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つくしが落ち着いた頃、俺の電話が鳴った。
かけてきたのは総二郎だ。内容はほとんどわかっていた・・・おそらく高城誠の本当の親についての情報だろう。
つくしが心配そうに見るから「総二郎だよ」って一言伝えてからその場で電話に出た。

「もしもし、総二郎?あぁ、心配かけたね。つくしはもう大丈夫だから・・・意識もはっきりしてるし思ったより怪我も軽かったからね。
後で代わってあげる・・・で、次の情報はなに?高城の事だよね?」

『つくしちゃんが助かったのはこっちでも結構派手に報道されたよ。なんたって去年、日本を騒がせた2人が今度はあんな形で
報道されるんだからな!帰ってきたらもう一回アイツらに囲まれるな・・・覚悟して戻ってこいよ?』

「・・・司だろ?・・・ホント油断出来ないよね」

世間を騒がせた婚約とその解消・・・日本のマスコミがネタとして食いつくのは無理もない。大企業の御曹司と令嬢のラブロマンス
として再びワイドショーなんかで取り上げられるのか・・・仕方がないとはいえ面倒くさい。


『で、本題だけど高城の父親が判明した。残念だけどやっぱりうちの大叔父さんだったよ。つまりは西門の血を引いてんだよな~!
どおりで俺、あいつの事が気になってたんだろうな・・・!祥一郎に見えて仕方なかったし。ただ母親がわかんないんだ。おそらく
安藤今日子だろうけど大叔父さんには聞けねぇし、安藤今日子はもういないしな。これを聞けるのは高城美智子だけだろうな』

思った通り・・・つくしに説明したことは間違いじゃなかった。高城とつくしは血の繋がりでみればいとこになる。
もし、高城美智子がつくしを実子として向かえてくれれば高城とは戸籍上兄妹になる。高城も特別養子縁組ならそれを解消する
には西門清四郎の申し出が必要になるが、それは意思確認が取れない今となっては難しい。

「高城美智子はつくしに全部話すと約束してくれたよ。でも、それは日本でしようと思う・・・総二郎達も立ち会ってもらえる?
もう少ししてつくしが動けるようになったらそっちに戻るから。その時に花沢の両親と高城と・・・高城夫妻を呼んで話し合おうと思う」

『・・・それがいい。俺たちはいくらでも証人になってやるよ。非合法手段だけどな!』

電話を切る前につくしにそれを手渡した。
恐る恐る電話を手に取り耳に当てる・・・「つくしちゃんか?」って言う総二郎の声にうんうんって頷きながら涙を流していた。
声が出ないつくしに総二郎が何か伝えてるんだろう、時々クスって笑いながら小さい声で返事をしていた。

少し話したら安心したのか、つくしは普通に喋りだした。

「西門さん、色々あれから動いてくれたんだね。ありがとう・・・お礼しなきゃ!何がいいかな・・・考えといてね」

『お礼かぁ・・・!じゃあ、つくしちゃんだなっ!』

「・・・え、私?」

『あぁ!あんたの笑顔かな!・・・だから笑って帰って来いよ?シケた顔は見たくねぇから・・・じゃあな!』

スマホから漏れて聞こえた総二郎の声・・・相変わらず調子がいいんだから。
少しだけ赤い顔はどういう事?総二郎の一言がそんなに嬉しかったの?・・・他の男の声でそんな溶けそうな笑顔なんてさせない。
つくしの肩を抱き寄せて、たった今総二郎と話してたその唇を塞いでしまった。


「総二郎は高城の事、なにか言ってなかった?随分楽しそうに話してたね」

「え?・・・高城さんの事は聞いてないわ。調査中に色々あった面白い話を聞いていただけよ?」

「そう・・・高城はやっぱり総二郎の遠縁だったみたい。大阪にいる家元の叔父さんって人が父親なんだって。多分、高城の母親は
高城美智子のお姉さん。やっぱり、つくしとはいとこになるんだと思う・・・それも、またきちんと話を聞こう。高城自身がどこまでこの
話を受け入れるかが問題だけどね」


**********


その日の午後、病室に現われたのはつくしの産みの母親、高城美智子だった。

あの日から数日しか経っていないのに随分と顔色が悪く、今にも倒れそうな様子で俺に深々と頭を下げた。そんな彼女の背中を
支えてつくしのベッドの方に連れて行こうとしたが、途中でその足が止まる・・・微かに震える身体はものすごい緊張を感じさせた。

「大丈夫ですよ。ほとんど話はしています・・・あなたは認めてくれればいい。つくしに自分が母親だとお話しいただけるだけでいいんです」

「類さん・・・あの子は許してくれるんでしょうか・・・」

「それはわかりません。でも、真実から逃げるのはもうやめていただきたいんです。正直にあなたのお気持ちを伝えていただけますか?
そして、つくしの疑問に答えてやって下さい。その後のことは今日ではなく、日本に帰ってから花沢と高城で話し合いたいと思います」

もうすぐつくしの顔が見えるくらいの所まで来たら再び止まる足・・・その時に声をかけたのはつくしの方だった。


「どうぞ、ここまで来て下さい・・・えっと、なんて呼べばいいかしら。まだ恥ずかしいからおば様でいいですか?」

その柔らかいつくしの声に引きつけられるように足が動き出す。
ゆっくりとつくしに近づいて、顔が見える所まで来たら急にその場に座り込んでしまった!そして両手で顔を覆って声をあげて泣いた。
それを俺もつくしも茫然として見ていた。予想はしていたんだ・・・取り乱すことも想定内、号泣するのも目に見えていた。
なのに、いざとなると目の前で泣き続ける高城美智子にかける言葉が見つからなかった。

聞こえてくるのは「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」と、繰り返される言葉だけ。
他に何か言っているようだけど言葉になっていない。涙が指先からも溢れ出て高城美智子の服を濡らしていった。

どのくらい時間が過ぎただろう。やっと声をかけたのはつくしの方だった。


「あの・・・会いに来てくれてありがとうございました。一つだけ言ってもいいですか?」

高城美智子はつくしの声にビクッとしたが、顔から手を外してハンカチで自分の目元を拭いながら小さく頷いている。
その前にきちんと座って欲しいと言うと、俺が差し出した椅子に座り直した。
つくしとの距離は1mもない。手を伸ばせばお互いに温かさを感じられるほど・・・だけど、つくしもまだその手を伸ばせなかった。

「類から聞きました。おば様が私のお母さん・・・なんですね?でも、もしそれが本当でも私の母は花沢にいるお母様です。
それはもう変えることが出来ません・・・でも、おば様とも仲良くしたいって思っています。それでもいいですか・・・?」

「・・・え?仲良く・・・って、私はあなたを手放したのよ?それなのに・・・」

「そうかもしれません。でも、その事情はお話いただけると類から聞いてます。私は1つだけ確かめたいんです・・・たった1つだけ」


俺はこの親子の間に入ることは出来なかった。
ここは何も言わずにつくしに任せよう・・・始めからそのつもりで口を出さなかった。


「私のこと、産まれたときには喜んでくれましたか・・・?」

高城美智子はこの質問にはすぐに答えを出した。真っ直ぐにつくしを見つめて・・・今にも伸ばしそうな手を必死に抑えているように
見える。本当ならすぐにでも触れたいだろうに・・・19年間という月日はそう簡単に距離を縮められないものだ。

「・・・もちろんよ。あなたは私が産んだたった1人の子供ですもの・・・忘れたことはなかった。でも、今更です・・・手放したのは事実。
それを消すことは出来ないわ・・・でも、幸せになって欲しくてあの家を選んだのも・・・事実です」

「高城社長の子供ではないと聞きました・・・事情はあったんでしょうけど、どうして産んだの?」

「・・・大事な命ですもの。お腹の中にいる命には何の罪もありません。どうしても堕ろすことは考えられなかったの。最後の最後まで
1人で育てることも考えたけど、誠も可哀相な運命も子でしたから傍にいてやりたかった・・・でも、何を言ってもあなたを手放した
ことの正当な理由にはならないわ。それも全部わかっています。すべては私の行動がいけなかったの・・・許してなんて言わないわ。
許されることの方が辛いもの・・・憎んでくれていいの。つくしちゃん、私を憎んでもいいから、その代わりもう全部忘れて幸せになって欲しい。
幸い花沢のご両親はとてもあなたを可愛がって下さってるわ・・・あちらが本当の両親で間違いないのよ?」


それを聞いていたつくしはとても冷静だったと思う。
責めるわけでもなく、怒るわけでもなく・・・ただ、自分が今ここにいる事が許されるのかどうか・・・愛されて産まれたのかどうかを
確かめたいだけ。


「ありがとう・・・産んでくれて。私は2人のお母様に愛されたのね?」


にっこりと笑ったつくしはとても美しかった。


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Comments 2

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2017/10/25 (Wed) 13:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます。

うんうん!強くしてみました。
これも傍に類がいるから・・・そろそろ可愛い微Rが欲しくなりなしたね・・・ふふふ。
長いこと辛いシーンを書くと甘いものが欲しくなる・・・ってところでしょうか。

どこかで割り込めないかと思案中です・・・。

それにしてもさとぴょん様!こんなに沢山コメント下さってありがとうございます!
大変だったでしょう?感謝してます!!

2017/10/26 (Thu) 08:23 | EDIT | REPLY |   

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