幼馴染みの恋愛事情・194
翌朝目が覚めたのは朝7時・・・スマホのアラームで起き上がった。
そして隣を見たら同じくアラームで目を開けたつくしがいて、俺と目があった途端に「最低!」と怒られた。
「・・・それが朝イチに言う言葉か?」
「何言ってんのよ💢寝たの朝方じゃない!!」
「・・・そうだっけ・・・・・・途中寝てないか?」
「意識失ってたのよ!!」
そう言いながら背中を殴られ、俺は笑いながらベッドから降りた。そして1人でシャワールームに行き、そこでベタベタする身体を洗い、つくしはその間に急いで内湯に向かって行った。
当然シャワールームとは近いが、流石に数時間前まで暴れたのにもう1回って訳には・・・そう思って我慢した。
俺が着替え終わった頃に朝食が届けられ、つくしが風呂から上がる頃にはセッティングが終わって仲居たちは出て行った。そしてテーブルの上を見て「うわぁ♪美味しそう~~」と・・・
もうすっかり機嫌を直したようで助かった。
「すごいねぇ~、小さなお皿に沢山!」
「京都って感じだな・・・」
「これなんだろう?」
「九条ネギのてっぱいじゃね?」
「てっぱい?」
「鉄砲和え(からし酢味噌でネギとか魚貝を和えたもの)知ってるだろ?それをこの辺じゃそう呼ぶんだ。九条ネギは京の伝統野菜に指定されてるヤツ」
「なんで鉄砲和えって言うんだろうね?」
「からしが効いてるからとか、ネギの芯が抜けるのが鉄砲に似るところからとか諸説あるらしいぞ」
「へぇ~~~~~!流石、雑学王!」
茄子のお浸しにひじき煮、おくらなめこに湯豆腐、切り干し大根煮に汲み上げ湯葉。
ひろうすと南瓜の煮物に鰆の西京焼き・・・
「ひろうす?」
「がんもどきの京都での呼び名だ。漢字では”飛龍頭”って書くんだけど」
「・・・総二郎、調理師にもなれるんじゃない?」
「阿呆、名前を知ってるだけで作れねぇよ」
漬物は梅干しに刻みすぐき漬け、壬生菜漬けに白菜漬け、菜の花漬けに千枚漬け、それと長芋のわさび漬けにちりめん山椒。
これでもかってぐらいの品数だが、それが少しずつだからつくしは完食。デザートのわらび餅は当然俺のを奪い取った。
それが終わったらいよいよ一乗寺へ・・・俺よりも緊張気味のつくしが、軽く溜息つきながら出掛ける支度をした。メイクもいつもより念入りで、髪もキッチリしたポニーテールにしていた。
そして終われば部屋を出てチェックアウト。女将には「またお越し下さいませ」と言われ、ひんやりした朝の空気の中、白い息を吐きながらレンタカーに乗り込んだ。
「この辺りに竹林があるんでしょ?見てみたいなぁ~」
「嵯峨野の竹林を見たいならもう少し早い時期、もしくは早い時間がよかったかもな。それか雪が降った時なら綺麗だぞ」
「もう少し早い時期・・・秋がいいの?」
「竹がキレイなのは紅葉の季節だ。竹ってのは新緑の季節の5月~6月に落葉し、秋口から新たな葉を茂らせんだよ。だから嵐山の紅葉の見ごろが竹林にとっても緑豊かな時期。だからその対比が綺麗なんだ。俳句では”竹の秋”は春の季語、”竹の春”は秋の季語ってぐらいだからな。
それと先々週だったら嵐山一帯で”花灯路”って言うライトアップイベントが行われてたから、竹林の道も綺麗だったと思うけどな」
「んじゃ、来年見にいこう!」
「あぁ、じゃ来年の俺の誕生日は京都旅行だな♪」
「・・・・・・・・・・・・」
「もう拘束とかしねぇから・・・」
***********************
なんとなく別邸行きを遅らそうとして話した「竹林の道」だったんだけど、総二郎にあっさり却下されてしまった。
だからレンタカーは寄り道せずに左京区へ・・・和食のお作法もイマイチなのに、どうやってご飯食べようかと考えたら気が重かった。(←そこ?)
そんなに会話もしないうちに昨日遊んだ鴨川の三角州が見えて来て、今日もそこに何組かのカップルが居た。
そこを通過してズンズン進み、とある交差点で左折して総二郎は黙ったまま運転・・・どんどん木々が多くなってきて、「一乗寺」って看板も見えてきた。
つまりは別邸が近付いたということ・・・そう思ってたら、今度は右折して山の方へ向かった。
ゴクリと喉が鳴る・・・・・・思わず額を抱え込んだら、「そんなにビビることねぇだろ?」って笑われた。
「そうは言うけどね・・・子供の時に見たお爺様はホントに怖かったのよ・・・」
「まぁ、親父に比べたら相当厳しかったしなぁ・・・あの祥一郎でさえ一晩蔵に放り込まれ、考なんて柱に括り付けられたんじゃなかったっけ?」
「考ちゃんはいいけど、あの祥兄ちゃんが?!何をしたの?!」
「あまりにも真面目でおとなし過ぎるから度胸付けの為に・・・だったかな」
「可哀想に・・・お利口さんでも怒られるなんて理不尽な!総二郎は何かされたの?」
「俺は優等生だから特になにも」
「絶対嘘だ!考ちゃんが柱なら総二郎は庭の松の木じゃないの?!
「どんな拷問だよ・・・ほら、見えて来たぞ」
総二郎の声にハッとして前を見たら、周りの家とは比べものにならない大きな木門が見えてきた。
そして総二郎が木門の前で停まると、そこに見えたのは「西門」の表札・・・石塀の上から巨大な椿の木が見えるだけで、当然お屋敷なんて目に入らない。
この塀の長さで敷地の広さも想像出来て、私の緊張はMAX!
総二郎がスマホで到着を知らせると、すぐに門が開いて品の良いおじさんが出てきた。50歳ぐらいで小柄で、でも少しお腹の出てる優しそうな人。
私がいくら小さい頃から宗家に出入りしてるとは言え、そこは使用人の娘だから京都別邸の人とは面識なんてない・・・だからこの人がどんな立場の人かも判らなかった。
「総二郎様、いらっしゃいませ!お元気でしたか?」
「おはよう、森田さん。俺は相変わらずだけど、森田さんは?少し痩せたんじゃないですか?」
「・・・・・・(え?これで痩せたの?)」
「いやいや、変わりはないですよ~~。さぁさぁ、お車はうちの者に移動させますから、どうぞお入りください」
「あぁ、すまない」
総二郎がそんな挨拶をしているとき、私はどうしていいのか・・・でも彼が「ここで降りていいぞ」って言ったから、怖ず怖ずと助手席から降りた。
そして「森田さん」と呼んでたおじさんに挨拶・・・てか、どう言えばいいのか判らず、ここでも総二郎をチラ見した。
そうしたら彼が「こっちは連絡しておいた牧野つくし。よろしく」なんて、ものすっごく簡単に紹介してくれたから、私もカチコチになりながら頭を下げ・・・
「初めまして、牧野つくしと申します。本日は突然お邪魔して申し訳ございません」
「いらっしゃいませ、家元夫人からお話は聞いていますよ」
「・・・そっ、そうですか!あの、よろしくお願いします!」
自分の中ではかなり冷静に言ったつもりだけど、声が上擦って棒読みだったらしい・・・門を潜りながら、総二郎がクスクスしてた。しかも森田さんからは、「私は使用人ですから」って・・・
確かにそうだと思い、急に恥ずかしくなった。
「この人は宗家で言うと西村事務長とか志乃さんと同じ仕事をしている人だ。東京は弟子も使用人も多いからあの2人が分担してるけど。ここには爺様しかいないから使用人も僅かだし、弟子という形で稽古に来る人も少ない。
だから森田さんが殆どこの屋敷の事務や管理をしてくれてるんだ」
「そ、そうなんですね・・・」
「えぇ、まぁ雑用係ですわ。牧野さんはアレですよね?お父さんもお母さんも宗家で働いているという・・・」
「はいっ!西門流には大変お世話になっております!!」
「つくし、そんなに力入れなくても・・・」
「ははは・・・私も西門流にはお世話になってる身ですからねぇ~」
西村事務長、志乃さん、森田さん・・・この人達に比べたら、私のお父さんとお母さんなんて超下っ端じゃん?
お母さんはともかく、お父さんなんてサッちゃん(宗家の使用人)にも頭が上がらないのに・・・
気を取り直して1歩中に入ると、このお屋敷も宗家のように、すごく広い庭と整えられた木々に囲まれていて、落ち葉なんて殆どない。艶々した葉の椿が咲いていて、黄色い花も・・・なんだろうと思って足を止めたら、総二郎が「ソシンロウバイ(素心蝋梅)だ」って教えてくれた。
蝋細工のように半透明で艶やかな黄色い花・・・香りもあって、コロンと丸い花のフォルムが可愛らしかった。

その向こうには濃いピンクの寒ボケ。西門流では、この木は棘があるから茶花にはしないそうだ。
・・・いや、そんなことはどうでもいいんだけど。
「それでは総二郎様、こちらのお部屋に届いたものを置いてありますので、後はお任せしますね。小物一式も多分大丈夫だと思いますが、何かありましたらお呼び下さい」
「ありがとう、その時はよろしく」
「・・・・・・?」
「では、私はご隠居様に到着をお知らせしてきますね」
「えぇ、頼みます」
とある部屋に通され、そこの襖を開けると・・・真正面の衣桁に掛っているクリーム色の綺麗な着物が目に入った。
それはどう見ても総二郎のものではなく、女性の色留袖?この屋敷にこんな着物を着る女性がいるのかと、一瞬嫌な予感がした。
まさか、急に妙齢の女性がここに来るとか?!
「総二郎!あ、あのっ!!」
「着替えながら説明する。取り敢えず服を脱げ」
「はぁ?!///何考えてんのよ、こんな時間にこんな場所で?!」
「服を脱がなきゃその着物を着られねぇだろ」
「そりゃ着物は洋服の上からは・・・・・・・・・えっ?」
「それはお袋からお前に譲られた着物だ。それを着て爺様に挨拶しに行くから」
「・・・・・・・・・は?・・・」

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「・・・それが朝イチに言う言葉か?」
「何言ってんのよ💢寝たの朝方じゃない!!」
「・・・そうだっけ・・・・・・途中寝てないか?」
「意識失ってたのよ!!」
そう言いながら背中を殴られ、俺は笑いながらベッドから降りた。そして1人でシャワールームに行き、そこでベタベタする身体を洗い、つくしはその間に急いで内湯に向かって行った。
当然シャワールームとは近いが、流石に数時間前まで暴れたのにもう1回って訳には・・・そう思って我慢した。
俺が着替え終わった頃に朝食が届けられ、つくしが風呂から上がる頃にはセッティングが終わって仲居たちは出て行った。そしてテーブルの上を見て「うわぁ♪美味しそう~~」と・・・
もうすっかり機嫌を直したようで助かった。
「すごいねぇ~、小さなお皿に沢山!」
「京都って感じだな・・・」
「これなんだろう?」
「九条ネギのてっぱいじゃね?」
「てっぱい?」
「鉄砲和え(からし酢味噌でネギとか魚貝を和えたもの)知ってるだろ?それをこの辺じゃそう呼ぶんだ。九条ネギは京の伝統野菜に指定されてるヤツ」
「なんで鉄砲和えって言うんだろうね?」
「からしが効いてるからとか、ネギの芯が抜けるのが鉄砲に似るところからとか諸説あるらしいぞ」
「へぇ~~~~~!流石、雑学王!」
茄子のお浸しにひじき煮、おくらなめこに湯豆腐、切り干し大根煮に汲み上げ湯葉。
ひろうすと南瓜の煮物に鰆の西京焼き・・・
「ひろうす?」
「がんもどきの京都での呼び名だ。漢字では”飛龍頭”って書くんだけど」
「・・・総二郎、調理師にもなれるんじゃない?」
「阿呆、名前を知ってるだけで作れねぇよ」
漬物は梅干しに刻みすぐき漬け、壬生菜漬けに白菜漬け、菜の花漬けに千枚漬け、それと長芋のわさび漬けにちりめん山椒。
これでもかってぐらいの品数だが、それが少しずつだからつくしは完食。デザートのわらび餅は当然俺のを奪い取った。
それが終わったらいよいよ一乗寺へ・・・俺よりも緊張気味のつくしが、軽く溜息つきながら出掛ける支度をした。メイクもいつもより念入りで、髪もキッチリしたポニーテールにしていた。
そして終われば部屋を出てチェックアウト。女将には「またお越し下さいませ」と言われ、ひんやりした朝の空気の中、白い息を吐きながらレンタカーに乗り込んだ。
「この辺りに竹林があるんでしょ?見てみたいなぁ~」
「嵯峨野の竹林を見たいならもう少し早い時期、もしくは早い時間がよかったかもな。それか雪が降った時なら綺麗だぞ」
「もう少し早い時期・・・秋がいいの?」
「竹がキレイなのは紅葉の季節だ。竹ってのは新緑の季節の5月~6月に落葉し、秋口から新たな葉を茂らせんだよ。だから嵐山の紅葉の見ごろが竹林にとっても緑豊かな時期。だからその対比が綺麗なんだ。俳句では”竹の秋”は春の季語、”竹の春”は秋の季語ってぐらいだからな。
それと先々週だったら嵐山一帯で”花灯路”って言うライトアップイベントが行われてたから、竹林の道も綺麗だったと思うけどな」
「んじゃ、来年見にいこう!」
「あぁ、じゃ来年の俺の誕生日は京都旅行だな♪」
「・・・・・・・・・・・・」
「もう拘束とかしねぇから・・・」
***********************
なんとなく別邸行きを遅らそうとして話した「竹林の道」だったんだけど、総二郎にあっさり却下されてしまった。
だからレンタカーは寄り道せずに左京区へ・・・和食のお作法もイマイチなのに、どうやってご飯食べようかと考えたら気が重かった。(←そこ?)
そんなに会話もしないうちに昨日遊んだ鴨川の三角州が見えて来て、今日もそこに何組かのカップルが居た。
そこを通過してズンズン進み、とある交差点で左折して総二郎は黙ったまま運転・・・どんどん木々が多くなってきて、「一乗寺」って看板も見えてきた。
つまりは別邸が近付いたということ・・・そう思ってたら、今度は右折して山の方へ向かった。
ゴクリと喉が鳴る・・・・・・思わず額を抱え込んだら、「そんなにビビることねぇだろ?」って笑われた。
「そうは言うけどね・・・子供の時に見たお爺様はホントに怖かったのよ・・・」
「まぁ、親父に比べたら相当厳しかったしなぁ・・・あの祥一郎でさえ一晩蔵に放り込まれ、考なんて柱に括り付けられたんじゃなかったっけ?」
「考ちゃんはいいけど、あの祥兄ちゃんが?!何をしたの?!」
「あまりにも真面目でおとなし過ぎるから度胸付けの為に・・・だったかな」
「可哀想に・・・お利口さんでも怒られるなんて理不尽な!総二郎は何かされたの?」
「俺は優等生だから特になにも」
「絶対嘘だ!考ちゃんが柱なら総二郎は庭の松の木じゃないの?!
「どんな拷問だよ・・・ほら、見えて来たぞ」
総二郎の声にハッとして前を見たら、周りの家とは比べものにならない大きな木門が見えてきた。
そして総二郎が木門の前で停まると、そこに見えたのは「西門」の表札・・・石塀の上から巨大な椿の木が見えるだけで、当然お屋敷なんて目に入らない。
この塀の長さで敷地の広さも想像出来て、私の緊張はMAX!
総二郎がスマホで到着を知らせると、すぐに門が開いて品の良いおじさんが出てきた。50歳ぐらいで小柄で、でも少しお腹の出てる優しそうな人。
私がいくら小さい頃から宗家に出入りしてるとは言え、そこは使用人の娘だから京都別邸の人とは面識なんてない・・・だからこの人がどんな立場の人かも判らなかった。
「総二郎様、いらっしゃいませ!お元気でしたか?」
「おはよう、森田さん。俺は相変わらずだけど、森田さんは?少し痩せたんじゃないですか?」
「・・・・・・(え?これで痩せたの?)」
「いやいや、変わりはないですよ~~。さぁさぁ、お車はうちの者に移動させますから、どうぞお入りください」
「あぁ、すまない」
総二郎がそんな挨拶をしているとき、私はどうしていいのか・・・でも彼が「ここで降りていいぞ」って言ったから、怖ず怖ずと助手席から降りた。
そして「森田さん」と呼んでたおじさんに挨拶・・・てか、どう言えばいいのか判らず、ここでも総二郎をチラ見した。
そうしたら彼が「こっちは連絡しておいた牧野つくし。よろしく」なんて、ものすっごく簡単に紹介してくれたから、私もカチコチになりながら頭を下げ・・・
「初めまして、牧野つくしと申します。本日は突然お邪魔して申し訳ございません」
「いらっしゃいませ、家元夫人からお話は聞いていますよ」
「・・・そっ、そうですか!あの、よろしくお願いします!」
自分の中ではかなり冷静に言ったつもりだけど、声が上擦って棒読みだったらしい・・・門を潜りながら、総二郎がクスクスしてた。しかも森田さんからは、「私は使用人ですから」って・・・
確かにそうだと思い、急に恥ずかしくなった。
「この人は宗家で言うと西村事務長とか志乃さんと同じ仕事をしている人だ。東京は弟子も使用人も多いからあの2人が分担してるけど。ここには爺様しかいないから使用人も僅かだし、弟子という形で稽古に来る人も少ない。
だから森田さんが殆どこの屋敷の事務や管理をしてくれてるんだ」
「そ、そうなんですね・・・」
「えぇ、まぁ雑用係ですわ。牧野さんはアレですよね?お父さんもお母さんも宗家で働いているという・・・」
「はいっ!西門流には大変お世話になっております!!」
「つくし、そんなに力入れなくても・・・」
「ははは・・・私も西門流にはお世話になってる身ですからねぇ~」
西村事務長、志乃さん、森田さん・・・この人達に比べたら、私のお父さんとお母さんなんて超下っ端じゃん?
お母さんはともかく、お父さんなんてサッちゃん(宗家の使用人)にも頭が上がらないのに・・・
気を取り直して1歩中に入ると、このお屋敷も宗家のように、すごく広い庭と整えられた木々に囲まれていて、落ち葉なんて殆どない。艶々した葉の椿が咲いていて、黄色い花も・・・なんだろうと思って足を止めたら、総二郎が「ソシンロウバイ(素心蝋梅)だ」って教えてくれた。
蝋細工のように半透明で艶やかな黄色い花・・・香りもあって、コロンと丸い花のフォルムが可愛らしかった。

その向こうには濃いピンクの寒ボケ。西門流では、この木は棘があるから茶花にはしないそうだ。
・・・いや、そんなことはどうでもいいんだけど。
「それでは総二郎様、こちらのお部屋に届いたものを置いてありますので、後はお任せしますね。小物一式も多分大丈夫だと思いますが、何かありましたらお呼び下さい」
「ありがとう、その時はよろしく」
「・・・・・・?」
「では、私はご隠居様に到着をお知らせしてきますね」
「えぇ、頼みます」
とある部屋に通され、そこの襖を開けると・・・真正面の衣桁に掛っているクリーム色の綺麗な着物が目に入った。
それはどう見ても総二郎のものではなく、女性の色留袖?この屋敷にこんな着物を着る女性がいるのかと、一瞬嫌な予感がした。
まさか、急に妙齢の女性がここに来るとか?!
「総二郎!あ、あのっ!!」
「着替えながら説明する。取り敢えず服を脱げ」
「はぁ?!///何考えてんのよ、こんな時間にこんな場所で?!」
「服を脱がなきゃその着物を着られねぇだろ」
「そりゃ着物は洋服の上からは・・・・・・・・・えっ?」
「それはお袋からお前に譲られた着物だ。それを着て爺様に挨拶しに行くから」
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