Shall We Dance? (6)

卒業式の当日、あきらからすごい剣幕で電話があった。絶対に卒業式には来いと・・・。
もともと行く気がなかったから、そんな電話もらっても俺はベッドから起き上がることはなかった。
もう何日間もこの部屋に籠もりっきり・・・あの光景が頭から離れなかった。

笑顔で牧野と会える気がしない。もう一度ベッドに潜り込んでこのままプロムが終わってしまうまで逃げるつもりだった。


時間が過ぎていく・・・時計を見たら午後1:00、卒業式が始まった。
式典は確か午後2時までだ。そして4時からはプロムが始まる。やっぱりまだ行く気になんかならなかった。
朝から何も変わってない俺は未だにシーツにくるまった状態・・・頭が重くて動くことも出来なかった。



その時また電話が鳴った・・・お節介なあきらからだ
出ようかどうしようか悩んだけど、あきらのコールもしつこくて、仕方なく電話に出た。


「もしもし・・・もう卒業式なら終わっただろ・・・しつこいよ、あきら」
『類っ!お前俺の言うこと無視しやがって・・・いいか?プロムには来いよ?お前が来ないなら本当に俺が貰うぞ?』

「なんで?・・・行きたくない。ほっといてよ・・・」

『・・・いい加減にしろよ?後悔したくないなら出てこい。今までと同じでいいならそこで寝とけ!』


珍しいあきらの怒鳴り声・・・仕方がないからベッドから起き上がった。
でも、プロムに行くならタキシードだ。面倒くさかったけどそれに着替えて上着は手に持つだけにして車に乗った。
行き先は「英徳学園卒業記念・プロムナード開催会場」・・・全生徒収容可能なイベント会場を貸し切っていた。

近くまで行くと華やかに着飾った学生達が会場入り口でウロウロしている。
在校生もエスコートを受けていない子でもこの日はフォーマルドレスやタキシードで入場するから余計に賑やかで騒がしかった。


花沢のリムジンが会場前に到着したら、その辺にいる生徒達が大騒ぎ・・・そんな中を行かなきゃいけないのかと思うとうんざりだ。
俺の事のよく知らないくせに騒がれるのは鬱陶しい。あからさまに不機嫌な顔を向けてもなんの効果もなかった。
周りを無視してホール入り口まで行くと、目の前にあきらが腕を組んで立っているのが見える。


「よく来たじゃん・・・目は覚めてるか?」

「ん~・・・まだ寝てるのと同じだよ。もう・・・なんなの?どうして無理矢理来させるのさ」

「仕方ないだろ?最後の頼みって泣きつかれたらさ。世話のかかる妹と友人を持つと苦労すんだよ!・・・こっちだ」

あきらが俺を案内したのは俺たち専用の控え室・・・そこには総二郎も司もタキシードでくつろいでいた。
今、一番見たくない顔・・・今日は一段と自信満々な余裕の表情に見えるのは俺が卑屈になってるから?
それでもいいけど、とにかくこんな部屋にはいたくないんだけど!・・・ってあきらを睨み付けたら、逆に睨み返された。


「なに・・・?なんで怒ったような顔してんの?俺が何か悪いことでもした?」

「悪いことはしてないけど、大馬鹿野郎だって事は確かだ!全く・・・周りが見えてるようで、自分の事だけ見えてねえよな!」

何を言ってるのかさっぱりわからない。
溜息をつきながらそこにあった椅子に座ると、正面にいた総二郎も司も笑ってる。なんだかすごくムカつくんだけど・・・!
あきらが2人に目配せしたら、総二郎も司も笑ったまま席を立って、この部屋を出て行った。

1人取り残された俺はタキシードの上着をそこら辺に投げ捨てて、ソファーに足を投げ出して横になった。
「人を呼び出しといて・・・」なんて、独り言をいいながら、微かに聞こえているクラシックの音に耳を傾けていた。

あれはスローワルツ・・・初めて牧野と練習した曲だ。
まだ全然踊れなかった牧野の手をとった時の、何とも言えない幸福感をこの時も思い出していた。
ぎこちないターンに硬すぎる手、オドオドした表情はどれをとってもダンスじゃなかったのに。


しばらくしてカチャ・・・って音がしてドアが開いた。


「もう!なんでこんな事に付き合わないといけな・・・あれ?」


少し開いたドアから赤い顔して覗き込んでるのは・・・牧野?
半分だけ見えてるドレスはダンス用の・・・それにすごく綺麗に化粧をして、真っ直ぐな髪も今日は巻いててサイドアップにしていた。
そんな牧野が恥ずかしそうにドアから半分だけ顔を出してる。思わず飛び起きてドアの方に向かった。

「どうしたの?・・・入ればいいのに。今、司はいないんだけど・・・」

「道明寺ならもう会場に行ったよ?残ってるのは花沢類だけだよ」

「え?・・・司達、会場入りしたの?俺1人ここに置いて・・・まぁ、いいや。とにかく入って、牧野」

牧野は顔を伏せたままチョコチョコとした歩き方で部屋の中に入ってきた。
そのドレスは誰が作ったの?司それとも・・・あきら?どっちにしても牧野にはよく似合っていた。
派手な飾りはないけど上品なクリーム色のドレス。下の方がイエローが強めでふわっと広がるようなデザインのダンスドレス。
上の方は白が基調で、小さく光るのはスワロフスキーだろうか、品良くそれが光り輝いていた。


「綺麗だね。作ってもらったの?・・・あれから上手になった?」

「どうだろう。上手には踊れるようになったけど、今日踊れるかはわかんないよ。踊ってくれる人で変わるんだもん」

「あきらは?誰か誘っちゃったの?」

「美作さんは桜子と踊るの。道明寺は滋さん・・・西門さんは優紀が一緒にいるの・・・」


・・・・・・・・・あれ?


どうして司が滋で、あきらが桜子?どうして俺はここに牧野といるんだろう。
そう思ったら段々おかしくなってきた。どこかで俺は勘違いしてた?もしかして初めから?一番わかってなかったのは・・・


「ねぇ・・・牧野は誰とプロムに行きたかったの?」

「え?!・・・今更言うの?・・・だって、だってね!皆がね花沢類が・・・」

「俺がなに?今更って?・・・もう一回聞いてもいい?牧野は誰と踊りたかったの?」

ドレスの前側を握り締めて、真っ赤になって、少しだけ涙眼で。
そんな牧野の横まで行ってそっと抱き締めたら、震える肩が可哀相なぐらい。

「どうしてそんなに震えてるの?そんなに震えてたら誰とも踊れないよ?」

「だって・・・皆が花沢類が卒業前にはフランスに行くって言ってたんだもの・・・だから、練習でしか踊れないって思ったの。
花沢類と踊るのはここじゃ無理だって思ったの・・・だからね、一緒に練習したかったの」

「練習が牧野にとっては本番だったの?・・・言ってくれたら良かったのに・・・そうしたらあきらの家になんか行かなかったよ」

今度は横からじゃなくて正面から牧野を抱き締めた。


なんだ・・・そうだったんだ。
聞けばいいのに聞かなかったのは俺が臆病だったから。

少しだけ身体を離してあげたけど、すぐに牧野の唇を塞いだ・・・なんだ、初めからこうすれば良かったんだ。



ねぇ、牧野、俺と踊りたかったの?
ねぇ、牧野、司のことはもう大丈夫なの?

ねぇ、牧野、その手をホールドするのは俺でいいんだね?


Shall We Dance? 今日は俺と踊ってくれますか?


その前にもう一度キスさせて?



shiro5.jpg

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花より男子

2 Comments

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2017/09/24 (Sun) 12:57 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは!

出ました!役立たずの類!
やっとあきつくから類つくへと戻って参りました!
あのままあきつくで終わろうかとも考えたんですけど、カテゴリ変えるのもね・・・

シスコンが暗いからっていきなり季節感ないものを書いちゃって!
シリアス書いてたら普通の暮らしが辛くなるって先輩が言ってたんですけど本当だって思いました。

なーんかねー!何でもないことに溜息が出るんですよ。

8月は楽しかったなぁ・・・(遠い目)

と、言うことで今日もありがとうございました!

2017/09/24 (Sun) 15:29 | EDIT | REPLY |   

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