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plumeria

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花沢類に頼むのは卑怯だとわかっていた・・・この人が私の頼み事なら何でも聞いてくれる事を利用しているんだ。
だからはっきりとそれを口にした。私はあなたを利用していると・・・それでも、やっぱり花沢類は動いてくれた。

西門から逃げたいと言う理由に、花沢類は何も言わない。
そこに総二郎の名前を出さない私の事をおかしく思っているはずなのに、黙って病院の退院手続きを進めてくれた。
担当の看護師は慌てたように部屋に飛び込んできて、西門への連絡はどうするのかと聞いてくるが全部断わった。
後のことは彼に手配してもらうから心配はないと・・・病院の紹介状とこの部屋の精算を急いでほしいと頼むと困ったような顔で出ていった。


「牧野・・・移動はどうしようか。飛行機は大丈夫かな・・・車でもいいけど、どちらにしてもあまり人目につかない方がいいんでしょ?
行き先はどこがいい?牧野の行きたいところに連れて行ってあげる。パスポートがないなら日本だけどね」

「本当にありがとう。出来たら東京から遠い場所がいいな・・・何も考えずにのんびり出来るところ。でも、そんなところがあるかしら。
この怪我を抱えていかないといけないのにね・・・」

「・・・病院は探すよ。そこでも隠れたいならしっかりガードしてあげる。俺が守ってあげるよ」

守ってあげる・・・なんて嬉しい言葉だろう。
総二郎もいつも言ってくれたね。なのにこうやって違う人に守られる私はすでに彼を裏切っているのかもしれないね・・・。


暫くして医療事務の担当者が部屋に入ってきて、今後の治療方法と現状の病状説明書、そして部屋の精算書と一通の証明書を
私にくれた。その証明書は妊娠届けだ。それだけは花沢類に見せないようにそっと鞄にしまった。
そのほかの書類は封を開けて類が確認していた・・・ただ、病状説明書はすごく怖い顔をして読んでいる。

すでにお医者様から説明を受けていた私は今更読む気にもならないから、それを読んで考え込んでる彼を黙って見ていた。

「・・・結構酷いじゃん。ちゃんと治さないと一生困ることになるよ?まずはいい医者がいるところを探して、その近くのうちの別荘が
避難場所だね。じゃあ、精算してくる。・・・牧野は腕が動かせないからそのままにしてて?荷物、少ないんでしょ?俺がやるよ」

「・・・ありがとう。花沢類、必ず返すから!ホントにありがとう・・・」

「ん・・・気にしないで」


*******


<side類>
牧野の退院の手続きを取るために一度病室を出て、ナースステーションで話を聞いていた。こんな事を自分でしたことがないから
どこで何をしたらいいのかなんて実は何も知らなかったから。

「精算は1回の会計でします。自動計算機があるから、そこにこのバーコードを読み込ませると機械で支払いが出来ますからね。
カードでも大丈夫ですよ。わからなかったら総合案内所がありますからそこで聞いて下さいね」

「ありがとう・・・行ってみます」

「・・・あ、牧野さん!・・・っの代理の方・・・えっと、お相手の方でいいんですよね?」

「・・・はい、それで大丈夫です」

この時に看護師が言う内容を推測してしまった俺は、咄嗟に「相手の男」のフリをした。もしかしたら、聞かない方がいいのかもしれない。
そう思ったけど何故か違う・・・と、答えられなかった。


「牧野さんに渡していますけど、妊娠届出書の空欄部分をご自分で記入して区役所に提出して下さい。それで母子手帳がもらえます。
ただ、牧野さんはしばらくは動けないかもしれませんからお父さんが行かれてもいいですよ?まだ入籍前なら代理人になりますが
委任状があれば母子手帳がもらえるはずです。それと、必ず次の病院でも安静にして下さい。まだ本当に妊娠初期ですからね、
興奮させないで安静にして下さい。この前も西門さんがここで暴れて大変でしたから・・・事情があるみたいですけどお大事にね。
あの腕でお子さんを育てるのは大変かもしれません。お父さんが一緒になって頑張って下さいね」

「・・・はい、わかってます」

さっき牧野が一通だけ鞄に入れたのがそうなんだね?


牧野のお腹に総二郎の子供がいて、俺がその子と牧野を連れて逃げるって事か・・・。
総二郎から逃げるんじゃなくて、西門から総二郎の子供を守りたいんだね・・・このままだと孝三郎がまた何をするかわからないから。
正直に俺を利用していると言った牧野は、これを決断するのにどれだけ迷っただろうね。

人が聞いたら酷い話だろうけど、それでもそんな役目に俺しか見つからなかったのは嬉しいよ。・・・ホントに俺はバカだけどさ。


牧野がこの後に描いたシナリオ通りに進めてあげる。
でも、俺も利用される側としてもっと先のシナリオを進めさせてもらうよ。そのぐらいいいよね・・・あんたの幸せな笑顔が見たいから。

病院の精算を済ませてから牧野の部屋に向かう。
今この時間、必死に牧野を探す総二郎のことを考えていた。


**********


花沢類が書類を持って部屋を出ていった・・・それを確認してからさっきの書類をもう一度鞄から出した。
片方の腕が思うように動かない・・・なんて不便なんだろう!右腕だけでその封筒を開くのは結構難しくて上手く開けられなかった。
封筒を破ってしまう感じでようやく開けて、中の書類を引っ張り出した。
本当ならもらったときに喜ぶはずの妊娠届出書・・・妊娠6週目、そう書いてあった。


「夫、または夫となる予定の人」・・・ここには何も書けない。そして「職業」・・・ここは無職だ。

なんて不安だらけの書類になるんだろう。こんな私がこの子を幸せになんて出来るんだろうか・・・そう思ったら涙が出るけど、もう引き返せない。
花沢類が戻る前にこれは鞄にしまおうともたもたしていたら、彼がドアを開けて入ってきた。びっくりして慌てて書類を隠そうとしたけど
すぐにそれに気が付いて、花沢類は私の手元に眼を向けた。
そこには少しクシャッとした書類がある。見せろと言われたらどうしようかとビクビクしたけど、何も言わずに私の荷物を纏め始めた。


「今、精算してきたから・・・それと、ここを出たら始めにあんたのアパートに行って必要なもの取ってこよう?着るものや日用品は
買えるけど、それ以外で印鑑とか何かの書類とか・・・よくわかんないけど保険証?っていうのかな・・・あるんでしょ?」

「・・・そうだね。気が付かなかったわ。ありがとう、花沢類」

保険証・・・そう言えば私はもう茶道会館を辞めているからそんなもの使えない。でも、切り替えるための書類もまだ西門からもらってなかった。
そんな状態で病院にかかることが出来る?考えたらいくらでも出てくる不安・・・込み上げてくる涙を必死で堪えた。


「泣きたいのならそうしたらいいよ。見てないことにしてあげるから・・・守ってあげるって言ったでしょ?」

「うん・・・ごめん、泣かないよ。大丈夫・・・何とか生きていけるよね!」

無理して笑ってみたものの、堪えきれなかった涙が一つだけポトッと落ちた。

大丈夫って言う牧野が一番心配だよ・・・?
優しい笑顔だけを向けて、その綺麗な眼を細めた。私と同じように花沢類の笑顔も少しだけ悲しそうに見えるのは・・・何故?



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Comments 2

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2017/10/27 (Fri) 12:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは🎵

懐かしい‼️(笑)地球へ!……だい好きでした!
今考えたら凄いストーリーだなぁ。

大人になったら赤いピアスしようと思ったものです!
あぁ‼️見たくなった!(笑)

で、この話…ど、どうする気なんでしょうね、私(笑)
ちょっと逃げたくなってます。……ダメよね?

2017/10/27 (Fri) 17:38 | EDIT | REPLY |   

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