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<side陽子>

「・・・・・・・・・・・・」
「え、え~と・・・内田さん。そこを左に曲がって」
「・・・・・・・・・・・・」
「じゃあ今度はあの交差点に向かって]

「・・・・・・・・・・・・」
「そろそろ終りですね・・・いつもの場所で停まりましょうか」
「はい」


こんなデブで不細工なオッサンの言う事を聞かないといけないなんて、冗談じゃないわ!
狭い空間で同じ空気吸うのもイヤなのに・・・今日は特に気分が悪いから返事もしてやらなかった。だから教習が終わっても挨拶もせずに車から降りて、さっさとロビーで次の予約を取った。
もう牧野つくしの時間なんて気にしなくていいし、さっさとこんな自動車教習所なんて終わらせて、次のターゲットを探して・・・そんな事を考えていたらあの子が戻ってきたから、目を合わせないようにサッと柱の陰に隠れた。

彼女は私の事を気にしてるのか、予約機の前でオドオドしている・・・もしかしたら今日も西門さんが迎えに来るのかも、そう思ったら、あの子よりも後に出た方がいいと思い、そのまま動かなかった。
その時に予約機よりずっと向こう側にある階段から彼女の教官が出て来て、なにやらジッと見てる・・・その視線を辿ると、牧野つくしに向けられてる気がした。


「・・・まさか、あの教官・・・彼女のことを?」

その目は教習生を見るものとは少し違う・・・それにこの人は三浦とか言うイケメンでモテモテの教官だけど、他の教習生にはあんな目を向けていないと思うもの。
だから暫く牧野つくしからも教官からも見えない場所に隠れていると・・・「牧野さん、少しいい?」って、やっぱり話し掛けた。しかも彼女も呼ばれた方に行って、何やら話し込んでる。

「ここじゃ聞こえないか・・・・・・仕方ないわね・・・」


私から離れてしまったから、他の教習生が歩くのに紛れて近くまで行き、サッと壁に隠れた。そして会話を聞き取ろうとしたけど、ハッキリとは聞こえない。
それにこれ以上近付いたらバレてしまうと思い、唇を噛んでると・・・


「申し訳ない!これで絶対最後にするから!で、あのイケメンの男友達には内緒にしてもらえないか?」

「はっ?!」
「あの彼、俺に不信感持ってるだろ?邪魔されたら不味いから」

「邪魔って・・・」
「頼む、この通りだ」
「判りましたから、頭を上げて下さい!」
「マジで?じゃあ今度教習に来た時に・・・」


この時に構内アナウンスが掛かって会話が聞こえなかった。
でもそれが終わってまた耳を澄ませると・・・


「私もこう言うの、困るんで・・・・・・」
「迷惑はかけないよ、約束する」


見ることは出来ないけど、この会話から想像するに・・・教官が牧野つくしを誘ったのね?ってことは、彼の方が好意を抱いてるのかも・・・


「・・・ふふ、イイ事を思い付いたわ」

この後、牧野つくしは私に気が付かず、門の方に走って行った。
残されたのは教官だけ・・・チラッと見たらこの教官、彼女の事をずっと目で追ってる・・・・・・そんなにあの子どもみたいな平凡な女に興味があるんだ?
でも、それなら・・・利用できるかもしれない。

私は誰もいなくなったロビーの隅から出て、事務所に戻ろうとしている彼の後ろに立った。


「お疲れさまです、三浦教官」

私の声に教官は振り向いてキョトン・・・いつものように可愛らしく笑って近付き、少しだけ顔を首を傾けて1番いい角度に調整・・・でもこの男は私を見てもニコリともしないし、むしろ厳しい目を向けてきた。
それにムカッとしたけど、この男は私の好みじゃないし、どうでもいい・・・だから笑顔のままもう1歩近付いた。


「君は・・・誰だ?」
「私は牧野さんと一緒に教習を受け始めた内田と言います。いつも彼女と一緒なんですよ~」

「牧野さんの・・・あぁ、そう言えば見たような気もするな。もう今日の教習は終わったから早く帰らないと門が閉まりますよ」
「えぇ、もう帰ります。でもちょっと気になっちゃって・・・」

「何がですか?」
「さっき、牧野さんと話してましたよね?内容は聞こえなかったけど・・・もしかして、教官と牧野さん、仲がいいんですか?何か相談受けてます?」

「・・・そんな訳ないでしょう。そんな事はいいから早く出てください」
「そうなんだぁ~~~、じゃああの人の事、相談してたんじゃないのかぁ~~」

「あの人?」
「えぇ、実はですね・・・・・・」


やっぱりこの男は牧野つくしの事が気になるようで、私の言葉で目の色を変えた。
うふふ・・・この私に恥をかかせた仕返しをさせてもらうわ。

覚悟しなさいね、西門さん♪




***********************




ヴァンキッシュに乗ってからの私・・・なんか気不味くて口を真一文字にしていた。
これを開くと何を言い出すか判らないし、総二郎に詰め寄られたら隠し通す自信ないんだもん。だからずっと窓の外を見て無言・・・もうここは仮病しかないと思い、具合悪そうにした。

もう~~~~っ、三浦教官の馬鹿っ!
あの時1回限りだって言ったクセに・・・・・・


<10分前>


「あのイケメンの男友達には内緒にしてもらえないか?」

「はっ?!」
「あの彼、俺に不信感持ってるだろ?邪魔されたら不味いから」
「邪魔って・・・」
「頼む、この通りだ」

そう言うといきなり頭を下げて(とは言え、こんな場所だからほんの少しだけど)眉も寄せて申し訳なさそうに・・・その気持ちは判るし、遠くにはまだ何人かいるから見られちゃ不味いし!
だから「判りましたから」と囁くと、教官は溜息を吐きながら姿勢を戻した。


「もう頭を上げて下さい・・・」
「マジで?じゃあ今度教習に来た時に、その日にちが判れば教えるから。でも、お袋も仕事してるから都合がなかなかね・・・」

<構内アナウンス>
『教習生の近藤隆史さん、予約のことでお知らせがありますので、いらっしゃいましたら事務所までお越し下さ~い。』

「お仕事優先で全然構わない・・・と言うか、出来たらこの話を闇に葬って下さいよ・・・」
「あぁ、出来るだけ頑張るから。やっぱり無謀だったかな・・・突然彼女の存在を見せたのは」
「当たり前です///!しかも経歴詐称ですよ?調べたらすぐに判るのに・・・」


そう言うとバツが悪そうに頭を搔いて、小さな声で「確かに」と・・・そりゃ私の個人情報をバラされるのもイヤだけど、なにも東大とか道明寺とかを出す必要はなくない?
てか、三浦教官は私が道明寺を知ってることも知らないだろうけど!


「あの時はいい案だと思ったのに」
「嘘はダメです!今からでも正直に言えば良くないですか?」
「そうなったらすぐに見合い相手がくる・・・それだけはイヤだ」
「・・・・・・我儘な・・・・・でも、私もこう言うの、困るんで・・・・・・」

「迷惑はかけないよ、約束する」


前もそんな事を言っておきながら、すでに迷惑掛けてるんだけど。
でも、本当に自動車教習所に何かされたら困るだろうし、いざとなったら総二郎に全部話してトンズラしてもいいし?最悪、私がこの自動車学校をやめて他に通っても総二郎は怒らないだろうし・・・

なんて、色々考えながら教習所を出て来た。
で、現在総二郎の車の中・・・・・・・・・




「・・・・・・・・・はぁ・・・」
「なんだ、腹減リ過ぎたのか?」

「へっ?あぁ・・・(具合悪い設定ならお腹空いてちゃダメじゃない?)・・・それが全然・・・」
「えっ?!何処か具合が悪いのか?!」

「・・・・・・(私の健康バロメーターは食欲なの?)・・・ちょっと風邪っぽいかも」
「そうか・・・半分は俺のせいだな。悪かった・・・」

「・・・・・・ゲホゲホ」


なんだか胸が痛む・・・・・・どうして私がこんなに罪悪感を感じなきゃいけないの?!
全部三浦教官のせいだっ!!




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2023/02/06 (Mon) 15:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ほほほほほほほ!身の程知らずの陽子さんが何か始めたみたいです。
確かに総ちゃん相手に何をしても無駄だろうけど。

そうそう、あの人ってのは総ちゃんの事です。


つくし、これを総ちゃんには言わない様子・・でも顔に出ちゃう人だから、総ちゃんには判ったかも?
確かに言えばいいのにね(笑)
でもそうなったら話が終わるので、そこはグッと我慢して下さい(笑)

2023/02/06 (Mon) 23:31 | EDIT | REPLY |   

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