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フランスでのプロジェクトが本格始動を始めたのはパーティーの2日後だった。
花沢は再生可能エネルギー貯蔵システムの建設エリアで地元フランスの企業と共同で作業を行うことになっていた。
俺は現場責任者と共に初日ということもあって、この現場内に構えられた特設のコンピュータールームでシステムが正常に作動
しているかのチェックを行っていた。

「Mr花沢、順調のようですね。今のところ誤作動はないようです。テスト段階ではありますが、地熱発電まで拡大しても良さそうだ。
さすがですね、花沢もこのところIT関連の事業にも力を入れているだけのことはある。安定したプログラムを提供できるということは
この先もこういった事業に参入しやすい。Mr花沢もプログラム構成には立ち会われたと聞きましたが、この分野はお得意ですか?」

「いいえ・・・まだまだですよ。うちのエンジニアの腕が良かっただけです。私はほんの少し参加したに過ぎません。これからはもう少し
学ばないといけませんね。そう実感していますよ」

「そうですか?噂とは違いますなぁ!花沢の後継者はスーパーコンピューター並の頭脳だとこちらでは評判ですよ!」

「過大評価です。少しでも休みたいと考える人間ですから・・・」

どうでもいいんだって!俺が作ろうがうちのエンジニアが作ろうがっ!
俺は早くここが順調に進んで、予定どおり一番始めのシステムが動き始めたら日本に帰れるんだから!
そこしか考えてないんだって!・・・少し頭の薄いフランスの責任者がやたら俺を褒めてくれるのはいいが鬱陶しかった。

「あちらが太陽光発電で、この向こうが風力発電のメーターです。まだ完全作動していませんので数値は参考値に過ぎません。
そして内部の作業チームが花沢のスタッフで施設建設部分がフランス側になります。サブとしてスペインの技術スタッフがいます。
なにかご質問はありますか?」

質問があるとしたらいつ帰れるかって事だけ!
大体こんな作業は現場に疎い俺が見たってわかんないって・・・大丈夫だと笑顔で答えるけど心の中は全然違うことを考えていた。


その時に別棟の方から緊急を知らせる警報が鳴り響いて現場全体が騒然とした。


「何かあったの?」

「さぁ・・・あれは水素複合貯蔵システムの開発チームがある場所のようですが・・・何のトラブルだろう」

「水素複合貯蔵システム?道明寺の担当の、ですか?」

「そうですね、アメリカチーム担当でサブでドイツが参加しているプロジェクトですよ」

道明寺ホールディングスが関わっているということは高城がプログラム担当のはず・・・まさか、あの企業がトラブルの原因を作った
とは思えない。この分野を代表する企業だし、司が担当した宇宙開発協同事業でも成功してるし。
だけど確かに何かのトラブルが生じたようで、一斉にアメリカのスタッフがコンピュータールームに集まっているようだった。

ここには司も高城も来てはいない。
もしかしたらこの一件であいつらが来るなんて事があるだろうか・・・わざわざ外国に来てまであんな男と顔を合わせたくない。
会えば絶対につくしの事で言い争いになる。お互いに作業どころじゃなくなるかも・・・。
真剣な作業現場でそんな不謹慎なことを考えていた。


しかし、思ったより事態は深刻だったようだ。

水素複合貯蔵システムは太陽光発電システムと連動していて、その発電で得た電力を利用して水素を製造している。
水素吸蔵合金を水電解装置を使って水素を製造発生させるのだけど、そこの部分のプログラムに異常数値が検出されたらしい。
まだ試験的なものだから実際に稼働はしていないが初期数値で異常が出ればすべての作業が停滞する。
これはプログラム制作企業にとっては大問題だ。今後の世界中からの受注にも関係してくる。

「やはり、道明寺の開発チームでのトラブルでした」

様子を見に行っていたフランスチームの技術者が戻ってきてそう言った。

「道明寺ですか・・・珍しいですね。あそこがそのような初期段階でミスをするとは。まぁ、始めの段階でわかって良かったのかもしれませんね。
これが本格稼働した後の事故なら、もしかしたら大事故災害に繋がりかねない。経費だけならまだしも人災に繋がれば大問題だ。
道明寺にも優秀なエンジニアが揃っているから修復作業も大丈夫でしょう」

花沢のミスなら父さんにどれだけ文句を言われるかと思うとゾッとした・・・帰られなくなるし。

「そうですね、まぁ、道明寺というよりは道明寺が共同参加させたタカシロという企業のプログラムミスのようですからね」

「・・・え?今、なんて言いました?」

パソコンの中の数値確認をしていた俺の手が止まった。
今、タカシロって聞こえたけど・・・まさか、ミスを出したのはやっぱり高城コーポレーションなのか?

「アメリカにある日本企業のタカシロですよ。Mr花沢もご存じですか?最近世界的にも知られてきた新進の企業ですよね。
もしこれが本当に失敗なら随分と手痛いでしょうな・・・全世界が注目しているプロジェクトですからすぐに話題にされますからね」

「・・・そうですね。日本企業としては気になりますね」

まさか高城コーポレーションがここで重大な過失をするとは思わなかった。


俺の中の小さな悪魔が微笑んだ。もしかしたらこれが高城とつくしを引き離すきっかけになるかもしれない。
高城が打撃を受ければ花沢としても、つくしとのことを白紙に戻すかもしれない・・司の時のように何が起こるかわからないって事だ。

随分と騒がしい別棟の一部屋を離れた場所から眺めていた。
もうアメリカでこの一件を聞いているだろう・・・慌てた高城誠の姿を想像していた。
急成長しておきながら些細なミスで倒産した過去を持つ高城コーポレーションは、二度と同じ過ちを繰り返さないために必死のはず。
それに社長と後継者が出てこないわけはない。あいつは必ずここに飛んでくるはずだ。


つくしを引っ張りまわす計画は、残念だけど叶わなかったようだね。


********

<sideあきら>
類から聞いた話を元に調べていくと20年前に助産婦をしていた安藤今日子と高城美智子が姉妹だということはわかった。
安藤という女性は他界している。しかも結婚歴がなく身内で残っているのは美智子一人だ。
後は何も資料がない・・・まぁ、そこまで場所が離れているわけでもないからその家に出向いてみようと車を出した。


安藤今日子が住んでいた家は今でも残っていて、もう誰も住んでいないのか随分と荒れていた。
その造りが店舗のように見える・・・何か店をしていたようだが今では看板すらなくて中の様子も窺い知ることは出来ない。
仕方なくすぐ側にいた近所の住人にここが何をしていたのかを聞いた。

「あぁ、安藤さんですか?もう随分と前に店は閉められたんですけど呉服屋さんでしたよ。この辺りでは大きな呉服屋さんですよ。
まぁ、時代の流れでしょうかね・・・娘さんが2人いたんですが下の娘さんは早くにご結婚されて出て行かれましたけど、
上の娘さんは婿養子さんが見つからなくてねぇ。結局後を継ぐ人がいないからって閉められたんですよ」

「呉服屋・・・ですか」

この辺りで大きな呉服屋って言えば、あいつの家が何か知ってるんじゃないのか?

**

今度は西門に車を走らせた。もしかしたら西門に何か情報があるかもしれない。
呉服屋なら西門がいくつかの取引先を持っているはずだ。安藤という名前を覚えている古い弟子でもいたら何か姉妹についての
話が聞けるかもしれない。本当に小さな事から潰していかないとこの難題は解けそうになかった。

西門に着いたらすぐに総二郎が出てきた。
今から茶会の打ち合わせだと言うが、むしろこっちの方が気になる総二郎はその打ち合わせを引き延ばして俺と部屋に向かった。

「どうだった?何かわかったか?」

「いや、それが安藤今日子の実家は呉服屋だったよ。この辺りでは大きな店を構えてたらしいから西門に出入りしてないか?
そう言えば前に類にも見せたんだけど、アメリカで茶道教室みたいなのしてるときも、この前のパーティーでも古いものだけど
上質な着物だったしな。誰かに聞けないのか?古いお弟子さんとか・・・」

「安藤って呉服屋?・・・俺は知らねぇけど聞いてみるか」

西門でも古い方から数えて三本指に入るという、家元夫人の弟子で志乃さんと言う女性にこの話をしてみた。
志乃さんは少し考え込んだけど、思い出したように話し始めた。

「あぁ、安藤さんですね?安藤呉服店・・・お付き合いがありましたよ。お家元や家元夫人のお着物は流石に京都の老舗店に注文
するんですけど、ここのお弟子さん達の合わせの着物とかは頼んでましたから。そこまで深いお付き合いはしてないんですけどね。
もう20年以上前になりますかしら。総二郎様はご存じなくて当然ですわね」

西門と安藤が繋がった?関西だけじゃなくてこの東京でも高城美智子と西門が関係していたのかもしれない。
総二郎と顔を見合わせて、その続きを聞こうと二人で志乃さんを囲んだ。

「志乃さん、そこに今の俺ぐらいの年の娘さんがいたのは覚えてる?2人いたんだけど」

「娘さんですか?お一人は知ってますよ。良くここにも顔を出していましたから・・・そう言えば関西の清四郎様が随分と気に入って
ましたわ。ちょうどこちらに修行という事でいらしてたんですよ・・・1年近く滞在されたときにはその人を食事に誘ったりしてね!
さすが西門の男だって先代も笑っておいででしたもの。懐かしいお話ですわね。それがどうかしましたか?」

「いや、いいんだ。ありがとう・・・志乃さん」


ここに出入りしていた安藤の娘が西門清四郎と関係があった?
その時に何があったのかは志乃さんも知らなかった。そしてわかったのは安藤という呉服屋はその後数年で店を閉めたと言うことだけ。

直接、高城美智子に話を聞く以外方法はなくなった。


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Comments 4

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2017/10/08 (Sun) 08:01 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/08 (Sun) 09:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございま~す!

えみりん様、こんにちは。

あはは!相関図ね!
私なんか自分で書いた相関図が汚すぎて、この前改めて見ていたら自分でわかんなくなって
書き直しましたよ。もう増えないから大丈夫!(笑)

マコッちゃんもやらかしたんですよ。
って言うか自分で書いててなんだけど、大学生の分際で世界的プロジェクトのシステムプログラムを組み立てさせる私も
どうかと思いません?そんなバカな!が多い世界ですが、皆さんよく黙って読んで下さるのね。
私は何故こんなプロジェクトの設定をしたんだかわかりませんが、おかげで調べなきゃいけなくて大変でした。
どうして苦手分野をお話の中に入れたんだろう・・・。

さて!100を超えることだけは決定しました!

もう二度とこんな長い話は書かないそーっ!!

2017/10/08 (Sun) 10:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは~!

ご、ごめんなさいっ!ほとんどあきら君が出てこなくて・・・っ!
いつかあきら君のお話もまた書きますからっ!(本当か?)

あ!ちなみに今度のイベントは結構あきら君が活躍しますよ?!
いろんなあきら君が出てくるはず・・・打ち合わせの時も一番人気はあきら君でしたからね!
私は書けなかったんですけど、色んな作家さんが格好良く書いてますから楽しんで下さいね!

シスコンも終わりが見えてきました~♥

今回はイベントもあったので次のお話がまだ出来てないという・・・(笑)
ボチボチ頭を切り換えて、新しい類君を探しに行きます!

2017/10/08 (Sun) 10:27 | EDIT | REPLY |   

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