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俺は一睡も出来ずにスマホを睨み付けて朝を迎えた。

結局お袋は昨日、本邸に戻らなかった。そしてとうとうつくしの携帯は圏外になった。
これは完全に何かが起きたということ・・・つくしの身に何かが起きて帰って来れないんだと思った。

考も戻らない・・・この3人がどこかに消えるなんて不自然だ。考えられる事といえばすべてが悪夢のような事態・・・それか事故だ。
つくしには腹が立ったが、よく考えたら茶道会館をやめたら宗家の仕事を覚えるようにお袋から言われていたはずだ。
それを始めたら受け入れたと同じになる。だからつくしはそれをどうしても断わろうとした、としか思えない。

そうでなければ考の所に行くわけがない。
俺が地方に仕事で行ったのもつくしにしたら運が悪かったんだろう・・・だけど、何よりも俺の仕事を優先させたがるあいつは何も言わずに・・・。

せめて考のマンションがわかれば出向いていくのに西門流としての不動産ではなかったから事務所では調べられなかった。
そんな書類もおそらくお袋が管理しているんだろう、秘書や古株の弟子達も何も知らなかった。
俺だってそうだ・・・自分名義のマンションは誰にも教えず自己管理下に置いているから言わない限り両親にはわからないだろうし。
こんな事は全く関知していない親父には何を聞いても「知らない」の一言だ。茶のこと以外はお袋に任せっきりの親父はお袋が
屋敷を留守にしても、考が密かにマンションを持っていても気にもしていないようだった。

祥一郎が出ていく前までは俺たちとも会話のあった親父・・・たけど、あれ以来、西門を守ることに必死だった。

**

自分の部屋で悶々と過ごしているうちに本邸の方が騒がしくなり、廊下に出てみるとお袋の姿が目に入った。
毅然として歩いてはいるが表情が暗くて疲れも見える。口々に声をかける弟子達に一言も言葉をかけずに自室の方へと向かった。
どれだけ疲れていようが関係ない。俺は速攻お袋の部屋に行ってそのドアをノックした。

「誰なの?今は頭痛が酷いから後にしてちょうだい」

中からそう告げるお袋の声が聞こえてきたが、そんなものは無視だ!

「総二郎です。急で申し訳ないがお話がしたい・・・入りますよ」

勿論その返事も聞かないままお袋の自室のドアを開けた。お袋はまだ着物も着替えずに椅子に倒れ込むように座り込んで、滅多に
見せない疲れを全身で表していた。そしていきなり入ってきた俺に身体を起こすことなく視線を向けてきた。

「総二郎さん・・・疲れていると言ってるでしょう?少し休みたいのよ・・・お話なら後で聞くわ」

「いえ・・・すぐに出ていきますから答えて下さい。・・・つくしはどこですか?」


この質問にお袋はビクッとした。
そして今まで見せていた疲れではなく、少し睨み付けるような視線に変わる。
俺の予想が的中したのなら、つくしは今頃考とどこかに行っているはずだ・・・それを手助けしたのがお袋だと思っていたが、
この疲れようは想定外だった。

「あなたはご存じですよね?つくしは何処に行ったんですか?考は・・・孝三郎はどうして一昨日からここに帰ってこないのでしょう。
あいつにだって稽古はある。何故連絡も無しでいなくなるんです?」

「・・・そんなことは私にはわからないわ。それに総二郎さんにも関係がないことでしょう・・・どうして聞くの?」

「わかりませんか?それとも孝三郎のことしか眼に入らないということでしょうか?俺はそれでも構わないがこの件に関してだけは
納得のいく説明をいただきたい。何故、つくしは連絡が取れないのです?」

ここまで言ってもお袋には俺がつくしを探す意味がわからないらしい。不思議そうな顔を俺に向けて眉根に皺を寄せる。
この人がわからないのも無理はない。俺がつくしのことを本気で考えてたって事が最初から自分のシナリオにはないからだ。
周りの他人ですら気が付いてるものを・・・つくしの気持ちだけじゃなく、自分の息子の事も何もわかっちゃいないんだ!


「もう一度聞きます。つくしはどこですか?」

「知りませんよ。どうしてそんなにつくしちゃんのことを聞くの?・・・・・・え?総二郎さん・・・まさか、あなた!」


少しは気が付いたか?
急に驚いたような顔で椅子から立ち上がった。そして俺に背中を向ける・・・両手を忙しなく擦りつけるように動かしては口元を覆った。
いいわけでも考えているつもりなのか・・・?俺はお袋の次の言葉を待っていたが、こうしている間にもつくしが俺から離れていくような
気がしてイライラする。いつまでも返事を待てるほど冷静ではなかった。


「やっとわかっていただけましたか?俺とつくしは少し前からそういう関係なんです。正確に言えばずっと前からお互いがそうだった。
それを確かめ合ったのが最近です。ですから申し上げたでしょう?・・・千春とのことは受け入れなれないと。つくしも言ったはずだ。
考とのことは考えられないと」

「総二郎さん、あなたは西門の次期家元ですよ?妻となる人はそれなりの・・・」
「いや、そうじゃない!あなたはご自分の思い通りに事を運びたいだけだ!祥一郎がつくしを気に入っていたから、その時は和泉
を無視してでもつくしを迎えようと考えたはずだ!そして今度は孝三郎が下手な芝居をしてあなたにつくしのことを頼んだから、
必死になって動いた・・・俺は自分の気持ちを表には出さなかったからあなたには伝わらなかったようだが、つくしの方も選んだのは
俺だったんだ!それなのに・・・!」

この人に感情をぶつけたことがないから、こんな俺を見て驚いたんだろう。お袋は再び椅子に座り込んで震えだした。
ただ、このお袋の怯え方が気になる。2人をどこかへ送り出しただけでは、ここまで震える必要なんかないだろう。
俺の中で膨らんでいく不安と、恐怖・・・どこかでつくしが泣いているような気がしてならなかった。



「今まで何も言わなかったじゃないの・・・そんな話、今聞かされても、もう和泉家との話は消すことは出来ませんよ」

「千春から解消してもらうように話はしています。ただ、彼女も受け入れないと言ってますけどね・・・俺が彼女を受け入れない以上
嫁いできても跡取りは出来ませんよ。あなたが何度も言っている西門の未来は俺で途絶えます。それが困るのならすぐにでも俺を
次期家元から外したらいい・・・いくらでも孝三郎に譲りますよ。俺はつくしを連れてここを出ていきます」

「総二郎さん!そんなに簡単なことではありませんよ!」

「簡単に考えてないからこそ今まで言えずにいたとは思わないんですか!言って聞いてくださるならいくらでも言いましたよ!
それにつくしの気持ちを何故一度も聞いてくれなかったのでしょう・・・つくしを後見したのは西門の勝手だ。それを今でもあいつに
恩着せがましく押しつけるから何も言えなくなって当たり前でしょう!どれだけつくしがそれを重荷としているか考えたことがありますか?
もう、自由にしてやってください。そして考とのことは白紙に戻して下さい。つくしは俺が幸せにしてやりたい・・・あいつもそれを望ん
でるんです」

お袋は俯いたまま手で顔を覆った。その指の間から、溜息のような泣き声のような声が漏れている。
それは何を意味する行動なんだ?お袋の真横まで行ってその目の前に座った。こんなに近くまで寄ったのは何年ぶりだろう。
この人に触れたことすらもう何年もなかった。

そのくらい冷め切った親子関係は、お互いの心の内など理解することは出来なかったんだ。

この人だけのせいじゃない。受け入れようとしなかったのは俺も同じ・・・だからこそ、今日はすべてを話して受け入れてもらいたかった。


「お願いします。つくしが今どうしているかを教えてください。迎えに行きたいんです」


それでも、顔を上げて俺を見ずにお袋は言った。


「知りません・・・私は何も知らないわ」

薄暗い部屋に響いたお袋の低い声・・・ここまで話しても俺の気持ちは何一つこの人には通じないと悟った。
20年間解り合えなかった俺たちはこの先も変わることはないだろう・・・これで、俺の決心は固まった。
綺麗さっぱり西門とは縁を切る・・・どんなに騒がれようと関係ない!この瞬間に次期家元という肩書きは俺の中から消した!



「・・・そうか。わかった・・・もう、いい」

「総二郎・・・さん?」


「もう二度とあんたに頼み事はしない。この家を継ぐことも放棄する・・・たった今から俺はこの西門と縁を切らせてもらうからな!
つくしのこともあんたに聞かなくても自分で探してやる・・・あいつが最終的に戻ってくるのは俺の所だと考に教えとけ!!」

こんな言葉で俺から怒鳴りつけられるなんて思ってもいなかっただろう!
だが、もううんざりだった・・・この人の自己満足に付き合うのも、人の気持ちを無視したこの家の考え方にも我慢が出来なかった!

「総二郎さん・・・!総二郎さんっ!!」


お袋の叫ぶ声がそこら中に響いたけど、俺はそんなお袋に最後の言葉も告げずに部屋を出た。


もう、この家に縋ることもない。
俺は自力でつくしを探して、そして2人で暮らす・・・その先に自分たちの幸せがあると信じた。



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Comments 2

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2017/10/20 (Fri) 13:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

ぽっくりはいかんでしょうッ!ぽっくりは・・・(笑)お腹痛い・・・!!
そういうおさらばではありませんっ!もう・・・大爆笑だからっ!

こんなに真剣な場面なのに、今度は本能で?・・・(笑)
総二郎、イヌじゃないんだから・・・お腹痛いって!!

人捜しやもの探しや何でも屋の友達がいますから大丈夫・・・この話、唯一の出番の彼が来ます!ちょっとだけね。


2017/10/20 (Fri) 21:53 | EDIT | REPLY |   

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