Sister Complex (74)

大学に行くのが怖かった。道明寺のように駐車場で待たれたらどうしようかと思うと車に乗るのも吐き気がしてくる。
類は大丈夫だと言うけど、あの時の恐怖が蘇ってくるのはどうしようもなかった。
車を降りたときの生徒の眼・・・聞こえてくる噂話、ありもしない作り話。そして類じゃない人が差し出す手・・・。

高城さんの事はそこまで怖くない。これは初めて会ったときからそうだったから今でも怖いとは思わなかった。
婚約者だなんて言われなければ出会っても問題はない。私が怖かったのは「婚約」という状況だった。
私の意思とは関係なく結ばれるこの約束事がどうしても受け入れなれない。

そしてあっさりと裏切られたあの時の喪失感・・・家同士の決まり事だとはいえ、自分の存在価値すら見えなかった。


例え、今、類と恋人関係になっていなくて兄妹のままだとしてもこの反応は同じだっただろう。
むしろ恋人関係になっているから余計に恐怖だった。

「高城が何か言ってきても、まだ正式じゃないんだから軽く返事しないでよ?後は2人になんてならないで。わかってるよね?」

「わかってるって・・・そこは大丈夫なのよ。私が嫌なのはまた同じような眼で見られることなの。高城さんも結構人気があるでしょ?
この話が知れ渡ったら、きっとまたそうなるんだろうなぁって・・・道明寺さんの時ほどはないだろうけどね」


私の教室が近づくと類は自分の教室に行くために向きを変えた。そして何度も振り返って私の姿を確認している。
それは道明寺の時と同じ・・・やっぱりあの時を思い出させるものだった。

類の姿が見えなくなってからゆっくり一歩踏み出した・・・でも、少しだけ歩いたらピタッと止まってしまった。
廊下を行き交う人の邪魔をしているのがわかるし、睨まれてるのもわかっていた。

でも、どうしても足が動かなくなってその場に立ち竦んでしまった。


しばらくして頭に浮かんだ場所。

そこになら行けるかもしれない・・・そう思った私は行き先を屋上に変えた。

いつだったか西門さんに教えてもらって類を探しに来た屋上。そこには類の「指定席」があるんだ。
コンクリートで出来た一段だけ高くなってる場所・・・そこに座って、空を見上げた。


もしかして花沢家と釣り合うような家の子なら類と婚約できたんだろうか。
それとも、お父様達はこんなチャンスを掴むために私を子供に迎えたんだろうか。

ちゃんとした花沢の子供だったらこの話も素直に聞き入れたんだろうか・・・それなら類とは結ばれなかった?


私は何処の誰だろう。
私は何で類の家に置かれたんだろう。
私の親は今どこで何をして、何を考えているんだろう。

自分の娘がこんなに悩んでいるのに、助けに来てもくれないんですか?
自分の娘がこんなに苦しんでいるのに、迎えに来てもくれないんですか?


「うっ・・・うっ・・・ん、もう、泣いても・・・うっ、仕方ない・・・のにっ!」

見えない自分の過去と、迫り来る恐怖と、報われない恋と総てに息がつまって膝を抱えて泣いてしまった。
どのくらい泣いただろう・・・もしかしたら午前中の授業が終わったかもしれない。そのくらいの時間が過ぎた気がする・・・。




「馬鹿だね・・・1人で抱え込んじゃって」

「・・・え?・・・類?」

気がついたら隣に類がいて、肩を抱き寄せてくれた。
そして小さくコツンと頭をくっつけて「いつか会えるよ」・・・そう言ってくれた。


**********



大学で久しぶりに会った総二郎から、高城の話を聞いた。

「高城は西門の後援会に入ってたことがわかってさ・・・実は俺もあいつの事が何故か気になってて、類には言わなかったんだけど
うちの関西支部がまだ資料を持ってたから取り寄せたんだ」

「関西の?あぁ、高城って関西出身だったよね?西門の後援会に入ってたんなら怪しい会社じゃないって事か。審査は厳しいからね」

「まぁな。高城のお袋さんは東京の出身だ。東京から大阪に嫁入りしたってわけだ。だからかな、今回戻ってきたのはこっちだろ?
なんで関西に戻らなかったんだろうな。元々の基盤があったところに戻りたいんじゃねぇの?企業なんて」

「うーん・・・わかんないけど、土地や建物があればそこに戻るかもだけど、なにもないんでしょ?じゃあ、東京の方が起業しやすいよね」

総二郎は何かが気になるのか、自分で持ってきた後援会名簿を眺めていた。
そっと覗いたけど西門の資料は流石に漢字だらけで縦書き!不思議な言葉も並んでいて解読不可能だった。


「それ・・・読めるの?日本語?」

「は?・・・当たり前だろう!西門が英語で後援会名簿を作るか!ただ、言葉が昔のままなんだよっ!伝統しか守るもんがないから
こんな書類ですら未だに江戸からの書式使ってんだよっ!俺の代になったら絶対にパソコン管理してやる!」

「で?何が気になるの?総二郎は高城と何か関係でもあるわけ?」

「・・・あぁ。少しな・・・それに、西門で後援会の除名申請した時に抱えてた借金・・・調べたらその後に一括返済されてんだよ。
おかしいと思わなかったか?倒産した会社の社長が家族引き連れてアメリカに行って、そこからまた起業してんだぞ?
何処にそんな金があったんだ?持っていた不動産も全部処分したって借金の方が多かったんだぜ?」

総二郎の疑問はわかるけどそれが今の俺にはピンとこなかった。
高城は気になるがその会社の成り立ちにまで気にかける余裕がなかった。

「それにさ、高城のお袋さんがうちの大叔父に何かを相談してるみたいなんだけど、大叔父が入院してるから聞けなくてさ。
なんで親父さんじゃなくてお袋さんだったんだろう・・・普通は親父だろ?もし経営状態で相談すんならさ。
それがお袋さんが相談しに来るんなら別の問題でもあったのかと思ってさ・・・旦那の女問題とか、隠し子とかさ!」



隠し子?・・・この言葉には反応してしまった。

「隠し子ってどんな子?それってどういう場合にわかる?」

「は?・・・隠し子なんてもんは隠してんだからわかんねぇだろ!一般的には愛人が黙って産んだ子供とか?後は相続に絡むから
世間的に出さない子供とか?戸籍のないヤツもいるだろうし、わかんねぇから隠し子なんじゃねぇの?」

「そうか・・・ごめん、何でもないよ。高城のこと、何か他に情報があったら教えてくれる?実はこっちも問題発生でさ」

総二郎が今度はニヤリと笑った。
まったく・・・人の不幸を喜ぶ時ってこういう顔するよね?そのぐらい嬉しそうにしてるんだ!俺の気持ちを知ってるくせに!

「何が起きたんだ?つくしちゃん、まさか本当に高城に襲われたのか?」

「襲われてないっ!父さんが婚約させようとしてる・・・しかも公表しないだけで立場はもうそうだからって俺に釘刺して帰ったよ。
必要以上に妹の世話を焼かないようにってね」

やっぱりな!って、クスクス笑ってる総二郎。
そして、また資料に目を通して真面目な表情に戻っていた。


「俺がこいつのことを気にすんのは全く別の理由だ。高城誠って男・・・祥一郎に無茶苦茶似てんだよ・・・」

「祥一郎?って総二郎の兄さんの?」

「あぁ・・・初めて会ったときから思ってたんだ。こいつの顔、どっかで見たことあるなってな・・・よく考えたら祥一郎なんだ。
いまは西門からでて、神奈川で医者やってるけどな。あいつに似てんだよ。仕草とか、ある角度で見る顔がさ・・・」

総二郎が西門を継ぐきっかけになったのが祥一郎さんの後継者放棄だったから、総二郎はそれからは祥一郎さんには会ってない。
二度と会わないと決めているんだと言っていた。

それが高城を見た瞬間に思い出したらしい。総二郎にもこう見えて色々あるんだ。
セレブだなんて言われると聞こえはいいかもしれないが、中身は結構揉め事だらけだ・・・お互いに笑うしかなかった。

「ふうん・・・それで気になるんだ。いいんじゃない?調べて気が済むんならさ。そのついでに何かわかったら教えてよ。
俺はそれをネタにつくしと高城を別れさせるから!当てにしないで待ってるよ」

「ばーか!お前の為にしてんじゃねぇよ!・・・ほら!妹が来たぜ?お兄ちゃんを探しにさ!」


総二郎が指さす方を見たら、つくしがこっちに向かって歩いていた。
いつものように笑顔で手を振りながら、真っ直ぐに俺の方に向かって来る・・・最愛の女性、俺の宝物だ。


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花より男子

6 Comments

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2017/09/24 (Sun) 07:40 | EDIT | REPLY |   

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2017/09/24 (Sun) 09:55 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: おはようございます!

えみりん様、こんにちは🎵

私も書きながら確認しております。(笑)
途中で間違えたら…ブログ閉じちゃうかも!

もう増えないと思うんですけどね。登場人物…これ以上増えたら読者さまも逃げちゃう‼️


祥一郎が両方に出ちゃった(笑)
時々、どっちを書いてるのかわかんなくなります!

今日もお仕事…晴れた日にお仕事で、休みの時に雨とはどういうことだろう…

2017/09/24 (Sun) 11:49 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは🎵

深く考えたらいけませんよ?(笑)
さらりと、さらりと読んでくださいませ!

最後は良かったね~❗でも、あれなんだったの~?
みたいなことがあるかもしれません(笑)

その時は後書きで反省したいと思います❗

私もドキドキする…

2017/09/24 (Sun) 12:31 | EDIT | REPLY |   

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2017/09/26 (Tue) 23:01 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは🎵

あはは!外れています。
大丈夫…所詮私が書く話だからすぐにわかるはず♥️
だんだん終わりに近づいて来ましたね~❗

そして、私もこんがらがってきました(笑)
間違えないように書くので精一杯ですわ…

2017/09/27 (Wed) 16:35 | EDIT | REPLY |   

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