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<side誠>
何とか無事に動き出したシステムのモニターを1人でぼんやりと眺めていた。
そこにチカチカと光る数字が問題なく作動していることを示しているけど、俺はただ流れる数字を目で追うだけだった。

母さんからの連絡で奇跡的に助けられたつくしが病院で治療を受けていると聞いた。
しかもそれを発見したのは道明寺のレスキュー隊。あいつは自分の仕事を放り投げて現地に向かい、つくしが地下から出てくるまで
その場を離れなかったと・・・。抱き抱えるようにして自分の病院に運びICUでその姿を見守っていたらしい。
それを聞いたとき、俺はまだここで自分のプログラムと闘っていた。社運を賭けたこのプログラムは高城の今後を左右するものだ。
絶対に失敗作などに出来ない・・・しかも設計がこの俺だ。ミスなど許されなかったんだ・・・。


花沢類は事故後、一番早い飛行機でアメリカに向かったと聞いた。
花沢にとっても最重要なこのプロジェクトの責任者でありながら、すべてをスタッフに任せて独断で飛んでいったらしい。

アイツらしいと言えばそうかもしれないが、何故すべてを置いたままいけるんだ?
兄妹だろう・・・?一人っ子の俺にはその行動は理解出来なかった。

だけど、羨ましい・・・それが本音だった。

♪~
丁度この休憩中に掛かってきた電話の相手は母さんだった。事故の後は何度も電話はあったから驚く事もない。つくしが意識を
取り戻したと言われても駆けつけることも出来ないんだ・・・むしろ、まだ眼を覚まさないでほしいぐらいだった。

「もしもし・・・どうした?・・・つくしが眼を覚ましたの?」

『いいえ、まだ意識は回復していないわ。・・・誠、アメリカに戻ってこれるかしら。話があるのよ・・・』

いつもより沈んだ母さんの声。何かあったんだろうか・・・つくしの事故に加えて、これ以上何かが起きただなんて聞きたくもなかった。
何もかもがどうでもいい・・・俺も今は疲れすぎていて何も考えられなかった。


「多分、修復が終わったから戻れると思うよ。父さんには連絡した?俺から話しておこうか?」

『そうね・・・私も少し体調が悪いの。誠からお父さんに話してもらえる?そして2人で帰ってきてね』

「ん、わかった。体調がすぐれないのなら早く休んでね。誰もいないから不安なんだろ?・・・ごめんね、母さん」


待ってるからね、と小さな声で電話は切られた。

母さんの電話の声が沈んでいる理由なんて勿論知らない。遠くの方で聞こえるフランス語の会話もただの雑音にしか聞こえない。
ここに来た時には大騒ぎして怒鳴り合ったこの部屋も今は俺1人・・・数日前の嵐のような出来事が嘘のように静かだった。

「流石に疲れた・・・こんなのは初めてだ。でも、終わった・・・かな」


俺はまだこの大型モニターの上を流れていく数字をぼんやりとしか眺めることが出来なかった。



*************

<アメリカ>
つくしの病室を出て、すぐ近くに病室を移してもらった加代のところに母さんを連れて行った。
ここも特別室みたいなものだ。つくしの部屋ほどの広さはなかったけど、生活のすべてがこの部屋の中で出来るようになっていた。


「申し訳ございません!・・・奥様、お許しいただかなくても結構でございます、このまま花沢を出されても当然のこと・・・!
こんな私を助けるためにつくし様が眼を覚まされないほどのお怪我をされるなんて・・・!本当に申し訳ございません!」

母さんを目の前にして今度は加代がベッドに頭を擦りつけるようにして謝っていた。
あれからつくしが眼を覚まさないことで責任を感じ続けてる加代は、会う度に俺にもこうやって謝る。その度に安定剤の出番だ。
今日は母さんが来たもんだから一層顔をくしゃくしゃにして泣いて謝ってる・・・母さんもこれには驚くほどだった。

「加代、何度も言うけど加代のせいじゃないし、つくしは大怪我なんてしてないから。きっともうすぐ眼を覚ますよ?それに花沢を出る
なんて考えなくても大丈夫だからさ。そんなことしたら逆につくしが困るだろう?」

「そうよ、加代・・・あなたを責める気なんて全然ないわ。事故があった事は災難だったと思うけど、あなたの考えは決して間違ってないわ。
つくしみたいに家から出さなかった子に世界のことを教えようとしてくれたんでしょう?事故が起こらなければ、それはとても良い
勉強だったと思うのよ。だから安心なさい・・・私もさっきはつくしを見て大騒ぎしてしまったけど、もう落ち着いたわ」

母さんの言葉にポロポロと涙を流してるけど、その身体にはまだあちこちに包帯と絆創膏が見える。
ここでも母さんは加代の身体をさすりながら、落ち着いたと言いながらもハンカチで目元を押えっぱなしだった。


「奥様・・・ありがとうございます。あまりにもつくし様が塞ぎ込んでおられたので外にお連れしたかったんです。お可哀想で・・・」

「つくしがそんなに?それほど嫌なのかしら・・・少し急がせすぎたのかしら・・・」

「高城様はかなり強引なところがございますので、つくし様は戸惑っておいでなのです。まだ、そのようなお気持ちにはなっておられ
ないので見ていてもお気の毒ですわ。まだ19歳でいらっしゃるし、色んなご経験が少ないので、ご両親のお考えもあるんでしょうが
ご本人のお気持ちを一番にお考えいただけたらと思いますわ」

さすが加代・・・こんな時でもさりげなく「高城引き離し作戦」に出てる。その言葉に少し笑った俺を見て、加代が咳払いをした。


***


加代の面会後、母さんはホテルに戻った。
俺がここに寝泊まりしていることも、もう何も言わなかった。つくしの状態から何も起こらないだろうと思ったからかもしれない。
つくしが目覚めればすぐに教えて欲しいとの言葉を残して病院を出て行った。


誰もいなくなった部屋で、俺はいつものようにつくしの手を握ってベッドサイドの椅子に座る。
何度もつくしにキスをして髪を撫でて・・・まだ開かない瞼にもそっと唇を当てる・・・。

「つくし・・・もう5日目が過ぎたよ?早く起きないとね・・・日本に帰ってまた一緒に暮らそうよ。俺の部屋でさ、またつくしを抱き締めて
テレビを見るんだ。その後にベッドに寝転んで朝まで話すのもいいよね・・・ねぇ、つくし。早く目を開けなよ・・・」

頬を撫でながらこうやって話しかける。まだ握り返してくれない手だけど、両手で暖めるように包んだらつくしの声が聞こえてきそうだ。

類・・・来てくれたんだねって、そんな声が聞こえてきそうで耳を澄ました。
でも、聞こえてくるのは定期的な機械音だけ。静かな特別室には外の音も全部遮断されてるから静かすぎて恐怖だった。

気がついたらこのままつくしの呼吸が止まってしまわないだろうかと何度も気になって心臓に耳を当てる・・・そこには小さく脈打つ
音がちゃんと聞こえてる。それを確かめないと俺自身が生きている気がしなかった。

どうやったら目覚めてくれる?
何をしたら笑顔を見せてくれる?・・・眠り姫は王子様のキスで一度でちゃんと起きたのに・・・。


「つくし・・・19年前も寝てるつくしを笑わせたのは俺だったよ?だから・・・もう一度笑ってよ」

ナースが見たら絶対に怒るだろうな。
俺は点滴に繋がれたままのつくしの身体を抱き起こして自分の胸の中に入れた。
力の入らない身体はすぐに俺に寄り掛かってくる・・・その顎を持ち上げてゆっくりと顔を近づけた・・・。

そして長いキスをした。


ピクッと何かが俺の腕に刺激を与えて、ハッとして唇を離したら・・・つくしの指が微かに動いていた!

「つくし・・・つくし?ねぇ、もしかして、目が覚めたの?・・・つくし?」

顔を覗き込んだ瞬間、つくしの眉根が歪んだ!!
そして本当に薄くだけどその目を開けた・・・つくしの黒い瞳がほんの少しだけど俺を見ようと動いたのがわかった!

「つくし!つくし・・・わかる?ねぇ、わかる?」

歪んだ眉はすぐに元に戻って微笑むような優しい笑顔を見せてくれた・・・やっと聞けた最初の言葉は・・・




「類・・・大好き」

「つくし・・・お帰り・・・待ってたよ」


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Comments 6

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2017/10/20 (Fri) 11:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

凪さん、こんにちは🎵

朝からダースベイダー……重たいわ(笑)
記念の100話で目覚めていただきました!

ねー!素敵に起こされたいよね~❗腕の中ですってよ♥️目が覚めたら隣に…そのまま気絶するわ!

やっと、ゴールが見えてきたから凄く嬉しい…!こんなに長いのは私には無理だと反省しました(笑)

次は短編にしよ…。

2017/10/20 (Fri) 12:37 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/20 (Fri) 13:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!ありがとうございます!

100話なんて予定外ですよ~!!私はよく書いても50話の女・・・それ以上はもうお話が纏まりません!
いつの間にかこんな事になってしまった・・・二度とないと思います。

って、言いつつ実は総ちゃんのお話がこのままいくと軽く50話越え・・・予想では80辺りかと。
10月で終わる予定でタイトルつけたのに。

で、このお話が後はエンディング迎えるだけになりました・・・!
梅雨時に始まり、途中休みはありましたが、もうすぐ冬・・・冬も暖め合う季節ですな・・・!
頑張ろう・・・(笑)

2017/10/20 (Fri) 21:48 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/20 (Fri) 22:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

凪子様!ど・・・どうしたの?

何も失礼なんてなかったんだけど(笑)びっくりしちゃったよ!
いいのよ?ダースベイダー好きだもん!
ただ、目覚ましになるのか?って笑ってしまった。

気持ちよく起きられるのかなぁ・・・!そう言えば、子供が家にいたときは目覚ましかけてたなぁ!
懐かしい・・・いまではお弁当すら懐かしくて、凪さんみたいに作れば良かったって反省してます。

100話・・・二度とないから!!

2017/10/21 (Sat) 01:30 | EDIT | REPLY |   

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