FC2ブログ

plumeria

plumeria

あきらに調べてもらった成城のマンションをいくつかあたったが持ち主は西門ではなかった。
そしてここが最後のマンション・・・その入り口に立って目的の部屋がある最上階を眺めていた。いかにも考が好きそうな派手な仕様だ。
今までで一番あいつが選びそうな物件だと思いながらエレベーターでその部屋に向かう。

最上階は4世帯しかなくて廊下も特別広く感じた。わざわざ置かれた調度品やホールにまで談話室のような場所があり花が生けてある。
俺から見たら季節感のない花を選んであるから興ざめするんだが、こんなマンションの管理人は豪華に見せられたらそれでいいんだろう。
少し緊張しながら考の部屋かもしれないそのドアの前に立った。
この中にもし2人でいたら・・・俺は冷静に話が出来るだろうか。そんな事を思いながらインターホンを押した。


でも中からの応答はなかった。
留守なのか、考がわざと出ないのか・・・当然セキュリティ対策として俺の姿は中から確認が出来るだろうからな。
それなら駐車場で考の車を確認するか、と俺が向きを変えて下に降りようとしたときに擦れ違ったのは隣の住人だった。


「あら!あなた、この前のお嬢さんは大丈夫だったの?病院に連れて行ったんでしょ?」

「・・・え?病院ですか?この部屋にいた女性が?」

「えぇ、夜遅くに慌てて抱えて出ていったでしょう?ごめんなさいね!ちょうど出掛けようとしてドアを開けたらあなたがお嬢さんを
抱きかかえて降りて行くとこ見ちゃったのよ。声をかけようと思ったけど、お母様もいたみたいだし、大慌てだったからもう声もかけ
ずに・・・申し訳なかったわね!・・・って、あなたよね?その時の彼って・・・」

俺はこのおばさんの肩をガシッと掴まえると、そこの廊下の壁に押さえ込んだ!
おばさんが真っ赤な顔で俺を覗き込んでる・・・あきらのような技は使えねぇけど、ここでこのおばさんから情報を得るしか方法が
なかった俺は至近距離で見つめ返してやった。

「その時の話・・・聞かせてくれないかな。俺はそいつじゃないんだけど、その彼女を探してるんだ。何があったかわかる?」

「えっ!違うの?そ、そう言えばもっと茶髪だったかしら!そうね、何だか大怪我したみたいで男の人も血だらけだったわよ?
女の子は意識がなかったんじゃないかしら。ぐったりしてたし、腕から血が凄くてね。だから昨日はビルの管理センターから清掃が
入ってこの辺りを全部綺麗にしていったの。凄かったんだもの・・・!」

「その時に何か話してなかった?その親子・・・どんなことでもいいんだけど」

「お、お母様の方が別荘に近い病院に行こうって言ってらしたような・・・でも、場所までは聞こえなかったわよ?別荘持ってるんだって
思ったくらいで・・・で、どこかの病院に電話してるときにもうエレベーターのドアが閉まったの。それぐらいかしら」

「ありがとう!助かったよ・・・ちなみに、その母親って着物姿だった?」
「えぇ!そう言えば濃紺の素敵な着物だったわ!いいお家の奥様だってすぐにわかったもの」

間違いない!ここに来たんだ・・・!
つくしが考に連れられてここに来たのは間違いない!そして、何が起きたかはわからないがつくしが怪我をして考に運び出された!
どうしていいかわかんないあいつはお袋を呼び出したんだ!

問題はここからどこの病院に行ったかだ・・・別荘があるっていってもどこの別荘だ?家元のなのか家元夫人のなのか・・・!
もしくは西門流が所有するものも入れたら都内でもその周辺でもいくらでもある。もしかしたら俺が知らない考専用の別荘なら
知るわけがない!

それよりも意識がなくなるほどの怪我ってのはどういう事だ?だからお袋はあんなにも疲れきっていたのか?
西門の人間が傷害事件を起こしたなんてマスコミにでもバレたら一大事だからか・・・つくしの怪我よりも考のしたことを隠すほうが
お袋にしてみたら重要だったんだろう。

車に戻ったが今度は何処に行けばいいのかわからなかった。
とにかく一度マンションに戻って西門の別荘のチェックからだ・・・俺は西門で協力してくれそうな人物がいないか考えながら車のエンジンをかけた。


********


産婦人科の先生が今度は説明に来てくれた。
私は安定剤のせいか少しぼんやりしていて、寝たままの状態で説明を聞いていた。

「おそらくですが、まだ2ヶ月に入ったばかりかな?6週目ぐらいだと思いますよ。本当にこのぐらいの時は流産しやすいから気を
付けないといけませんね。ご自分では気が付かなかったんですか?」

「はい・・・そう言えばって感じでした。忙しくしていて・・・」

「今使っているお薬も問題はないんですが、長く使わない方がいいんですよ。まだ動悸とかしますかね・・・大丈夫そうなら今夜だけ
にして明日は外しましょう。とにかく安静にして興奮しないようにして下さい。そんな大怪我をしたわりには子宮内出血もないし
今のところは大丈夫ですけどね。それでは、妊娠届けを書きますからこれを区役所に持っていって母子手帳を受け取って下さいね」

「ありがとうございます・・・あの!先生・・・」

病室を出ようとしたお医者様にもこの事を誰にも言わないようにとお願いしたくて呼び止めた。

「すみません・・・ここに連れてきた人は父親でもないし、関係ない人なんです。どうか、この妊娠の事は言わないで下さい!
お願いします・・・あの人達に知られたらこの子を守っていけないんです!お願い・・・誰が来てもこの事は内密にして下さい!」

私の必死な顔はとても妊娠がわかった幸せな女には見えなかったんだろう。看護師さんもお医者さんも顔を見合わせていた。
どう思われてもいいんだけど、考ちゃんだけには知られたくないその一念で動かせる方の手を伸ばして拝むように頼んだ。
苦笑いの2人は「わかりました」と、私を哀れむような眼で見ながら約束をしてくれた。


「そうだわ、牧野さん。はい、これ・・・充電完了よ。お返しするわね」

「ありがとうございます・・・!助かりました」

手元に戻ってきたスマホを開けて見ると、そこにあるのは総二郎からの着信。件数は42回・・・どれだけ鳴らしたんだろう。
トークも数件・・・いずれもどこにいるんだっていう内容だろう。既読をつけないようにそれは見ずに閉じた。
総二郎はきっと必死になって探しているはず・・・仕事にも影響が出てるかもしれないと思うと心が痛んだ。

これで総二郎が仕事に集中出来なかったら、彼に無断で考ちゃんに会いに行った私のせい・・・これ以上家元との溝が深くならなければいいけど。


その時に部屋をノックする音がしてガチャと開けられた。
入ってきたのはやけに沈んだ顔の考ちゃんだった・・・私は慌ててスマホを枕の下に隠して、考ちゃんとは反対方向に顔を向けた。

「つくし・・・大丈夫?医者の説明、聞けた?」

「考ちゃん・・・お医者様からの説明なら聞いたわ。どうやらこの左腕は後遺症が出るみたいね。もうお茶は出来そうにないわ」

「ホントに?!マジか・・・時間が掛かったからかな。でも、つくしはそんなに西門の仕事を頑張らなくてもいいんだし!医者ならここ
以外も探して絶対に治してやるよ!気にすんな・・・な!つくし」

考ちゃんはまるで自分が私を襲ったことですら忘れたかのように、そして動かない私の腕が大した怪我でもないかのように言葉を続けた。
それが許せなかった・・・頑張らなくてもいい仕事?そんな風にお茶の事を思う考ちゃんはすでに茶人ではない・・・!


「考ちゃん・・・私がこれを警察に言ったらどうなると思う?間違いなく考ちゃんは傷害罪だよ?」

「は?何言ってんだ?先に俺を殴りつけたのはつくしだろ?俺の腕にだって傷は残ってるぜ?」

「そんなもの何とでも言えるわ。正当防衛よ・・・その前の暴行罪からも逃げられないわよ・・・」

「・・・誰が見てたんだよ!それに婚約者だ・・・暴行罪になんてなるかよ!」

「そう・・・誰も見てないの。だから、私にもないけど考ちゃんにも証拠なんてないのよ。それでも考ちゃんは西門の息子って事で
マスコミが騒ぐわ。私にはその方が都合がいいの・・・婚約者だなんて言うけど夫婦間だって暴行罪はあるのよ?」

わざと考ちゃんが怒るように仕向けて言葉を選んでいく。案の定、考ちゃんは顔を真っ赤にさせて怒り出した!

「お前の方が俺の事をバカにしてちゃんと見ようとしないからだろう!親も家もない女をもらってやろうって言ってんのに偉そうに言うな!
いつまでも総兄のことばっか追いかけやがって・・・!あいつこそつくしを弄んでんだよっ・・・眼を覚ませよ!」

「・・・・・・!」

考ちゃんの大声はナースセンターにも届いたんだろう、バタバタと足音がして看護師が数人入ってきた。そこで私はわざと看護師に
助けてくれとサインを出した。これが目的だった・・・考ちゃんを暫くここに来させないようにするためにはそんな雰囲気に持っていけばいい!

「どうかしたんですか?牧野さんは安静にしないといけないんですよ?ここで暴れるならお帰り下さい・・・!見てわかりませんか?
まだ、起き上がれないんですよ?さぁ、部屋を出て行って下さい!」

「なんだと・・・?!ここは俺の家が金払うんだよ!文句があるのか!」

「そういう問題ではありませんよ!病人に対して大声上げるなんて・・・!治療の妨げになりますのでお帰り下さい!」

考ちゃんの勢いにも負けずに看護師さんが私の前に立ちはだかって庇ってくれた。演技・・・というわけでもなかったけど、私は
震えながら看護師さんの白衣を握り締めた。

「・・・くそっ・・・!また来るからな・・・!よく自分の立場ってもんを考えとけ!」
「・・・・・・」


考ちゃんは看護師さん達を睨みつけながら私の病室を出て行く・・・足音が遠くなって聞こえなくなるまでドキドキしながら耐えていた。
そして、やっと静かになったときホッとしてベッドに沈み込んだ。多分、考ちゃんの性格だと暫くここには来ない。
昔から口で言うほど威勢がいいわけでも勇気があるわけでもなかった。どっちかって言うと気が小さい子だったから。
看護師さんに礼を言って、暫く寝るからと1人にしてもらった。


私はスマホをとりだして彼に連絡を入れた。
今はこの人しか頼れる人がいなかったから。


「もしもし・・・ごめん、お願いがあるの。今から言うところに来て欲しいの・・・花沢類」



14919180500.jpeg
関連記事

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/10/25 (Wed) 13:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます。

そうそう!このおばさん、総ちゃんに壁ドンなのっ!!
関係ないけど娘が男子に壁ドンされたって言ったことがあるんですよ!
それでね、えっ?!って思ったら、その男子に言われた言葉が・・・「あ!間違えた」だったんですってー!!
間違うって・・・なに?(笑)

電話の相手は想像どおり・・・でも、これは100%総つくですっ!はい!

2017/10/26 (Thu) 08:19 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply