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plumeria

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<side千春>
総二郎さんが帰って来たと聞いて、たまには出迎えようと思ったけど少し見えたその姿・・・あまりにも怖い顔で驚いた。
私にはここに来てからも笑顔を見せてくれたことはなかったけど、怒られたこともない。
むしろ私と同じく感情を出さないようにしていると思っていた。そして、普段からそんな人なんだろうと、勝手に思っていた。

だからあんなに怒りを露わにして廊下を歩いているなんてびっくり・・・そして、向かったのが孝三郎さんの部屋だったから不思議だった。
この家のことは何も知らないけど、総二郎さんと孝三郎さんが仲が悪いのだけはすぐにわかったから・・・。

少し躊躇いもあったけど、孝三郎さんの部屋の前で耳を澄ます・・・そのうち二人の会話が途切れ途切れに聞こえてきた。
耳にしたのは初めて聞く名前だった。

つくし・・・?それは誰の事なのかしら。
余計に気になって耳を近づけたら二人の会話がはっきりと聞こえた。

**

「総兄さ、何か勘違いしてるだろ!つくしは俺の婚約者だぜ?俺の自由だろ・・・それを花沢が来て連れて行ったんだ!
そっちの方がおかしいだろう!総兄のダチならよく言っとけよ!邪魔はお前だってな!」

「偉そうにつくしの事だけムキになって婚約者面すんじゃねぇよ!・・・つくしはお前には絶対に渡さない・・・覚えとけ!」

「何言ってんだ!総兄にはちゃんと女が用意されてるだろう!自分の方こそ立場ってもんを考えろっ!」

**

私はその会話に驚いた・・・つまり、つくしという女性は総二郎さんが愛している人で、孝三郎さんの婚約者だということ?
そして私が総二郎さんに「愛せない」と言われたのは・・・つくしという女性のせいなの?
この2人は兄弟で1人の女性を奪い合ってるって言うの?


どんな女性なのかしら。

この私よりも美しいの?・・・あんなに煌びやかな総二郎さんが好きになった人・・・!
2人の会話が終わったみたいで総二郎さんの足音がこっちの方に近づいて来た・・・!だから慌ててすぐ近くの廊下の曲がり角に隠れた。
ドアを開ける音と閉まる音がして、総二郎さんはご自分の部屋の方に向かって歩いて行った。


「ふぅ・・・気が付かれなかったみたいね・・・」

私は廊下から顔だけ出して総二郎さんが戻っていく、その後ろ姿を見ていた。やっぱりまだ怒っているんだろう・・・少し歩幅が広い
のは怒りが治ってないのを感じさせた。

後ろ姿だけなのに、彼はよく似ている気がする・・・私の愛しい人に。



旧華族、和泉家に生まれた私は、幼い頃から両親にも祖父母にも可愛がられて大事に大事に育てられた。
何かある度に言われてきたのは西門祥一郎さんのところに嫁ぐのだという家同士の決め事についてだった。
西門家とは古くからの付き合いでいずれは縁戚関係になろうと約束をしていたらしいけど、ちょうどいい年頃の男女に恵まれなくて
私たちの時にチャンスが来たのだと・・・そんな古臭い約束事なんて誰が守るものかと反発して高校生まで過ごした。

その後に一度設けられた顔見せの日・・・祥一郎さんに一目惚れをしたのは私の方だった。
優しそうな瞳に穏やかな話し方・・・落ち着いた態度は何よりも安心感があった。
何度か会ううちにその恋はどんどん私の中で成長していって、いつの間にか彼しか目に入らなくなった。
私はこの人の婚約者・・・いつか西門でこの人の横に立つんだと思いながら数年間を過ごして、早くその日が来ないかと待ち焦がれていた。

なのに、私に告げられた言葉は祥一郎さんが西門を出たために白紙にされた婚約・・・理由すら聞かされなかった。


その時にはショックのあまり倒れ込んだ。
この私が捨てられたんだ。祥一郎さんのためにと思って磨いてきた私の全部を、彼はあっさりと捨てたのよ!

西門が憎かった・・・この私を簡単に捨てた彼が憎かった。

それでもその西門家しか私のいく先がないと思っていたから、今更新しい道を見つけることも出来ないような気がしていた。
そんな時に再び出てきたのが祥一郎さんの弟、総二郎さんとの話だった。
人のことを何だと思っているのかしら!和泉の人間も西門の人間も私の未来を何だと思っているんだろう・・・。
だけど逆らうことなど許されない家に育ったから自分の意思とは関係なく話は進んで、とうとう花嫁修業にまで出される羽目になった。


そしてあの日、その彼・・・総二郎さんと初めて会った。

噂どおりの美しい人・・・祥一郎さんとは違ってすこし冷たい印象があったけど、何もかもが整っている男性だった。
その所作も声も何もかもがゾクゾクする・・・私は表情に出さないようにするのが精一杯で感情を自分の奥深くに押し込めた。


なのに、総二郎さんまでがこの私を拒否したんだ!
どこまでも私を馬鹿にして・・・!妻とする気がないだなんて、私はこの西門に嫁ぐために育てられたようなものなのに!
だから絶対に私はこの家を出て行かない・・・総二郎さんの思い通りになんてさせない。総二郎さんに恋をしたフリをしてこの座を
必ず自分のものにしてみせる!



それなのに私の眼は祥一郎さんの部屋があった方を見ている。私の心はそこにいない人をいつまでも探している。

私の恋はいつまで迷子になっているのだろう。


*********


「痛い・・・何でこんなに頭が痛いんだろ・・・」

朝早くに目が覚めたけど、昨日の事が思い出せない・・・少し動いただけでも頭が痛くて気持ちが悪い。
しかも普通に服で寝てるし・・・暫くぼんやりしていたら少しずつ思いだしてきた。

「そう言えば花沢類がいたような・・・あれ?でもここに来たときには総二郎がいたような・・・」

とにかく起き上がってシャワーを浴びよう・・・そう思ってズキズキする頭を抱えてベッドから降りた。
ふとみるとテーブルの上には頭痛薬・・・「絶対に飲めよ」そう書いてあるのは総二郎の字だった。

「やっぱり、そうだ!昨日は急に現われた考ちゃんとどこかのお店に行って酔っ払って・・・花沢類に助けてもらったんだっ!
・・・って痛い!薬飲もう・・・」


総二郎が用意してくれた薬を飲んで、まだ早かったから少し休んでいた。
もう一度ベッドに倒れ込んだら段々と思いだしてきた。考ちゃんとカクテルを飲んでいたら急に酔いが回ってきて動けなくなって・・・
その時に何故か支えてくれたのが花沢類で、そのまま花沢類のマンションに連れて行ってもらって・・・プロポーズを断わった。


そうだ・・・花沢類に断わったのを思いだした!

その時に抱き締められて腕の中で何度も類の声を聞いていたっけ・・・その後に総二郎が迎えに来てくれた?
それとも花沢類が呼んでくれたの?

そのあたりは覚えてないけど、総二郎に抱えられてアパートに帰ったのは思いだした。
何となくすごく総二郎に甘えたような気がするんだけど、気のせいかしら・・・。思い出そうとしたら顔が赤くなるのは何故っ?!

でも、すぐにまた千春さんの事を思いだしてしまった。

未だにきちんと対面していない彼女・・・一体どんな人なんだろう。
総二郎がはっきり断わったというのに、それでも西門を出ないと言った千春さん。彼女の気持ちがわからなかった。


それでも総二郎が迷うなって言ったから、自分を信じるしかなかった。
この先に何があるかわからなかったけど、私は総二郎が示してくれる方向に進もうと思っていた。


「さてと!シャワーを浴びて仕事に行くか!・・・ってやっぱり、痛い・・・!」

人生初の二日酔い。
もう二度とお酒は飲まないって気分だった。


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Comments 2

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2017/10/12 (Thu) 12:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!

そうなの・・・千春ちゃんは頑固になってるけど本当は可哀相な人の設定なんです。
いや、家元夫人が相当嫌われ役なのに、千春ちゃんまでが悪かったら最悪でしょ?

私が書くのにストレスが半端ないので、あまり害がないようにしておりますが大人しくするかどうかは
別問題です。悪魔になる可能性もあったりして・・・ふふふ。

二日酔いって若い頃には良くありまして、会社を休んだりしてました。
plumeria、飲んだら超ハイ!になるので、何度も人の服を剥ぎ取りましたね・・・。
1人の後輩から今でも恨みに思われていて、ことあるごとに嫌味を言われます。

えぇ、新幹線にホテルのスリッパで乗って帰ったこともございます。
お酒は人を変えるもの・・・皆様、気をつけましょうね。(誰に言ってるんだ?)



2017/10/12 (Thu) 20:04 | EDIT | REPLY |   

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