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私のアパートから必要なものを持ってきてくれた花沢類は、そのまま今度は花沢邸に向かうと言った。そしてそこから私をどこかに
隠してくれるみたい。その行き先まではまだ聞いてなかったけど、任せるしかなかった私は類が言うまで黙っておくことにした。

「牧野の新しい病院も手配したからね。そこまでは車で行くと大変だからヘリを飛ばすね。少し揺れるけど心配しなくていいよ。
もちろん俺も行くから・・・それと、向こうで世話をしてくれる人を連れて行くね。その人は車で後から来るからそれまでは向こうの病院で入院することになる。じゃあ、おいで・・・牧野」

「うん・・・ありがとう」

車の助手席から降りる時も花沢類が抱きかかえてくれて、広い庭の真ん中で待機しているヘリコプターまで運んでもらった。
西門も敷地は広いんだけど植木や石庭が広がっているからこんな事は出来ないんだけど、類のお屋敷は庭が広すぎてこんな事も
出来るのね・・・改めてすごい人達だと感心してしまう。花沢類のプロポーズも断わって正解だったかも・・・。


花沢家のヘリに乗ると「少し待ってて」と言う類はヘリの横でどこかに電話をしていた。どうやら会社みたいだった。
花沢物産の専務をしているんだから忙しいのに、平日の今日を私なんかのために使って良かったのかしら・・・自分が呼んでおきながら
そんな心配をしてしまう。自分勝手・・・そう思われても仕方なかった。



「お待たせ!実は今から行くところでちょうど仕事があってさ!病院に入ったら俺はその仕事場に行くね・・・夜には戻るからさ」

「・・・ううん、私の事はこれ以上何もしなくていいわ。あそこから出してもらって病院を見つけてもらえたんなら後は自分で何とかする。
花沢類は自分のお仕事をして?私のせいで仕事が遅れたらいけないから・・・」

「そこで仕事するって言ってるでしょ?病人は変なこと考えないで言うこと聞いときな・・・じゃあ、出して」

操縦士さんにそう声を掛けると、ヘリはものすごい音を出して花沢邸の庭から垂直に浮かんでいった。私はヘリそのものが初めてで
怖かったから少し震えていたみたい。花沢類が私の右腕をそっと握ってくれてニコッと笑った・・・とても優しいいつもの笑顔だ。

「うちのパイロットは腕は確かだから心配ないよ?それに今日は天気も問題なさそうだし・・・少し寒いから向こうに着いたらコートを
着てね。用意してるから・・・」

「寒いところなの?・・・あの、どこなんだろう。聞いてもいいかな・・・」

「・・・北海道だよ」


北海道・・・?随分前に西門の家族旅行で行った北海道・・・?
中学からは学校が忙しくて、みんなの予定も合わなくて行かなくなったけど、いつか行ってみたいと思っていた北海道の向日葵畑・・・。
そう言えば総二郎がいつか行こうなってってくれたっけ・・・まさか1人であの土地に行くとは思わなかったな・・・。
そんな事を考えながら少しだけ首を動かして窓の下を見てみた。ヘリだからそこまで上空に行かないから、紅葉が色付き始めていて綺麗・・・。
確かにこのヘリは北の方に飛んでいるんだとわかった。


数時間で北海道には来たみたいだけど、花沢類がパイロットに指示していたのは札幌ではなく旭川の方だった。
北海道でも少し上の方・・・ここで私は治療をするんだね。まだ動かない左腕をさすりながら間もなく着く新しい土地に不安を覚えた。

「心配・・・?ここの総合病院に腕のいい外科医がいるんだって。場合によってはもう一度手術をするかもしれないけど、その方が
いいよね?うちの持ってる別荘がちょうど名寄の方にあるからさ、そこに暫く隠れておいたらいい。好きなように使っていいからね。
もう何年も使ってないから、今連絡して綺麗に掃除させてるんだ。まぁ、牧野はしばらく入院かもしれないから、それまでにはさっき
話したお手伝いさんが到着すると思う。その人が来るまでは俺が北海道で仕事をするから傍にいるよ」

「私のためにわざわざここにいるんじゃないの?本当にこっちで仕事があるの?」

そうだよ・・・って軽く返事してる。

ゆっくりと降下体制に入ったヘリは真下に見える大きな病院のヘリポートに向かっている。そこには数人の病院関係者がすでに待機しているようだった。
そして無事に降りると、また花沢類が抱き抱えて降ろしてくれる。すぐ側まで持ってきてくれた車椅子を断わって、そのまま病院の中へと入って行った。



とうとう、東京を離れてしまったんだ。
総二郎が今どこで何をしているか・・・私の事を少しでも探してくれているんだろうか。
別の人に頼んでまで逃げたくせに、私の心はいつまでも彼を追い求める・・・いっそ、今抱かれているこの腕に縋ってしまえばいいのに・・・。
花沢類には全部気持ちが伝わっているような気がする・・・だから、抱かれているこの腕の中で身体中が固まってしまうのを感じていた。


*******

<side類>
牧野をヘリに乗せてから少し待つように話して、一本の電話をかけた。相手は・・・総二郎だ。
すぐに出ればあいつにとってはラッキーかもしれない。

この一本の電話に出るかどうかで、俺は今後の自分の行動をどうするのか・・・一つの賭けをしていた。
数回のコールで総二郎が電話に出た。少し残念・・・次の問題は総二郎の反応だった。


「・・・総二郎、今、何してんの?」

『俺が聞きたい・・・お前は今どこにいる・・・!つくしはどこだ!』

「知ってるんだね・・・?じゃあ、教えてあげるから今日の夜に会おう。この前の俺のマンションに8時でどう?」

『つくしを連れてくるのか?まさか・・・本気でどこかに連れて行くんじゃねぇよな!』

「本気だよ?勘違いしないで・・・牧野が俺を呼んだんだからね。とにかく詳しいことは夜に・・・」


何か叫んでる総二郎のことを無視して一方的に電話を切った。
やっぱりもう全部知ってるんだね。牧野が怪我をした事も、あの病院にいたことも、そして俺が迎えに行ったことも・・・。
ほとんどが同時進行だったのに、ほんの少ずつ俺たちが早かったんだね。

でも、これで俺の気持ちは決まったよ・・・牧野との最初で最後のデートがこのヘリコプターだなんてね。
振り返ってヘリの中を見たら牧野が不安そうに俺を見ていた。そんな顔はデートには似合わないよ?それじゃなくても行き先が
デートコースじゃないんだから。


さぁ、俺が牧野を独占出来る時間はあと少しだ。
急いでヘリに乗ると牧野の横に座ってパイロットに出発の指示を出す。ゆっくりとあがっていくヘリコプターに少し緊張気味の牧野。
だから動かせる右手を握ると少し顔を赤くして俺と目を合わせた。ここで牧野は行き先を聞いてきたから北海道だと教えた。
ちょっとだけ身体を動かして窓の下を見ている牧野の隙を見つけて、俺は鞄からあるものを抜きとった・・・病院からの書類だ。

ごめんなって心の中で呟きながらこっそりと自分の服の内ポケットにしまい込んだ。同時にアパートの鍵も・・・。
気が付いたら大騒ぎするんだろうけど、俺には言わないだろうからね。でも・・・これがないと牧野だけじゃなくてあいつも困るんだよ?
親になるのは女性だけじゃないからね。

男にだって知る権利も育てる義務もあるんだよ?・・・だから1人でなんて頑張らなくていいんだ。


僅か3時間半で目的地に着いて、俺は車椅子に座らせずに病室まで牧野を抱いていった。
本当なら手を繋いで歩きたいぐらいだけど、それが無理ならこのくらいいいよね?まだ、緊張している牧野を抱き締める腕の力が強くなる。

この後すぐに東京に引き返さなくちゃいけない・・・総二郎との約束をしたからね。


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Comments 4

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2017/10/29 (Sun) 12:31 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/29 (Sun) 12:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!こんにちは~!

あははっ!!何回もすみません!これは総つくだからーっ!!
類くんはこの中ではサブキャラだからーっ!!

また私の悪い癖・・・サブキャラが美味しいところを持っていくパターン・・・。

総二郎、仕方ない・・・風呂に入れるか(笑)

2017/10/29 (Sun) 14:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: るぅぅぅぅ~いぃぃぃぃ~!!

えみりん様、こんにちは。

ちょっとっ!タイトル見て噴き出しましたよっ!
だからね?これは総ちゃんのお話なの・・・総ちゃんの事を見てあげて?
と、言いながら次も類を全面に押し出している私(笑)
花沢邸ってすごーい・・ヘリポートがあるんだよ?って住宅街にはいけないんですよね?
読んでる人は気にしないように・・・妄想だから。

さぁ、総ちゃん、のんびりしてないで行くわよっ!!
(てめぇが足止めしてんだよっ!by総二郎)

2017/10/29 (Sun) 14:38 | EDIT | REPLY |   

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