから歩いてなんて帰られないのに、無茶しないでくれよ・・・頼むから」

ブランコの後ろから牧野を抱き締めた。チェーンがガチャガチャと音をたててるけど、すぐに静かになる。
牧野は抱き締めた俺の腕を胸の前で掴んで「ごめんなさい・・・」一言だけ言葉をだした。
その謝罪は何に対してだ?黙って出て行ったことか・・・それともこうして抱き締めている俺に言ってるのか?

牧野から離れて隣にあるブランコに俺も座った。そうして同じように夜空を見上げてみた。
ちょうど見えるのは三日月だ・・・今にも折れて落ちてきそうな三日月。


「牧野はどうして練習相手に類を選んだんだ?自分でも類とは踊れそうにないって思ってたんじゃないのか?」

「・・・だって、花沢類は本番で踊ってくれないんだもの」

「え?・・・どういう事?」

類がプロムの本番では牧野と踊らない・・・誰がそんなことを言ったんだ?
もう諦めたって顔で照れ笑いをしながら俺の方を見ている牧野。少しだけブランコを漕いでその続きを話した。

「皆が言ってたの。花沢類は卒業式前にフランスに行くから卒業式には出ないんだって!だから当然プロムにも出ないでしょ?
そうしたらさ、絶対に踊ってくれないじゃん?それにさ・・・花沢類は勘違いしてるんだよ」

「勘違い?・・・類が?」

今度は勢いよく漕ぎだして、ブランコは俺のはるか上まで牧野を運んでいた。
そのまま三日月が牧野に突き刺さるんじゃないかって思うほどに・・・でも、その時の牧野の声は涙声だった。

「花沢類はね・・・私が道明寺を好きだって思ってるんだよ、きっと!!」

「・・・え?牧野が司を?・・・それってもう随分前の事じゃないのか?」

「うん!でもね・・・今でもそうだと思ってるんだよ!わかるんだ!・・・だから、だから・・・」

そこまで言うと急にブランコを止めて顔を下に向けたまま・・・スカートの上にポタポタと涙が落ちていった。
隣のブランコで自分の膝の上に肘を置いて座ったままの牧野・・・俺はこいつが泣き止むのを待っていた。
どのくらい経っただろう・・・結構長い時間が過ぎてから、暗い中でも赤くなってるのがわかる鼻をすすって牧野が顔を上げた。
そして両手でゴシゴシと目をこすると大きく1つ息を吐いた。

「はぁーっ!少し気が晴れたかも・・・!美作さん、ありがとう。誰にも聞いてもらえなかったから胸の中に溜まってたのかな!
言葉にしたらすっきりしたよ。うん・・・もう大丈夫。今日の練習に付き合ってくれてありがとう!」

やせ我慢して作り笑いを浮かべている。
はっきり言えばいいのに。類と踊りたくて練習してるんだって。


もしも本当に類がプロムに出なかったら誰と踊るんだ?
俺が手を差しだしたらそれを受け止めてくれるのか?


そんなに苦しそうな顔をしているのに、今でも心の中であいつの手をとっているのか?


「牧野、明日からもうちで練習しようぜ?俺がお前の手をとってやるから・・・」


********

<花沢邸>
家に戻ってから自分の部屋のベッドに倒れ込んだ。

あきらとならあんなにスムーズに踊れるなんて・・・あきらの言葉ならあんなに理解するなんて・・・。
同じようにしたはずなのにどうしてあんたはわかんなかったの?

同じようにホールドしたのに俺の時には距離を感じた。
同じようにステップを踏んだのに俺の時には足が止まってしまう。
同じように手を掴んでいたのに・・・あんたの手は冷たくて硬く感じた。

たとえ本番では他の男と踊っても、ただの練習相手で終わったとしても牧野を一番綺麗に踊らせてあげたかったのに。
それさえも出来ずにあきらの家に置いてきてしまうなんて・・・最低だ!


今頃まだ練習してるの?
こんなに遅くなってもあきらの手をとっているの?


Shall We Dance?  それとも、もう俺の手は必要ないの?


窓から見えるのは三日月・・・もう少しで消えてしまいそうな三日月だ。


shiro.jpg
ありゃ?あきつくになってる・・・
関連記事

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/09/21 (Thu) 14:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!・・・ぷっ!

なんで毎回面白いこと書くんですか?笑ってしまった!
でも、今の時代はそんな言葉出したらヤバいんでしょうに・・・

私が子供の頃は当たり前でしたけどね。先生のビンタも言葉での暴力も・・・
ま、そんなに生徒がいたらキレるんでしょうね、先生も。

で、ダンシングヒーローですか?
えぇ!今でも歌えますともっ!あのダンスは出来ないけど・・・。

2017/09/21 (Thu) 20:43 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply