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類が病院からつくしをどこかへ連れて行ったのまではわかったが、その後の類の行方がわからない。
俺からの電話をとるとは思えなかったから、花沢物産の方へ電話をかけると今日は特別休暇を取っているという。その理由も当然
教えてはもらえなかった。
花沢の屋敷でも同じだ・・・類が口止めしているのか知らないとあっさりと断わられた。

とにかく類が行きそうなところ・・・必死で考えたが、普段から家に籠もりがちなあいつの行きそうなところなんて思い浮かばない。
それに最近はフランスにいたんだし、余計にあいつの行動範囲がわからなかった。
鎌倉の病院を出て数時間、都内には戻ってきたが完全につくしを見失った気分だった。孝三郎のような何かをされるという恐怖はなかった。
だけどまったく違う恐怖があった。

類の優しさがつくしを変えてしまうかもしれない・・・考に襲われたつくしは西門という家自体を拒否するかもしれない。
いくら俺が西門を出たと言ってもつくしがそれをどう受け止めるかなんてわからない。

そんなつくしの傍にいるのが・・・あの類だなんて!

その時に鳴った電話。手に取ってみたら、発信者は類だった!
まさかあいつの方から電話をしてくるとは思ってもいなかった!慌てて通話をタップしたらすごい雑音の中で類の声が聞こえた。


『・・・総二郎、今、何してんの?』

「俺が聞きたい・・・お前は今どこにいる・・・!つくしはどこだ!」

『知ってるんだね・・・?じゃあ、教えてあげるから、今日の夜に会おう。この前の俺のマンションに8時でどう?』

類の方から会いたいという言葉が出た。教えてあげるってなんだ?俺の知らない何かをすでに類が知っていると言うことか!
それ自体が気に入らなかった・・・つくしを連れて行かれただけでも俺の頭は混乱しているのに、怪我をしたって事以外でも類は
何かを知っているような口ぶりだったから。

「つくしを連れてくるのか?まさか・・・本気でどこかに連れて行くんじゃねぇよな!」

『本気だよ?でも、勘違いしないで・・・牧野が俺を呼んだんだからね。とにかく詳しいことは夜にね』

「・・・そんなわけがないだろうっ!どうしてつくしがお前を呼ぶんだ・・・おいっ!類!おいっ!」


類は自分の言いたいことを言って電話を切っていた。
でも、あの後ろで鳴り響いていたのはヘリの音じゃねぇか・・・?まさか、あいつ・・・東京じゃなくてどこか遠いところに怪我人を連れて行くのか?
それが・・・この土地を離れたいってのがつくしの願いなのか?

一方的に切られた電話を思いっきり助手席に投げつけて、ハンドルに頭を打ち付けた!
今の俺には類を待つことしか出来ない・・・だけど、つくしが俺以外の男と逃げるように去って行くなんて・・・!そうさせたのが西門かも
しれないが、まるで何も頼られていないかのような気分になって情けなかった。


*******


「これが鎌倉の西山総合病院からの紹介状と病状報告書です。もらった書類はこれで全部ですが、向こうを退院してここまで
ヘリで移動していますので念のため傷口なども確認していただけますか?今まで寝たきりだったのに結構動かしたものですから」

花沢類が旭川にある総合病院の外科医に私の書類を手渡した。
その中身を見ながら担当医の中川先生は少し険しい顔をする。何枚もある画像診断のデータをパソコンの画面で確認していた。
当然そこに花沢類がいたら私の妊娠がわかってしまうかもしれない。先生がその言葉をいつ出すのか気になって落ち着かなかった。

「牧野・・・少し、会社に電話入れないといけないから席を外すね?よく説明を聞いておいてね?後で教えてよ」

「あ、うん!わかった。ごめんね・・・お仕事忙しいのに」

「気にしないで・・・」って小さい声で囁いて類は診察室を出て行く。バタンとドアが閉まる音を確認したら大きな溜息をしてしまった。
その後すぐに、画面と睨めっこをしている先生に話しかけた。

「先生・・・お願いがあるんです。あの・・・彼に、花沢さんには私が妊娠していることはまだ言わないでいただけますか?誰にも
まだ話してないんです。急に知ったら驚いてしまうから・・・そのうちちゃんと説明しますから。お願いします」

「・・・わかりました。花沢さんが父親ではないということで宜しいんですね?それならこちらからは彼にお話しすることはありません。
ただ、それよりも少し入院が必要ですね。緊急でオペをされていますがもしかしたらもう一度したほうがいいかもしれない。
このままだと不自由でしょうし、歳をとってからはもっと動かなくなる。若い今のうちにきちんと治療しましょうね。人生は先がまだ
長いですよ?お子さんが生まれるなら尚更です」

「やっぱり、完治は難しいんでしょうか。細かい作業はもうできませんか?」

向こうの病院では諦めるように言われたこの質問をこの先生にもしてみた。結果は同じかもしれないが、僅かでも望みがあれば
嬉しい・・・その奥にはまたお茶をしたいという気持ちが少なからずあった。
総二郎のことを感じられる瞬間だから・・・せめて1人でもいい。ちゃんとお茶を点てて総二郎を想っていたい・・・小さな希望だった。


「そうですね。どこまで細かい作業をお望みなのかはわかりませんが、上手くいけばほとんど前と変わらない生活が出来るようになるでしょう。
それには機能検査と再手術が必要かもしれません。取り敢えず、入院の準備に入って下さい」

ちょうどその時に花沢類は戻ってきた。
そして私が入院の事を話すとうんうんと頷いて、看護師さんに頼んで特別室を準備してもらっていた!


「ちょっと!花沢類!ここからは自分でちゃんと精算するから・・・だから特別室なんていらないわ。一般病棟でいいよ・・・。
少しぐらいは持ってるから、これ以上は甘えられないよ」

「べつにいいじゃん!それに見舞いに来るのに俺が嫌なんだよね・・・他の人がいるの。だから、これは俺の我儘って思ってて?
それならいいよね?」

嫌だと言ってもお構いなしてどんどん話を進めていって、とうとうここでも特別室に入ることになった。そして検査がこの後続く私の
代わりに色んなものを病室に準備している。まぁ、ほとんどが花沢類に言われて嬉しそうに動いている看護師さん達によるものだけど。

そして夕方近くになって花沢類は仕事があると言って病院を後にした。
明日もまた来るよ・・・そう言っていつもと変わらない笑顔で手を振る。私も類に右手を振って笑顔を作った。

「何かあったら必ずナースコール押して助けてもらうんだよ?あんたの悪い癖だからね?1人でどうにかしようったって無理な時は
あるんだから・・・周りの人に助けてもらいなよ?俺が来るまでね・・・」

「うん・・・今日は本当にありがとう。私1人じゃ何にも出来なかったよ・・・頑張るからね!花沢類!」

「無理しないで?時間はたっぷりあるよ。ゆっくり治そう・・・それじゃあ」


パタン・・・とドアが閉まるとシーンと静まりかえる部屋。
窓の外は全く知らない風景。少し冬っぽい寂しい色合いの景色だった。

「はぁ・・・こんなところまで来たんだ。今朝はまだ鎌倉だったのにね。本当にすごいわ・・・花沢類ったら」

そんなことをブツブツ言いながら鞄を引き寄せてお財布を取ろうとした。

「あれ・・・?書類、どこ?」


私の鞄の中に入れていた妊娠証明書がない!
ガサガサっと鞄の中を漁るように探したけどやっぱり封筒がなかった・・・どこでなくしたんだろう!
またここで発行してもらえるんだろか・・・それとも、これは産むなってことなの?

書類までもが私から去って行くような気がして怖い・・・この子が望まれていないような気がして身体が震えた。


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Comments 2

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2017/11/01 (Wed) 15:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は♥

そうなの・・・類が泥棒したからねぇ。って気が付かない方がどうかしてるよ?つくしちゃん!
鞄はもっと中身が見えないものにしないと・・・私なんかこの前、鞄にスマホ入れてて大変なことが!
会社の休憩室でしたけど何故か電源がオンになったまま画面が見えてて(笑)その時の画面が自分のブログの
トップ画面でした。[Pas de Quatre]・・・どっひゃーっ!!って思いました。
もちろん開いてましたので見ようと思えば見える・・・誰も見なかっただろうなっ!

慌てて電源切りました。なんでついたままだったんだろう・・・謎だわ!

2017/11/01 (Wed) 22:38 | EDIT | REPLY |   

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