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その日は朝からソワソワしていた。あれから毎日、類は来るんだけど、動物園の話は出ないから忘れちゃったんだと思っていた。
明日が休みなんです・・・そう言ったらなんて言うかしら。あっさり仕事だって言われたら立ち直れないかもっ!!
店内にはちょうどモーニングのお客様が途切れたところで、私も一息ついていた。
そろそろ来るかな?・・・今日はまだ見ていない彼の事を思ってバゲットの準備をした。一番下にはチーズをひいて、その上にグリーンサラダを乗せる。
トマトとパプリカも乗せてにスモークチキンを切っておく。それを並べてあとは上にバゲットの半分を乗せるだけ・・・そこまでしておけば彼が来たときにシーザーサラダドレッシングをかけて、カットして出せばいいだけ。

よし!・・・完了!


「そういちろうさん・・・こんな時はどうしたらいいのかしら。相手に気持ちを伝えるって大変よね・・・それがさ、大事なことほど失敗すんのよ!ラテアートと同じなの・・・マスターに出すときには形がいいのよ?でもさ・・・類に出そうと思ったら失敗すんの・・・。
ねぇ、聞いてる?そういちろうさん!」

「ソウイチロウ、マッテル!ソウイチロウ、オナカスイタ!」

「・・・待ってるのは私の方でしょ?類の言葉を、もう何日も待ってるのに一言もくれないのよ?期待だけ持たせて酷いわよ!」
「そうなの?ごめんね・・・今日、話そうと思ってたんだけど・・・」

「遅いって言うのよっ!・・・ん?あれっ・・・?」
「イラッシャイマセ!」

いきなり背中から甘い声が聞こえて、そういちろうさんも嬉しそうに声を出した・・・いや、私は冷や汗がすごいんだけど!
恐る恐る振り返ったら・・・ニコッと笑った類がそこに立ってた。いつドアが開いたのよーーーっ!!それすら気が付かずに独り言を言ってたのかと思うと、耳が熱くなって死ぬほど恥ずかしかった!

「あああっ!あの、ごめんなさいっ!そんなつもりじゃなかったんだけどっ!」
「クスッ・・・不安にさせたんだね。一度話したからいいかと思ってたんだ。明日がお休みでしょ?待ち合わせ・・・どうする?牧野の家まで迎えに行こうか?」


それまで真っ赤になって熱かった顔が一気に冷めて・・・血が凍ったのかと思った。
私の家・・・アパートに?いや、それは絶対にダメ!・・・だって、私のアパートには・・・あいつが!



「ううん!あの・・・このお店の前でもいいですか?私の家はこの奥にあるんだけど、その道を説明するのがすっごく大変なの。
だから、ここで・・・ここにしましょう!」

「うん、わかった。この店の前ね?時間は朝の9時でもいい?遅いかな、俺、朝弱いんだよね・・・」

家まで迎えに来るのを断った理由を聞くこともなかったけど、そんなに気にならなかったのかしら。
いつものようにそういちろうさんに挨拶をしてヒマワリのタネまであげていた。


「牧野、残念だけど今日は時間がなくてモーニング、食べられないんだよね。だからこれで帰るね・・・急ぎの会議を入れられたからさ。うちの有能な秘書はスケジュールに隙間を作ってくれないんだよね」

「そうなんですね・・・あっ!ちょっと待って?実はね、もう準備してて・・・カットするだけだから!」

私は急いでカウンターの中に入るとさっきした準備したバゲットを重ねて、ざっくりとカットした。それをひとつずつペーパーで包んで小さな紙袋に入れた。類はそれをびっくりしたように見ていたけど、私が差し出すと嬉しそうに笑顔で受け取ってくれた。

「あの・・・今日は一つじゃないから誰かと食べて下さい!類が全部食べられるならもちろん嬉しいけど、朝ってそんなに食べられないんでしょ?お昼ぐらいまでなら大丈夫だと思うから。わざわざ言いに来てくれてありがとう!明日・・・楽しみにしてます!」

「ちゃんと払うよ?これ・・・いくらなの?」
「あっ!注文もらう前に勝手に作ったんだからいいんです!えっと・・・私のおごりです!」

「そう?じゃあ・・・これで!」

そう言うと私の左目の横に、類の顔が近づいたかと思うと!チュッ・・・とキスされた!
声には出さないけど心の中で悲鳴をあげた私は、真っ赤になってレジのあるカウンターにドンッとぶつかってしまった!!

「ありがとう・・・会議しながら食べるね!」


強烈過ぎるわ・・・あんな綺麗な顔が私の・・・私の目の前に!しかも・・・こんな所にキスするなんてーーーっ!!
類がカラン・・・って音と同時に出て行った後に、その場に座り込んだのは言うまでもない。足がガクガクして立てないっての!
そのぐらい心臓がバクバクして口から出そうだった!・・・ゴクンと大きな音をさせて唾を飲み込むほどに緊張した・・・。


明日・・・こんなので動物園、歩けるのかしら。
あの無意識に行われる殺人的行動が再び行われたら、間違いなく心臓が止まる!・・・この日は一日中顔が赤いとマスターに言われ続けた。


*********


「専務・・・いい匂いですね。何ですか?それ・・・」

「ん?内緒・・・いっとくけど藤本にはあげないよ。これは俺のを朝と昼の食事なんだから。今日の会食は断わってね!1人でこれ食べるから」

「何言ってるんですか!欲しがったりしませんよ!それに、会食もキャンセルできませんよ・・・残念ですけど!」

今日もまた1階受付横で藤本が俺の事を待っていた。子供じゃないんだからそこまで見張らなくてもきちんと出社するのに・・・!
そして不釣合いな紙袋を持ってるから当然それに触れてくる。二重に包んであるのに匂いがわかるなんてイヌもびっくりだよね?
俺は藤本から遠ざけるようにして紙袋を持つ手を変えた。

「じゃあ会食にこれ、持っていってもいい?それなら参加する。どこでやるんだったっけ?Mホテル?」

「持っていけるわけないでしょう!ホントに子供みたいな事言って・・・相手は今度からお付き合いが始まる本田商事です!
初めて会うのにご飯持参してどうするんですか!もうっ!」

そこまで言ってもあげないよ?今日のお昼は絶対にこれって決めたんだから。だって、牧野が作ってくれたんだよ?
俺が来る時間だからって作って待っててくれたんだから、それを無駄になんかできないさ。


でも、本当は少し気になっていた。
家まで迎えに行くと言ったときの、一瞬暗くなって怯えたような眼・・・見ていないフリをしたけどしっかり見ていたんだ。
俺が行ったらマズい何かがあるんだろうか。親が煩いとか?それともすごく家が古いとか・・・でも、そんな怯え方じゃなかった。

別に俺の家がこんなだから、牧野の家を見たかったわけじゃない。ただ純粋に相手の家まで迎えに行ってみたかっただけだ。
今まで一度もそんなことをしたことがない。こうやって誘うのも実は初めて・・・ホントに動物園だなんて、どうして選んだんだろう。
もっと気の利いた場所なんていくらでもあるのに。

でも、牧野は豪華な食事やお洒落な街の中よりも、自然な風景が似合いそうだった。そういちろうと喧嘩しているのも楽しそう。
明日はどんな1日になるんだろう。牧野の事をもっと知りたい・・・そう思っていた。

何かあるのならそのすべてを・・・。苦しめるものがあるならそれを全部取り払いたい。

**

エレベーターの中で思わず紙袋を開けてしまった。
その中から一つとりだして、ガサガサと包みをとって・・・牧野特製の俺専用サンドイッチを口に入れてしまった。
このスモークチキン最高!結構大きな口を開けないと入らないこのボリューム・・・マスターが作るのよりデッカいんだよね!

「あっ!こんな所ではしたないっ!誰かに見られたらどうするんですかっ!・・・美味しそうですね」

「だから言ったでしょ?藤本のはナシ!・・・なんて嘘。一つお裾分けしてやるよ。明日、休みをくれたからね」


大の男2人がエレベーターの中でサンドイッチ食べてるなんてね。
今日の会議なんてどうでもいい。俺の頭の中は明日のデートのことでいっぱいだから!


「ハ・・・ハックションッ!!・・・あれ?」
「専務、風邪治ってないんじゃないですか?移さないで下さいよ?」


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2017/11/16 (Thu) 07:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます!

楽しそうですよね~♥今はね・・・。
そういちろうも連れて行けたらいいのにねぇ・・・昔一度だけ、籠に入れてオカメインコとお花見に行きました。
その時にロープウエイで山の上に行こうとしたら、「動物連れ」ってことで貸切にされました(笑)
周りの人に迷惑かけましたよ・・・そしてものすごい注目を浴びました。

藤本、可愛いでしょ?「花沢専務」書いてる気分になります!

あっ!・・・修正しましたよ(笑)なんでそうなったのかしら!ドジだわ・・・また、何かあったら教えて下さい。
宜しくお願いします!(いや、自分で確認しろよっ!)

2017/11/16 (Thu) 09:45 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/16 (Thu) 11:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!こんにちは~!

正解です!②番!オカメインコのプルメリーナ!と、言いたいがここはやっぱり③番でしょう!
でも鉢合わせて一倍ヤバいのは①番か?
この話の類くんならドア開けた瞬間に噛まれてそう(笑)
しかし、さとぴょん様・・・お話し書いたらいいのに!一緒にリレーしようよ!(笑)

そうそう、もうね、まだ向日葵っていうストレス材料があるからどうしてもこんなキュンキュン系に走るんです。
今は結構楽しい・・・ここでラブラブしてるから!

ごめんね総ちゃん!でも、さとぴょん様も酷いよ(笑)今のところ○○関係無しって・・・笑った!

2017/11/16 (Thu) 13:26 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/16 (Thu) 15:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・とんでもない物はよく飛び出してきます。
えぇ、そりゃもう!特にR達筆者は「限度」って言葉を知らないようです。
いつも困るのは純情派です(笑)

私が楽しいのはR達筆者の中でがんばるG様です♥
いかにしてみんなで書かせようとしても、頑なにお断りされます。

そして肝心の話になると合い言葉は「丸投げ」です。
たまにこれを「ぶん投げ」と称することもあります。

だから怖かったの・・・イベントの時ラストでしょ?私は誰にもぶん投げられないってのっ!(笑)

2017/11/16 (Thu) 16:45 | EDIT | REPLY |   

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