FC2ブログ

plumeria

plumeria

本当に偶然だったんだ。小さな公園であきらが牧野を抱き締めているところを見てしまうなんて。


あれからどうなったかが心配でこっそり美作に来てみたら、あきらが運転する車が門を出るところだった。
車内はよく見えなかったけど、助手席には誰もいなかった・・・それにあいつが運転すること自体が珍しい。


牧野に何かあったんだ・・・すぐにそう思った。

あきらの車は小さな路地に入っていった。もちろん走ってもすぐには追いつけないんだけど、車が向かって行った方を探したら
狭い道の横に停まっているのを見つけた。

ゆっくり近づいたらそこには小さな公園があるみたい・・・人の気配はほとんどしなかったけどよく見たら一番奥の方に・・・。
公園の端にあるブランコに乗っている牧野をあきらが抱き締めていたんだ。

会話なんて聞こえない。2人の表情なんて見えない。俺の眼には抱き合ってるあいつらしか見えなかった。


信じられなかった・・・。
牧野があきらに抱き締められていても抵抗もせずにそのままだなんて。
司が好きなんじゃなかったの?それとも俺たちの中だったら誰でも良かった?あんたはそんな女じゃないよね?

足音もさせずにその場を立ち去った。そして、しばらく大学には行かなかった。


*******

<sideAKIRA>
「そう、ゆっくりでいいからここでもっと足を前に出して・・・俺の左手がこっちに誘導するから牧野はここでターンして・・・」

「ちょっと待って?えっと・・・美作さんがどっちに動くの?」

「どっちに動くの、じゃなくて俺が誘導するからついて来いって言ってんの。牧野が自分で想像したとおりに俺が動かなかったら
そこでステップが止まるだろう?だから頭でも考えるけど基本は男に任せとけ。もう一度!」

あれから毎日学校が終わると美作で練習をした。時にはお袋と俺の模範演技を見ながら、時には痛みと闘いながら。
そしてゆっくりした曲で練習してきたから、普通の速度に上げて踊るともうこんがらがってる。

何度も何度も、座り込んでは立ち上がって、食事もろくに摂らずに練習をしていた。

そんなときは決まってお袋がサンドイッチを作ってフロアの隅のテーブルに置いていく。
小さなメモに「頑張って」・・・そう付け加えて。


「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・あ~もうだめだ・・・頭がついていかない!」

「頭なんていらないだろ?ほら!これ食ったら今日の最後のワルツかけるからな!」

「意外と鬼教官だね!美作さんイメージ変わったよ・・・」

「当たり前だ!自分に自信のないヤツには一番厳しくしないと、この先生きていかれないって思うからな」

「・・・は?誰のこと?」

「あいつの家もそれなりに厳しいんだから、気持ちが弱かったら入れてもらえないぞ・・・わかってるくせに!」

急に黙って目の前のサンドイッチに手を伸ばす。それを無心に口に詰め込んでる・・・案の定詰め込みすぎてむせ込んだ。
慌てて胸を叩く牧野に横からジュースを差し出すと、咳き込みながら受け取ってそれで口の中のものを流し込んだ。
まったく・・・こんな女は俺の範囲外だったのに。なんで今はこんなに夢中で教えてるんだろうな。

「あぁ~!びっくりした。ごめんね、美作さん」
「どういたしまして!食べ方にも気をつけろよ?牧野も女なんだから」



この後も夜遅くまで練習は続いた。
最後の方は何も言わなくても俺のリードについてこられるようになった。
練習用のドレスだけどそれがふわりと舞う度に、牧野の横顔が俺の視界に入る度に高鳴る鼓動を抑えられない。

少しだけ力を入れてる左手に気がついているか?
少しだけ背中に当てている手が震えているのに気がついてないだろう?

牧野の吐く息が聞こえる度にその唇を塞いでしまいたくなるんだ。それを我慢してるだなんて思ってもいないだろうな。
黙っていたら気持ちだけが高まるから、言葉に出して逆に心を静めていく。


「すごく綺麗だ・・・いいぞ。そのまま俺のリードについてこい。腰が逃げないようにしろよ?振り回されるから」

「うん・・・すごく踊りやすいよ・・・何だか上手になったみたい」

曲が終わるまでホールドを解かずに踊り切った。
そして終わったらゆっくりと手を外して、向かい合ってお辞儀をする。


「ありがとう・・・美作さん。私、最後に花沢類に頼んでみる・・・フランスに行く前にもう一回一緒に踊って下さいって」

「それなら本番にしろよ・・・あの広い会場で一番目立つように類と踊ればいいさ」

「・・・でも、花沢類はその時にはいないよ?」

「類は日本にいるよ。・・・行くのは両親だけで、類はここに残るんだ。噂なんてそんなものだよ・・・ごめんな、すぐに言わなくて」


俺の一言に大きな眼をパチパチさせて驚いてる。
牧野はその場に座り込んで「なーんだ・・・」って呟いていた。その表情は驚きから笑顔に変わった。

教えなかったことを怒りもしない・・・こんなに思い詰めていたのにお人好しだな。だからお前が好きなんだけど・・・。
本当にごめんな。知っていたのに言わなかったのは俺がお前を独占出来る最後の時間だったからだ。



「なぁ、牧野・・・俺の頼みを聞いてくれる?練習に付き合ったお礼ってことでさ」

「・・・頼み?なんだろう。私が美作さんにしてあげられること?そんなものあるの?」



「あるさ・・・牧野。 Shall We Dance?・・・もう一度私と踊っていただけますか?」

俺は牧野の前に右手を差しだした。
再びびっくりしていたけど、しばらくしたら牧野は俺の手をとってゆっくりと立ち上がった。


「By All Means ・・・もちろんだわ」


*****


この後、お袋に頼んで正式なダンスドレスを着させてもらい、俺はタキシードに着替えた。
調子に乗ったお袋と親父もフォーマルに着替えて俺たちとダンスフロアに腕を組んでやってきた。
双子の妹はそれぞれ色違いのフォーマルドレスで、相手には執事とその補佐の人間・・・4組が揃った。


「じゃあ、牧野。スローワルツだ・・・これで最後だから。この1曲だけはお前の相手は俺だからな」

「うん。今日は美作さんのことを考えて踊るね」


曲が流れ始めると言葉がなくても牧野は俺についてステップを踏んだ。
それは始めた頃とは違って優雅で軽やかで・・・すれ違う親父とお袋も牧野に笑顔を送った。

誰のことも考えずに・・・今日だけは俺の事を考えてくれ。
本当にこれが最後なんだから。


真っ白なドレスを翻しながら俺の腕の中で今までで一番美しく踊る牧野がいる。


Shall We Dance?・・・・・・ありがとう、牧野



yjimageO05QLL8Q.jpg

あ・・・あきつくかい?
関連記事

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/09/22 (Fri) 13:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりんさま、こんにちは🎵

あきつくですよね?
カテゴリー修正かと思いましたよ。
あきらでシリアス書いたら、とんでもない話になりそうだ!なんでこんなに彼を苛めてしまうのかしら…

最近、あきらもお気に入り♥️


シスコンも向日葵もあきらがでないので寂しいな~❗
でも、全く余裕がなくなった…

いま、かなりのピンチです。誰か私に時間を下さい‼️

で、浜田省吾(笑)また、帰ったら聴いてみよう!

2017/09/22 (Fri) 16:29 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply