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次の日、高城さんに連れられて、ニューヨーク市内でも中心部、斬新なデザインのオフィスビル内にあるドレスの専門店に来ていた。
そこにはすでに手配されていた数点のドレスが並べられていて、店長と思われる女性が制服とは思えない派手なドレスで現われた。
さすが、これがアメリカなのね・・・日本では考えられない接客に驚いた。
英語は大丈夫かと言われたので、問題ないと答えると、さっそく早口の英語を捲し立てられる。

「お嬢様でしたら、スリムでいらっしゃるからこのドレスはいかがかしら?お色も日本人の顔立ちにはよく合うと思いますよ?」

「はぁ・・・でも、私はこんな派手なデザインはちょっと・・・もう少し優しい感じの色が好きだわ」

「あら、そうですか?じゃあ、こちらは?少しお顔が幼いようだからドレスぐらいは大人っぽくしてみたらいかが?」

余計なお世話だわ!幼いって言われるのには慣れているけど、初めての人にまでそんなことを言われるなんて!
私が怒ったような顔を見せても、怒ってるようには見えないんだろう。店長はケラケラと笑いながら次のドレスを薦めてきた。
元々乗り気でも何でもないんだ・・・よく考えたら真面目に選ぶこともないか!
そう思って加代さんと相談して選んだ水色とクリーム色の2着が私の目の前に残った。


「こっちにしようよ。つくしにはブルーがよく似合うからさ」

今まで黙って見ていただけの高城さんが最終的には私のドレスを決めたようなもの。
ブルーのドレスを手にとって私の側に来て、後ろから肩を抱くようにそのドレスを鏡の前であてて見せた。
右横にある高城さんの顔が私に向けられて、「綺麗だね」って耳元で囁く・・・。

昨日と同じく名前を呼び捨てにされると不安になって、思わず加代さんの後ろに隠れるように逃げた。

「つくし様、大丈夫でございますか?そこまでお嫌でしたら高城様にやめていただくようにお話いたしますけど」
「ううん。嫌だけど何を言い出すかわからないから・・・今まで類しかそんな風に呼ばなかったから、他の人から言われると・・・ね」

彼はドレスを補正した後にマンションに届けるようにと手続きを済ませ、今度はそのビルの最上階のレストランへと連れて行かれた。

ここもすでに予約済みだったらしく、高城という名前を出すと奥の特別席へと案内された。
確かに高城という名前はアメリカでは知れ渡っているんだろう、何処に行っても笑顔で最上級の接客をされる。
まるで日本にいるときの道明寺や類達のよう・・・高城誠という人が自信に満ちあふれた行動をとるのも無理ないのかもしれない。
類がそんな人じゃなかったから、私の方がこんな感覚についていけないんだろう。


「ここでもやっぱり加代さん付きなの?」

「えぇ、お父様の了解をもらっていますから。それがいけないのでしたら帰ります」

「ははっ・・・本当にすごい警戒ぶりだね。そんなこと言えるのも今のうちだよ。確かに今は君のことはお父上が決定権をお持ちだけど、
それも近いうちに俺の方に変わるんだから・・・その時には俺の言うことに従ってもらうからね・・・間違えないでね、つくし。
君の未来は俺が預かってるようなものだから」

横にいた加代さんが怖い顔をして高城さんに一言言おうと前に出ようとした。それを手で止め首を横に振る。
この人に何を言っても通じない・・・逆に私たちが言った言葉を逆手にとって利用されそうな気がした。
類がいない今は問題を起こさないように、静かに時間が過ぎるのを待った方が良さそうだと判断した。


ここのお料理も見た目はとても美味しそう・・・。
でも、少しも口に入れる気になれない。何を食べても味がしなくなったような気さえする。

少しだけ食べて、少しだけ会話して、少しだけ無理して笑ってみる。

これが類とだったらどんなに楽しいだろう。初めての海外旅行でこんなレストランで食事して・・・例えこれがファーストフードだとしても
類となら笑顔で食べられただろうに。
そんなことばかりを考えて昼間のニューヨークの街を見下ろしていた。


**


夕方から始まったのは高城コーポレーション副社長、ジョンソン氏の結婚披露パーティーだった。
今日手配したばかりのドレスは昼過ぎには手直しされてマンションに届いていたから、それに着替えて会場に入った。
もちろん少しお洒落した加代さんが後ろについているものの、私は高城さんの腕をとらなくてはならない。

高城社長が会場入りすると当然ながら周りにいた人達の視線が私たちに集まる。
ここは高城コーポレーションの関係者や取引先の重役達が集まっている。結婚披露のパーティーとはいえ経済界の社交場である
事に変わりはなかった。それは、道明寺の時に学習済み・・・中央にいる花嫁さんはただの飾りのように見えてくる。

私は高城さんが決めた薄いブルーのカクテルドレス。
今日の主役は私たちではないからそこまで目立たなくてもいいのに、彼は私をこれ以上ないぐらいに飾り立てた。
首元にはプラチナの輝きと共にダイヤモンドが揺れていて、ピアスもお揃いのものだった。
外国の人は日本人の黒髪に憧れるといって、私の長い髪はヘアメイクの人が念入りに手入れをして後ろにサラリと流していた。
歩く度にサラサラと靡く髪に確かに男性陣の熱い視線を感じていた。

「ほら、今日はつくしの方が注目浴びてる。パートナーとしては嬉しい限りだね」

「近すぎるわ・・・そんなに寄らなくてもお話は出来ます。加代が見ていますから、それ以上は近寄らないで」

「はっ!ここまで来ても強情だな。まぁ、いいさ・・・すでに君は俺の婚約者として招待客には見られてるしね」

「・・・身勝手ね!」

高城さんはあちこちから掛かる声に嬉しそうに応えていたけど、私はそれに返事をすることもなく黙って横に立っているだけ。
加代さんも呆れたように私のすぐ後ろに付き添っていて、高城さんの手が必要以上に私に触れないように目を光らせていた。

その時、懐かしい声が少し離れたところから聞こえてきた。



「つくし・・・お前、何やってんだ?」

「・・・え?あ、嘘っ・・・」

ここでも呼び捨てにされた私の名前・・・その声のする方に目をやると1年ぶりに会う彼の姿があった。

道明寺司・・・私のかつての婚約者だ。

私は高城さんの腕を掴んでいたけど、道明寺を見るなり足が止まってその腕も外した。
それに気が付いた高城さんも私と同じ方に視線を向ける。一気にその表情が険しくなっていった。
道明寺の方は高城さんとは反対に、私を見て微笑んだ。それは、1年前と比べると穏やかで優しいもの・・・つられて私も笑顔になった。


「久しぶりだな。ここで会うとは思わなかった・・・」

「えぇ・・・本当に久しぶりね。なんだか変わったんだね・・・大人になったのかしら?」

「俺は昔っから大人っぽいって言われてたぜ?お前が子供っぽかったんだろうが!でも、今日はそうじゃないみたいだな。
そんなドレスが似合うようになったって事か・・・偉い進歩だ」

「あら!私はそんなにあの時と変わってないわ!ドレスだって似合ってたわよ!」


馬鹿言ってんじゃねぇよって、小さな声で呟く道明寺の顔。少し照れたように見えたのは私の気のせいかしら。
私が道明寺と話すことが気に入らないのか、また急に腕を掴まれて高城さんの後ろの方に引き戻された!

「きゃっ・・・何よ!痛いじゃない・・・離して!」
「つくし様!大丈夫でございますか!高城様、乱暴な振る舞いはおやめ下さいませ!花沢に報告いたしますよ?」

加代さんまでが高城さんの突然の行動に怒りの声をあげた。周りにいた招待客がざわめく・・・高城さんはそれでも道明寺を睨み付けていた。
そんな高城さんの方に道明寺はゆっくりと近づいていく。正面まで来るといつものように上から見下ろすような角度で立っていた。
そして私を掴んでいる手をグイッと捻り上げて、逆に振り解くように高城さんから解放してくれた。
加代さんは側に寄って来て私を抱えるようにして高城さんから離した・・・これってすごい場面だと思うんだけど。


「こんな場所でみっともないことはすんな。それでも高城の後継者か?周りをよく見りゃわかんだろ?ここは大人しくこいつを俺に
渡した方がいいと思うが?」

「・・・君が来ていたとは知らなかったよ。道明寺司が顔を出してくれるとは、うちも順調に成長してるって事だね。・・・まぁ、いいさ。
彼女がもう君の婚約者じゃないって事だけは確かだからね・・・少しなら自由時間をあげるよ」

高城さんはもういつもの表情に戻っていて、道明寺に相変わらず鋭い視線を向けていた。
ふっと軽く笑った道明寺は高城さんから私の方に向きを変えて近づいてくる。そしてわざと聞こえるように声を掛けてきた。


「自由時間だってよ!遠慮なく向こうで話そうぜ」

「くすっ・・・やっぱり少し変わったわ」


道明寺はもう私には腕を差し出さない・・・彼は私のことをもう全部過去にしたのかしら。
なんて我儘なんだろう。それを少しだけ寂しいと感じてしまうなんて。



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Comments 8

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2017/10/06 (Fri) 07:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます。

ど、道明寺様・・・?この私がいいところで司君を出すことがびっくりかな?(笑)
そうなのですよ・・・実はこの後に司君はちょこっと出てきます。

だから、一番遊んでるのはあきらなのよ(笑)
彼はどこで活躍するんだ?もしかしたらこのまま・・・あきらは消えてしまうのか?

マコッちゃん、マジで嫌われてますね!
眉間に皺だなんて、ダメですよ?とれなくなったらどうするの?早く伸ばしてくださいね!

今日は寒ーい・・・雨が結構酷いですね。あぁ、休みたい・・・。

2017/10/06 (Fri) 08:17 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/06 (Fri) 08:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、おはようございます。

私にしては珍しく、ピンチの時の道明寺司・・・(笑)
そうですね、このあと少し頑張っていただきます。
嫌な男・・・(笑)みわちゃん様も嫌いなのね・・・!
まぁ、ボチボチわかってきますので。お待ちくださいね!

告知しましたイベントの時に司君のお話に触れる機会もございましたので
段々意識が変わってきましてね、いい感じに書いてみたくなったのですよ。
やはり色んな作家様と交流すると、思わぬ発見があるものですね。

これからは面白い司君も登場させてみたいと思っております。出来るかどうかは謎だけど・・・。

今日もありがとうございました!

2017/10/06 (Fri) 08:44 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/06 (Fri) 08:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは!

流石司君・・・今日は司君登場で喜ばれております。(笑)
そうですね。ちょっと助けてくれます。(ちょっとって何だ?)
最後の方で出てくる予定です。

いや、もう結構ラストに近いんだけど・・・。
どうかなぁ・・・いかないと思ったけど100いくのかしら。
恐ろしい・・・二度とこんなややこしい話は書かないって思いました!

もう暫くお付き合いくださいませ!
今日もありがとうございました!

2017/10/06 (Fri) 14:35 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/07 (Sat) 23:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます!

調子に乗って司君を出しちゃいました!
でも、基本司君を書かないでしょう?だから彼の言い回しがよくわからないんですよ。
つかつくさんが読んだら怒られそうな気がして怖いです。

類が出ていないのにコメントが多いというのも流石に司君ですね(笑)
頑張れ!類っ!!

あ!花さん、書いてるらしいので待っててねってお返事来ましたよ?
もう少ししたらアップするのかな?
書きながらビール飲んでる人なので(笑)ゆっくり待っててくださいませ!

2017/10/08 (Sun) 09:45 | EDIT | REPLY |   

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