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病室に飛び込んできたお母様はいつもとは少し違って見えた。
外出するときはいつも凄く素敵にコーディネイトして完璧にしているのに、今日は少しスーツと靴が合ってないみたい。
それにバッグもいつも色を合わせてるのに、ちょっとちぐはぐな感じがした。
それは類も感じたみたい・・・少しだけ顔を見合わせて2人でクスって笑ったけどお母様は気が付いていなかった。

それまで繋がれていた類の手はこの時ばかりは外れてしまう。私もその手を慌てて布団の中に戻した。

「つくし・・・まぁ、本当に眼を開けてるのね・・・!良かったわ。本当に良かった・・・何かがあったらどうしようかと思った・・・」

「お母様・・・ご心配かけてごめんなさい。あの・・・加代さんを怒らないでね?」

「えぇ・・・もちろんよ。この傷はちゃんと綺麗になるかしら・・・額に傷なんて女の子なのに!そうなったら日本で最高の形成外科医を
探しましょうね!それにこの打ち身も・・・どこか痛くないの?いつ頃から食事が出来るのかしら・・・!説明はあったの?」

お母様は私の顔や身体を触って傷が残らないかを心配していたけど、私はあの瞬間の光景を思い出すとこんな傷なんて問題外に思えた。
少々痕が残ってもいいとさえ思った。それを口に出すと怒られそうだからやめておいたけど。
そして、一度にいくつもの質問をするけど、それに答えられるほどの元気はまだなくてお母様の手を握り返すのが精一杯だった。
そんな私の表情を見てすぐに気が付いた類が、お母様に優しく手を差し出して私から離してくれた。


「母さん、つくしはまだ眼が覚めて間がないのでそんなに話は出来ませんよ?それに精神的なショックがあって寝ることが出来ない
ようです。日本に戻ったらカウンセラーをつけてケアしなくてはいけませんね。その手配をお願い出来ますか?」

「そ・・・そうね!そうだわ・・・こんな酷い目に遭ったんですもの。すぐにカウンセリングを受けましょうね」

「はい、お母様。でも、お母様を見たら安心したわ・・・また、会えて良かったって思えるの。だって、お母様とパリでのお買い物の
約束・・・まで果たせてないんですもの。来年は是非、一緒に行きましょうね」

「つくし・・・っ!えぇ、そうね、そうよね・・・!」

再び類の手を振りほどいて私に縋りついて泣くお母様・・・私が初めて見るお母様の涙だった。

それから暫くしたら疲れた私は眠くなってきて、お母様の言葉が聞こえなくなった・・・。
でも、久しぶりにお母様に手を握ってもらった・・・それはとても嬉しかった。やっぱり、私のお母様はこの人だけなのかもしれない。
たとえ血が繋がっていなくても、ちゃんと親子になれるんだ・・・身体中が痛いのに心は温かい。類がいて、お母様がいて・・・。


そんなことを思いながら私は眠ってしまった。


**


「つくしは寝てしまったようですね。少しいいでしょうか・・・お話があります」

母さんにそう声をかけてベッドサイドからソファーの方へ移動した。話とはもちろん、つくしの母親のことだった。
これをうちの両親に話さないといけない。つくしの父親についてはまだ判明していなかったから、すべてが解決してから高城美智子の
名前を出そうと、今日はその名前を出す気はなかった。

母さんは何事かと思ったのか、少し不安そうな顔で俺の正面に座った。


「つくしの事なの?何か後遺障害でも出るって言われたの・・・?」

「いえ、そのことではありません。つくしの事ですが事故のことではないんです。実は、つくしの母親が判明したんです」


「・・・・・・え?」

母さんの眼が大きく見開いた。そしてしばらくは動けなかったようだ・・・やっと手を動かせたのは数分間経ってからだった。
そして俺はもう一度つくしが寝ているのを確認してから話を進めた。

「以前からお話していましたよね、俺が調査をしていると・・・本当に偶然、20年前に花沢の家の近くで出産をし日本を出たという
女性を発見したんですよ。そして、その人とつくしの親子鑑定の結果がつい最近出ました。可能性は99%・・・本人も認めました」

「類・・・!その人に会ったの?・・・どこの誰なの!」

「それは本人から話してもらいます。それまでは待って下さい・・・実は父親についての説明がないんです。時間をくれと、今はその
回答待ちです。日本に帰ってからお話ししたいと思っています。これをフランスの父さんに話して、一度日本に帰国して下さい。
全員が揃ってから話し合いたいと思います。お願いできますか?」

まだその話が信じられないのか、ソワソワと手を動かして落ち着かない・・・。

何か飲めば少しは気分が変わるだろうかと、すぐ側の内線でこの病院のカフェにルームサーブスを頼んだ。
さすが道明寺の系列病院の特別室だ。すぐに最高級品のケーキとコーヒーが運ばれて来て、母さんはそのコーヒーを口にして
やっと一息ついたみたいだ。


「大丈夫ですか?驚いたでしょうね・・・初めて聞いたときには俺も衝撃でしたから」

「絶対にわからないと思っていたわ・・・だって、あの時も必死で調べたのよ?あなたは小さかったから知らないでしょうけど、弁護士が
人を雇ってまで調べたのに何も情報がなかったの。どれだけ施設に預けようかと悩んだわ・・・もし、この子の親が犯罪者とかだったら
どうしようかと思って。そうじゃなかったら養子であることを隠さなくても良かったのよ・・・」

「わかりますよ。母さんはつくしがどんどん可愛くなったんでしょう?手放せなくなったのに素性がわからないんですから、悩んだでしょうね。
今なら俺でもわかります。もし、つくしの本当の親がタチの悪い人間だったら花沢家がどうなるかわからないって考えたんでしょう?」


母さんもつくしの方に目をやると涙を流していた。
俺に妹を作りたかったっていいながら、本当は自分が娘を欲しがったのに・・・そのぐらい赤ん坊のつくしは天使だったんだよね・・・。


「もう一つ謝らないといけないことがあります・・・」

「今度は謝ることなの?・・・もう、何を聞いても驚かないわ」

「実はつくしにも話してあったんです。花沢の子供ではないことを・・・申し訳ありません。俺だけの気持ちだと言いましたが、すでに
高城の話があったときにはつくしは自分が花沢と血の繋がりがないことを知っていました。そして、俺たちは愛し合ってるんです。
・・・もう随分前から、お互いの気持ちは確認していました。父さんと母さんに話す時はつくしの親がわかった時だと決めていたので
今まで黙っていたんです」

言葉どおり、母さんはたいして驚かなかった・・・「やっぱりそうなのね」小さな声でそう言ったのが聞こえた。
もう一口コーヒーを飲んで、意外だったけど少し笑っていた。


「おかしいとは思ったの。急につくしが綺麗になって・・・あぁ、この子は誰かに恋をしたんだなって思えた時期があったわ。
でも、それは司君との婚約が破談になってすぐだったから、どこの誰かと思っていたの。まさか、あなただなんてね・・・!
こういうの・・・灯台下暗しって言うのかしら。母親失格だわね、ううん、最初から母親じゃないもの・・・仕方ないわね」

「そんなことはありませんよ。つくしは、もし自分の母親がわかっても、あなた以上の母はいないといつも言っていましたから。
むしろわかってしまってあなたが離れるのが嫌だったと思いますよ。血より濃い関係ってあるんじゃないかな・・・そう思います」


「つくしにはいつ話すの?母親のこと・・・」

「眼が覚めて、落ち着いていたら話します。大丈夫・・・あなたが母親だということは一生つくしの中では変わらないですよ」


ふふっ・・・って寂しそうに笑って、コーヒーと共に出されたケーキを一口食べていた。
苦いけど甘いわ・・・なんて言いながらビターチョコのケーキを泣きながら食べてる。そんな可愛らしい母さんは初めてだった。

そして、最後につくしの顔を撫でてから額にキスをする。
少し冷たくなってるつくしの手を両手で握り閉めてから、「お休み・・・」と、一声かけていた。


「類、私はこのままフランスに帰ってお父様に話しておくわ。つくしの事は任せるわね・・・でも、まだあなた達は兄妹です。
今後のことは弁護士も交えて話しましょう・・・それじゃあね!」

「ありがとう、母さん」

珍しく俺にまで抱きついて頬にキスして帰っていく。
ここに駆け込んできたときとは大違い。すでに花沢物産副社長の後ろ姿に変わっていて、凜とした背中が美しかった。


KOSU25.jpg
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Comments 4

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2017/10/22 (Sun) 11:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは~!

台風は私のところは幸いにもそんなに風も雨もないんです。
でもイベントのメンバーさん達が(関西の)雨がすごいって言ってましたね・・・娘が関西にいるので心配です。

もうすぐ・・・もうすぐ終わるのかと思うと何だかホッとします!!
何度かリタイアしようかと(笑)思ったくらいでしたから!
頭の中は冬のお話作りでいっぱいです♥

イベントも後半になりました!!
私は実は一度逃げたくなるくらいの恐怖でライントークで大泣き(トークで?)した事があります。
もう、怖かったんです・・・皆さんが凄すぎて、トークの打ち合わせ内容が凄すぎてついていけなくなって。
ラストのお仕事は最終話に向けて繋げやすく終わることだよ?って言ってもらって楽になりました。
それからはどうやって終われば皆さんに繋げやすいか・・・それまでの事件は先輩が回収してくれると!
私のところに来た時は平和になっているはずだと!・・・ただ、平和だけど多少エロっぽくなっていただけでしたが(笑)

イラストですか?
あれは・・・書くよりも時間が掛かるので夜中にコソコソとやりましたね。
何故か成功したのがあきらと司で、類と総二郎は失敗しました!おかしいなぁ・・・何でかな?

2017/10/22 (Sun) 16:50 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/25 (Wed) 12:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

イベントにも沢山のコメントいただいてるのに大変ですね・・・本当にありがとうございます!
このお話もやっとこさ終われます。

うんうん・・・母の愛ですよ。
と、言いながら私は今日は娘と喧嘩してます(笑)

遠く離れてても喧嘩・・・必殺技は電話無視・ライン無視・・・くそうっ!

2017/10/25 (Wed) 22:14 | EDIT | REPLY |   

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