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副社長の結婚披露パーティーが終わった次の日だった。
朝から高城さん達が大慌てで色んなところに電話を掛けたり、会社の人が出入りしたりと騒然としていた。

「何かあったのから・・・加代さん、何か聞いてる?」

「いいえ、何も聞いてはいませんわ。でも、この様子では私たちに関することではないでしょう。何かお仕事上のトラブルでしょうか」

私と加代さんはドアを少しだけ開けて、廊下の様子を覗っていた。
知らない人が英語で怒鳴りながら走ってる・・・その中には高城さんの姿もあった。
いつもは見せない焦った表情と緊張感。電話越しに誰かを怒鳴っているのか聞き取れないほどの早口で喋っていた。

あんな顔を見るのは初めて・・・怒ったら結構怖いんだ。
私は段々ドアが大きく開いていくのに気が付かなくて、そのうち身体まで廊下に出してその騒ぎを見ていた。

私がそれを見ているのに気が付いた高城さんが走って私たちの部屋まで来た!
思わずドアを閉めようとしたけど、そのドアを手で止めて逆に大きく開かれた。

「ご・・・ごめんなさい!覗き見するつもりじゃなかったんだけど、あんまり騒がしかったから・・・!」
「いや、こっちこそごめんね。少し入ってもいいかな。話があるんだけど」

「えっ!?えぇ・・・どうぞ」

加代さんもいるんだし、高城さんは凄く忙しそうだしでとても私たちの旅行話ではなさそうだったから、取り敢えず入ってもらった。
もちろん加代さんはピッタリと私の傍についてて高城さんが触れることも出来そうにない。
まるでガードするかのように、表情まで険しくしていた。でも、それさえも高城さんには見えてないらしい。

「ごめんね、ちょっとフランスで手違いがあったらしくてね、すぐに行かなくちゃいけなくなったんだ。だから、ここで待っててくれる?
向こうでトラブルを解決したらすぐに戻るから!だから、日本には帰らないで?」

「フランスに?・・・もしかして例のプロジェクトなの?高城さんの会社のトラブルなの?」

「そう、残念だけどシステムにエラーが出てるらしいんだ。そのプログラムの製作責任者は俺だからね。行かないといけないんだ。
絶対に自信があったのに・・・どこでミスったんだかわからない。実際にこの目で確かめないと!」

いつも自信たっぷりの眼が今日は焦りのためか不安に満ちていた。
高城さんの事も気になったけど、行く先がフランスで類のいる場所だと聞いてそっちの方が気になってしまった。


「あっ・・・あの!私も行ってはいけないかしら・・・その、お仕事の邪魔はしないわ。向こうには・・・」

「君が?・・・どうして?」

それまで焦っていた高城さんの表情がまた変わった・・・しまった!って口を押えたけどそんなことが通じる人じゃない。
私の目的が類に会うことだとすぐに勘づかれてしまった。
不安そうだった瞳が今度は怒ったように私に向けられて、ゆっくりと近づいてきた・・・私たちの間に加代さんが入ろうとするのを
高城さんは突き飛ばすようにして加代さんの手を払い除けた!

加代さんは蹌踉けてしまって、すぐ側にあった椅子の背もたれにしがみついた。

「加代さんっ!・・・なんて事をするの?乱暴なことをするんならお父様に!」
「今の一言は何なの!どうして今の俺に向かってそんなことが言えるんだ!俺が心配でついてくるって言えばいいものを!
君はあの男に会うためにこの非常事態を利用しようというのか!・・・絶対にさせない。つくしはここに残るんだ・・・いいね!」

「高城さん・・・そんなつもりじゃ!」

「・・・いいんだ。どうせ君たちは結ばれる訳がない・・・今だけの火遊びのようなもんだろ?でも、俺は道明寺のようにすぐに君を
諦めるつもりはない。すぐに戻ってくるから大人しく待ってて」

私に背中を向けたまま、彼は私たちを火遊びだと言い捨てた。
何も知らない人から見たらそうなのかもしれないけど、何日間か類に会っていない私にはその言葉はキツかった。
遊びなんかでは・・・決して遊びなんかではないのに!喉のすぐそこまで言葉が来ているようだったけど飲み込むしかなかった。

突き飛ばされた加代さんが立ち上がって、私の側に来て抱き締めてくれる。
「気にしなくても大丈夫・・・」そう言って何度も私の背中をさすってくれた・・・確かに酷いことを言ったのは私だ。


「加代さん。人を好きになるって傲慢で我儘で自分勝手になちゃうのね・・・初めて知ったわ。自分もそうなんだって・・・。
高城さんが怒るのも無理ないわね。こんな時にでも類に会えるだなんて少し期待をしてしまったの。嫌な女だわ」

「そんなことはありませんよ。仕方ないですわ、あんなに素敵な方が恋人でいらっしゃるんですもの。それに強引に連れてきたのは
高城様の方・・・気にすることはありません。恋をするとみんな、そうなるもんですよ・・・きっと」

「加代さんもそうだったの?そんな人がいたの?」

「加代が恋をしているのはつくし様と類様です。ふふっ・・・おかしいと思うでしょう?でも、加代はお二人が大好きですからね。
これも恋に似てるんだって思ってるんですよ。見ていたらドキドキします。でも、ヤキモチなんて焼きませんけどね!」

「まぁ・・・っ!加代さんったら!でも、ありがとう・・・」

高城さんがいなくなったアメリカで私はいつまでこうしているんだろう。
帰ってきたら再び不安と隣り合わせで過ごすんだろうか・・・加代さんはとても温かいけど私の心はどんどん冷めていった。


*********


高城さんが社長であるお父様とフランスへ向かったのはその日のうちだった。
残されたのは私と加代さんと高城さんのお母様、美智子さん。
シーンと静まりかえったマンションのリビングで3人で食事をしていた。美智子さんは少し悲しそうに見えた。

「おば様、大丈夫ですか?あの・・・私が言うのもおかしいですけど、まだ始まったばかりの段階なのでしょう?事故が起きたわけでは
ありませんもの。これから直せば問題ないんじゃないですか?・・・ごめんなさい、私はお仕事のことよくわからなくて」

「いいのよ、つくしちゃん。心配掛けてごめんなさいね・・・何となく昔を思いだしていたの。私たちが大阪で小さな工場を始めた時も
同じようなことが起きたものだから。あの時も順調に売り上げが伸びていてね、軌道に乗ったばかりだったわ。腕のいい職人さんが
初めて起こした小さな設計ミスからどんどん被害が大きくなっていって、倒産まではあっという間だった・・・。どれだけ職人さん達が
生活に困ったかと思うと申し訳なくてね。それを思いだしてしまうのよ・・・職人さん達の次の働き口だけは探してあげたかった・・・。
でも、歴史のない会社ってそんなものなのね。助けてくれる同業種の方もいなくてね、逃げるようにアメリカに移ったの」

そう言えば、高城さんの会社のことを類が調べていたときにそんな話をしていたような気がする。

花沢も決して歴史のある会社じゃないわ。お爺さまが起ち上げてお父様が成功させたんだもの。それでもここまで大きくなって
今では世界中に知られる企業にまでなった。私は改めて両親の苦労を考えた・・・自分の小さいときのことを。

子供の頃、いつもお父様は遅くまで書斎にいて、私や類と話をすることもなかった。難しい顔で何かを読んでるお父様の顔しか
覚えてないくらい。お母様も私たちのことは全部加代さんに任せて世界中を飛び回っていた。
だから二人とも子供のことはどうでもいいんだと、そんな風に思っていたのは事実なんだけど本当は違っていたのかもしれない。

大きくなればなるほど守るために必死で、それは私たちと同時に社員の暮らしのために休む暇もなかったんだろう。
それを継ぐのが類なの?・・・後継者ってそんなに重たい荷物を背負ってしまうのね。


「あぁ、ごめんなさいね、ホントにだめねぇ!いつまでも昔のことを引きずってちゃいけないって思うのに私ったら・・・。
つくしちゃんのお話が聞きたいわ。もう会社のことは男性陣に任せましょう!ねぇ、英徳大学ってどんな感じなの?誠は本当に
お友達がちゃんといるのかしら・・・あの子は頭はいいんだけど、表面を飾る癖があるみたいで心配なの」

さすがお母様だけのことはあるわ・・・当たってる。

「誠さんとは学年も選択も違うので大学ではあまり会うことはないんです。時々兄や兄のお友達と話しはしていますけど、どちらかと言えば
仲良く喧嘩してるみたいですよ?兄のお友達の西門さんとはよく口喧嘩になってるし、類とも何度か・・・」


「西門・・・って茶道の?西門流の息子さん?」

「え?はい!そうですよ。西門総二郎さんって言います。お家元の後を継がれる方で類の幼馴染みです。あら、ご存じでした?」

「い・・・いえ、知らないわ。西門流が有名でしょう?それに珍しい名字だから・・・それだけよ」

西門さんの名前を聞いて少し驚いたような表情をしたおば様・・・でも、この時はそこまで気にしなかった。


それよりも高城さんがいなくなったんだから日本へ帰りたい。
それだけを願っていて、おば様の手が震えていたなんて全然気が付いていなかった。


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Comments 2

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2017/10/09 (Mon) 13:53 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

おおっ!マコッちゃんに同情票入りましたー!!これは珍しいことだ!
かれこれ3ヶ月分もこれ書いてて結構疲れました。(笑)

良く長編書く方がいらっしゃるけど尊敬します。マジ限界・・・どこかでSisterとか言う文字見たら
ドキッとします。やっと今月終わりそう・・・

今度は可愛いお話にしたいと思いつつ、何も考えられない私・・・何かネタ下さい。(笑)

2017/10/09 (Mon) 21:32 | EDIT | REPLY |   

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