plumeria

plumeria

加代の病室に行ってみるとそこも個室になっていて、特別室とまではいかないがわりと広い部屋に入っていた。
ノックをしたけど返事がなかったから、静かにドアを開けて中に入った。窓際にある大きなベッド・・・ゆっくり近づいたら加代の姿が見えた。
随分と傷だらけの顔をしてる・・・相当疲れたんだろう、点滴を受けながら加代は目を閉じていた。


暫くすると俺の気配に気が付いたのか、薄く開いた目を俺の方に向けてきた。そして意識がはっきりしたら急に驚いた顔をする。
勢いよく流れ出す涙は止まらなくなって、慌ててハンカチを差し出したけどそれを持つことも出来ない。
だから涙を拭いてやると、やっと手を俺の方に出してきた。それを掴むと何度も何度も掴み返してはまた泣いていた。

「類様、申し訳ありません。つくし様を・・・つくし様をあんな目にあわせたのは私なのです。つい、高城様がご不在になったので気張らしにと
お散歩をすすめて、しかもせっかくだからと地下鉄になどお乗せしたのは私なのです・・・申し訳ありません、類様!」

「もう大丈夫だから・・・加代はゆっくり休みなよ。つくしの事、聞いたの?」

「いいえ・・・あの、つくし様は見つかったんでしょうか・・・」

加代はまだつくしがここに運ばれて来た事も知らなかった。自分の治療が終わるとすぐに倒れたんだろう。今までずっと寝ていたから
つくしが生存しているのも聞いてない。だから余計に不安そうな顔をしているのか・・・。


「つくしはね、さっき発見されてちゃんと生きてるよ。今はここのICUに入ってる。もう大丈夫だよ・・・」


そう言うと加代の目は今まで以上に大きくなって、今度は嬉しさのあまり号泣した!
その声があまりに酷くてナースが飛んできて俺がすごく叱られたけど、加代が泣くのをやめないから安定剤が投与されてしまった。

「類様・・・本当ですのね?つくし様は大丈夫なんですね?本当にあんな中から生きてお帰りに・・・なんて事でしょう・・・!」
「そんなにすごかったの?でも、もう忘れなよ。2人とも無事だったんだから・・・犠牲者は多かったけどね」

「申し訳ありません・・・類様、申し訳ありません・・・」


何度もそればかりを繰り返しながら、薬が効いてきて加代は再び寝てしまった。
その手を何度もさすってやると時々反応して握り返してくる・・・なんだか随分歳をとったみたいだね。あちこちにはられた絆創膏が痛々しい。
少しの間付き添っていたけど、ぐっすりと寝てしまったから病室を出てつくしの所に戻った。


そこにはすでに司の姿はなくて、ナースの話ではどうしても抜けられない仕事があるから社に戻った・・・との事だった。
その時間ぎりぎりまでガラス窓越しにつくしの顔を見ていて、声をかけても返事すらしなかったらしい。素敵な恋人だと騒ぐナースを
無視して今度は俺がそこに立った。でも、この僅かな距離がもどかしい。俺はまだつくしの体温を感じていなかったから・・・。


「妹に付き添えませんか?中に入ることはまだ出来ない?」

そう質問するとナースはドクターに聞きに行ってくれた。
そして少しの間なら大丈夫だと伝えられて、白衣を渡されICUの中に入った。

ガラス窓越しではなく、その中に入ると定期的な機械音がかえって不安にさせる。沢山のチューブに繋がれているけど顔色は
悪くなかった。そっと手をとると温かい・・・それはちゃんと血が通っていることを教えてくれた。


「つくし・・・ごめんね、1人にさせて。もう傍から離れないからね・・・早く目を覚まして?」

ベッドの横の椅子に腰掛けて、つくしの片手を俺の両手が包んだ。
そしてその指先を俺の口元に持っていってキスをする・・・少し冷たいけどちゃんと命が感じられる。

俺は何度かこの部屋を出るように言われたけどつくしの手を離せなかった。
仕方なくそんな俺の横で治療をするナースやドクターの事を全く無視して、結局朝までつくしの手を離すことが出来なかった。


そして次の日になってつくしはICUから一般病棟の特別室へと移された。
もう命に別状はないという判断だったがまだ意識は戻ってはいない。沢山の装置をつけたままだったけどICUと違ってずっと傍に
いることが出来る。いや、ICUにいても俺がつくしを離さないから出されたのかもしれない・・・。


すっかり遅くなったけどフランスには電話をかけた。意識は回復していないが命は助かったと。

「申し訳ないが俺は暫くアメリカにいます。フランスでの作業はもうエンジニアに任せたい。元々そのつもりでしたからね。
つくしが意識を取り戻して動けるようになったら一緒に日本に帰ります。それまで高城に会わせるつもりもありません。
あいつもトラブル続きでフランスから出られない状況でしょうし、この先の高城コーポレーションの動向でもチェックされたらどうですか?」

『類・・・!予定どおりのスケジュールではあと10日間はフランスだろう!つくしの事は心配だがもう大丈夫なら仕事に戻ろうとは
思わないのか!何度も言うがいい加減に妹から・・・』

「いいえ、妹ではありません。俺も何度も申し上げたはずだ。俺はつくしと花沢を出る覚悟はいつでも出来ています。
ですから、スキャンダルも怖くないんですよ。それが怖いのはあなた方だけです。それでは・・・」

電話を切ろうとしたその時に父さんの電話を取り上げたのか、母さんの声が耳に届いた。


『類・・・!つくしは?つくしはどうなの?大丈夫なの?怪我は・・・大きな怪我をしてないかしら・・・いつごろ目が覚めるかしら・・・』

「母さん、つくしの怪我はそんなに酷くはありませんよ。心配しなくても意識が戻って脳に異常がなければ大丈夫・・・こちらに来ませんか?
目が覚めたときにあなたがいたらつくしも喜ぶと思いますよ・・・母親ですから」

その言葉で母さんは電話口で泣き出した。きっと本当はすごく心配していたんだろう。
いろんな思惑があったみたいだけど、つくしのことは可愛くて仕方がなかったんだ・・・多分、その気持ちに嘘はなかったんだと思う。
俺を産んだ後に病気を患って子供が産めなくなった母さんは本当に女の子が欲しかったと言っていたそうだから。


あの日、舞い降りてきた天使に一番嬉しそうな笑顔を向けたのは母さんだからね。
母さんはフランスが一段落したらアメリカに来ると言って電話を切った。


*********


つくしの意識がまだ回復していない時に病室に現われたのは高城美智子だった。
この人も社長や高城誠の留守中につくしを事故に遭わせたと責任を感じているらしい。俺にも深く頭を下げて詫びていた。


「本当に申し訳ありません。誠が無理矢理つくしちゃんをアメリカに呼んでおきながら1人にさせて、その上こんな事故に遭うなんて・・・
類さんにもお仕事を休ませてしまいました。みんな私がきちんとつくしちゃんを預からなかったせいですわ。ごめんなさい・・・」

「この事故は誰の責任でもありませんから。うちの加代も謝りっぱなしですが、他の国の様子を教えようとしただけのことですから
責めるつもりもないんです。つくしはまだ意識が戻ってはいませんが、こうやって軽傷でしたから、もう大丈夫ですよ」

申し訳なさそうにつくしの顔を覗き込むこの女性がもしかしたら・・・そう思うと複雑だった。
これがDNA鑑定で証明されたらどう話せばいいんだろう。素直に認めてつくしを実子として高城に迎えてくれるのか?
いや・・・万が一父親が西門だったら?

今までつくしの容態を心配していたが、高城美智子を見た途端、再びつくしの出自の事が気になってきた。

コンコンとドアをノックする音が聞こえてナースが点滴交換とガーゼ交換だと言って入ってきた。
そして病衣を脱がせなくてはいけないので俺に席を外すようにと声をかけてきた。高城美智子も当然つくしの傍を離れようとしたが
ナースの動きの方が早かったのだろう、病衣をさっと取り払ってつくしの上半身が露わになった時、まだベッドサイドに残っていた。



「・・・えっ?この痣・・・」


俺はすでにベッドサイドから離れていたためにカーテンの中で何が行われているかを知ることは出来なかったが、彼女が呟いた
一言ははっきりと聞こえた。
つくしの胸の痣に反応した?それは産まれたときからあるハートの形をした痣だ・・・これを知っているのは花沢の家族と加代。
そして産んだ本人だけのはず・・・。


「今、なんて言いました?それをご存じですか?」


真っ青な顔で戻ってきた高城美智子に俺は鋭い視線を送っていたんだろう。
ビクッとしたように俺の顔を見ている。ガタガタと震えるその手は何を意味している?何故そこまで慌てているんだ?
言葉には出さなかったけど、つくしの治療が続いている間中、俺と彼女は向かい合ったままお互いの顔を見ていた。

そしてその時に鳴った電話・・・なんて、タイミングだろう、あきらからだった。


「もしもし、あきら・・・鑑定結果出たの?」

『あぁ、出たよ。母親は高城美智子にまず間違いない。親子鑑定で99%と出た。だけどな・・・』

「だけど?だけどってなに?」


『西門清四郎は父親じゃない・・・つくしちゃんとの親子関係は証明されなかった。全く遺伝子配列が違うそうだ』


「・・・え?ホントに?」


KOSU43.jpg
関連記事

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/10/17 (Tue) 05:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます。

うんうん、もうここまで来たらバレますよね!越後屋さん!
実は昨日の夜、メンバーとのライントークでふざけすぎて、このシスコンのチェックが遅くなり
公開後10分間くらいまで修正していました!(笑)
表現がおかしかったり、説明が不十分だったりで、いかにこの期間イベントに取り憑かれていたかがわかりましたよ。

で、イラストですか?
ありがとうございます!いきなり拍手にイラスト載せようってなって、何故かご指名受けたんですよ。
その前にこれも突然川柳募集が始まって、みんなで書いたらそっちが結構集まったので、イラストも増やそうぜ!って
なって・・・とうとうあんなことになりました。
類くんはメンバーもよく見るらしくてね、「今日はプルさんだったよ!」って言ってくれます!

問題は色鉛筆だから細かく描けないこと・・・顔しか描かなかったんですけどね(笑)

2017/10/17 (Tue) 07:03 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/10/19 (Thu) 13:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

もうここまで来たらバレバレですのでいいんですけど、実はこんなに長く複雑になるとは思わなかったんで
つくしのお父さんについて、実は困っております(笑)

皆様・・・後残ってるのは誰だ?って思ってますよね・・・

このお話の中で一度もその名前が出てきていないので、最後に出てきたら怒られるかもしれない。
つくしのお父さんはもう暫くお待ち下さい。

ふはははは!!
今日もありがとうございました!こんなに沢山・・・本当に嬉しいです!

2017/10/19 (Thu) 20:04 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply